著者
田中 乙菜 越川 房子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.15-27, 2010-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、自己陳述を用いて、中学生が学校対人場面で考えている内容を明らかにし、自己陳述と心理的ストレスとの関係性を検討することである。対人ストレス場面6場面、全60項目からなる中学生の学校対人ストレス場面における自己陳述2次調査票が作成され、914名の中学生を対象に実施された。因子分析の結果、ポジティブな自己陳述は、状況を肯定的に評価するもの、ストレス状況に対処するもの等を中心に構成されており、ネガティブな自己陳述は、自己・他者・状況を否定的に評価するもの、不安感情を表したもの、自己の責任を回避するもの等を中心に構成されていた。また、自己陳述の頻度の高低によるストレス得点の差を∫検定で検討した結果、自己陳述の頻度の高い群が低い群よりもストレス得点が有意に高く、自己陳述の内容にかかわらず、自己陳述を行う頻度の高い人がストレスも高いことが示された。
著者
本谷 亮 松岡 紘史 小林 理奈 森若 文雄 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.13-20, 2011-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、緊張型頭痛患者を対象として、痛みの臨床症状と心理的要因である痛みに対する認知的要因・感情的要因が、緊張型頭痛患者の抱える生活支障度の身体的側面、社会的側面、精神的側面をそれぞれどの程度予測しているか明らかにすることであった。成人の緊張型頭痛患者73名を対象に質問紙調査を行い、重回帰分析を用いて、緊張型頭痛の生活支障度の各側面に対する予測要因を検討した。その結果、生活支障度の中でも身体的側面に関する生活支障度に対しては痛みの臨床症状が予測しているが、社会的側面や精神的側面に関する生活支障度に対しては、痛みに対する破局的思考や逃避・回避行動といった痛みに対する認知的要因・感情的要因が強く予測していることが明らかとなった。キーワード:緊張型頭痛頭痛症状痛みに対する破局的思考逃避・回避行動生活支障度
著者
金井 嘉宏 笹川 智子 陳 峻雲 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-110, 2007-09-30
被引用文献数
1

本研究の目的は、他者のあいまいな行動に対する解釈バイアスの観点から社会不安障害と対人恐怖症を比較することであった。実験参加者を抽出するために、592名の大学生が他者からの否定的評価に対する社会的不安測定尺度(FNE)と対人恐怖症尺度(TKS)に回答することを求められた。カットオフ得点を満たした大学生40名が解釈バイアスについて調べるためのスピーチ課題を行った。FNE得点とTKS得点が高い群は14名、 FNE得点は高いがTKS得点が低い群は7名、 FNE得点は低いがTKS得点が高い群は3名、FNE得点とTKS得点が低い群は13名であった。スピーチ課題中、聞き手は予備調査によって抽出されたあいまいな行動を行った。その結果、社会不安障害傾向と対人恐怖症傾向がともに高い者は低い者に比べて、あいまいな行動を否定的に解釈していたが、社会不安障害と対人恐怖症に違いはみられなかった。
著者
佐藤 寛 高橋 史 杉山 恵一 境 泉洋 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.33-44, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、攻撃行動をパーソナリティ変数としてではなく、観察可能な行動として測定する尺度である攻撃行動尺度を作成し、信頼性と妥当性を検討することであった。まず、研究1では大学生372名を対象に調査を実施し、攻撃行動尺度の作成と内的整合性の検討を行った。その結果、「身体的・物理的攻撃」「言語的攻撃」「間接的攻撃」の3因子17項目からなる攻撃行動尺度が作成された。また、攻撃行動尺度はある程度の内的整合性があることが示された。次に、研究IIにおいて、大学生406名を対象に、攻撃行動尺度とAnger Expression Scaleを用いた調査を実施し、攻撃行動尺度の妥当性を検討した。分析の結果、攻撃行動尺度は適切な交差妥当性と構成概念妥当性を有していることが示唆された。最後に、本研究の限界と今後の課題に関する議論が述べられた。
著者
太田 千鶴子 近藤 明子 小林 重雄
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.91-104, 1979-09-30

本研究の目的は1対1の行動療法的訓練において,改善されにくいとされていた児童対児童の相互作用,遊びに必要なルールの理解を通じて集団遊びを形成することである。集団は「ことばのおくれ」,「他児と遊べない」を主訴とする児童6名で構成されている。対象児は自閉症と診断された3名である。目的を達成するために(1)つなひき,(2)電車ごっこという課題が設定された。第一期では,動作模倣,第二期では,かけっこ,つなひき,サーキット,第三期では,つなひき,電車ごっこを中心プログラムとした。1セッションは各課題とフリープレイから成っている。セッションは週1回,20〜30分で計19回行なわれた。これにより,次のような結果が得られた。1 動作模倣 3児とも達成率が増加し,特にT児は第7〜13セッションにおいて著しい伸びを示している。2 つなひき 次のようなルールの理解度を検討した。(1)合図を守る(2)後方へ引く(3)終点がわかる(4)勝ち負けがわかる(5)応援する。Y児はどのルールも理解できていない。T児は,どのルールもほぼ完全に理解可能となり,K児はルールの(1)〜(3)のみ確実に理解できた。3 電車ごっこ 3児ともお客さん,運転手,駅長などの役割を達成し積極的に参加できるようになっている。
著者
津田 耕一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.119-132, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)

行動療法は、専門的な社会福祉実践であるソーシャルワークにおいて実践価値の高いものとして受け入れられている。本稿では行動療法がソーシャルワークに導入された経緯を概観し、ソーシャルワークにおける役割を検証する。特にソーシャルワークの趨勢となっている生活モデル、エンパワメント概念、ストレングスの視点と行動療法の関係を整理する。生活モデルに基づくソーシャルワークも行動療法も人間と環境との関係を重視しており両者の接点を見出す。最後に、わが国における行動ソーシャルワークの現状、課題、展望について考察する。
著者
飯島 雄大 佐々 木淳 坂東 奈緒子 浅井 智久 毛利 伊吹 丹野 義彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-41, 2010-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究は、統合失調型を包括的に測定する質問紙であるSchizotypalPersonalityQuestionnaire(SPQ)の日本語版を作成し、統合失調型パーソナリティの多元性を検討することが目的である。大学生558人を対象に、日本語に翻訳したSPQを施行した。各因子の内的整合性(α=.63〜.86)、および再検査信頼性(r=.76〜.86)は高かった。また、既存の統合失調型人格尺度と高い相関を示したため、収束的妥当性が確認された。そして、確認的因子分析および非階層的クラスター分析(k平均法)を行った。確認的因子分析で7つの仮説モデルを比較したところ、解体3因子モデルは最も当てはまりがよかった。クラスター分析では対象を、すべての得点が高い「高得点クラスター」、「認知・知覚」「解体」因子の得点が高い「認知・知覚クラスター」、「対人」「解体」因子の得点が高い「対人クラスター」、すべての得点が低い「低得点クラスター」の4つに分類した。確認的因子分析により、SPQの3因子構造が示された。因子構造の類似が必ずしも統合失調型パーソナリティと統合失調症の連続性を示唆するものではないが、統合失調型パーソナリティの3因子構造は、統合失調症の症状を理解するのに役立っと考えられる。
著者
安西 信雄 池淵 恵美
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.11-22, 2004-03-31 (Released:2019-04-06)

わが国の精神保健分野における社会生活技能訓練(SST)の本格的な導入は、1988年の米国UCLAのLiberman来日から始まった。その後約15年の発展経過をSSTの普及状況に関する6回のアンケート調査にもとづき検討した。その結果、(1)SSTは生活行動の改善を目標にデイケアを中心に開始され、(2)診療報酬化(1994年)以後は医療機関だけでなく非医療機関においても実施施設数の増加がみられ、(3)対象の拡大(統合失調症以外の気分障害や神経症圏、さらに司法など医療以外の対象へ)と技法の多様化(基本訓練モデルに加えて各種モジュールも実施)の傾向が認められた。普及の過程で生じた誤解や批判について検討し、普及におけるSST普及協会の役割を検討した。 SSTに関連した研究報告の経年推移を検討し、研究の動向を概括した。今後のわが国の地域ケアへの転換に関連して、生活の場での行動改善、長期在院患者の退院促進等にSSTが寄与すべきことを考察した。
著者
陳 峻文 貝谷 久宣 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.57-68, 2000-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、患者がエクスポージャーを実施する際の困難点を検討した上で患者教育を行い、患者教育がエクスポージャーの実施に及ぼす影響を検討することを目的とした。予備調査によって患者がエクスポージャーを実施する際に感じる困難点を明らかにした上で、研究1では、患者教育前後の患者の自己効力感の変化を検討した。その結果、患者教育前に比べ、患者教育後には、エクスポージャーを実施できるというセルフ・エフィカシーや、自らエクスポージャーを実行する意欲が高くなることがわかった。研究2では、エクスポージャー実施に及ぼす患者教育の効果を検討した結果、患者教育あり群は患者教育なし群よりも症状をコントロールできるというセルフ・エフィカシー、エクスポージャーが実施できるというセルフ・エフィカシーが有意に高く、エクスポージャー後の状態不安とSDSの得点が低下することがわかった。最後に、エクスポージャー実施に先立つ患者教育の意義が議論された。
著者
宮崎 哲治 中川 彰子 青木 省三
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.57-66, 2014-01-31

妊娠中の強迫性障害に対し、薬物療法は行わず曝露反応妨害法を中心とする行動療法のみで奏効した患者を経験したので、若干の考察を加え報告する。患者は28歳女性。結婚後、トイレを汚したのではないか、自分が歩いた所は汚れてしまったのではないかという強迫観念が生じ、夫や実母に何度も汚くないとの保証を要求するようになった。妊娠後さらに強迫症状は悪化した。妊娠28週でA精神科診療所を初診したが、トイレに行った際には、除菌シートで足やトイレの床を拭き、トイレでの行動を克明にメモし、携帯電話のカメラで自分の行動などを撮影し確認していた。また、汚れやばい菌をまき散らしてしまうという強迫観念のため料理などの家事もできない状態であった。曝露反応妨害法を中心とする行動療法を開始したところ、強迫症状は徐々に改善していった。出産後は家事も育児も本人が行えるようになり、約半年後の受診時にも強迫症状は認めなかった。
著者
後藤 貴浩
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.147-157, 2017-05-31 (Released:2017-10-30)
参考文献数
31

学習に障害があり、日常生活での車椅子移乗に困難があった高次脳機能障害例に対して行動療法による介入を行った。症例は30歳代男性、広範な右半球脳梗塞により注意障害や半側空間無視を有していた。1カ月の訓練後、移乗における最大能力と日常能力の解離が生じ、その原因が高次脳機能障害による学習の困難さにあると考えられた。そこで行動療法を用いて移乗準備動作訓練を行うこととした。介入デザインは標的行動を四つに細分化したうえで行動間多層ベースラインデザインとした。また介入期を各標的行動に介入する四つの期間に分け、3種類の手がかり刺激を一定期間後に漸減する手法を用いた。評価は介入者から独立した職員が誤り数を指標として行った。約5週間の後に症例の移乗は自立に達した。行動療法は高次脳機能障害者のリハビリテーションにおいても有用である可能性が示され、かつ幅広く適用できる可能性がある。
著者
坂野 雄二 東條 光彦
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.73-82, 1986-09-30
被引用文献数
4

本研究の目的は,日常生活のさまざまな状況における個人の一般性セルフ・エフィカシーの強さを測定する尺度を作成し,その信頼性と妥当性について検証することである。知覚されたセルフ・エフィカシーの強さを表わしていると思われる項目の選択と,それらの因子分析の結果にもとついて,16項目から成る「一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)」が作成された。 再検査法,折半法,平行検査法等による検討の結果,GSESは内的整合性も高く,信頼性,妥当性も十分に高いことが示された。また,抑うつ状態にある患者と,中程度ないしは高程度のセルフ・エフィカシーを示す健常者との聞でGSES得点の比較を行ったところ,抑うつ状態にある者は,そうでない者に比べて得点が有意に低いという結果が示された。その結果,GSESは弁別力という点でも妥当性は高く,臨床的応用あるいは研究への応用に十分に耐えうることが示唆された。
著者
佐藤 容子
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.111-122, 2002-09-30
被引用文献数
1

本研究は、学級内で仲間達から拒否されている6歳の学習障害児の仲間関係を改善するために、コーチング法を用いた社会的スキル訓練を実施した。訓練前の教師評定と行動観察によると、対象児は仲間との間で、適切なやり取りが少なく、不適切(攻撃的および引っ込み思案的)なやり取りが多かった。訓練は、1回につき約60分間で、特別な訓練室の場面で5セッション、自由遊び場面で4セッション、合計9セッション行った。その結果、ターゲット児の不適切(攻撃的または引っ込み思案的)なやり取りは、教師評価と行動観察のいずれにおいても、訓練とともに減少した。好意的やり取りは行動観察においてのみ増加がみられた。エントリースキルについては明らかな訓練効果はみられなかった。また、本訓練によって、SCR尺度でみた自己コントロールが改善した。
著者
高山 巖 野添 新一 吉牟 田直
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.50-56, 1979-01-31

The patient was a 9-year-old boy. Besides suffering from periodic vomiting, he had cerebral palsy showing left-sided hemiparesis, pes equinovarus, slurring of speech and mental retardation. At the age of 4, his vomiting suddenly occurred when he waked from his sleep and was frightened at seeing his father, who had been away from home about 4 months, standing beside him. Since that time his periodic vomiting had persisted. Through behavioral analysis following facts were noticed, 1. His vomiting was considered to be elicited mostly by psychological strain or physical exhaustion. 2. He was brought up under the overprotection of his parents because of his physical and mental handicaps. And consequently, it seemed that his development of social adaptation was extremely disturbed. So, even the simple task in school and home life caused him easily to fall into the state of psychological tension and physical exhaustion which were eliciting stimuli of vomiting. Based on the results of these behavioral analysis, following behavioral techniques were carried out. 1. Through daily practice and encouragement to take care of himself in his home life and to make the circle of his friendship larger and larger in his school life by using operant conditioning techniques, we aimed at that he did not easily yield to psychological strain and physical exhaustion which were eliciting stimuli of vomiting. 2. We instructed the patient's parents to take neutral attitudes toward the symptoms and conplaints of the patient and how to behave toward his desirable bihaviors. Using these and other related procedures, we succeeded in the treatment of this case. And until now, he has been keeping good conditions in his health and school adaptation.
著者
大塚 明子
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.171-181, 2003-09-30

本研究は、17歳の身体醜形障害(BDD)を伴う強迫性障害(OCD)の女性患者に対して、曝露反応妨害法(E/RP)を中心とする認知行動療法(CBT)を行った結果、 CBT開始3か月間で不潔恐怖を主とする強迫観念、強迫行為やBDD症状に改善がみられた事例の報告である。治療においては、治療への動機づけや継続性を高める心理教育、治療意欲を高める課題を設定し、宿題でE/RPを繰り返し、成功体験をセルフモニタリングすることを通して、セルフコントロール力を高めることに重点が置かれた。最後に、本研究の結果をもとに、OCDと生物学的ならびに認知行動学的な共通性が指摘されているBDDに対するCBTの効果について考察した。
著者
吉田 裕彦 井上 雅彦
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.311-323, 2008-09-30

本研究は、通常学級に在籍している自閉症児におけるボードゲーム(SSTゲーム)を利用した社会的スキル訓練の効果について検討することを目的とした。通常学級での朝の自由時問における行動を般化場面として事前に測定した。訓練は、ボードゲームをクラスの仲間とともに20分の休み時間を利用して4週間に8回実施した。ゲームにおいてプレーヤーは、サイコロをふり、出た目の数だけコマを進める。チャンスカードのマスにとまると、カードに指示されたロールプレイを仲間と演じる。正しく演じられると2人ともにポイントシールを与えられる。その結果として、ターゲットにされた社会的スキルが向上し、般化場面における相互交渉が増加した。SSTゲームの効果と有効性について考察する。
著者
宮野 秀市
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.57-63, 2011-05-31

バーチャルリアリティ(VR)エクスポージャーとは、人工的に構築された仮想環境の中で、恐怖反応が低減するまで恐怖刺激を呈示するエクスポージャーであり、通常は、頭部搭載型ディスプレイにコンピュータグラフィックスで制作された恐怖刺激が呈示される。VRエクスポージャーは特定の恐怖症を中心とした不安障害の治療に有効であることが明らかにされている。しかしながら、コンピュータグラフィックスを用いたVRエクスポージャーには仮想環境の構築が技術的に困難でコストが高いという問題があった。そこで、本研究ではビデオカメラで撮影した全周囲パノラマ動画を用いて、恐怖刺激を安価で簡便に制作できるVRエクスポージャーシステムを開発した。また、高所恐怖の傾向が認められる1例にたいして8セッションのアナログ研究を実施し、全周囲パノラマ動画VRエクスポージャーが主観的な恐怖反応を惹起し、その後、恐怖反応を低減させることを示した。
著者
西村 勇人
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.45-54, 2013-01-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では、母親と分離することや担任・クラスメイトに会うことに対して不安や恐怖感を抱き、5年間母親同伴で登校をしていた小6男児に対して認知行動療法的な介入を行った。本児の行動は母親からの分離行動の形成が不十分であること、母親からの注目獲得、担任やクラスメイトへの不安の回避という要因によって影響を受けていると考えられた。そのため、母親からの分離行動のシェイピングや学校関連刺激への段階的エクスポージャーを行った。その結果、小学校在学中に単独で授業に出席できるようになり、中学進学後は学校への全面復帰が可能となった。その後も病欠以外で連続欠席することなく2年生に進級することができた。この事例を通して、不登校の治療におけるエクスポージャーの有用性やさまざまな技法を組み合わせて介入することの必要性について論じた。