著者
稲橋 正明 武藤 貴史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.824-835, 2008-11-15
被引用文献数
5

きょうかい酵母を使用して, ふと疑問に思ったこと, これでいいのかな?と抱かれた数々の疑問が協会によせられる。そのような問い合わせの中から多くの方々にとって参考になりそうな事例をまとめていただいた。きょうかい18m号酵母に対するQ &Aが中心になってはいるが, 他の酵母や一般のもろみ管理に関しても示唆を与えてくれる一文である。
著者
山田 康枝 江口 将也 伊豆 英恵 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.609-614, 2010-09 (Released:2011-12-19)

本研究では、中枢神経系においてリラックス効果に主要な働きをしているGABAA受容体に対する日本酒成分の効果を明らかにするため、アフリカツメガエル卵母細胞に発現したGABAA受容体のチャンネル活性への日本酒成分の影響を検討した。受容体へ効果のある物質を特定しやすくするため、イオン交換クロマトグラフィーで日本酒を分画し、揮発性成分を除き濃縮するために凍結乾燥を行い、塩基性アミノ酸画分、中・酸性アミノ酸画分、有機酸画分、糖画分を得た。これらの日本酒画分存在下で測定を行った結果、得られた全ての画分にGABAA受容体を活性化する成分が存在することが示された。特に、有機酸を主に含む画分において、GABAが含まれないのにも関わらず、GABA活性が存在し、さらに高い活性化率を示すことがわかった。以上のことから、日本酒にエタノールやGABA以外のGABAA受容体活性化成分が存在することが示唆された。
著者
戸井田 仁一
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.485-490, 2012-07-15

みそ,しょうゆをはじめとして,発酵調味食品は,食品や加工食品等の調味の用途に用いられ,その品質は人の味覚による官能検査によって評価されている。調味食品の味は,多数の呈味成分の複合的な作用が,人の味覚によって感じ取られることで,認識されている。食品の開発研究では,官能検査による評価を行っているが,人の味覚を利用することから,評価値の安定性,多大な労力のために,センサーによる客観的評価値の導入が望まれている。近年では合成脂質膜や半導体をもちいた味センサーや匂いセンサーなどの装置が市販されている。食品の品質管理や新製品開発のために,迅速かつ簡便な評価技術としてセンサー技術が注目されている。著者らは,いち早く味センサーを導入し,長野県特産のみそ,しょうゆの品質評価の試験研究を行ってきた。そこで,味センサーの実際の測定例をあげながら,発酵調味食品における味センサー技術の利点と問題点について解説した。
著者
藤田 晃子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.271-279, 2011-05 (Released:2012-12-06)
著者
大富 あき子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.926-938, 2009-12-15
被引用文献数
1

醤油の消費は家庭用から業務・加工用へシフトしており,その中でもめんつゆは増加している。著者は心理学の分野で多用されるセマンティック・ディファレンシャル(SD)法は食品の食味特性(プロファイル)を求めるのに有効な方法であることを明らかにし,今回はめんつゆの味の官能評価に用いて,めんつゆの食味特性と品質(分析値)との関連を調べている。そして,つゆの材料としてグルタミン酸ナトリウムを付与し,鰹の天然だし,濃口醤油を適量用いることは,特に2倍,3倍に希釈して用いる市販の濃縮めんつゆの複雑な味に大きく寄与することを明確にしている。おいしいめんつゆを製造するために,メーカーに一読をお勧めしたい。
著者
後藤 奈美
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.116-120, 2011-03 (Released:2012-12-06)
著者
松田 義弘 上木 厚子 上木 勝司
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.57-74, 2009-01-15
被引用文献数
3 4

サクランボ,ラ·フランス,リンゴ,ヤマブドウ及びアケビの各果実から<I>S. cerevisiae</I>を含む43菌株の香気生産性酵母を集積し,分離した。低pHでアルコール存在下での集積培養と集積されてきた酵母について18S rRNA遺伝子の部分配列のPCR–TGGE解析と塩基配列の比較による系統解析を組み合わせることで,自然環境中では稀少種である<I>S. cerevisiae</I>を効率良く分離することができた。<I>S. cerevisiae</I>菌株は,既報のサクランボからの分離株に加えて,ラ·フランスとリンゴから新たに13菌株が分離された。また<I>S. cerevisiae</I>以外でも,合計9菌種25菌株の香気生産性の野生酵母菌株が分離された。<br>分離した野生酵母菌株について炭素源資化性試験を行い生理的性質を調べたところ,ほとんどの菌株では分子系統解析での最近縁種についてのThe Yeast(1998)における記載と合致した。しかし,ラ–フランスから分離した5菌株とリンゴから分離した8菌株の<I>S. cerevisiae</I>菌株は,それぞれL-ソルボース資化性とトレハロース資化性においてThe Yeast(1998)における<I>S. cerevisiae</I>の記載と異なっていた。<I>S. cerevisiae</I>以外の菌株では,サクランボから分離された<I>C. ethanolica</I>関連のCeS 3株がラクトース資化性の点で,リンゴから分離された<I>P. guilliermondii</I>関連のPgR 4株がD-グルコサミン資化性の点で,ヤマブドウから分離された<I>H. uvarum</I>関連のHuY 1株とHuY 2株が2–ケト–グルコン酸の資化性の点でそれぞれの関連菌株についてのThe Yeast(1998)の記載と異なっていた。<br>分離した香気生産性野生酵母菌株の高級アルコールの生産性について主成分分析したところ,<I>S. cerevisiae</I>菌株の場合は,分離源ごとに緩やかな集まりとして判別できた。<I>S. cerevisiae</I>以外の菌株の場合は,種属ごとに緩やかな集まりとして区別された。その中で<I>P. kluyveri</I>の1菌株など菌株により特徴的な香気生産特性を示すものもあった。
著者
大場 孝宏 末永 光 一松 時生 羽田野 雄大 満生 慎二 鈴木 正柯
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.949-953, 2008-12-15
被引用文献数
5

(1)K9系酵母使用の清酒もろみから親株より2〜3倍のリンゴ酸生産性を示す9株を取得した。アルコールの生成、ボーメの切れは親株と同等であり、9株ともに親株よりリンゴ酸を2〜3倍生産し、酢酸の生産量は半分以下である。(2)K901使用のもろみからは、高頻度でリンゴ酸高生産株が得られた。(3)得られたリンゴ酸高生産株について、シクロヘキシミドヘの耐性及びジメチルコハク酸への耐性、またマルトース資化性及びグリセロール資化性を調べた結果、既に報告されている菌株と異なる性質を持っていると考えられる。(4)分離したリンゴ酸高生産株すべてが親株より酢酸生産量が低下していることから、分離したリンゴ酸高生産株では酢酸から生成したアセチル-CoAとグリオキシル酸からリンゴ酸を生成する経路が活性化されるような変異がおきているため、リンゴ酸高生産性を獲得したのではないかと推察される。
著者
武藤 彰宣 坂本 裕子 田島 健一郎 後藤 邦康
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.535-540, 1997-07-15
被引用文献数
3

糖化力測定キットを用い清酒醪中の糖化力の測定を行った。当測定キットは醪中のグルコース及びエタノールによる影響は受けずに,醪中の糖化力の変化を十分に測定することが可能であった。醪中の糖化力は醪初期(掛米投入後24時間前後)にピークを持ち,中期以降(7~10日前後)から麹抽出液から推定される値になり,漸減する傾向を示した。この減少率より醪中で初期の糖化力が半減するには30~40日必要であることが分かった。実地醪では醪後半から予測される糖化力に影響する留醪の割合は4割前後で,留麹投入以前の麹の糖化力も醪の経過に大きい影響を与えるものと考えられた。個々の投入段階の麹を分析する方法よりも,実用レベルでは留時の水麹の試料を用いることにより,段仕込みの影響を考慮せず,醪中期以降の糖化力を推定することが実用的であった。
著者
石井 正治 春田 伸 五十嵐 泰夫
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.652-657, 2009-09-15
被引用文献数
1

鹿児島市から東へ約40kmの所に,酢の町―霧島市福山町がある。福山は桜島を望む風光明媚の地で,一年中温暖な気候に恵まれ,背後の山あいから湧き出る天然の地下水は非常に良質で,醸造に必須の条件を備えている。福山米酢の起こりは約180年前に遡り,54lの壼に,蒸米,米麹,水を加えた後,液上面に振り麹と称して老ねた麹を撒く。この振り麹が上面にある間に,糖化とアルコール発酵が行われる。アルコール発酵が終了すると,振り麹は自然に落下して,次に液表面に酢酸菌膜が張り,酢酸発酵が行われる。伝統的な製法をそのまま引き継いで,今日に至っている。本稿では壼造り黒酢について,微生物学見地から解説をして頂いた。
著者
池田 浩二 中野 隆之 藤井 信 侯 徳興 吉元 誠 倉田 理恵 高峯 和則 菅沼 俊彦
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.355-361, 2012-05-15
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

芋焼酎粕の有用成分に着目し,米麹を添加した独自の香味改善と機能性の増強を目的とした製造方法で得られた芋焼酎粕飲料(新飲料)について,生理作用を検討した。その結果,次のことが明らかになった。<br>(1)新飲料には,クエン酸,アミノ酸がそれぞれ約1%,ミネラルではカリウムが多く,ビタミン類ではナイアシン,パントテン酸,ビオチン,ビタミンB2,葉酸などが比較的多く含まれていた。ポリフェノールは約0.1%,食物繊維は0.3%,GABAも含まれており,様々な成分による相乗効果が期待される栄養豊富な飲料であることが考えられた。<br>(2)動物試験において,新飲料はその嗜好性から飼料摂食量が増えたが,体重増に有意差が見られず新飲料摂食により代謝が高まることが考えられた。なお,臓器重量には有意差はみられなかった。<br>(3)新飲料摂食試験の結果,強い血清中性脂質抑制効果,総コレステロール抑制効果,特に悪玉であるLDLコレステロールを大幅に有意に減少させ,善玉であるHDLコレステロールは減少させない結果が得られ,さらに,血糖値を抑制する効果が明らかになった。<br>以上のように,芋焼酎粕を原料とした新飲料の脂質代謝改善作用,高血糖抑制効果などの生理作用や食品機能を明らかにできたことから,生活習慣病やメタボリックシンドロームなどの予防や改善効果をもたらすすぐれた飲料であると考えられる。