著者
小野 博通
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.522-529, 2010-08-15

一昨年発覚した事故米の不正流通問題や酒米の差し替え事件などにより,清酒,焼酎に対して消費者に少なからぬ不安や不信感を与えた。このような事件の再発を防止するため,昨年公布された米トレーサビリティ法がいよいよ施行される。米の取引等に係る記録の作成保存関係が本年10月1日から,また来年7月1日からは消費者に対する米に関する産地情報の伝達が施行されることとなる。<BR>その施行に先立ち,具体的な事例なども含めて,トレーサビリティ法の詳細について解説をお願いした。
著者
山内 賢明
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.743-748, 2009-10-15
被引用文献数
1 2

現在,業界の課題として,甲乙混和焼酎問題があり,著者は日本酒造組合中央会の焼酎需要開発部会長として,業界の先頭に立って東奔西走の多忙な日々を過ごしておられる。多忙な業務のかたわら,焼酎伝来の1つのルートについて5年以上にわたって調べられた結果を,平成19年に出版され,大きな反響を呼んでいるが,その概要から現在に至るまでの経緯,並びに壱岐の麦焼酎が出来るまでを解説して頂くとともに,部会長の立場から,今本格焼酎業界が抱えている課題についても言及して頂いた。<br>麹文化の所産であり,蒸留酒の国酒たる本格焼酎と泡盛を国民消費者に正しく理解していただき,今後も楽しんで頂くと同時に,本格焼酎の将来に目を向けた努力をしておられる気持ちを行間から読みとって頂きたい。
著者
井出 民生
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.778-782, 1997-11-15
被引用文献数
1

1998年 (平成8年) 2月に, 第18回オリンピック冬季競技大会が長野市を中心として開催される。平成3年6月に冬季五輪を長野で開催する決定を受けて, 長野県酒造組合は長野五輪組織委員会と接渉し, 公式認定商品のライセンス契約を結んだ。<BR>この6年間, 新しいタイプの清酒「アルプス吟醸」の開発や五輪マークの酒「信州の酒」の発売までの経緯等について, このプロジェクト担当責任者として従事された著者に解説していただいた。新商品開発の参考になると思われる。
著者
山田 潤 松田 秀喜
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.866-873, 2009-11-15
参考文献数
26
被引用文献数
2 3

かつお節は古来より使用されてきた日本の伝統的な調味料である。培乾した荒節にカビ付けした枯節は発酵食品といえる。かつお節のDPPHラジカル消去活性は,100℃,30分間の抽出時に最も強い値を示し,鰹だしの抗酸化活性成分として,クレアチニンとフェノール系の2-methoxy-4-methyl-phenol,4-ethyl-2-methoxy-phenolを同定し,さらに鰹だしにより加熱調理時のイワシの酸化が抑制されることを明らかにしたので解説していただいた。鰹だしは醤油加工品であるめんつゆやだし入り味噌などに使用されており,これらの製品においても抗酸化作用が期待される。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.823-828, 2007-11-15
参考文献数
26
被引用文献数
4

現在清酒は, 台湾, 韓国, 中国, ベトナム, オーストラリア, カナダ, 米国, ブラジルなど多くの国で造られている。本稿によると, 20世紀初めからの台湾における清酒醸造は, これらの先駆けであり四季醸造技術や理研酒など様々な試みが行われている。<BR>先人達の努力と経験に学ぶところ, 日本と台湾の深いつながりについて考えさせられるところが多い技術史である。
著者
佐々木 定
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.198-206, 2006-04-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

長期間低迷してきた日本酒の需要は, 最近になって回復の兆しが見えつつある。この機会を捉え需要回復へつなげるため, 消費者ニーズに合った味わいの日本酒を提供する必要性を説き, その具体策として, 全国新酒鑑評会の在り方, 美味しいと思われるような旨味のあるお酒の提供などについて述べられている。また, わが国の総人口の減少, 高齢社会など, 人口問題を要因とする市場構造の急速な変化への対応についても提言されている。

1 0 0 0 頼山陽と酒

著者
池田 明子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.32-36, 2013-01-15

筆者は著書「吟醸酒を創った男」で,この業界に知られる作家。北陸の古都・金沢に生まれ育ち,広島へ嫁いだのち,賴山陽に傾倒し著作も多い。「山紫水明」は山陽発明の語,山陽の晩酌は「酒に自分好みに水をブレンド」していた由。本解説を楽しく味わっていただきたい。
著者
伊藤 俊彦 小松 幸恵 高堂 斐 高橋 仁 田母神 繁 小泉 武夫 中沢 伸重 岩野 君夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.562-569, 2008-07-15
参考文献数
10
被引用文献数
5 4

鑑評会の審査成績と相関の高い未知成分を単離・精製し, これらの未知成分がチロソール, β-フェニルエタノール, トリプトフォールで有ることを明らかにした。更に, 吟醸酒中に存在する濃度での呈味性を合成清酒を用いて三点識別嗜好試験を行い調べた結果, チロソールは苦味, 渋味, 雑味を, β-フェニルエタノールは渋味, 雑味を, トリプトフォールは酸味, 苦味, 渋味を呈する事を知った。
著者
竹村 朋実 渡辺 清香 田中 万祐子 進藤 斉 小泉 武夫 高橋 康次郎
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.547-555, 2011-08-15
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本研究は,長期貯蔵した本みりんの抗酸化性にアミノ・カルボニル反応の後期段階で生成する褐色色素メラノイジンが寄与していることを明らかにしたものである。市販本みりんの着色度と抗酸化性との間にはr=885**(n=19,p<0.01)と高い相関関係が認められた。貯蔵期間の短い一般的な本みりんの着色度(OD430nm)は0.028~0.122と低く,DPPH-ラジカル消去活性から求めた抗酸化性は257~431 Trolox equivalent(μmol/100ml)であった。一方,貯蔵した本みりんの着色度及び抗酸化性は,3年貯蔵本みりんOD430nm:0.676, 抗酸化性:1,064 Trolox eq.(μmol/100ml),10年貯蔵本みりんOD430nm:10.641, 抗酸化性:2,978 Trolox eq.(μmol/100ml)と,貯蔵期間とともに着色度・抗酸化性ともに増加した。精製した着色物質は抗酸化性のピークと重なることから,貯蔵本みりんの抗酸化性は主としてメラノイジンそのものに起因すると考えられた。着色度当りの抗酸化性(Trolox eq./OD430nm/100)は,貯蔵期間の短い本みりんでは35.3~113.4の値を示したが,貯蔵により小さな値となり熟成本みりんでは2.8~15.7の値に,また,精製した着色物質では1.92~5.72 (平均 3.55)に収束した。精製着色物質の分子量は3年貯蔵本みりん26~43KDa,10年貯蔵本みりん34~57KDaと推定され,貯蔵とともに本みりんの着色物質が高分子化し,それに伴い抗酸化性も増加することが認められた。さらに,温度履歴の明確な試験醸造本みりんの貯蔵試験により,着色度の増加とともに抗酸化性が増加することを確認した。

1 0 0 0 IR お味噌の効能

著者
渡邊 敦光
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.714-723, 2010-11-15
参考文献数
46
被引用文献数
1 2

わが国の代表的発酵食品の一つである味噌について,健康や長寿に良いことが伝承されてきたが,食塩の過剰摂取による弊害のおそれも指摘されてきた。これまで味噌等の発酵食品の健康・栄養に関する知見については伝承的な説明が広く知られていたが科学的な研究の発展が遅れていた。近年,動物を用いた臨床研究,分子生物学,分子栄養学の研究が進展し,味噌を含む発酵食品の健康機能性が急速に明らかにされつつある。本解説では,味噌の抗癌効果を長年に亘って研究し味噌の生理機能研究を牽引してきた研究者の一人である著者に,これまでのご自身の研究成果と国内外の研究成果を紹介していただき,味噌の健康機能について幅広くわかりやすく解説していただいた。
著者
堀越 昌子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.389-394, 2012-06-15
参考文献数
9
被引用文献数
2

なれずし(馴れずし・熟れずし)は,コイやフナなどの川魚に米飯を混ぜ,重石をして数ヶ月から数年かけて保存する。この間,乳酸菌の作用でpHが下がり,雑菌の繁殖を抑えつつタンパク質の分解により旨み成分が増加するが,独特の香りを持っている。琵琶湖の「鮒ずし」や東北・北海道の「いずし」を始め,各種のものが知られている。そこで筆者に琵琶湖のナレズシを中心に,文化・栄養・製法・位置づけ・抗菌性について解説して頂いた。