著者
大竹 範子 米田 正 鈴木 廣志
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.213-218, 2015-12-01 (Released:2015-12-01)
参考文献数
11
被引用文献数
11 7

植物工場のリーフレタス生産における赤青LED交互連続照射法(SHIGYOTM法)の生育促進効果および照射時間の効果を評価した.一般的な明暗周期(明期16時間,暗期8時間)だけでなく,24時間連続照射の対照区(赤青LED同時照射区,蛍光灯照射区)と比較しても,同じ栽培期間あたりのSHIGYO法区の可食部生体重が有意に大となり,生育が促進されることがわかった.さらにSHIGYO法では収穫サイズになるまでの生育日数短縮効果により年間栽培回数を増大できる.LEDと蛍光灯の消費電力の比較から,植物栽培においてLEDを使用すると1株あたりの消費電力量が低いことがわかった.これらの結果は,今後より効率的な植物工場運営に貢献できるものと期待される.
著者
マンギタ ワンナ ピンカウ プラパパン カチョンパドングキッテイ ヨンサク 大沢 良 久島 繁
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.89-95, 2007-06-01
参考文献数
30

ソバ植物の種内雑種植物体の試験管内での交雑育種を検討した.圃場での良好な組み合わせであるキタワセソバと福井在来ソバを用い,試験管内で誘導したキタワセソバ( 母方,秋型) の花芽に,ポット栽培福井在来ソバ( 父方,夏型) の花粉を試験管内人工授粉させ,受粉花芽・胚珠を培養して試験管内再生植物の育成を試みた.培養体をココナッツミルクを含む培地で培養することにより,飛躍的に試験管内第2 世代植物の再生率が高まり,連続的な試験管内世代交代が可能となった.<BR>得られた再生植物体はザイモグラム,RAPD,数種の形態および農業形質から雑種と判断された.<BR>バッククロスを3 回繰り返し,母方形質を理論的に94% 持つキタワセソバ個体を育成した.初回の交雑と3 回のバッククロスを終了するまでに掛かった期間は240 日であった.試験管内での第2 世代植物体形成期間(1 世代期間に相当) は55 ~ 60 日で,試験管内世代交代期間は圃場のそれより速いと考えられた.試験管内再生植物の大量迅速育苗による系統確立は可能と考えられた.
著者
尾島 由紘 岩本 嗣 西岡 求 紀ノ岡 正博 金谷 忠 浅田 雅宣 田谷 正仁
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.176-183, 2008-09-01
参考文献数
21

植物不定胚の同調化は,その後の植物体への安定な再生を実現する上で重要である.本研究においては,アスパラガス(A. officinalis L.) &lsquo;ウェルカム&rsquo; から誘導された不定胚の同調化手法の確立ならびに長期継代培養中における不定胚の形態および遺伝的安定性の評価を行った.不定胚の誘導については,ECの初期PCVに依存して,得られる不定胚のPCVが変化することがわかった.ECの初期PCVが1.0&times;10<sup>-2</sup>m<I>l</I>/100 m<I>l</I>-mediumのとき,誘導後42日後の不定胚PCVが43 m<I>l</I>/100 m<I>l</I>-mediumと最大に達した.このとき得られた不定胚をメッシュで分級したところ,心臓胚から魚雷胚へ移行する不定胚を多く含む画分が60.6%となり,不定胚誘導に適した条件であることがわかった.さらに,継代培養中の不定胚の投影面積ならびに円形度は,不定胚の生長過程を評価するパラメータとなりうることがわかった.誘導42日後の不定胚を用い,メッシュを組み合わせた分級収集を行ったところ,約90%の不定胚が平均投影面積1.0-4.0 mm<sup>2<sup>,円形度1.2-1.6の領域に含まれ,不定胚が同調化されていることが示された.しかし,さらに長期継代培養を続行したところ,誘導70日後において不健全な形態を示す不定胚の存在が認められた.誘導後42日後と70日後の不定胚から再生された植物体を対象にRAPD-PCR法により遺伝子解析を行ったところ,長期継代を経た一部の不定胚は遺伝子レベルで変質している可能性が示唆された.
著者
斎藤 裕太 清水 浩 中嶋 洋 宮坂 寿郎 大土井 克明
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.25-30, 2012-03-01
参考文献数
20
被引用文献数
4

植物工場での栽培に適した光質の評価を行うため, 供試植物に&lsquo;チマサンチュ&rsquo;を用いて赤色光をベースとし青色光, 緑色光を加えた数種の光質条件下で栽培を行った. 赤単色光および赤緑混合光は生体重の増加に有効であり, 赤青混合光は茎長抑制に有効であることが明らかになった. 本研究の供試植物では青色光による草姿改善の必要性は無く, 節電の観点からも赤単色光のみで十分栽培可能であることが明らかになった.
著者
大石 直記
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.125-132, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
13
被引用文献数
6 4

トマトの温室栽培において植物群落の葉面積指数(LAI)を非破壊的に評価するため,散乱光センサを開発した.本センサは,直達光を防ぐ黒色遮光枠(100 mm × 100 mm × 100 mm)の内部にシリコンフォトダイオードを取り付けただけの構造である.本センサはその開口部を北方向に向けて植物群落内(PL)および群落外(PU)に設置し,光量測定を行った.本センサによる温室内の光量(PU)は,温室内の骨材や保温資材のような遮光物の影響を受けずに温室外日射量と同様なパターンで変化した.トマトの3段摘心栽培において散乱光センサによって求めたRLI(%;PL/PU × 100)は,日中の時間帯では一定値を示した.トマトの栽培条件(季節,N供給量)に関わらず,トマト定植後のRLIはLAIの増加とともに減少し,平均RLIの自然対数値(ln(Avg. RLI))とLAIとの間に直線的な負の相関関係がみられた.以上から,散乱光センサを用いることによって,トマトの温室栽培におけるLAIの非破壊評価が可能と思われた.
著者
久枝 和昇 高山 弘太郎 仁科 弘重 東 幸太 有馬 誠一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19-26, 2007 (Released:2008-04-02)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

We have been conducting research on the improvement of productivity in large-scale greenhouse tomato production. One of the factors that largely influence the tomato productivity is the rate of CO2 fixation by photosynthesis. The amount of CO2 fixed by the whole plant canopy varies considerably and is known to depend on canopy structure.To date, few studies have analyzed photosynthesis in plant canopies within the context of improving productivity for large-scale tomato production. Consequently, obtaining data and developing analytical methods that are relevant to production is important.The present study investigated the rate of photosynthesis within a plant canopy and the vertical distribution of the amount of CO2 fixed by plants with the aim of increasing CO2 fixation and yield. This was done by analyzing the photosynthetic rate in individual leaves, examining plant canopy structure and measuring light intensity within the plant canopy.It was found that the leaves located in the upper parts of canopies were exposed to higher light intensities, experiencing light saturation and had higher rates of photosynthesis at the point of light saturation than leaves in the middle and lower parts of the plant. It was assumed that this was due to the occurrence of senescence and the development of shade-leaf characteristics in the leaves of the lower parts of the plant. The results implied that removal of the leaves under 150 cm or farther from the apical meristems could increase CO2 fixation and productivity of the plant canopy.The analytical methods developed in the present study can be applied to assess the efficacy of seasonal management methods such as cropping patterns, utilization of lateral buds, and leaf thinning, for maximizing yields.
著者
宮本 英揮 長 裕幸 伊藤 祐二 筑紫 二郎 江口 壽彦
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.86-91, 2009-06-01 (Released:2009-09-04)
参考文献数
14
被引用文献数
5 2

本研究では,静電容量式水分センサー・EC-5 (Decagon Devices 社)の出力電圧(V ) に及ぼす間隙水の電気伝導度(σw)の影響を実験的に評価し,任意のσw に対応し得るセンサーの校正方法を検討した.EC-5 は,従来の5 MHz 型静電容量式水分センサーに比べ,σwの影響を受けにくいセンサーである.とりわけ,θ ≤ 0.15 m3 m-3の低水分域では,σwの大小によらず,メーカーが推奨する校正式に基づき,V 値から体積含水率(θ) を決定可能である.しかし,0.15 m3 m-3を超える水分域では,同一のθを持つ土壌であっても,測定されるV 値はσwによって大きく異なるため,V 値からθを適切に評価するためには,σwに関する校正式の修正が必要であることが明らかになった.本研究では,σwの影響を考慮したセンサーの校正方法として3点校正法を提案した.同法を適用するには,σwが既知であることが前提となる.そのため,σwが大きく動的に変化する環境下では,EC-5の単独利用で高精度の水分計測を実施できないものの,σwの変化量が小さい場合に限れば,同法で算出した校正式に基づき適切に水分計測を実施可能である.飽和水分条件におけるV 値のみから,様々なσwの土壌の校正式を即座に得られる3点校正法は,θの異なる土壌に対して実施する従来の校正に比べ,はるかに簡便であると考える.本研究では,数ある土壌および静電容量式水分センサーの中の一条件における検討である.よって,今後は,他の土壌やセンサーについても3点校正法の有効性を検討するとともに,σwの動的環境下における高精度水分計測法の確立を試みる予定である.
著者
谷垣 悠介 守行 正悟
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.160-164, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
22

The synchronization of crop production with community growth leads to accurate yield prediction and ultimately helps in business management. At present, many methods are available for measuring crop growth, and them are actually used. However, many of these methods cannot measure the external environment and the internal response of a plant separately and completely. Therefore, we use the circadian clock as an indicator of growth management and propose a circadian rhythm based on the circadian clock. The circadian clock adjusts physiological events such as gene expression and/or flowering, and this adjustment facilitates enhanced crop growth. In this study, we demonstrated circadian rhythm measurement in a commercial plant factory using data from the transcriptome in lettuce leaves by employing a molecular timetable method. We collected transcriptome data every 2 h for 28 days from factory-grown lettuce and analyzed them. Based on the data analysis, we inferred that the circadian time could be estimated using the data for all the 28 days. Furthermore, we clarified that the response of a plant to exposure to different light environments could be detected by moving the plant from the nursery room to the cultivation room. Therefore, transcriptome data analysis that focuses on the circadian clock (periodmics) is expected to be greatly beneficial in managing the cultivation environment and understanding the internal state of crops.
著者
庄子 和博 後藤 英司 橋田 慎之介 後藤 文之 吉原 利一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.107-113, 2010-06-01 (Released:2010-06-01)
参考文献数
13
被引用文献数
8 17

明期の青色光強度がアントシアニン蓄積に影響するかどうかを調べたところ, 明期の青色光量を増やすとアントシアニン蓄積は促進されるが, 処理20日目までは効果が持続しなかった. 次に, LEDランプを用いて連続光条件における赤色光と青色光の割合がアントシアニン蓄積に及ぼす影響を調べた結果, アントシアニン含量は青色光の割合が高まるほど大となることが示された. そこで, アントシアニン生合成の光質応答を分子レベルで理解するために, レッドリーフレタスから単離できたアントシアニンの生合成遺伝子群について(CHS, F3H, DFR, ANS, UFGT )リアルタイムPCR法で発現解析を実施した. その結果, R100区では5遺伝子とも発現は認められなかったが, B100区とR50B50区ではCHS, F3H, DFR, ANS およびUFGT の発現が4時間までに上昇し, 48時間では低下した. F3H, DFR, ANS の発現が24時間までに上昇し, 48時間では低下したが, CHS とUFGT の発現は大きく変化しなかった. これらの結果より, レッドリーフレタスの光質に対するアントシアニンの生合成や蓄積に関する制御機構には, 赤色光と青色光の割合が密接に関係していることが明らかとなり, 特にCHS とUFGT の発現が青色光のPPFレベルに敏感に応答しているものと考えられた.
著者
平井 正良 雨木 若慶 渡邊 博之
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.160-166, 2006 (Released:2007-06-01)
参考文献数
16
被引用文献数
8 20

本実験ではLEDを唯一の光源とし,第一本葉展開後のナス,リーフレタス,ヒマワリに,青,青緑,緑,赤色の単色光を50, 100, 150μmol m-2 s-1のPPFDで照射した.単色光照射開始から,25日後にナス,リーフレタス,42日後にヒマワリの生長を調査した.主茎の伸長は,ナス,ヒマワリにおいて青色光で顕著に促進され,他の単色光ではほとんど促進されなかった.リーフレタスの主茎伸長は,赤,緑,青緑色光の順に促進されたが,青色光では著しく抑制された.また,照射した単色光により全葉長に占める葉柄長の割合は植物種ごとに変化し,単色光照射による植物の生長反応は種により大きく異なった.
著者
田茂井 政宏 石田 健太 江口 雄巳 原田 京一 雉鼻 一郎 重岡 成
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.96-103, 2017
被引用文献数
1

プラントフレックLED光源下で栽培したシロイヌナズナの生育および光合成特性は,蛍光灯照射下で栽培した植物との間に有意な差は見られなかった.プラントフレックLED光源下で栽培したタバコの生育および光合成特性は,蛍光灯照射下で栽培した植物との間に有意な差は見られなかった.プラントフレックLED光源の消費電力は蛍光灯の約60 %であった.プラントフレックLED光源は,蛍光灯に代わる省エネルギー型人工光源としての利用が可能であることが示された.
著者
野末 はつみ 島田 葵 谷口 彬雄 野末 雅之
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.81-87, 2010-06-01 (Released:2010-06-01)
参考文献数
15
被引用文献数
5 12

Light-emitting diodes (LEDs) have proven to be popular as a light source for growing plants because of their longevity and good usability. A characteristic feature of LEDs is their use of a single colored chip that can be digitally controlled in large numbers. This functional advantage of LEDs is useful in controlling the wavelength and intensity of light to suit the growth conditions of plants. Many experimental trials have used LEDs for improving the growth, quality, and storage of plants, as well as controlling their flowering. Published data indicate that some plants are highly responsive to the colour and quantity of LED light. Therefore, we constructed an LED unit with control modules that make it possible to schedule variations in light quality and quantity to maximize plant growth. We provide an outline of the components and structure of the system and describe its potential uses. The ultimate objective of this work is to develop individual schedules for the light source that are suitable for growing different vegetables. The results of growth experiments using the system indicate the potential of the digital control of LED light in improving plant productivity.
著者
福田 弘和
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.20-27, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
21
著者
大橋 兼子 敬子 小川 瑛利子 大野 英一 渡邊 博之
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.132-141, 2013-09-01
参考文献数
16
被引用文献数
4

LEDによる赤色光,青色光および赤青混合光あるいは蛍光灯による白色光(コントロール)を利用して,シソ,ルッコラおよびコリアンダーを栽培した.成育調査と精油成分含有量の測定結果から,光質のコントロールによって,生食用ハーブの機能性あるいは品質を向上させることが可能なのか検討を行った.<br>本論文で設定された環境条件下においては,シソの栽培において,早く大きく成長させるのは白色光であった.青色光には赤色光に比べてperillaldehyde含有量を向上させる作用があることが分かった.ルッコラの栽培において,早く大きく成長させるのは白色光であった.青色光には赤色光に比べて甘味成分であるanethole含有量を向上させる作用があった.このことから,青色光強度を増すと甘味が増し,青色光強度が低減すると甘味が低減する分,アーモンド風味が増す作用をもつ可能性が考えられた.コリアンダーの栽培においては,赤色光が最も大きく成長させた.さらにコリアンダーの青臭い特有の風味をあたえる (E)-2-decenalおよび(E) -2-dodecenal含有量が赤色光下で最も向上した.赤色光はコリアンダーの成育も風味も向上させる効率的な光であることが分かった.<br>以上のように,植物種ごとに生産に効果的な光条件は異なるが,光質制御によってハーブの品質を向上させることは可能と判断した.
著者
平間 淳司 松岡 大輔 松井 良雄 西堀 耕三
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.90-97, 2008-06-01 (Released:2009-09-04)
参考文献数
7
被引用文献数
3 7

本研究ではマイタケ子実体の生体電位信号をモニタリングし,信号中の概周期的な生体リズム成分より,光照射のタイミングを制御する方法を考案した.すなわち,子実体をバイオセンサとして用いることで,生体電位の自発性リズム変動に連動させた光照射を用いる新たな栽培技術を提案した.約1時間分析区間長毎の生体電位の上昇や下降の変動特性に応じて,光源装置の点灯あるいは消灯タイミングを試行的に設定した.その結果,12L12D(12時間Light,12時間Dark)の間欠照射あるいは連続照射に比べて,生体電位のリズム変動に連動させた光源制御の方が菌傘の展開が発達したり,新鮮重が増加する傾向となり,茸工場内での生産性向上が見込まれる結果を得た.このように,本研究では特定の個体をバイオセンサとして生体電位信号のリズム変動を計測して,その信号に連動させて茸工場全体の光源を制御するシステムの基盤が構築できたと考えている.なお,本研究成果の一部は文部科学省科学研究費(基盤研究(C):課題番号16560420)の助成による.
著者
谷垣 悠介 濱中 将人 西野 祐輔 大和 義幸 秋田 求
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.160-162, 2014

ガス透過性フィルムを用いて作製した容器に液体を入れ高い酸素透過性を確かめた.ガス透過性フィルム製チューブの両端を封じた簡易な培養容器を用い,静置した液体培地中でヒメツリガネゴケ(<I>Physcomitrella patens</I>)が良好に生育することを確かめた.ガス透過性フィルムの有用性が再確認された.
著者
浜本 浩 黒崎 秀仁 岩崎 泰永
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.97-101, 2015-06-01 (Released:2015-06-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

深度データを面的に収集できるKinect for Windowsを用いて,作物個体群の受光態勢を評価することを試みた.Kinectで撮影した作物の深度デ-タを表計算ソフトで解析し,作物の占有する区画における葉の写っている面積割合(Ra)を算出した.Raは上方からみた水平受光面の大小を示す.また,これを深度別に分け,作物個体群の最高点から1 cmごとに積算し(Ra’),これがRaの80 %の値になるまでの距離を葉の分布している距離で除した割合(Rp)を算出した.Rpは作物個体群への光の浸透性の強弱を示す.模型による疑似作物個体群やポット栽培のトマト個体群を用いた解析では,総葉面積(受光面積)の大きい場合にRaも大きくなり,個体群の光透過率が低い処理ほどRpが小さくなった.また,パプリカ個体群では,Raが早朝増加,薄暮時減少,Rpが早朝減少,薄暮時増加を繰り返したが,これは薄暮時には早朝と比べて葉が下垂したためと考えられた.
著者
久保 森 杉村 暢大 中桐 紘治 秋田 求 泉井 桂
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.162-170, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

ホルムアルデヒド(HCHO)は重要な産業用化学物質であるが,大気や室内の環境汚染物質でもあり,化学物質過敏症やシックハウス症候群の原因物質の一つとされている.われわれは,先に,HCHOを固定して同化する酵素群の遺伝子をメチロトローフ細菌から取得し,これを導入することによって,植物にHCHOの同化能を付与することに成功した.この方法を観葉植物などに適用して環境浄化(ファイトレメディエーション)に役立てることができるかどうかを検討するためには,遺伝子導入によって付与されたHCHOの吸収能やHCHOへの耐性について,より定量的なデータが必要とされる.本論文においては,一定の湿度を保ちながら,種々の濃度のガス状HCHOに植物を曝露するためのシステムの作成とその性能について報告した.予備試験的に,このシステムを用いてシロイヌナズナの野生型および上記の形質転換体をHCHOに曝露したときの可視的影響を観察した.両植物体ともに,1~2 ppmにて48時間の曝露では葉に可視的な傷害がみられ,14~16 ppmで4日間の曝露では成葉が全面的に褐変した.しかし曝露後通常大気中で栽培をつづけると茎頂から成長が再開され死滅はしていなかった.
著者
近藤 謙介 池田 奈美枝 樫原 千枝 北村 義信 岩崎 正美 恒川 篤史 松添 直隆
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.15-21, 2010-03-01

高温期における再生紙マルチの利用がミズナ2品種'京みぞれ'と'晩生白茎千筋京水菜'(以下, '白茎')の生育, アスコルビン酸含量および硝酸イオン濃度に及ぼす影響を検討した. 処理区は白色と黒色の再生紙マルチを用いた紙(白)区と紙(黒)区, シルバーポリマルチを用いたシルバー区, さらに裸地区を設け, 計4処理区とし, 露地および雨よけハウス内でそれぞれ栽培した. 栽培期間中で最も気温の高かった日の地温および平均最高地温が最も低かった区は露地とハウス内ともに紙(白)区だった. 再生紙マルチの昇温抑制効果はハウス内よりも露地で大きかった. 欠株率はマルチ処理区間に差は認められなかった. 生育は紙(白)区が最大で, その要因としては処理区間の土壌含水比に差がなかったことから, 再生紙マルチの地温上昇抑制効果が大きく関与したと考えられる. また, 品種間を比べると'白茎'は'京みぞれ'に比べ欠株率が低く, 生育が良好だった. アスコルビン酸含量は'白茎'の紙(白)区が裸地区に比べ有意に多かった.一方,硝酸イオン濃度は処理区間に差はなかった.以上の結果から, 高温期における再生紙マルチの利用は, ミズナの生育を促進できることが明らかとなった. また, 欠株率, 生育およびアスコルビン酸含量に品種間差が認められたことから, 高温期栽培に適したミズナの品種の選定・育成も必要と考えられた.