著者
武井 優子 尾形 明子 小澤 美和 盛武 浩 平井 啓 真部 淳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.23-33, 2013-01-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
19

本研究の目的は、小児がん患者の病気に対するとらえ方の特徴と、それらが患者の心理社会的問題や適応とどのような関連があるのかを検討することであった。小児科外来通院中の21名の小児がん患者を対象に半構造化面接を実施し、病気に対するとらえ方と退院後の生活における困難について聴取した。また、健康関連QOL尺度(Peds-QL)を測定した。Fisherの直接確率検定の結果、退院後の生活で経験する困難が病気のとらえ方に影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、重回帰分析の結果、前向きなとらえ方がQOLに正の影響を、後ろ向きなとらえ方やあきらめの姿勢が負の影響を及ぼす様相が示唆されたが、統計的には有意ではなかった。今後は、対象者数を増やし、量的検討を実施していく必要がある。
著者
石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-84, 2005-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、不安症状を示す児童に対する認知行動療法(CBT)プログラムの開発と、不安症状を示す児童への介入報告である。CBTプログラムは全8セッションで、(1)心理的問題の教育、(2)感情の整理、(3)認知の導入、(4)(5)認知的再体制化、(6)不安階層表の作成、(7)(8)エクスポージャー、からなる。CBTプログラムの特徴として、認知の誤りを測定、改善するといった点において、アセスメントと介入方法が連動していることが挙げられる。対象者は、14歳の不安症状を抱える男児であった。CBTプログラム適応の結果、介入終結時だけでなく、1か月後、2か月後フォローアップ時においても不安症状、認知の誤りの改善がみられた。注目すべき点として、認知の誤りの改善が不安症状の改善に先行したことが挙げられる。つまり、本研究の結果から、不安症状には不安を示す児童の認知が影響していること、不安症状の改善には認知の変容が必要不可欠であることが示唆された。
著者
陳 峻雲 坂野 雄二 貝谷 久宣 野村 忍
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-13, 2002-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究は、地域の心理相談室において、広場恐怖を伴うパニック障害(PDA)に対する集団認知行動療法(CBGT)プログラムの効果を検討することを目的とした。プログラムは基礎編、準備編、実践編IとII、および2か月後のフォローアップから成り立っており、セミナー形式で行われた。対象者は東京近郊にあるW大学の心理相談室が主催したセミナーに参加した女性10名であった。プログラムの効果を検討したところ、CBGTは参加者の回避行動と主観的不安の改善、および生理的覚醒といったパニック障害の一次的症状の改善に有効であることが明らかにされた。また、それらの改善はセミナー終了後にも引き続いていたことから、本プログラムは参加者のセルフ・コントロール能力の向上にも効果的'であった。本研究の結果から、CBGTプログラムは患者の生活環境に密着した地域の心理相談室といった場におけるパニック障害の治療にも効果的であることが示唆された。
著者
若澤 友行 田村 典久 永谷 貴子 牧野 恵里 面本 麻里 寺井 アレックス大道 大月 友
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.91-103, 2011-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本研究の目的は、2名の自閉症スペクトラム障害をもつ児童・生徒を対象に、社会的スキル訓練を行い、その効果に対する社会的妥当性を検討することであった。当該児童・生徒の行動アセスメントは、訓練機関において彼らの学校における問題行動の文脈と関連した場面を設けて行った。行動アセスメントの結果に基づいて標的行動を選定した後、訓練機関にて社会的スキル訓練を実施した。社会的妥当性の評価は母親と教師が行った。社会的スキル訓練の結果、訓練機関および学校における当該児童・生徒の行動の改善が示唆された。社会的妥当性の評価では、標的行動の選定と訓練手続きに関して母親と教師は肯定的な評価を示したが、訓練効果に対しては両者で異なる結果が示された。訓練機関における訓練効果の社会的妥当性を高めるためには、評価者が当該児童・生徒の主訴に関して、どのような場面でどのような行動を問題にしているのかを詳細にアセスメントすることの重要性が示唆された。
著者
竹田 伸也 田治米 佳世 酒田 葉子 谷口 敏淳 西尾 まり子 高田 知子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.205-212, 2010-09-30 (Released:2019-04-06)

アルツハイマー病(Alzheimer'sdisease:AD)患者の主観的な記憶障害の訴えのほかに、情緒面や意欲面についても評価できる認知症情緒活動性評価尺度(EmotionandActivityScaleforDementia:EASD)を作成し、信頼性と妥当性について検討した。対象は、AD群61人と健常群62人の計123人であり、両群とも65歳以上を対象とした。因子分析の結果、感情変調、活動性減退、記憶低下の3因子計18項目が抽出された。Cronbachのα係数は尺度全体で91、感情変調で.89、活動性減退で.85、記憶低下で.86、CDRとの相関係数は.70であった。また、AD群と健常群のEASD得点の比較では、総得点および下位尺度得点とも、AD群のほうが有意に高かった。以上より、EASDは軽度AD例の情緒や意欲の問題をとらえる際に有用な尺度であり、認知機能の評価と併せて用いることで軽度ADに対する介入効果を多面的に評価することが可能になると思われる。
著者
竹田 伸也 田治米 佳世 酒田 葉子 谷口 敏淳 西尾 まり子 高田 知子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.205-212, 2010

アルツハイマー病(Alzheimer'sdisease:AD)患者の主観的な記憶障害の訴えのほかに、情緒面や意欲面についても評価できる認知症情緒活動性評価尺度(EmotionandActivityScaleforDementia:EASD)を作成し、信頼性と妥当性について検討した。対象は、AD群61人と健常群62人の計123人であり、両群とも65歳以上を対象とした。因子分析の結果、感情変調、活動性減退、記憶低下の3因子計18項目が抽出された。Cronbachのα係数は尺度全体で91、感情変調で.89、活動性減退で.85、記憶低下で.86、CDRとの相関係数は.70であった。また、AD群と健常群のEASD得点の比較では、総得点および下位尺度得点とも、AD群のほうが有意に高かった。以上より、EASDは軽度AD例の情緒や意欲の問題をとらえる際に有用な尺度であり、認知機能の評価と併せて用いることで軽度ADに対する介入効果を多面的に評価することが可能になると思われる。
著者
皿田 洋子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-9, 2004-03-31 (Released:2019-04-06)

わが国の精神科治療は、欧米に比べてはるかにおくれてはいるが、入院中心から地域へと移行しつつある。慢性精神障害者が生活の質を高め、地域の中で適応していくのに必要な生活技能を学習する有用な方法として、生活技能訓練(SST)が治療の中に組み込まれはじめて10年になる。おもに入院患者を対象として実施されているが、その中には治療動機の乏しい患者、SSTの流れについていけないスキルの低い患者、さらにはストレス耐性が非常に低く、症状の増悪をきたしやすい患者なども含まれており、一筋縄ではいかないことがよくある。本稿では、臨床上遭遇するこのような困難なケースに対して、課題設定、フィードバック、モデリング、宿題などの技法をどのように使っていけばよいか、具体的な事例をあげながら筆者の考えを述べたい。
著者
高石 昇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.47-59, 1997-03-31 (Released:2019-04-06)

この20年来,米国を中心に着実にすすみつつある心理療法統合の動きについて,行動療法の果たす役割に重点をおきながら概観した。まず,統合をすすめる要因として学派の乱立とそれぞれの治療効果の限界,医療経済からの圧迫などを指摘し,次いで最も頻繁に見られる組合せとしての行動一力動療法統合を歴史的に回顧し,1932年のフレンチ発言から70年代までの貢献を表示した後,加速度的に増加する80年代の業績をテーマ毎にまとめて紹介した。さらに,この統合成否の鍵をにぎる現実認識の相違,無意識の役割,感情転移,治療目標などの論点をあげ統合の可能性を論じた。最後に今後の課題にふれ,改めて認知行動療法の果たす役割を強調した。
著者
根建 金男 上里 一郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.101-107, 1984-03-31 (Released:2019-04-06)

The present experiment was designed to determine the effects of cognition of physiological state and actual physiological responses upon emotion, as defined in terms of relaxation. Female undergraduates participated in the experiment as Ss and were asked to decrease their heart rate under both real and false fee dback conditions. Under the false feedback condition, Ss were informed as being successful in reducing heart rate when actually vice versa, and in consequence, came to believe their performance became worse as the sessions proceeded. However, Ss under this condition as well as the real feedback condition could become emotionally stable for they were actually successful in decreasing heart rate as much as under the real feedback condition. This seems to be partly because Ss were mostly using proper strategies under either condition to decrease heart rate. When cognition of physiological state and actual physiological responses are contradictory, the latter seem to influence dominantly upon emotion.
著者
久野 能弘
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-49, 1979-01-31 (Released:2019-04-06)

In the previous volume of this journal, Mr. Sakuma and I reported a paper entitled "Motivation in operant therapy with autistic children". I completely agreed with the effectiveness of Sakuma's "Onbu-Dakko mettod", which made use of physical contact stimuli such as holding the child in the arms or carring the child on the back. But lacking the detailed quantitative analysis, the evidence for the effectiveness of his method was not convincing. In the present paper, I had two objectives : one was to reanalyze his data from quantitative point of view. The other was to make clear the difference of my standpoint from his. After the preyions article was written the difference in our approach to behavior therepy has gradually become evident. I have been keeping a narrow-band standpoint but he has changed his standpoint from the narrow-band to the broad-spectrum one. In this paper, I took a critical attitude toward Sakuma's way of using the concept of motivation in that he tended to use various motive-names in his therapy of autistic children. What seems to me the most important thing to do in behavior therapy practice is to clarify the methods to operate the drive or emotional states of the children rather than to list the names of motives.
著者
佐久間 徹 久野 能弘
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.68-74, 1978-03-30 (Released:2019-04-06)

In operant therapy with autistic children, chocolate or juice is usually used as a reinforcer. Using physical contact stimuli, such as holding the child in one's arms or carrying the child on one's back, we were able to get good results. We will discuss the strengths and weaknesses of such procedures.
著者
谷 晋二 大尾 弥生
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.171-182, 2011-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

ABA知識理解到達度テスト(TestofKnowledgeofAppliedBehaviorAnalysis;以下TK-ABA)を、行動論的知識を測るためのテストとして開発した。TK-ABAは行動の原理や強化、プロンプトなどの行動論的知識を問う41問の選択式テストである。行動論的知識の学習経験のない未学習群、学生群、専門家群に対してTK-ABAを実施した。すべての群間には有意な差がみられた(専門家群>学生群>未学習群)。行動論的知識の学習経験によって得点が増加すると考えられた。特別支援にかかわる教員と施設指導員17名に行動論的知識を学習する講義を実施し、実施前後のTK-ABAおよびKBPAC(Knowledge of Behavioral Principles as Applied to Children;以下KBPAC)の得点の変化を比較した。講義後に両テストともに得点が有意に増加した。TK-ABAの18の質問に対する解答が講義後に有意に変化し、KBPACの五つの質問に対する解答が変化した。これらの結果から、研修による行動論的知識の変化を測定するテストとしてTK-ABAはKBPACよりも敏感なテストであると考えられた。
著者
佐藤 寛 丹野 義彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.157-167, 2012-09-30 (Released:2019-04-06)
参考文献数
40
被引用文献数
4

巻頭言である本論文では、日本において実施されたうつ病の認知行動療法に関する効果研究を対象とした系統的レビューを行った。国内で実施された12本の効果研究をもとに効果サイズを算出したところ、抑うつ症状の改善については自己評価尺度(研究数12本)では中程度の効果(d=0.78)、臨床家評定(研究数4本)では大きい効果(d=1.35)を示す効果サイズが得られていた。加えて、認知行動療法は抑うつ症状を改善するだけでなく、社会的機能を高める効果もあることが示唆された。治療に伴うドロップアウトは対象者の17.8%に認められた。認知行動療法の実施者の職種は心理士(91.7%)、医師(41.7%)、看護師(33.3%)、その他の職種(16.7%)の順に多く、国内でうつ病への認知行動療法を実施するうえで心理士が重要な役割を担っていることが示された。専門的なトレーニングを受けた心理士による認知行動療法をうつ病の保険診療の対象とすることが急務である。
著者
野村 和孝 山本 哲也 林 響子 津村 秀樹 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.143-155, 2011

本研究の目的は、性加害行為経験者を対象とした認知行動療法的治療プログラムを構成する心理社会的要因が、性加害行為抑止効果に及ぼす影響についてメタ分析を用いた検討を行うことであった。性加害行為抑止を目的とした認知行動療法的治療プログラムを心理社会的要因の構成に基づき分類したところ、セルフ・マネジメントの有無に基づく分類がなされた。セルフ・マネジメントの有無が性加害行為抑止に及ぼす影響についてメタ分析を行った結果、性的嗜好、歪んだ態度、社会感情的機能、リラプス・プリベンションから構成される治療プログラムの性加害行為抑止効果が確認された一方で、ストレスマネジメントなどのセルフ・マネジメントの向上を目的としたアプローチの手続き上の工夫の必要性が示唆された。