著者
鮫島 吉廣
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.746-755, 1989-11-15 (Released:2011-09-20)

本格焼酎は約500年の歴史を持つが, この間, その製造方法は試行錯誤を繰り返しながら幾多の変遷をたどってきた。著者は, 鹿児島県下の焼酎メーカーに保存されていた明治時代から大正時代に亘る多くの貴重な資料を手掛りに, 当時の仕込方法やその変化の状況を詳細に検討し考察を加えたので, 本誌に睿稿いただいた。焼酎の製造方法の変遷が詳述されるとともに, 当時の業界の状況が紹介されており興味深い。
著者
下見 勝二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.322-326, 1998-05-15 (Released:2011-09-20)
被引用文献数
1

〈技術・技能の伝承〉シリーズとして今回は実際に何十年という杜氏経験を積まれた筆者にお願いした。「時間と試行と錯誤が技能の基礎であり, これまで歩んできた酒造りの道にはひとかけらの無駄も無かった」と振り返っておられる筆者の姿勢からは, 学ぶべきものが多い。
著者
海老根 英雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.697-702, 1990-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

ソ連のチェルノブイリ原発の事故の後, ヨーロッパでは放射能汚染に対する効果への期待で, 味噌は大いに活躍した。またアメリカでも味噌は自然食・健康食品運動ばかりでなく, 新しい調味用食材として幅広い利用面が開発されつつある。
著者
松山 晃 永ノ尾 信悟
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.195-202, 1997-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12

高度情報化社会となり, 国内だけでなく海外の状況にも気を配り酒造りに取り組まなければならない情勢となったが, 下方で, 我が国固有の酒文化をしっかりと把握しておくことが必要となっている。そのためには, 近隣諸国の文化を知ることが有効である。そこで, 古代にインドと中国の影響を強く受けたジャワの酒文化について, 古代ジャワ・インドの食文化研究に携わっている筆者に解説していただいた。
著者
新宮 和裕
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.9, pp.592-599, 2001

伝統食品に纏わる食品事故は軽微なクレームはあるにしても健康に関わる重大事故は幸いにもまだ起きていない。しかし, 近年食品事故が大きな社会問題になっている今, 安易な安全意識を見直し, 謙虚に製品の安全対策に取組む時にきていると思われる。このマニュアルは万一食品事故が起きてしまった時の迅速かつ適切な対応をするためのノウハウを執筆いただいたものであり充分に活用願いたい。
著者
小崎 道雄 内村 泰
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.818-824, 1990-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 17

(1) ブボッド中の生菌数は, 酵母および生酸菌の106/g, 108/gに比ベカビは生菌数が少なく105/gであった。(2) ブボッドおよびタブイよりカビ36株, 生酸菌62株, 酵母100株を純化取得した。分離したカビの中で, でん粉を糖化することができるものはRhizopusだけであった。しかしRhizopusの分離されないブボッドもあり, またでん粉を糖化する力が非常に弱かったことから, タブイ醸造における主糖化菌とは言い難い。(3) これに対し糖化力を持っていた主な微生物は, Saccheomycopusis属で, すべてのブボッドより常に分離された。以上のことから酵母であるSaccharomycopsis属こそが, 東南アジア地域とくにフィリピンの米酒における糖化の主要な微生物であった。(4) CARMETTE以来アジアの酒醸造における主糖化菌は, Mucoralesが行うと定説化されてきた。しかし供試したブボッドのすべてにその存在が確認されているのではないこと, また分離したカビの糖化力も弱かったことから, フィリピン米酒の主糖化菌はSaccharomycopsisfibuligeraであり, Saccharomyces cerevisiaeが主な発酵菌として関与していることを知った。(5) すなわち, 少なくともフィリピン北部山岳地帯で造られる米酒は, 上記2属の酵母のみで米の糖化も, 酵におけるアルコール発酵も一つの相の中での並行複発酵により醸造されることを明らかにした。
著者
入江 元子 大浦 新 秦 洋二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.7, pp.464-469, 2006-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

近年, 高血圧の改善や予防を目的とした機能性ペプチドの研究が盛んになり, 一部は特定保健用食品として, 実用化されているものもある。著者らは酒粕分解産物中のペプチドが高血圧自然発症ラット (SHR) の血圧上昇を抑制することを見出した。更に, ヒトでの効果も酒粕分解産物粉末を用いて確認した。今後, 血圧上昇抑制のための特定保健用食品としての実用化が期待される。本誌ではSHRおよびヒトに対して得られた効果について解説していただいた。
著者
稲橋 正明 戸塚 堅二郎 岡崎 直人 石川 雄章 佐藤 和夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.285-294, 2013 (Released:2018-01-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

活性度の低い酵母を使用した時の生酸菌の動向を調べた。酵母の増殖速度が正常の約1/2程度に低下した酵母,いわゆる活性度の低い酵母を仕込みに用いた場合,醪初期の酵母数が不足(1×108/ml以下)することにより,アルコール生成も遅れることから,生酸菌はもろみで旺盛に増殖を始め,その結果として酸度が高くなり,醪は酸敗する。しかし,二日踊りを採って酵母数を充分確保することができれば,活性度の低い酵母を用いても,もろみの酸敗をかなりの確率で防止できることを明らかにした。
著者
金子 秀
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.892-899, 2012 (Released:2017-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

醤油のうま味成分の主体はグルタミン酸,アスパラギン酸などのアミノ酸であるが,それ以外の醤油のうま味寄与成分については,不明な点が多い。そこで,著者はそれ自身はうま味を示さないにも関わらず,グルタミン酸ナトリウムのうま味を強めるアマドリ化合物であるFru-pGlu[N-(1-デオキシ-D-フラクトス-1-イル)ピログルタミン酸],Fru-Val,Fru-Met,ピログルタミルペプチドであるpGlu-Gln(ピログルタミルグルタミン),pGlu-Glyを単離・同定したので,解説いただいた。
著者
馬渡 雅夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.405-410, 1991-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

最近, ビールの品質の多様化が進み, 消費者は各種タイプのビールをTPOに応じて楽しめるようになった。しかし, メーカーにとって消費者に満足感を与え, 違いを認識させるため, それぞれの銘柄の特徴を出し, 工場間のバラツキをなくし, 常に一定品質のビール生産が要求される。その点で官能検査が非常に重要な意味を持ってくる。今回, その官能検査結果を集計し, その中から必要な情報を引出す手段として, 統計処理を現場に即した形で導入し, 短時間に処理できるシステムの開発に成功された。各方面で参考になると思われることから, 方法や実際の検討結果について解説していただいた。
著者
佐々原 浩幸
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.79-87, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
20

アントシアニンは,果実や花の色素成分として広く分布しているが,フラボノイドの一種として抗酸化性や視力改善作用などの健康機能を示すことが明らかになり,食品素材として注目されている。黒大豆の種皮にはアントシアニンが多く含まれており,黒大豆を原料とした食品は内臓脂肪の蓄積の防止,肝機能障害の防止などの効果があることが報告されている。筆者らは地域特産物である黒大豆を原料とした新規味噌製品の開発を目的として,黒大豆味噌におけるアントシアニンの一種シアニジンの挙動と醸造期間中の変動を詳細に解析している。今回は,原料黒大豆に対する「色止め」処理の効果,試験醸造における成分や抗酸化性等の変動についての貴重な知見について解説していただいた。
著者
石橋 徳雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.360-366, 1989-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
52
被引用文献数
1

最近, ビール各社から新製品が次々と発売され, ビール愛好家にとっては商品選択が一つの楽しみになっているが, 一方では商品間の識別が困難な例にも遭遇する。今回は, このような新製品開発にも深くかかわりをもつビールの官能評価全般について専門家の立場から解説していただいた。
著者
伊豆 英恵 山田 康枝 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.664-671, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

マウスを用いた高架式十字迷路試験によって,清酒の飲用摂取による抗不安作用を検討した。1)エタノールまたは普通酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),対照と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ2.7倍と3.4倍,滞在時間が3.2倍と3.9倍に増加しており,普通酒もエタノール同様に抗不安作用があり,さらにその作用がエタノールよりも高い傾向にあった。2)普通酒または吟醸酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較して,吟醸酒でオープンアームへの進入回数が1.7倍,滞在時間が1.6倍に増加しており,普通酒よりも吟醸酒の抗不安作用が有意に高いことがわかった。3)吟醸酒に含まれるのとほぼ同程度となるように吟醸酒香気成分であるカプロン酸エチル(10mg/l)または酢酸イソアミル(2mg/l)を普通酒に添加してマウスに飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ1.5倍と1.4倍,滞在時間がいずれも1.5倍に増加しており,カプロン酸エチルと酢酸イソアミルが抗不安作用を有意に促進することが明らかになった。4)通常,清酒に含まれる濃度範囲では,カプロン酸エチル,酢酸イソアミル,イソアミルアルコールはADHによるエタノール代謝を阻害しないことがわかった。
著者
福島 男兒
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.251-257, 1997-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5

醸造原料と醤油の晶質特性について, 特に大豆中に含まれる大豆油の役割の重要性を再発見すると共に, ここ数年来消費者から丸大豆醤油と脱脂加工大豆醤油との違いはどこにあるのかとの問い合わせが多い。そこで原料の面から両醤油の晶質特性の違いについて詳しく解説いただいた。
著者
大久保 洋子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.161-166, 2017 (Released:2022-06-22)
参考文献数
9

2013年12月に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され,和食や食文化などをキーワードに日本人の食に対して人々の関心が高まっている。そして海外での日本料理レストランは特ににぎりずしが躍進していることが伝えられる昨今である。フランスでは料理に昆布を利用したり食材のグローバル化が行われている一方で日本では江戸に関心が集まり,再現料理なども盛んになっており,それらの現象の中で「煎り酒」なる複合調味料が浮上している。本講はその煎り酒について歴史的に遡って製造・利用方法等について解説いただいた。
著者
松原 英隆 今村 弥生
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.7, pp.493-501, 2011 (Released:2017-02-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

蒸留直後の芋焼酎にはガス臭成分が含まれている。製品焼酎の出荷時におけるガス臭の有無およびガス臭の強度は官能試験で評価されており,原因物質の特定には至っていなかった。したがって,機器分析によってガス臭物質を特定し,かつ,閾値濃度付近の非常に低濃度のガス臭物質を定量することは重要であると考えられた。著者らは,蒸留直後の芋焼酎には含硫化合物臭が感じられることから,ガス臭の原因物質としては硫化水素等の揮発性硫黄化合物の可能性が高いのではないかと考えた。そこで,芋焼酎の硫化水素,メチルメルカプタン,硫化ジメチルおよび二硫化ジメチルを分析するため,エタノール除去システムを組み込んだ高感度パージ&コールドトラップ-GC-MS法を開発した。本研究で開発した方法を用いてガス臭のある芋焼酎に含まれる揮発性硫黄化合物を分析したところ,硫化水素とメチルメルカプタンが硫化ジメチルや二硫化ジメチルに比較して高濃度に検出された。次に,硫化水素やメチルメルカプタンがガス臭の原因物質であることを調べるため,銅カラム処理によるこれら2成分の選択的除去を試みた。その結果,銅カラム処理によって硫化水素やメチルメルカプタンは完全に除去され,ガス臭もなくなることが分かった。ここで,メチルメルカプタンの閾値が硫化水素の閾値に比較して圧倒的に低濃度であったことから,ガス臭寄与率が最も高かったのはメチルメルカプタンであり,次が硫化水素であると推察された。
著者
中村 好志 江崎 秀男
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.16-24, 2013 (Released:2017-12-21)
参考文献数
25

発酵食品における機能性成分の研究は幅広く行われているが,発酵茶についての機能性成分の研究は,これまであまり知られていない。本解説では,お茶の発酵食品として,わが国では馴染みが少ない中国の黒茶について製法,種類,微生物,抗酸化性,機能性成分の面から研究成果をわかりやすく,興味深く紹介していただいた。また,大豆発酵食品の抗酸化能について,測定方法と機能性成分であるイソフラボンの変換の関連をわかりやすく解説していただいた。本解説の著者は,発酵による食品の機能性成分の生成には,まだまだ知られていない部分が多くあることを述べている。