著者
山本 真紀子 影島 宏紀 志津田 陽平 瀬戸口 明日香 小笠原 茂里人 南 毅生 丸山 奈保 鈴木 基文 安部 茂
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.133-141, 2019 (Released:2019-09-20)
参考文献数
23

マラセチア皮膚炎は犬では一般的な皮膚疾患であるが,再発性となりやすい。従来のアゾール系抗真菌薬の内服・外用療法は,耐性菌出現や肝毒性が問題であり,シャンプー療法は簡便とは言えない。そこで今回ヒトの介護現場で用いられているスプレー剤に着目し,犬9頭のマラセチア皮膚炎が疑われる皮膚病変部に1日2回ずつ3週間用いて臨床的な効果を検討した。試験期間を通した有害事象として1頭に軽度の一過性の発赤が認められたが,すぐに自然に消退した。スプレー使用により皮疹の重症度スコアとPVASは統計学的に有意に減少した(P<0.01)。病変部のマラセチア菌数は減少する傾向があるものの統計学的な有意差は認められなかった(P<0.01)。皮疹の重症度スコアとPVASが改善した要因としてスプレー剤の主成分であるD-LYZOXの抗炎症作用が考えられたことから,主成分であるD-LYZOXの抗炎症効果についてin vitroで検討した。抗炎症効果の検討には健康犬の好中球活性の抑制作用を用いた。D-LYZOXは犬由来の好中球の粘着反応を抑制し,抗炎症作用の存在が示唆された。以上よりヒト用のD-LYZOX含有スプレーはマラセチア皮膚炎が疑われた犬の皮膚病変部に対してPVAS,皮疹の重症度スコアを改善することが示唆された。またこれら臨床的な効果と,好中球機能の抑制との関連を明らかにする必要性を考察した。
著者
Christopher P. Hudec Mona J. Boord Craig E. Griffin
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.143-147, 2019 (Released:2019-09-20)
参考文献数
7
被引用文献数
3

ハチ毒免疫療法は刺咬症による毒素に対する致死的な反応の可能性を減弱させる。ハチ毒免疫療法は安定化のためにヒトアルブミンが必要である。本症例はハチ毒免疫療法の最中にアナフィラキシーを発症したラブラドールレトリーバーの1例である。比内試験によりヒトアルブミンに対する継続的な感作が認められた。ハチ毒免疫療法がヒトアルブミンに対する感作のリスク因子であるかについて調べるため,ハチ毒免疫療法が施された4頭の犬と6頭の健常犬,6頭のアトピー犬に比内試験を行った。1頭の犬がヒトアルブミンに対して反応を示した。この犬はハチ毒免疫療法で治療されているが臨床症状は示していない。ヒトアルブミンを含むハチ毒免疫療法がこのタンパクに対する感作とアナフィラキシーを起こす可能性がある。
著者
清水 篤
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.57-61, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Mohsペーストは体表の切除不能な悪性腫瘍に対し,出血や排膿,悪臭などの症状のコントロールに用いられている。しかし,粘調度と粘着性が高く,患部への塗りにくさが指摘されており,Mohsペーストをガーゼに塗布し貼付することで患部への塗りやすさを改善したMohsガーゼ法が考案されてきた。今回我々は,自壊した犬の乳腺腫瘍に対しMohsガーゼ法を用い腫瘍の大幅な減容積を行った。本手法が動物でも塗りにくさの問題を改善するだけでなく,様々な形の腫瘍に対し応用可能であることが示唆された。
著者
松本 浩毅 田栗 利紹 手嶋 隆洋 小山 秀一
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-11, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
11

Malassezia pachydermatisとStaphylococcus intermediusに対する植物ポリフェノールの抗菌活性を調査した。ポリフェノールはエピガロカテキン,エピカテキンガレート,没食子酸エピガロカテキン,カスタラギン,カテキン,テアフラビン,テアルビジン,プロシアニジン,プロデルフィニジン,ミリシトリン,ルチンそしてレスベラトロールを用いた。これらポリフェノールの最小発育阻止濃度(MIC)は寒天平板培地法により求めた。M. pachydermatisとS. intermediusに対するMICが最も低値であったのはカスタラギン(それぞれ100 μg/mlと50 μg/ml)であった。以上の結果から,カスタラギンはM. pachydermatisとS. intermediusグループが原因となるイヌの皮膚疾患の治療薬として効果的である可能性が示された。
著者
寺本 由利子 小林 亮介 寺本 義隆 根尾 櫻子 代田 欣二
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.167-170, 2011 (Released:2011-10-19)
参考文献数
9

11ヵ月齢,避妊雌のチンチラが3度にわたる右肩部皮膚の潰瘍性病変を主訴に受診した。全身麻酔下にて病変部周囲を悌毛したところ皮膚は非常に脆弱で容易に傷つき皮膚伸展率が23.3%と高値を示した。裸出した皮下組織と体幹皮筋を切除・縫合し傷は癒合した。皮膚の病理組織検査では真皮における膠原線維の細片化や染色性の異常等が観察され,超微形態学的にも原線維の著しい配列の異常が観察された。関節を含め皮膚以外の異常は認められず臨床および病理所見より皮膚無力症と診断した。現在術後9ヵ月経過しているが皮膚病変を認めていない。
著者
籾山 翔子 布川 康司 布川 伸子 池田 博和 川西 歩 伊從 慶太
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.141-145, 2018 (Released:2018-09-29)
参考文献数
11

去勢雄,7歳齢のマルチーズが,顔や肉球に多発性の紅斑,びらん,痂皮を呈した。臨床および病理組織学的検査により,症例は慢性肝炎を伴った壊死性遊走性紅斑と診断された。肝庇護療法,アミノ酸輸液に加えて,脂肪由来幹細胞の静脈投与を行った結果,32日後に皮膚症状および低アルブミン血症は改善した。その後,アミノ酸製剤の補給を中止した後も,脂肪由来幹細胞療法を継続することで,20ヶ月間症状の再燃を認めなかったことから,脂肪由来幹細胞療法が犬の壊死性遊走性紅斑の有効な治療選択肢となる可能性が示唆された。
著者
羽田 麻梨絵 田村 恭一 織間 博光 金園 晨一 小松 隆志 石村 剛志 折戸 謙介 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.147-152, 2018 (Released:2018-09-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ゾニサミドによる薬疹と診断した犬の2例を報告する。症例1は6歳齢,雌のマルチーズで紅皮症を,症例2は10歳齢,去勢雄のミニチュアピンシャーで多形紅斑-中毒性表皮壊死症を発症した。いずれの症例も症状,血液検査と病理所見からゾニサミドによる薬疹を疑い,その休薬により皮疹が消退した。リンパ球幼若化試験を実施したが2症例とも陰性であった。今後症例を集積しゾニサミドによる薬疹の発症頻度や病理発生の検討が必要と思われた。
著者
柴田 久美子 永田 雅彦 田上 久美 石野 孝 佐藤 常男 南光 弘子
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13418017)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.10-13, 1999

6歳齢, 去勢雄, ビション・フリーゼに, 沈うつ, 嗜眠とともに, 抗生物質で改善しない発熱と排液を伴う多発性の皮膚結節が生じた。血液検査および血液化学検査で貧血, 総白血球数増加, ALPの上昇がみられた。病理組織学的検査で細菌を認めない, 激しい小葉性皮下脂肪織炎が認められた。組織の細菌培養検査および真菌培養検査は陰性であった。以上より, ヒトでこれまでウェーバー・クリスチャン病と呼ばれていた特発性結節性脂肪織炎と診断した。
著者
佐藤 良彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.217-223, 2013 (Released:2014-01-24)
参考文献数
7

特徴的な牙痕からニホンマムシ(Gloydius blomhoffii)の咬症と診断した犬4症例の治療例を報告する。症例1は受傷20時間後に受診,顔面に小さな牙痕を2カ所認め浮腫と出血が見られた。症例2は受傷15分後に受診したが臨床症状は見られず,翌日,顔面に3カ所の牙痕が現れ浮腫が観察された。症例3は受傷10時間半後に受診,左上唇に牙痕が2カ所あり顔面の浮腫を認めた。症例4は夜間受傷,左前肢に牙痕が1カ所あり腫大していた。プレドニゾロンを初診時に1.0~5.0 mg/kg投与し,その後漸減,抗生物質も投与したところ,いずれの症例も1週間前後に回復した。
著者
末次 文雄 川北 智子 松尾 咲良 代田 欣二
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.73-76, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
14

12歳,去勢雄の雑種猫が突然の腰部皮膚の裂傷を主訴に来院した。腰部の皮膚は不規則に裂開し,シート状に剥離していた。皮膚組織検査で角化亢進を伴う表皮の菲薄化と真皮の膠原線維の粗鬆化が認められ,後天性皮膚脆弱症候群と診断した。本例は下顎膿瘍のための摂食障害により衰弱死したが,剖検で胆管肝炎,膜性増殖性糸球体腎炎に加え,腸絨毛の線維症が合併症として確認された。また臨床的にも,吸収不良に配慮した消化酵素配合剤の内服で皮膚徴候の改善がみられたため,吸収不良が皮膚障害に密接に関連していたものと考えられた。
著者
福富 輝 山本 成実 近藤 広孝 渋谷 久 亘 敏広 加納 塁 鎌田 寛
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.13-16, 2018 (Released:2018-03-23)
参考文献数
12

9歳,未避妊雌の雑種犬が,3ヶ月前からの搔痒,脱毛,鱗屑,落屑,糜爛,色素沈着を主訴に来院した。皮膚病理組織検査,骨髄生検,脾臓・肝臓の針吸引細胞検査によりリンパ球の増加,末梢血の血球計算にて著しいリンパ球増多を認めた。各種検査の結果,リンパ球の腫瘍性増殖,その他疾患は確認できず,皮膚病変を伴うリンパ球増多症と診断した。抗生物質,抗真菌薬,食事療法,インターフェロン療法等には抵抗性を示したが,ステロイド療法により皮膚病変の寛解,及びリンパ球増多症の改善を得た。
著者
大池 美和子 今井 昭宏 吉池 薫 高畑 尚廉 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.189-193, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1

犬アトピー性皮膚炎2例の急性期治療にJAK 阻害薬であるオクラシチニブ(アポキル)を使用,そう痒は急速に消退したが減量が困難であった。増悪因子に対応後,組換え型ダニアレルゲンDer f 2-プルラン結合体製剤(アレルミューンHDM)を早期より併用し,アポキルを迅速に規定以下に減量することができた。以後月次アレルミューンHDM 10 μg投与により1年に渡り良好に維持されている。両剤の併用による明らかな有害事象はなく,急性期CADにおけるアポキルに併用したアレルミューンHDMの有用性が期待された。
著者
村井 妙 金地 裕美 代田 欣二
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.95-95, 2006 (Released:2006-10-11)
参考文献数
2
著者
山﨑 真大 加納 塁 原田 和記 村山 信雄 佐々木 崇 折戸 謙介 近藤 広孝 村井 妙 山岸 建太郎 西藤 公司 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.127-134, 2017 (Released:2017-09-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

犬の表在性膿皮症は,皮膚表面に常在するブドウ球菌(Staphylococcus pseudintermedius,S. schleiferiなど)が表皮や毛包に存在,あるいは侵入して発症する。近年では薬剤耐性菌が病変部から分離される症例が増加しており,治療に苦慮することも多い。そこで,日本獣医皮膚科学会では犬の表在性膿皮症の治療ガイドラインの作成を試みた。近年,海外では複数のシステマティックレビューや,ガイドラインが報告されていることから,これらを参考にしつつ日本独自のガイドラインの作成を目指したが,エビデンスとなる論文が十分でなく,現時点では困難であることが明らかになった。この中で,現時点で有効であると考えられるいくつかの知見が得られたので治療指針として提示したい。また,現時点での問題点についても述べる。
著者
石川 乃梨子 道本 武志
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.135-138, 2017 (Released:2017-09-28)
参考文献数
5

3頭のウェルシュ・コーギー・ペンブロークがトリミングサロンでシャンプーを実施後に沈うつ,食欲不振,発熱をみとめた。3頭とも体幹を中心とした皮膚に斑状紅斑・丘疹がみられ,検査所見では白血球数増加,C反応性蛋白(CRP)上昇が認められた。プレドニゾロンを用いた対症療法を行い,全身状態の改善とともに皮疹も消失した。3症例の発症までの経過や臨床症状,検査所見,同一のシャンプー剤を使用していたことからシャンプー剤による皮膚薬物有害反応が疑われた。
著者
山中 あずみ 関口 麻衣子 紺野 克彦 桃井 康行 岩崎 利郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.42-47, 2002 (Released:2007-02-15)
参考文献数
2
被引用文献数
1

犬の鼻部には様々な疾患が発症するが,それら疾患の臨床所見は類似していることが多く,臨床所見あるいは病歴からのみでは確定診断が困難な事がある。しかし,疾患により治療法,予後が大きく異なるために,正確な診断が求められる。本研究では,鼻部に発症した皮膚疾患5例について生検を行い,病理組織学的に1)好酸球性毛包炎,2)日光性皮膚炎,3)落葉状天疱瘡,4)尋常性天疱瘡,5)DLE(円板状エリテマトーデス),と診断した。