著者
池田 光政 右内 忠昭 富澤 長次郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.238-243, 1986-10-26
被引用文献数
1

^<14>C標識したorbencarbを用い、ダイズ、コムギ、トウモロコシ及ぴメヒシバ幼苗における代謝を検討した。2.5ppm水掛液に4種楠物の根部を浸し96時間栽培した。^<14>Cは植物に徐々に吸収され、植物全体に移行した(Fig.2)。植物間で新葉に移行する^<14>Cの割合はダイズが最も高かった。植物を含水メタノールで磨砕抽出後、ジクロロメタンー水分配を行うと、ジクロロメタン層に未変化のorbencarb、 orbencarb su1foxide、 desethyl-orbencarb、 N-vinyl-orbencarb、 N-β-hydroxyethyl-orbencarb、 4-OH-orbencarb、 5-OH-orbencarb、 2-chlorobenzyl alcohol、 2-chloroben-zoic acid、 methyl 2-chlorobenzylsulfide、 methyl 2-chlorobenzylsufoxide、 methyl 2-chlorobenzylsulfone S-(2-chlorobenzyl)-N-malony-L-cysteine、 S-(2-chlorobenzyl)-N-malonyl-L-cysteine sulfoxideが、水層にS-(2-chlorobenzyl)-L-cysteineと2-chlorobenzylsulfonic acidが合成標品とのCo-TLCにより同定された(Table 1)。また水層を酵素処理すると、2-chlorobenzyl alcoholと2-chlorobenzoic acidが遊離され、これら化合物の糖抱合体の存在が認められた。orbencarbの2-chlorobenzyl部は、すべての植物でS-(2-chlorobenzyl)-L-cysteine、 S-(2-chlorobenzyl)-N-malonyl-L-cysteine及びそのsulfoxide (Fig.1)に代謝され、これら含cysteine代謝物の捕物中全放射能に対する割合はダイズ、コムギ、トウモロコシ及びメヒシバでそれぞれ19.3、 12.5、 10.1及び3.3%であった(Fig.3)。2-chlorobenzyl alcoholや2-chlorobenzoic acid等の他の主要な代謝物の割合は植物間で大きな差がなかった。4種の植物で同じ代謝物が検出されたことから、orbencarbの代謝経路は植物が異っても類似しており、S-(2-chlorobenzyl)-L-cysteine類縁体の生成が主要な代謝経路の1つとして推察された。
著者
バカー バギ ビン ダヨ マクリン ナスルルハク アムル ジャファー アブドール ムニル
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.115-124, 1999-08-06
参考文献数
13

雑草イネと栽培イネの生育相は大きく異なる。マラヤ大学先進科学研究機関において, 1993年から1994年の2年間にわたり, ポット実験を行い雑草イネ(Oryza sativa L.)3系統(V26, V27, V69)と栽培品種MR84の相対成長性と生育相を明らかにしようとした。MR84は雑草イネよりも草丈は低いが1個体当たりの分げつ数と葉数は雑草イネ2系統よりも多かった。MR84と雑草イネV69の個体あたりの分げつ数, 葉数はほぼ同じであった。葉と無効分げつの死亡率を, Mr84については移植後60日に, 雑草イネについては移植後30-50日に評価した。MR84および雑草イネの葉と分げつの生産は曲線的に変化した。個体あたりの有効乗数は時間に対して2次関数によって表せた。一方, 有効分げつ数はS字曲線, Y=e^t, ただし, t=a+bx+cx^2で表された。e^tの値は, 栽培イネおよび雑草イネ間で有意に異なっていた。乾物分配についてみると, MR84は, 雑草イネに比べ有意(P<0.01)に高い相対成長指数(K)をもち, 根に対してより多くの乾物分配をしていた。MR84と雑草イネV69はともに, 他の2つの雑草イネに比べ有意に高い再生産効率を示した。MR84の総分げつ数はV27と同様で, V26およびV69よりも低かった。MR84の子実収量は788kg/10aで, これはV26およびV27より高い傾向にあったが, V69よりも有意(p<0.01)に低かった。1穂あたりの登熟粒およびしいなの重量比は, MR84で83.4%, 雑草イネで82.4%から89.2%の範囲にあった。MR84の千粒重は雑草イネに比べ有意(p<0.01)に大きかったが, 収穫指数は雑草イネと同様であった。
著者
佐藤 節郎 舘野 宏司 小林 良次 坂本 邦昭
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.317-327, 1998-12-28
被引用文献数
4

1995年4月3日, 1996年4月28日および同年5月24日にハリビユ種子をそれぞれ, 17.8, 26.7および26.7g/aの量で播種した後, トウモロコシ(品種:Pioneer 3352)を666本/aの密度で播種した。リビングマルチとしてイタリアンライグラス(品種:タチワセ) をトウモロコシと同時に0.3および0.6kg/aの量で播種, または, アトラジン+アラクロールを10.0+10.8 a.i.g/aの量で土壌散布した。播種後5.5-11週に, トウモロコシとハリビユを定期的に刈り取り, リビングマルチ区および除草剤区の両草種の生長およびトウモロコシの窒素吸収の推移を無処理区と比較した。また, トウモロコシ収量と収穫時のハリビユの生長を同様に比較した。4月3日播種トウモロコシでは, リビングマルチは競合によりハリビユを十分に抑制したが(Fig. 1), 同時にトウモロコシとも激しく競合し, トウモロコシの生長は有意に減少し, トウモロコシの葉の窒素含有量も低下した(Fig. 2, Table 2, 3)。4月28日播種トウモロコシでは, リビングマルチは一定のハリビユ抑制効果を示し (Fig. 1), トウモロコシの生長と葉の窒素含有量にもほとんど影響を与えなかった(Fig. 2, Table 2, 3)。5月24日播種トウモロコシでは, イタリアンライグラスが出芽後の高温により十分に生長しなかったため, リビングマルチはハリビユを抑制できず(Fig. 1), また, トウモロコシの生長や窒素吸収に影響を与えることはなかった(Fig. 2, Table 2, 3)。いずれの播種日のトウモロコシも, 生育期の純同化量(NAR)は, いずれの調査日においても有意な雑草防除処理間差が認められず, イタリアンライグラスと激しく競合した4月3日播種におけるリビングマルチ区のトウモロコシにおいても, NARの明確な低下は認められなかった(Table 3)。リビングマルチ区トウモロコシの収穫時には, 4月3日播種ではハリビユが全く認められず, 4月28日播種ではハリビユが認められたものの, その密度と重量は無処理区に比べ有意に小さく, 5月24日播種ではハリビユの密度と重量は無処理区とほぼ同等であった(Fig. 4)。トウモロコシ収穫時の無処理区のハリビユの密度と重量は, 4月28日および5月24日播種において4月3日播種よりも小となった(Fig. 4)。リビングマルチ区のトウモロコシ収量は, 無処理区に比べ, 4月3日播種で34-40%, 4月28日播種で11%減少したが, 5月24日播種ではリビングマルチ区と無処理区の間に有意な差は認められなかった(Fig. 5)。アトラジン+アラクロールの土壌処理は, トウモロコシの生長, 生長期の窒素吸収および収量を低下させることなくハリビユを十分抑制できた(Fig. 1-5, Table 2, 3)。イタリアンライグラスリビングマルチは, 若干の減収を前提とすれば, 4月下旬に播種するトウモロコシにおいてハリビユの防除のために利用が可能であり, また, 有機物の連続的な投与により土壌処理剤の効果が不十分な圃場では有効な技術となりうると考えられた。
著者
渡辺 寛明 宮原 益次 芝山 秀次郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.362-371, 1991-12-26
被引用文献数
9

イヌホタルイの種子が多量に散布された水田土壌中から4年間にわたって種子を採取して、発芽試験法によって休眠の検定を行い、土壌中における種子の生存状態の推移を検討した。 1)種子の発芽は密栓水中およびペトリ皿内湛水土壌を発芽床とした場合に良好であり、湿潤濾紙上および開放水中は休眠を検定するための発芽床としては不適当であった。 2)水田土壌中から採取した種子は15℃から30℃までの恒温条件で発芽したが、20℃以下では採取時期によって発芽率および平均発芽日数が大きく異なった。10℃では全く発芽しなかった。 3)秋耕によって土壌中に埋没した自然落下種子の大部分は、翌年の3月までに休眠が覚醒したが、無秋耕で4月まで水田の土壌表面におかれた種子は休眠覚醒が遅れた。 4)代かき後の発生数は10cmの土壌層の生存種子数の約8%であり、大部分の種子は未発芽のまま湛水土壌中で二次休眠に入った。二次休眠種子も落水後、冬から春にかけて徐々に休眠が覚醒し、その後休眠の導入と覚醒を毎年季節的に繰り返した。 5)水田土壌中の生存種子数は毎年前年の種子数の約30%ずつ減少し、4年後の生存種子数は初年目の約35%であった。生存種子数の減少率と実際の発生数から、水田土壌中では20%程度の種子が毎年発芽前あるいは発芽後に土壌中で死滅しているものと考えられた。
著者
渡辺 泰 広川 文彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.20-24, 1975-02-15
被引用文献数
4

1.1970年10月に,土壌の深さ0〜15cmに4種の種子を均一に混合し,年5〜6回の攪拌区と非攪拌区を設けた。3年間にわたり,0〜5,5〜10,10〜15cmの土層に分けて種子を回収し,2,3の発芽条件を連続的に与え,混在種子の発芽反応を実験室で追求した。2地中種子は,休眠陛に関して周期性を示した。初めに埋蔵した一次休眠種子は,越冬中に覚醒し,発生最盛期まで完全に醒めており,シロザ,オオイヌタデ,ツユクサなどは7月下旬,ヒメイヌビェは8月下旬の調査で二次休眠がみられ,そして,11月下旬には再び多くの種子が覚醒していた。3。二次休眠は,種子のあった場所の最高地温によって誘導されるように推察され,0〜5cm内の種子は10〜15cm内の種子よりも早く二次休眠に入った。4.得られた結果をもとに,奉耕,秋耕および中耕の意義について論議した。おわりに,御協力戴いた北海道農試畑作部岡啓技官,池岡正昭技官に謝意を表します。
著者
根本 正之 小林 茂樹 川島 榮 金木 良三
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.198-204, 1983-10-25
被引用文献数
2

永年草地の強害草であるエゾノギシギシの生態的特性を把握するため、静岡県富士宮市の朝霧高原に位置する優占草種の異なる採草地を対象に調査した結果、以下のことが判明した。1. ラジノクローバー優占草地やオーチャードグラスが優占していてもその株化が進行している草地ではエゾノギシギシの被度が高かった。オーチャードグラスとラジノクローバーが混在するケンタッキーブルーグラス優占草地では、生育する雑草の種数は多かったが、エゾノギシギシも含めそれらの発生量は少なかった。リードカナリーグラスを5年前に追播し、それが優占している草地では、そこに生育する雑草の種数、量とも少なく、エゾノギシギシは確認できなかった。2. 5月上旬、草地内の裸地には多くのエゾノギシギシの芽ばえが発生した。大きな裸地ほど多数の芽ばえを許容できるが、裸地内の芽ばえの発生は不均質であった。3. エゾノギシギシはラジクノローバーおよびケンタッキーブルーグラス優占草地ではこれらの牧草よりも草丈が高くなるが、リードカナリーグラス優占草地ではそれによって被われた。またエゾノギシギシの主茎の直径はリードカナリーグラス<ケンタッキーブルーグラス<ラジノクローバー<エゾノギシギシ純群落の順に大きくなった。4. エゾノギシギシの出現頻度が高い草地に形成されたリードカナリーグラスのパッチの内部では、エゾノギシギシはパッチの中心部に近い個体ほど徒長し、茎は細く、一株当りの茎数は少なかった。一方葉は立ち上がり受光体勢をよくするが、リードカナリーグラスとの競合期間の最も長い中心部では枯死消滅していた。
著者
浅野 紘臣
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.13-18, 2001-03-30
被引用文献数
4

神奈川県愛川町において1994-1996年の3年間にわたってアイガモ農法田と慣行農法田における表層土壌からの雑草の発生数を調査した。発生した雑草はヒエ類, コナギ, アゼナ類, ミゾハコベ, キカシグサ, カヤツリグサ類(主としてタマガヤツリとコゴメガヤツリ), チョウジタデ, ヒメミソハギ, アブノメ, イヌホタルイ, タネツケバナ, マツバイ, オモダカ, セリの14草種であった。雑草の発生総数をみると, アイガモ農法では土壌表層0-2cm層では少なく, 慣行農法は0-2cm層で多かった。この理由として, アイガモ農法は, アイガモによる抑草期間が8月上旬(放飼日数50-70日)に及び除草剤のそれよりも2-3倍長く, アイガモ農法田はアイガモを引き上げた後に発生する雑草が少ないことによると考えられた。土壌表層2-10cm層では, 両農法間で発生総数に差がみられなかった(第2表)。アイガモ農法を連用することによりコナギ, キカシグサなどは減少したが, チョウジタデ, ヒメミソハギおよびカヤツリグサ類は減少しなかった(第2表, 第1, 2図)。1994年と1995年の調査では, 慣行農法に比べてアイガモ農法は発生総数が少なかった。アイガモ農法田は, カヤツリグサ類とアブノメが増加する一方, チョウジタデとヒメミソハギは減少しなかったため, 慣行農法田に比べて発生総数が増加した(第3図)。
著者
鈴木 光喜 須藤 孝久
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.109-113, 1975-11-25
被引用文献数
5

発生予測の基礎資料を得るため,代かき時期を想定して4月20日から8月2日まで8回にわたって12科19種の雑草種子を播種し,出芽期間と出芽率について検討した。(1)播種から出芽終までの日数は,戸外風乾貯蔵種子が最も長く,草種,播種期によっても異なったが,供試条件を通して,45〜50日以内であった。(2)出芽率は種子貯蔵条件,播種期により異なったが,その反応は草種によって特異であり,その推移から,供試雑草を7つの群に類別できた。(3)各播種期を通して出芽率の高い草種はヘラオモダカ,オモダカで,次いでタイヌビエであった。また,湛水地中に埋蔵したヘラオモダカ,タイヌビエ,コナギ,キガシグサ,アゼナの種子は,8月上旬の播種においても,かなり高い出芽率を示した。
著者
根本 正之 笹木 義雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.20-29, 1993-05-28
被引用文献数
3

光環境をめぐる作物と雑草の競合は、これまで寒冷紗による遮光実験や圃場における作物と雑草との混植実験に基づいて解析されてきた。寒冷紗の下と圃場の群落内では光の波長組成が著しく異なるが、その違いに着目して解析した研究はほとんどない。本研究では、この二つの異なる光環境下でツユクサを栽培し、その生育特性について比較検討した。光環境が常に一定な寒冷紗処理区では、ツユクサの草高は対照区より高く、最終調査時の8月1日まで伸長した。また分枝の発生が顕著であり、光強度の増大に伴い葉数が増加した。一方、ギャップサイズの減少により光環境と土壌の水分条件が継続的に変化した草地内のツユクサは、草高の伸びが7月25日前後で停止、分枝の発生は全く認められず、葉数の増加はほとんど認められなかった。また葉重比が寒冷紗処理区や対照区より明らかに小さかった。 開花開始時期は対照区が最も早く、次いで寒冷紗処理区、草地内ギャップの順であった。しかしながら粗個体再生産効率には差が認められなかった。ツユクサの生産構造は可塑性が非常に大きかった。特に草地内のギャップでは光環境の違いと水分ストレスの影響を受け、寒冷紗処理区の個体とは明らかに異なった形質を示した。 以上のようにツユクサの生育特性は寒冷紗処理区と草地内ギャップでは著しく異なることが判明した。
著者
石川 枝津子 増田 欣也 竹中 重仁 豊田 政一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.7-13, 2002-03

北海道十勝地方に導入がはかられている直播キャベツ栽培の雑草対策を確立するために,直播キャベツの栽培試験圃場において発生雑草を調査した。直播キャベツ畑では,スカシタゴボウ(Rorippa islandica(Oeder) Borb.),シロザ(Chenopodium album L.),イヌタデ(Persicaria longiseta(De Bruyn)Kitag),タニソバ(Parsicaria nepalensis(Meisn.)H.Gross)の発生量が多かった。移植栽培との比較において発生草種に違いは認められなかったが,直播は移植に比較して雑草の発生量が多かった。また,直播栽培では,作期や施肥法によってスカシタゴボウの実生の発生本数が増加した。スカシタゴボウはキャベツの生育期間中に結実し埋土種子を増加させ,さらに,その種子の一部は出芽して越冬型となった。移植に比較して初期生育が劣る直播キャベツ作では土壌処理剤の使用が必要であるが,キャベツに使用可能な土壌処理剤(トリフルラリン)の効果はスカシタゴボウには劣った。直播キャベツ畑の雑草管理にはスカシタゴボウの対策が必要であることが明らかになった。
著者
本江 昭夫
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.8-13, 1988-05-26
被引用文献数
1

異なる生育段階で刈取った時の生長と種子生産におよぼす影響について、エゾノギシギシ(R. obtusifolius L.)とナガバギシギシ(R. crispus L.)で比較検討した。実験は1984年から1986年の間、帯広市において行った。1984年6月14日に両種の種子を播種し、2年目と3年目に時期を変えて刈取った。 1)ナガバギシギシと比べて、エゾノギシギシの方が多くの花茎を生産したが、花茎は低かった。すべての刈取り処理区を平均すると、両種ともほぼ同様の種子を生産した(Table 1)。 2) 2年目と3年目の刈取り前の生育では、ナガバギシギシの方がエゾノギシギシより約1週間早く発芽可能な種子を生産した。5℃以上の積算温度に換算すると、エゾノギシギシの方がナガバギシギシより10-12%高い温度を必要とした(Fig.1,2)。3)種子の豊熟初めの7月上旬に地上部を刈取ると、両種の発芽可能な種子生産は明らかに低下した(Fig.2)。 4)抽苔期から開花期にかけて刈取ると、両種とも再生時に8000粒以上の発芽可能な種子を生産した。一方、種子の豊熟期以降に刈取ると、再生時の発芽可能な種子生産量はナガバギシギシよりエゾノギシギシの方が明らかに高かった(Fig.3)。 5)土壌中の0-20cmの層において、両種の根の分布はほぼ同様であった。一方、20-50cmの層においては、ナガバギシギシよりエゾノギシギシの方が明らかに多くの根の乾物重を分布させていた(Fig.4)。
著者
芝山 秀次郎 小川 明子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.207-213, 2000-10-30

佐賀県北部の台地畑作で不斉一発生するナズナの種子の形態や土壌からの発生と環境要因について調査した。結実個体から採取したナズナの1果実内の種子粒数は, 種子の成熟あるいは採取時期により異なったが, 果実の着生位置間で差異は見られなかった。また1果実の左右の莢間についても, 種子粒数の差異は見られなかった。種子の大きさは, 異なる採取時期の種子ともに花茎の下部に形成された果実のものほど大であった。室内におけるナズナの発芽実験では, 採取直後の休眠状態の種子を戸外畑土中に1〜3ヵ月間貯蔵することで休眠が覚醒され, 低温湿潤土中に貯蔵した種子よりも高い発芽率が見られた。しかし種子の採取時期によって, 休眠覚醒の時期が異なった。温度条件については25℃(昼温)-10℃(夜温)が最も高い発芽率となった。屋外におけるナズナの発生実験では, 低温貯蔵した種子は種子採取時期間で出芽様相に差異は見られなかった。採取直後の種子は採取時期間で出芽様相が異なり, それらは降水量の多い時期に出芽率は高くなる傾向が見られたが, 気温の暑い時期あるいは寒い時期の発生は見られなかった。さらにナズナを播種後に人為的な土壌攪乱処理をすると, その後の出芽率はやや高くなった。
著者
春原 由香里 臼井 健二 松本 宏 小林 勝一郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-103, 1995-08-31
被引用文献数
3

著者らはすでに, クロメプロップ自身はオーキシン活性を示さず, 植物体内でその加水分解物であるDMPAに分解された後に初めてオーキシン結合蛋白質に認識され, オーキシン活性を示している可能性が高いことを報告した。本論文では, クロメプロップの更は詳しい作用機構を調べることを目的とし, ダイコン幼植物を材料としてクロメプロップの茎葉処理後に生成されるエチレンが形態変化に関与しているかどうかの検討を行った。(1) クロメプロップ, DMPA処理後に現れる葉のカーリングや葉の葉柄間角度の増大はエチレン生成阻害剤(AOA)を前処理することにより軽減された(Fig. 1, Table 1)。 (2) クロメプロップ, DMPA処理後の上記の作用は, エチレン作用阻害剤(NBD)を後処理することにより軽減された(Fig. 2)。(3) エチレン生成量は, クロメプロップの場合, 茎葉処理12時間後までは殆ど生成されず対照区と同程度であったが, 24時間後からはエチレン量の増加が見られた。DMPAの場合は茎葉処理3時間後から徐々に増加し始め, 12時間後から生成速度が増加した(Fig. 3)。(4) エチレン生成促進剤(ETH)処理により, 著しく第1葉の伸長が阻害された(Fig. 4)。(5) クロメプロップ, DMPA処理により, ACC合成酵素が誘導され, AOAの前処理によりその誘導が抑制されることが確認された(Fig. 6)。(6) クロメプロップ, DMPA処理では, ACCからエチレンへの反応を触媒する酵素(ACC 酸化酵素)の誘導は起こらなかった(Table 2)。以上の結果より, クロメプロップは植物体内でDMPAへと変化し, DMPAがACC合成酵素を誘導することによってエチレン生成量を増加させ, そこで生成されたエチレンが, ダイコンの形態的変化を引き起こしているものと推察された。
著者
松尾 喜義 片岡 孝義
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.122-128, 1983-08-05
被引用文献数
3 1

The effect of variations in the light and temperature on the germination of Leptochloa chinensis Nees seeds stored under different conditions was investigated. 1. The dormancy of seeds stored under air-dried conditions was readily broken when seeds placed on a moist filter paper were subjected to a regime of 12 hours light at 40 ℃ and 30 ℃ and 12 hours dark at 40℃ and 15℃, respectively. 2. Light played a major role in the breaking of dormancy. The effect of light on seeds stored under air-dried conditions was more conspicuous 6〜12 hours after water absorption than at the onset. 3. The degree of breaking of dormancy varied with the conditions of storage, and it was higher in the following order, moist conditions at 5℃ < air-dried conditions at 5℃ < air-dried condidtions at room temperature < upland field conditions. However the breaking of dormancy under these conditions of storage did not result in seed germination when seeds were continuously exposed to darkness at 30℃.
著者
浅井 元朗 伊藤 操子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.194-202, 1995-10-31
被引用文献数
1

値被を利用した害車制御は樹園地など粗放的な植生管理が求められる場面で有用であり, シロクローバ(Trifolium repens L.)はその有望な材料と考えられる。本研究はクローバ定着後の刈取体系がクローバの生育と植生動態に及ぼす影響を調査し, 望ましい刈取体系について検討した。実験は大阪府高槻市で行い, シロクローバ2品種(コモン型: グラスランドフィア, ラジノ型: カリフォルニアラジノ)を1991年秋期に播種した。その後2年間, 春期(4月中旬または5月初旬), 6月, 8月, 10月の4時期の組合わせによる16種の刈取体系(Table 1)を実施し, クローバと雑草の植生調査を継続した。1年目(1992年)の刈取はクローバ生育に与える影響が少なく, 次の刈取までにクローバは再生した。しかし2年目 0993年)の刈取によってクローバ被度ならびにその植生は大きく変化した。6月, 10月の刈取は影響が大きく, 春期, 8月の刈取は影響が少なかった(Table 2)。特に1993年6月の刈取後に大型のイネ科夏雑草(アキノエノコログサ, メヒシバなど)が繁茂し, クローバ被度は著しく減少した(Fig.1, Fig.3)。6月無刈取区では刈取区に比べて夏期のクローバ被度の低下は小さく, 冬期の被度は刈取区より高かった(Fig.1, Fig. 3)。夏期に雑草を除去した場合もクローバ被度の低下は小さかった(Fig. 2)。しかし, 刈取の有無にかかわらず, クローバの生育は前年より衰退した。クローバ品種間ではラジノ型がコモン型に比べて高い被度を維持し(Fig. 1), その雑草抑制効果も優れていた(Fig. 3)。刈取ならびにその後のクローバ被度の低下により生じた裸地には雑草が侵入した。6月の刈取後に夏雑草の発生が増加し, 8, 10月の刈取後に冬雑草の発生が増加した(Table 3)。冬雑草がクローバに与える影響は少なかったが, イネ科夏雑草の庇陰によってクローバは著しく衰退した。多年生のアレチギシギシ, ネズミムギは刈取にかかわらず増加した。以上の結果から, 本地方ではラジノ型がその雑草制圧力, 被覆の持続性において被覆資材として適すること, その優占植生を維持するための管理法としてはスプリングフラッシュ期以外の刈取を避けるべきであることが示唆された。
著者
臼井 健二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-23, 2003-05-31

近年,雑草防除・管理への除草剤の使用は,効率性と省力化をもたらし作物の安定生産に寄与してきている。戦後間もなく導入された2,4-D以来,対象とする作物に安全で雑草を有効に防除する除草剤が多く用いられてきている。この作物-雑草間の除草剤の選択作用性は,高活性,低毒性,非残留性,環境負荷が少ないことなどと共に除草剤に求められる大きな特性の1つとなっている。選択性の主な要因として,土壌・生態的要因および植物の生理生化学的要因があるが,後者の主なものは除草剤の植物体内への吸収,作用部位への移行,作用点の除草剤感受性およびその間の除草剤の代謝があげられている^<10)>。植物体内に吸収された除草剤は様々な反応・代謝を受ける。反応は化学的にも進行するが,多くの場合酵素により触媒される^<21,22,25)>。一般に,脂溶性化合物は,主としてエステラーゼなどによる加水分解,チトクロームP-450などによる酸化,あるいは還元などの反応を受けて極性基が導入され,その極性基を介してグルコースなどの生体成分と抱合される。一方,親電子化合物はグルタチオン転移酵素(GST)により直接グルタチオン(あるいはホモグルタチオン)抱合される。更に抱合化合物は液胞に運搬されたり,細胞壁に取込まれたりし,いわゆる隔離される。一連のこれらの反応は解毒(不活性化)反応であるが,加水分解・酸化等により活性化される場合もある。これらの除草剤解毒代謝酵素は,本来,体内に取り入れた様々な化学物質を生体成分として合成・代謝し利用する一方,侵入した異物。毒物を代謝・解毒し防御するために発達してきたと言われるが,それらが除草剤にも反応していると考えられる。除草剤の代謝は,除草活性に関係するばかりでなく,代謝物を含めた残留性,安全性およびその試験においても重要である。代謝物の同定,経時的および定量的分析に基づく代謝経路の推定により,それらの代謝に関与する酵素も推定される。それ故,植物体内での除草剤の代謝活性の測定には,代謝物を分析する他,酵素活性の測定も有効である。除草剤の選択性が除草剤の種類と植物の解毒代謝活性に依存する場合,除草剤の主要代謝に関与する酵素活性の測定によりその程度を推測できるであろう。本研究では,植物(作物と雑草)における水田用の酸アミド(α-クロロアセトアミド)系除草剤のグルタチオン抱合に関与するGSTおよびスルホニルウレア系除草剤の酸化代謝(O-脱メチル反応)に大きく関与しているP-450を中心に数種除草剤の解毒代謝酵素活性の測定およびアイソザイムの分離等を通じて,選択性および薬害軽減作用への関わり,植物の外界の異物に対する防御の機能・役割を追究した。
著者
岩瀬 徹
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.202-205, 2004-09-30

「自然に根ざした生物教育」を実践するには,身近なフィールドを活用し,普遍的な観察方法を開発する必要がある。学校においては校庭は足元のフィールドであり,そこの主役は雑草である。雑草の種や生育には共通性が高く,教材としての効果が期待できる。かつては,専ら除去の対象であった雑草に対して教材としての市民権を与えようとした。長年の経験はいくつか発表してきたが,1987年に野外観察ハンドブック「校庭の雑草」を作成し,校庭をフィールドとする観察法の普及と定着を図った。また,授業展開の事例として,形やくらしから雑草の名前に近づく方法,校庭の雑草の分布を調べ環境との関係を考える方法,雑草群落の測定を通じて遷移を理解する方法などの概略を紹介した。さらに,近年の理科教育や生涯教育の一面と雑草との関わりなどに触れた。
著者
大隈 光善 福島 裕助 田中 浩平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.109-113, 1994-08-05
被引用文献数
6

スクミリンゴガイは、水稲の移植直後の苗やレンコン等の水生作物を食害する有害小動物として知られている。ここでは貝による除草効果と水稲の移植苗に対する被害防止法等を検討し、生物的防除用素材としての可能性を明らかにした。1.貝は水田雑草全般をよく摂食し、1日当たりの摂食量は殻高3cmの貝で生草重約3gであった。2.貝が摂食できる雑草の大きさとしては、タイヌビエ3〜4葉期(草丈15cm程度)以下までであった。3.田植15日後(タイヌビエ3葉期頃)まで落水ないし浅水管理とし、貝の活動を抑えることにより、苗の被害を軽減できた。
著者
佐藤 姚子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.213-219, 1992-10-31

畑地用除草剤、トリフルラリン(ジニトロアニリン系)の土壌細菌による分解について調べ,以下の結果を得た。1)トリフルラリン粒剤を処理した畑地圃場の土壌から,4種類の土壌細菌を分離し,これらの細菌のトリフルラリンに対する分解を調査した。その結果,T-a菌に若干の,T-b菌に顕著な分解能が認められた。無機塩の液体培地中における,この2菌の細菌によるトリフルラリンの分解を28℃の恒温槽で弱振とう培養を行って経時的に調査した(Table1)。経過日数毎にn-ヘキサンで抽出後,トリフルラリンの残存量をGCで測定した。その結果,28日後に最大の分解率,T-a菌で約20%,T-b菌で約95%を示した。2)T-b菌添加区のGC測定で,クロマトグラム上にはトリフルラリンのほか,3種の主要分解代謝物と考えられる,新しいピークがみられた(Fig.1)。それらは,トリフルラリンのRT(保持時間)が1.9分のとき、それぞれ2.5分,2.8分そして3.4分であった。それらをRT順に,代謝物1, 2, 3とし,これらの生成もトリフルラリンの検量線を用いて計算し,その経時変化をトリフルラリンの減衰とともに図示した(Fig.2)。3)上記の主要分解代謝物3種のGCおよびGC-MS測定結果は,先にジニトロアニリン系除草剤ペンディメタリンを分解する細菌(P-1, P-3, P-3菌)を用いて,トリフルラリンの分解について調査し,既に明らかにした,トリフルラリンの主要分解代謝物3種のGCおよびGC-MS測定結果と一致した。すなわち,代謝物1は,α,α,α-trifluoro-N^4,N^4^-dipropyltoluene-3,4,5-triamine,代謝物2は,α,α,α-trifluoro-5-nitor-N^4, N^4-dipropyltoluene-3,4-diamine, そして代謝物3は,2-ethyl-7-nitro-1-propyl-5-(trifluoromethyl)-benzimidazoleであった。4)GC-MS測定では,上記主要代謝物のほか,3種の新たな微量分解代謝物(4,5,6)が得られた。それらのマススペクトル,分子量,文献などから推定された構造式をFig.3に示した。代謝物4(M=263)は,α, α, α-trifluoro-5-nitro-N^4-propyltoluene-3, 4-diamineで代謝物2の脱プロピル化物であろうと推定した。代謝物5(M=269)は,3, 5-dinitro-4-(propylamino)-benzoic acid, 代謝物6(M=271)は7-amino-2-ethyl-1-propyl-5-(trifluoromethyl)benzimidazoleと推定した。5)T-a菌,T-b菌の主要な細菌学的調査を行い(Table2),それらの結果から,T-a菌はAlcaligenes属の,T-b菌はMoraxella属の細菌と推定した。