著者
杉浦 ミドリ 松本 昭子 渡辺 一功 根来 民子 高江洲 悦子 岩瀬 勝彦
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.226-230, 1985 (Released:2011-09-13)
参考文献数
12

歳以降の予後の明らかとなった1歳未満発症の熱性けいれん33例と無熱性けいれん133例を以下の4群に分類して, 成因, 臨床像, 発作像, 脳波, 長期予後について比較検討を行った.A群, 38℃ 以上の有熱時のみのけいれん, B群, 有熱けいれんで初発したが経過中無熱けいれんに移行したもの, C群, 無熱けいれんのうち, 3歳未満で発作消失し精神運動発達正常のもの, D群, 無熱けいれんのうちC群を除いたもの.熱性けいれんの48.5%で無熱けいれんが発症した.A, D群はそれぞれ特異的な特徴を示し, B群は両群の中間的な特徴を示した.C群はA群とは明らかに異なり, D群の予後良好なものと同一の範疇に位置づけられるであろうと考えられた.
著者
奥村 彰久 早川 文雄 久野 邦義 夏目 淳 渡辺 一功
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.475-479, 1994-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8

脳室周囲白質軟化症 (PVL) 17例の出生予定日の頭部CT所見を, 正常発達を確認した児50例と比較した.脳室周囲白質の域性低吸収域は正常発達児の40%に認められ, 必ずしも病的な所見とはいえなかった.それに対し, 脳室周囲白質の孤立性低吸収域・脳室壁の不整・半卵円中心の著明な低吸収域はPVLに特徴的であった.新生児期CT所見が軽度・中等度異常の例では, 年長に達した時点のMRI所見とは55%で, 運動発達予後とは50%で, 異常の程度が一致した.CT所見が重度異常の児はMRI所見・予後とも重篤であった.重症のPVLでは半卵円中心の著明な低吸収域が特徴的で, その範囲はMRI所見・予後と関連が認められた.
著者
二瓶 健次
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.16-22, 2002-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
9

Intelligent technology (IT) 技術は, 小児神経を含む医療のあらゆる分野で今後ますます利用されていくと考えられるが, 診療録の電子化, マルチメディアの進歩はこれまでの大都市, 主治医中心の医療から地方分散, 患者中心の医療へと変化していくことが予想され, 医療側の発想の転換も迫られる.生まれてから成人に至るまでの医療データを必要とし, 数の少ない疾患を集積することが必要で, 遠隔医療, 在宅医療の必要性の高い小児神経の分野ではとくにIT化が必要であると考えられる.さらに障害児のケアや生活介護を支援するための技術, QOLの向上のためのシステムが開発され, より質の高いケアがなされることが期待される.それには工学, 医学の両方からの協力が必要である.
著者
吉田由香
雑誌
脳と発達
巻号頁・発行日
vol.33, 2001
被引用文献数
2
著者
中邑 賢龍
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.220-226, 1998-05-01
著者
太田 成男 石橋 佳朋
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.122-128, 1999-03-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
14

アポトーシスは細胞が縮小していく細胞死として発見され, それが遺伝子のプログラムによって能動的に進行する.アポトーシスは生体制御や生体防御機構として働き, 個体の維持には必須なプロセスである.アポトーシスのシグナルの伝達, 制御, 実行について関与する因子が同定され, その分子機構も詳細に論じられるようになった.アポトーシスのシグナル伝達には蛋白問の相互作用によって伝えられる機構とミトコンドリアシグナルが発せられる機構がある.Bc1-2ファミリー蛋白はアポトーシスを制御する.最終的にアポトーシスを実行するのはカスパーゼファミリーという蛋白切断酵素群であり, カスパーゼ自身も前駆体が切断され活性化される.
著者
原田 正純
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.378-387, 1974-09-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
28

1956年と1958年に水俣で生まれた精神薄弱の2例を報告した. 知能障害, 構音障害, アテトーゼ, ヒヨレア, 発作性症状, 運動拙劣などがいずれの症例にもみられる. 症例2では斜視, 流誕もみられた.これらの症例は外因性精神薄弱と診断される.患者は水俣病多発区で多発時期に生まれ, その母親は水俣湾の魚貝類を多食しており, 水俣病にみられる軽い症状を認める. 他の原因になる因子も見出し得ない. 従来の先天性水俣病に比べると神経症状や運動障害は軽いが, 精神薄弱の原因は胎内でのメチル水銀によるものと考えた. これらの2例から先天性水俣病の底辺には軽症や不全型の型をとるものの存在が考えられる. 先天性水俣病の診断について考察した.
著者
佐々木 正美
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.179-183, 2010-05-01

自閉症スペクトラム障害を含めた発達障害は, 過去の長い歳月正しく理解されずにきた. 養育, 治療, 教育等の支援や対応がきわめて不適切になされてきた結果, 当事者の情緒や行動の面に, 二次障害としての非社会的・反社会的特性を顕在化させる事例を, 数多く生み出すことになった. 本稿では現時点での臨床的・神経心理学的理解の到達点と養育・教育的支援の方策を概説して, 思春期をより平穏に乗り越え, 二次障害を回避するばかりでなく, 自立的な活動や適応にいたるための道筋の基本原理を解説する.
著者
稲葉 雄二 新美 妙美 石田 修一
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.267-272, 2010-07-01

軽度発達障害児の支援を目的として, 不適応や行動, 学習面で問題となっている児童の学校での指導・支援について教師から相談を受けるoutreach clinicを実践した. 2年間で13校を訪問し, 36事例について相談した. 医療機関をすでに受診中の児童は44%で, 28%は相談の後に受診した. 20名で広汎性発達障害が疑われた. 教師へのアンケート調査では学習面で気がかりな児童は全体の4.4%, 対人関係や行動面では2.6%であった. さらに, 教職員の研修会で軽度発達障害の理解を促し, 支援体制や連携について意見交換した. 医療と教育の双方向性の連携により, より適切な支援と二次障害の予防につながることが期待される.