著者
村山 恭朗 岡安 孝弘
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.13-22, 2014-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

ネガティブな反すうは抑うつを悪化させることが実験的、横断的、縦断的にこれまで見いだされている。先行研究において、反すうはストレッサーの生成を促し、さらにストレッサーは反すうを強めることが示唆されている。本研究では、反すうとストレッサーの関連性が及ぼす抑うつへの影響を検討するために、2回にわたる縦断的調査を行った。111名の成人対象(平均年齢44.30±11.34歳)がT1調査で反すうと抑うつを、その7カ月後に反すう、抑うつ、ストレッサーを測定した。共分散構造分析の結果、T1反すうは直接的にT2抑うつに影響を及ぼしておらず、7カ月間で経験されたストレッサーが抑うつに及ぼす反すうの影響を完全に媒介していた。加えて、T1時点での反すうと抑うつはT1-T2間のストレッサーの生成を促し、それがT2時点における反すうや抑うつを悪化させることも示された。
著者
松岡 紘史 神村 栄一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.147-157, 2005-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、ディストラクションが痛みに及ぼす効果を、注意の限界容量モデルと反応予期仮説の観点から検討することであった。実験参加者30名は、High-Distraction(HD)群、 Low-Distraction(LD)群、統制群の3群に無作為に分けられ、10℃の冷水に48秒間手を浸す課題を合計3回行った。第2、3試行で、HD群には、3秒に1題のペースで3つの1桁の数値の加算が要求される課題、 LD群には6秒に1題のペースで偶数・奇数の判断を行う課題にそれぞれ取り組むことが要求された。統制群は、課題を要求されなかった。ディストラクションが痛みの体験に及ぼす効果を検討したところ、ディストラクション課題への集中度が主観的痛みと主観的不快感に影響を与え、不快感の予期得点が主観的不快感に影響を与えていた。しかし、課題の難易度についての評価は、主観的痛み、および主観的不快感いずれに対しても影響していなかった。
著者
後藤 吉道 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-24, 2000-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
8

本研究では、集団SSTを通して学級内の仲間関係が改善されるかどうかを検討するために、小学2年生の児童を対象にして学級を単位とした3セッションからなる集団SSTが行われた。標的スキルは、適切な働きかけと応答であった。訓練は、教示、モデリング、行動リハーサル、フィードバック、強化からなるコーチング法の手続きに従って行われた。その結果、訓練群の児童は、統制群の児童よりも訓練前から訓練後にかけて、社会的スキル得点が有意に増加し、引っ込み思案得点が有意に減少した。また教師による社会的スキル評定においても、訓練群の得点が訓練後に有意に増加していることが確かめられた。さらに、好意性指名得点は、訓練群のみ訓練後に得点の増加が認められた。これらの結果から、集団SSTは、社会的スキルの獲得を促進するばかりでなく、仲間に対するポジティブな見方を高めることが明らかにされたといえよう。
著者
藤目 文子 尾形 明子 在原 理沙 宮河 真一郎 神野 和彦 小林 正夫 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.167-175, 2009-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、1型糖尿病患児を対象としたキャンプが、病気の自己管理行動に及ぼす影響を検討することであった。キャンプの前後に1型糖尿病患児28名に対して、自己管理行動に対するセルフエフィカシー、糖尿病に関する知識、ストレス反応、HbAlcを測定した。キャンプにおいて、ストレス反応が減少し、自己の症状把握に対するセルフエフィカシーの上昇が認められた。さらに自己注射や、糖分摂取、インスリン調節に対するセルフエフィカシーがストレス反応やHbAlc値を改善させる要因として示唆された。1型糖尿病患児を対象としたキャンプは、症状コントロールのための自己管理行動へのセルフエフィカシーや知識の向上に効果的であることが示唆された。
著者
渡部 匡隆
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.83-95, 2002-09-30 (Released:2019-04-06)

1名の自閉症生徒に、電車とバスを利用した移動スキルを形成した。まず、環境調査と両親および本人へのインフォームド・コンセントを行った。事前テストに続いて、現実場面において即時プロンプト条件と、遅延プロンプト条件による指導を行った。それによってほとんどの行動連鎖は獲得されたが、現実場面での指導において習得が困難であったバスへの接近と乗車行動については、パソコンを用いたシミュレーション指導を行った。その結果、現実場面において移動スキルの行動連鎖を形成することができた。一方、地域の人々と生徒とのかかわりについて継続的に観察を行った。その結果、生徒に対する地域の人々の反応の出現に、特徴的な傾向があることが示された。それらの結果について、指導方法については代表例教授法の観点から、地域の人々との相互作用については、強化随伴性の観点から考察した。
著者
岡島 義
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-11, 2014-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

薬物療法によって抑うつ症状が改善した患者の多くに、不眠が残遺することが明らかにされている。本報告では、うつ病の改善後も数種類の睡眠薬を服用しているにもかかわらず不眠症状が改善しない69歳の男性に対して、機能的アセスメントに基づく介入を実施した。機能的アセスメントによって、現在の行動は、眠れないことによる不快感を下げるための回避行動として機能しており、その回避行動は、言語行動を含むいくつかの弁別刺激によって生じていると考えられた。アセスメントに基づいて、5回の介入セッションと11回のブースターセッション(1回50分)を実施した結果、第2セッション後に入眠潜時は60分から10分に、中途覚醒時間は180分から33分に短縮し、服薬中止後に不眠重症度質問票の得点は24点(重症)から7点(寛解)に減少していた。このことから、機能的アセスメントに基づく本介入は、うつ病の残遺不眠を有する本症例に対して有効であったと考えられる。
著者
近藤 友佳 金築 智美 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.273-284, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、大学生のシャイネスに対する自己教示訓練(SIT)の有効性を確認し、教示文の組み合わせ方および訓練の回数や長さがSITの効果に及ぼす影響を検討した。シャイネスの認知・行動の両側面の得点が高かった27名を実験参加者とし、認知焦点型教示文のみを用いる(SIT-C)群、認知焦点型教示文と行動焦点型教示文の両方を用いる(SIT-CB)群、統制(NTC)群の3群に振り分けた。3週間のトリートメント期間中、SIT群は計10回のトレーニングを行った。一方、NTC群は特別な訓練は行わなかった。その結果、統制群と比較してSIT-C群とSIT-CB群は特性シャイネスが有意に改善され、その効果は約6か月後のフォローアップ時でも維持されていた。また、特にSIT-C群のほうが総合的な効果は顕著であることが示された。本研究より、SITの効果性を高める要因として、用いる教示文や訓練の回数や長さが示唆された。
著者
河崎 千枝 高島 佳奈 岩永 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.205-216, 2009-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、対人不安者の注意の方向性と不安定性について検討することを目的とした。他者存在が外的情報への注意配分に影響するため、評価者が存在するスピーチ場面とその予期場面で比較検討した。実験参加者は、対人不安高群@=13)と低群(η=11)で、FearofNegativeEvaluationScale(FNE)を用いてスクリーニングした。スピーチ中、評価者の呈示動作に対してボタン押しをさせ、スピーチ後にスピーチ中の注意の方向性と不安定性、および動作に対する印象を測定した。本研究の結果、予期場面とスピーチ場面において、対人不安高群は低群よりも内的情報に注意を向けていたが、スピーチ場面では外的情報に対しても注意を向けていた。また、スピーチ中は両群ともに注意の方向性が不安定になっていた。本研究の結果より、内的情報と外的情報に対する注意は、注意の処理資源の範囲内で切り替わっていることが考えられる。
著者
Laura B. ALLEN Jill T. EHRENREICH David H. BARLOW
出版者
Japanese Association for Behavioral and Cognitive Therapies( JABCT )
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-30, 2005-03-31 (Released:2019-04-06)

Cognitive behavioral therapies are now considered the treatment of choice for a wide variety of emotional disorders. Despite the increasing utilization of these techniques, the majority of practicing clinicians are unfamiliar with cognitive behavioral treatments. Some have concluded that complex manualized protocols have discouraged dissemination and effective training. Yet, as research on the etiology and nature of emotional disorders progresses, it is becoming clear that the various emotional disorders may actually emerge from similar latent structures or processes. This new understanding suggests the possibility of extracting a set of psychological principles that could be integrated into a single, cohesive treatment protocol and applied to any emotional disorder. Based on emerging data and theory from learning, emotional development and regulation, and cognitive science, three principles have been identified that may be fundamental to the treatment of emotional disorders. These include (a) altering antecedent cognitive reappraisals; (b) preventing emotional avoidance; and (c) modifying action tendencies. Data from the clinical application of the protocol will be presented for an adult population. In addition, the evolution and initial usage of an adaptation of the treatment of emotional disorders in adolescents will be reviewed. Although still in the early stages of development, this unified approach may represent a more efficient, and possibly more efficacious, way to ameliorate overlapping emotional disorder symptomatology (comorbidity) ; in addition to facilitating effective dissemination of empirically supported treatments to practicing clinicians.
著者
金井 嘉宏 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.117-129, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本稿の目的は、社会不安を示す者の生理的反応に着目した研究の成果について展望を行い、社会不安を示す者と示さない者における生理的反応の変化の大きさを比較した研究結果と今後の課題について考察するとともに、自らの生理的反応の変化を他者に気づかれることに恐れを抱く社会不安障害(SAD)患者への介入方法について考察することであった。展望の結果、社会不安を示す者は示さない者に比べて生理的反応の変化が大きいことを示す研究と、両者の生理的反応の変化の大きさに違いはみられないことを示す研究があり、結果は一致していなかった。一方、社会不安を示す者は示さない者に比べて生理的反応を多く経験していると報告していた。生理的反応の変化に関する結果の不一致についてストレス対処、SADのサブタイプ、認知的側面の観点から考察するとともに、生理的反応の変化を他者に気づかれることに恐れを抱くSAD患者への介入方法について論じた。
著者
金山 元春 後藤 吉道 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.83-96, 2000-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究では、小学3年生63名を対象に、孤独感低減に及ぼす学級単位の集団社会的スキル訓練(集団SST)の効果について検討した。児童らは、学級ごとに訓練群と統制群に振り分けられた。3つの標的スキル(規律性スキル、葛藤解決スキル、社会的働きかけスキル)を訓練するために、8セッションからなる学級を単位とした集団SSTが訓練群に対して行われた。研究1では、訓練の直後査定が実施された。その結果、訓練群の児童は、統制群に比べて、自己報告による社会的スキル得点に有意な増加を見せていたことがわかった。また、教師評定尺度においても、訓練群に社会的スキル得点の有意な増加と問題行動得点の有意な減少が確認された。さらに、統制群に比べて、訓練群の孤独感得点に有意な評定得点の減少が認められた。これらの結果は、集団SSTが児童の孤独感低減に寄与していたことを示唆している。さらに、研究IIにおいて検討されたフォローアップ査定の結果、これらの訓練効果が、訓練終了後6か月を経過した時点まで維持されていたことが示された。
著者
岡島 義 井上 雄一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.195-203, 2010-09-30 (Released:2019-04-06)

睡眠薬を長期服用中の1曼性不眠症患者12名に対して、認知行動療法(CBT-1)と、これに並行して睡眠薬の漸減を実施し、その不眠症状改善効果について検討した。1回50分のセッションを6〜8回実施し、治療前後および治療終了1カ月後のフォローアップ時に主観的な睡眠指標と自記式尺度に記載させた。その結果、睡眠指標では、入眠潜時、中途覚醒時間、総覚醒時間、睡眠効率の項目で改善が認められ、自記式尺度では、不眠症状測定尺度だけでなく、抑うつ症状尺度にも大きな治療効果が認められた。また、その効果は1カ月後も維持されていた。対象者全員が治療期間中に漸減を開始したが、服薬中止に至った者は4名(33%)であった。9名(75%)に臨床的な改善が認められ、その効果は終了1カ月後も維持していた。このことから、CBT-1は、睡眠薬を長期服用中の慢性不眠症患者に対しても有効と考えられた。
著者
伊藤 久志 谷 晋二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.105-115, 2011-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究は、導尿スキルの習得が困難であった特定不能の広汎性発達障害を合併する二分脊椎症の男児 に対して導尿スキル訓練を実施した事例の報告である。介入を進めるにあたって、まず課題分析を実施 し、導尿スキル訓練時には課題分析表の提示、所要時間のフィードバック、強化価の高い強化子の設定 をすることを母親に提案し、それに基づき母親が導尿スキル訓練を実施した。その結果、対象児は以下 の標的行動を習得することができた。(1)カテーテルを持って、ゼリーをつける、(2)カテーテルを チューブから抜いて、カテーテルを持つ、(3)カテーテルを尿道に入れる、(4)カテーテルを尿道の奥 まで入れる。さらに、学校では、対象児が習得した下位行動以外の部分については教師と看護師の援助 を受けることで、導尿を実行することができるようになった。考察では、「援助付き導尿の確立」と 「合併する障害の特性への配慮」という観点から検討した。
著者
深町 花子 石井 香織 荒井 弘和 岡 浩一朗
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.413-423, 2016-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
26

本研究はアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)のスポーツパフォーマンス向上への効果を検討した。対象者は21歳の大学生アーチェリー選手であり、60分の介入を13セッション実施した。パフォーマンスを測定するためにアーチェリーの得点とACT関連尺度の得点を記録した。対象者は試合中に苛立ちや震えが生じることを自身の問題として挙げた。ACTのエクササイズを実施し、ACTのプロセスの一つである「体験の回避」の問題点を理解し、「価値」に基づいて、実際に行動を生起させていくことを確認した。介入の結果、アーチェリーの得点は向上し、「体験の回避」を扱ったセッションの後に該当する尺度の得点が僅かに減少した。対象者は試合を楽しむようになり、いらだつこともなくなったと報告した。本研究の結果より、ACTが心理的柔軟性の改善によって、大学生アスリートのパフォーマンスを向上させる可能性を示唆した。
著者
野呂 文行 藤村 愛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.71-82, 2002-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
10

注意欠陥・多動性障害児童の授業準備行動の改善に関して、機能的アセスメントとそれに基づく介入方法の効果を検討した。機能的アセスメントは、教師に対するインタビューと教室内での直接観察によって収集された情報に基づいて実施された。このアセスメントから作成された介入案は、教室内で適用する前に大学相談室にて機能的分析が試みられた。アセスメントに基づいて担任教師に対して提案された介入案は、1)授業準備に関する個別指示、2)授業準備の遂行に対するトークンの提示であった。トークン表は担任教師により1週間に1回の割合で大学相談室に送付され、その結果に基づいてバックアップ強化子が対象児童に対して提示された。これらの手続きが実行されることで、対象児童の授業準備行動において改善が示された。この結果から、注意欠陥・多動性障害児童が教室内での示す行動問題に対して、機能的アセスメントの利用が有効であることが示唆された。
著者
松本 圭 塩谷 亨 伊丸岡 俊秀 沢田 晴彦 近江 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-39, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究は、注意の瞬き(AB)課題を用いて、脅威語に対する注意バイアスの時間的特性に社会不安が与える影響を検討することを目的としていた。健常な実験参加者(n=40)に、白色の中性語が高速逐次視覚呈示(RSVP)される中に出現する、2つの緑色の標的(TlとT2)の報告を求めた。このAB課題では、T2の内容(一般的・社会的)および情動価(脅威・中性)と、標的間隔を操作した。実験参加者を不安水準によって群分けし、T2に対する正答率を比較した結果、高状態・特性不安群は、通常ABがみられる標的間隔において脅威語のT2に対する正答率の上昇を示し、時間的注意バイアスを有することが示唆された。高社会不安群ではそのような傾向はみられず、むしろ低社会不安群で脅威語に対する時間的注意バイアスがみられることが示唆された。最後に、画像刺激を用いた先行研究の結果と比較しながら、本研究でみられた注意バイアスの時間的特性について議論した。
著者
足達 淑子 温泉 美雪 曳野 晃子 武田 和子 山上 敏子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.69-82, 2000-09-30 (Released:2019-04-06)

1歳6か月児健診を利用して、その母親182名に養育行動に関する質問票調査を行い、育児ストレスと養育スキルや認知との関係を検討した。その結果、大多数の母親は育児に疲れて戸惑いつつも、相談相手や支援者がいて、育児を楽しみ前向きにとらえるなど健全な養育行動をとっていることがわかった。しかし、児の困った行動への対処法やストレス対処のスキルが乏しかったり、否定的な認知を示したり、夫との交流が乏しいなどが10〜20%あり、これらは養育の高危険群であることが示唆された。抑うつ、イライラ、健康上の悩みの育児ストレス反応は、排泄やかんしゃく等、子どもの行動で養育上困っていることの数、不適応的なストレス解消法、育児についての否定的な感想などと相関していたことから、この時期に養育スキルとストレス対処に関する親訓練を行うことは育児支援として有望であると結論した。
著者
銅島 裕子 田中 輝美
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.13-22, 2013-01-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
28

気晴らしという個人の注意・関心をほかに向けることによって、抑うつ気分をコントロールする方法が研究されているが、その効果については一致した見解は得られていない。そこで本研究の目的は、うつ病と診断された精神科診療所の通院者を対象に、気晴らしを中心とした認知行動療法(CBT)と通常診療を実施することによってネガティヴな反すう思考や抑うつ気分に変化が見られるかを検証する。方法は、大うつ病性障害の患者40名を2群に無作為に割り付け、積極的な気晴らしの実行が推奨されたCBT/Distraction群(n=20)と、傾聴を主とした精神療法/Control群(n=20)の比較検討が行われた。2要因混合分散分析の結果、交互作用が有意となり、Distraction群の時差における単純主効果が有意となった。よって気晴らしを中心としたCBTによって、ネガティヴな反すう思考と、抑うつ気分が軽減したことが示された。
著者
宮田 八十八 石川 信一 佐藤 寛 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-14, 2010-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、Children'sSocialProblem-SolvingScale(C-SPSS)を開発し、学級単位で実施する社会的問題解決訓練の効果を検討することであった。研究1では、92名の児童を対象に自由記述による質問調査を行い、対人的トラブル場面を収集した。次に、小学生365名を対象とした本調査を実施した。その結果、C-SPSSは再検査法により十分な信頼性があることが示され、内容的妥当性と構成概念妥当性も確認された。研究IIでは、43名の児童が社会的問題解決訓練群に、45名の児童がウェイティングリスト統制群に設定された。訓練実施後、統制群には変化がみられなかったのに対して、訓練群では問題解決スキルが有意に上昇していた。これらの結果から、C-SPSSの実用的可能性、および社会的問題解決訓練の効果および課題が検討された。