著者
加藤 剛平 倉地 洋輔
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11734, (Released:2020-08-04)
参考文献数
45

【目的】本邦における健常な地域在住前期高齢者に対する運動プログラムによる転倒予防の費用対効果を明らかにした。【方法】公的医療・介護の立場から分析した。質調整生存年数(Quality Adjusted Life Years:以下,QALY)を効果,医療費と介護費を費用に設定した。マルコフモデルを構築して,65 歳の女性と男性の各1,000 名を対象に当該プログラムを実施した条件における10 年後の増分費用対効果比(Incremental Cost-Eff ective Ratio:以下,ICER)を シミュレーション分析した。費用対効果が良好とするICER の閾値は5,000,000 円/QALY 未満とした。【結果】女性,男性集団のICER は順に1,550,900 円/QALY,2,277,086 円/QALY であった。【結論】本邦において,当該プログラムの費用対効果は良好である可能性が高いことが示唆された。
著者
藤井 廉 今井 亮太 西 祐樹 田中 慎一郎 佐藤 剛介 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11694, (Released:2020-08-06)
参考文献数
36

【目的】運動恐怖を有する腰痛有訴者における重量物持ち上げ動作時の体幹の運動障害の特徴を明らかにすることである。【方法】腰痛がある労働者(以下,腰痛群)26 名と腰痛がない労働者(以下,非腰痛群)18 名が参加した。課題は重量物持ち上げ動作を5 回行い,動作時の体幹屈曲・伸展角速度および運動時間を計測した。運動恐怖の指標であるTSK を基に,腰痛群を低恐怖群(12 名)と高恐怖群(14 名)に群分けし,3 群間における体幹角速度,運動時間の比較および痛み関連因子との関係性を分析した。【結果】高恐怖群は非腰痛群,低恐怖群と比較して,1 試行目の体幹の伸展運動に要する時間に有意な延長と,体幹伸展角速度に有意な低下を認めた。腰痛群における1 試行目の体幹伸展角速度と運動恐怖に有意な正の相関を認めた。【結論】運動恐怖を有する腰痛有訴者は,重量物を挙上する際の体幹伸展方向への運動速度が低下することが明らかとなった。
著者
村上 幸士 桜庭 景植
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.477-484, 2010-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
4

【目的】獲得に時間を要し,指導も困難なことが多い腹横筋の効果的なトレーニング方法の立案を本研究の目的とした。【方法】健常男性を対象とし,坐位にて超音波診断装置を用いて腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の筋厚をイメージング(画像化)した。測定は,腰椎の生理的前弯を一定に保持した坐位にて,両足底接地(安定・不安定),対側膝関節伸展(安定・不安定),重錘負荷(2kg)有りでの対側膝関節伸展および背臥位の6条件で行い,それぞれの条件での腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の筋厚を超音波診断装置にて測定し,この変化の相違を比較した。【結果】腹横筋の筋厚は,背臥位,両足底接地坐位と比較して,その他の4条件で有意に厚かった(p < 0.05)。一方,内腹斜筋の筋厚は,対側膝関節伸展(不安定),重錘負荷有りでの対側膝関節伸展の2条件のみ有意に厚かった(p < 0.05)。【結論】本研究では,腰椎の生理的前弯を一定に保持した坐位での対側膝関節伸展および坐面,足底面が不安定な両足底接地坐位の2条件が,腹横筋を選択的に収縮させるための効果的なトレーニング方法として示唆された。
著者
市橋 則明 吉田 正樹 篠原 英記 伊藤 浩充
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.487-490, 1992-08-01
被引用文献数
10

健常女性8名を対象に, スクワット動作時の下肢筋(内側広筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋, 腓腹筋)の筋活動を測定し, スクワットが各筋に与える影響を検討した。その結果, 30度での片脚スクワットで腓腹筋が36.0%と他の筋に比較して大きな% IEMGを示したが, 他の3筋は10〜20%とほぼ同じ値を示していた。60度での片脚スクワットでは, 4つの筋の有意な差はみられなかった。また, 最大下肢伸展動作時の% IEMGは, 内側広筋と大腿直筋が他の筋に比較し大きな値を示した。さらに, 30度における最大下肢伸展においては内側広筋が大腿直筋よりも有意に大きな値を示した。closed kineic chainでの訓練においては, 各筋の活動状態を知ることが重要である。
著者
若有 治美 才藤 栄一 保坂 隆 神内 拡行 田中 博 寺川 ゆかり
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.91-94, 1989-03-10
被引用文献数
1 2

心因性歩行障害の一症例を通して, 心因性運動障害に対するリハビリテーションアプローチと理学療法士の役割, その訓練法について検討した。心因性運動障害の患者は, 種々の心理的問題を有す為, 治療場面において問題患者として位置付けられることが多い。そこで我々は, 精神科医のコンサルテーションに基づいた, リハビリチーム全体の治療方針の統一により, 問題の理解を試みた。症例の示す様々な「背理現象」に対しては, バイオフィードバック療法・行動療法的アプローチ等を用いた。又, 家庭復帰に際しては二次的疾病利得を考慮し, 現実検討を進め, 患者は生活の自立に至った。
著者
松本 浩実 中祖 直之 松浦 晃宏 秋田 朋子 萩野 浩
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11092, (Released:2015-12-12)
参考文献数
42

【目的】ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)の重症度と転倒頻度,低骨密度およびサルコペニアとの関連性を調査すること。【方法】地域在住の高齢者217名を研究対象とした。対象者を非ロコモ群,プレロコモ群,ロコモ群の3群に群分けし,転倒頻度,低骨密度およびサルコペニアの有病率を調査した。転倒,低骨密度およびサルコペニア,それぞれの有無を従属変数,ロコモ3群を独立変数とし,年齢,性別で調整した二項ロジスティック回帰分析を行った。【結果】非ロコモ,プレロコモ,ロコモの転倒頻度はそれぞれ13.8%,14.3%,34.2%,低骨密度は32.5%,23.2%,57.9%,サルコペニアは3.3%,3.6%, 15.8%であった。二項ロジスティック回帰分析では,転倒とロコモが有意に関連し,非ロコモがロコモとなった場合の転倒リスクは約3.5倍であった。【結論】年齢,性別を問わずロコモに対する転倒予防対策が必要である。
著者
浅野 大喜 森岡 周
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.361-367, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
30

【目的】脳室周囲白質軟化症(以下,PVL)児,知的障害(以下,MR)児の行動について調査し,健常児と比較した。【方法】PVL児15名(平均月齢55.2 ヵ月;PVL 群),MR児15名(平均月齢53.3 ヵ月;MR 群),定型発達児14 名(平均月齢52.3 ヵ月;Normal 群)を対象とした。行動評価はChild Behavior Checklist(以下,CBCL)を使用し,子どもの行動を母親に評価してもらい,3 群間で比較した。また母親の養育態度についても調査し,CBCL の結果との関連を調べた。【結果】PVL 群は依存分離尺度,MR 群は引きこもり,攻撃,注意集中尺度と内向,外向尺度,総得点でNormal 群よりも有意に高い得点であった。[内向/外向]の値はPVL 群が他の2 群より有意に高い値であった。PVL 群の依存傾向は養育態度や歩行能力とは関係がなかった。【結語】PVL 児は外在化行動よりも内在化行動が高いという特徴を示した。
著者
武田 広道 山科 吉弘 田平 一行
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.20-26, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
30

【目的】円背姿勢が咳嗽力に与える影響を明らかにすること。【方法】若年男性16 名を対象とし,非円背,軽度,中等度,重度円背の4 条件で咳嗽時最大呼気流量(以下,CPF),肺機能,呼吸筋力,胸郭拡張差,最長発声持続時間(以下,MPT),呼吸抵抗(R5,Fres)を測定した。条件間の比較には一元配置分散分析および多重比較検定(Bonferroni)を行った。また円背程度による各測定項目の変化率を算出し,ピアソンの相関分析を行った。【結果】CPF,肺活量(以下,VC),胸郭拡張差(剣状突起部),MPT は非円背と比較し,中等度以上の円背で,呼吸筋力,Fres は重度円背で有意に低値を示した。また,CPF とVC,呼気筋力,胸郭拡張差(剣状突起部)との間に有意な正の相関を認めた(r=0.27,0.33,0.37,p<0.05)。【結論】円背が中等度以上になると胸郭拡張差,呼吸筋力,VC が低下し,CPF を低下させることが示唆された。
著者
荻原 啓文 浅見 正人 加茂 智彦 湯口 聡 旭 竜馬 対馬 栄輝
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.440-445, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
30

【目的】YouTube で公開された脳卒中のリハビリテーション関連の動画の質を評価することとした。【方法】2021 年1 月にYouTube を使用して,脳卒中とリハビリテーションのキーワードから動画検索を行った。Journal of the American Medical Association Score(以下,JAMAS)と日本語版DISCERN を用いて,抽出されたYouTube 動画の質を評価した。【結果】JAMAS 合計は2.5 点,引用文献や情報源に関する記載を示すAttribution は平均0.2 点と低かった。DISCERN 合計は32.8 点,治療の情報源,リスク,選択肢に関する項目の平均点は2.0 点未満であった。【結論】YouTube における脳卒中のリハビリテーション関連の動画は全体的に低品質であった。多くの動画が,情報源や治療の選択肢,リスクに関する情報を提供できていないことが明らかになった。

5 0 0 0 OA 筋を科学する

著者
市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.217-221, 2014-06-20 (Released:2017-06-27)
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 土井 剛彦 堤本 広大 堀田 亮 中窪 翔 牧野 圭太郎 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11253, (Released:2017-04-22)
参考文献数
31
被引用文献数
2

【目的】地域在住高齢者に適するようにShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)算出方法の修正を試みた。【方法】高齢者4,328 名をSPPB(0 ~12 点)で評価し,歩行速度と椅子立ち座りは対象者の測定値(四分位)を基に,立位バランスは立位保持の出来高によって配点した地域高齢者向けのSPPB community-based score(以下,SPPB-com)(0 ~10 点)を算出し,24 ヵ月の要介護発生との関連を調べた。【結果】対象者の78.7% でSPPB が,10.5% でSPPB-com が満点であった。SPPB-com が4 点以下で要支援・要介護発生率が高く(12.8%),SPPB-com,年齢,女性,MMSE が要支援・要介護発生と有意に関連していた。【結論】SPPB を再得点化したSPPB-com は地域在住高齢者の要支援・要介護リスクを把握する指標として有益となることが示唆された。
著者
山本 宏茂 市橋 則明 吉田 正樹
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.270-273, 1997-07-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的は,大腿筋膜張筋において最大の筋活動が得られる股関節の角度を探り,また,訓練で用いられる動作の筋活動を調べることである。被験者は男性6名,女性4名とした。各股関節角度における股関節外転時の最大等尺性収縮及び4つの動作(椅子からの立ち座り,フルスクワット,膝屈曲60度での片脚起立,両足および片足のブリッジ)を行なったときの整流平滑筋電図を求めた。最大等尺性収縮においては,仰臥位および側臥位において,股関節屈曲0度・45度と股関節外転0度・15度のそれぞれにおいて調べた。その結果,同じ肢位,股関節外転角度において股関節屈曲45度よりも0度の方の筋活動が有意に大きかった。一方,動作の中でもっとも大きな筋活動を示したのは,片足ブリッジ(79%)であった。
著者
吉川 昌太 木下 篤 船間 汐莉 松木 明好
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.404-412, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
34

【目的】小脳性運動失調を伴う脳卒中患者2症例に対して,体重免荷トレッドミル歩行練習(以下,BWSTT)を実施し,その効果を検討した。【方法】対象は小脳性運動失調を伴う亜急性期脳卒中患者の50 歳代の女性と60 歳代の男性とした。ABA 型のシングルケースデザインを用い,それぞれ期間を10 日間ずつ設定した。A 期には四肢と体幹の協調性練習,立位でのバランス練習や平地での歩行練習を受けた。B 期にはA 期の理学療法に加えBWSTT を実施した。評価項目は最大歩行速度,歩幅,歩行率,TUG,SARA,BBS,FACT,FAC とした。【結果】2 症例ともに最大歩行速度はA1 期と比べ,B 期において有意な向上を認めた。しかし,2 症例ともにB 期ではA1 期に比べSARA(歩行,立位,踵すね試験)やBBS の変化は乏しかった。【結論】小脳性運動失調を伴う脳卒中患者におけるBWSTT は歩行能力の向上に影響を及ぼす可能性が示された。
著者
川端 悠士 狩又 祐太
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.486-492, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】THA 例に対する漸減的な補高挿入が,PLLD 軽減に有用か否かを明らかにすることとした。【方法】対象は初回片側人工股関節全置換術を施行した6 例とした。研究デザインはAB デザインによる被検者間マルチベースラインデザインとし,独立変数を補高挿入の有無,従属変数をPLLD とした。A 期には関節可動域運動・筋力強化運動・歩行練習といった通常の理学療法を実施した。B 期にはA 期の運動療法に加え,PLLD 値と同一の厚さの補高を挿入し歩行練習を実施した。6 例を術後3~9日をA期とし術後10 ~30 日をB 期とする2 例,術後3~16日をA 期とし術後17 ~30 日をB 期とする2 例,術後3~23日をA期とし術後24 ~30 日をB 期とする2 例に無作為に割りつけた。【結果】ランダマイゼーション検定の結果,A 期に比較してB 期におけるPLLD の減少が有意に大きかった。【結論】PLLD を有するTHA 例における補高使用の有用性が示唆された。