著者
徐 錫元
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.84-87, 1999-04-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1
著者
露崎 浩 稲垣 栄洋
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, 2008-12-24
参考文献数
2
著者
中山 祐一郎 梅本 信也 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.97-106, 1997-08-30
被引用文献数
2

オオバコ種内2型の生活史特性とその成立過程を検討するために, 京都市北東部の8集団を供試して栽培実験と発芽試験を行い, さらに, 自生地での季節消長を調査した。1) minima 型は普通型よりも全乾物重が小さく, 早く出穂し, 繁殖分配率が大きかった(Fig. 1, 2およびTable 2)。また, 年間の種子生産数は, 栽培1年目では2型間に差異はなかったが, 栽培2年目では普通型がminima型を大きく上回った(Table 2)。2) 普通型では, 明条件下で20℃から30℃までのいずれの温度区でも高い種子発芽率が得られた。一方, minima型では25℃で種子発芽率が最大となり, 20℃では発芽速度が顕著に遅かった(Fig. 3)。3) 普通型が生育する畦畔や農道では, 植生が密で, 成熟個体の死亡することが少なく, 競争が激しかった。一方, minima型が生育する神社の境内では, ストレスが大きく, 乾燥した夏の掃き掃除や不定期な除草, 改修工事などの攪乱が予測不能な死亡要因として作用していた(Fig. 4)。また, 出芽の時期は2型間で異なった(Fig. 4)。以上のことから, オオバコ種内2型の生活史特性は, ストレスや攪乱, 競争の質や程度が異なるそれぞれの自生地の環境に適応して成立したものと推定された。
著者
芝山 秀次郎 江口 末馬 宮原 益次
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.112-115, 1976-10-25

福岡・佐賀両県にわたる筑後川下流域水田地帯の1,682 カ所の地点において,クリーク内に生育する水生雑草の種類および種数の調査を行った。クリークに見いだされた雑草は合計34種であり,それらの内,現地で雑草害が問題となっているのは,主としてホテイアオイ,キシュウスズメノヒエ,キシュウスズメノヒエ亜種およびオオフサモの4種であった。また,各調査地点に見いだされる雑草種数は比較的少なく,平均1.9種であった。
著者
李 海航 浦島 三真子 天野 みどり ラシデ ラブンミ 西村 弘行 長谷川 宏司 水谷 純也
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.p146-152, 1992-07

ヒエの旺盛は繁殖力と成長は,農業生産に多大の影響を与え,そのために現在では世界の十大強害草にランクされるに至っている。本研究ではこの植物の一種であるイヌビエの植物間相互作用に関係するアレロパシーを調べた。StevensとTangの培養液循環装置を用いて温室内でのバイオアッセイを行った結果,植物培養液中にイヌビエの根から排出された物質がレタスおよびマングビーンの幼植物の成長に対して強い阻害活性を示した(Fig.2)。また,培養液から抽出した物質はレタスの種子発芽と幼植物の成長に対して強い抑制を示した(Fig.3とTable1)。HPLCおよび^1H-NMRを用いて分析を行った結果,培養液からp-hydroxybenzaldehyde, p-hydroxybenzoic acid, 3,4,-dihydroxybenzoic acid, vanillic acidおよび一種の未同定の成長抑制物質を単離した(Fig.4)。これらの物質の中でp-hydroxybenzaldehydeとp-hydroxybenzoic acidは培養液中に量的に多く,イヌビエの植物対内にもp-hydroxybenzaldehydeの含量が高いことから,この二つの物質はイヌビエの根から排出される主要なアレロケミカルズと思われる。
著者
汪 光煕 草薙 得一 伊藤 一幸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.247-254, 1996-10-25
参考文献数
13
被引用文献数
16

ミズアオイとコナギの種子の休眠, 発芽, 出芽に及ぼす環境要因の影響を検討し, 次のことが明らかになった。1) ミズアオイとコナギの種子の休眠はともに採種後戸外水槽中に貯蔵した種子が最も早く覚醒し, 採種後60日前後で高い発芽率を示した。また, ミズアオイでは戸外畑土表層, 戸外畑土中および5℃畑土中に貯蔵したものも高い発芽率を示し, コナギよりも低温条件による休眠覚醒効果が大きかった。2) ミズアオイの休眠覚醒種子は15℃から40℃までの温度条件下で発芽が認められたが, コナギは15℃では全く発芽しなかった。ミズアオイは20℃, 25℃, 30℃の温度で100%の発芽率を示し, コナギは30℃と35℃で100%となった。ミズアオイはコナギよりも低温条件下で発芽が可能であり, その発芽適温の幅はコナギよりも広いことが認められた。3) 播種から出芽始めまでの日数を調査した結果, ミズアオイとコナギはともに3月16日から7月19日までの間に播種した場合には播種時期が遅くなるにともない, 出芽始めまでの日数が短かったが, 8月14日の播種からは播種時期が遅くなるにともない, 出芽始めまでの日数が増加し, 播種から出芽始めまでに要する日数は積算温度に強く規制されていた。4) 両草種ともに暗条件下での発芽率は明条件よりも低く, その差異は温度が低いほど大きかった。5) 水深と発芽との関係についてはミズアオイとコナギはともに湛水深が5cmと3cmの場合に発芽率が高く, 水深0cmより水位が低くなるにともない, 発芽率も低くなった。とくにコナギは水深0cm以下の水深ではほとんど発芽せず, 地表面から-5cmの水位では発芽率は0%であった。6) 出芽に及ぼす覆土深の影響についてはミズアオイとコナギはともに覆土が厚くなるにつれて, 出芽率が低下したが, 覆土深が1.5cmまではコナギの方が出芽率が高かった。出芽の限界覆土深はミズアオイでは3.0cm, コナギでは2.0cmであったが, この限界覆土深では両草種ともに出芽率は数パーセント程度であった。7) 種子が発芽能力を有するまでの開花後日数はミズアオイの種子では少なくとも23日間を要し, 27日以上経過すれば, 75%以上, 33日以上経過したものは100%の発芽能力があった。コナギはミズアオイよりも少し遅く, 発芽能力を有し始めたのは開花後27日であった。その後, 急速に発芽率の向上が認められた。
著者
スワナメク アンポーン スワンケットニコム ランシット
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.346-352, 1990-12-25

Artemisia vulgarisの防除において2,4-D (ジメチルアミン塩) とピクロラムの相乗効果を調べた。比較的低温 (試験期間中平均18℃) のタイ北部高地における圃場試験と,高温 (同平均31℃) のバンコックにおける温室試験を行った。両試験において2,4-Dおよびピクロラムの混合施用はそれぞれ単剤の施用に比較して大きな殺草効果を現わした (第1および2表)。また温室条件でピクロラムと2,4-Dを別々に1〜12日までの間隔で連続施用した場合も,相乗効果を現わすことが認められた (第3表)。温室条件でピクロラムと硫安1%との混合施用にも相乗効果が認められた (第4表)。^<14>C-ピクロラムを用いた温室試験で,2,4-Dはピクロラムの植物による吸収や体内移行に対して一定の効果を与えなかったが,硫安はピクロラムの吸収を促進した (第5〜7表)。植物体内に取り込まれたピクロラムは大部分代謝されずにそのままの形で留まっており,2,4-D,硫安ともにピクロラムの代謝を促進するというおとはなかった。従って硫安とピクロラムとの混合による相乗効果には,硫安によるピクロラムの吸収増加が大きく貢献したと考えられる。他方,2,4-Dとピクロラムとの相乗効果については,2,4-Dによる吸収促進効果が認められなかったことから,もっと別な要因,たとえば作用点所上の検討などが必要であると考えられる。
著者
嶺田 拓也 日鷹 一雅 榎本 敬 沖 陽子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.88-96, 1997-08-30
被引用文献数
12

レンゲ冬作による草生マルチと不耕起を基軸としたLISA水稲直播栽培試験を実施している水田2筆において, レンゲ群落, 発生雑草, および水稲収量の推移を3年間にわたり調査した。またレンゲ草生マルチの夏生雑草に対する抑草効果を評価するためにマルチ除去実験を行った。本栽培試験の初年度はレンゲはよく繁茂し冬生雑草の発生も少なかった。湛水後は, 前年の慣行栽培時に多数発生したコナギが消滅したほか, 他の草種の発生も少なく, また水稲収量も470kg/10a以上を得た。しかし2年目以降, レンゲ群落の衰退に伴い雑草の発生数は著しく増加し, 水稲収量も減少した。しかしレンゲ草生マルチをレンゲ開花期の5月上旬に除去すると, 湛水後に一年生のカヤツリグサ科を主とした水田一年生の雑草密度が顕著に増加したことから, レンゲマルチによる抑草効果が推察された。
著者
神宮字 寛 露崎 浩
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.55-62, 2008-06-30

ガムシ科の甲虫コガムシHydrophilus affinis Sharpは,卵のうを形成する際に生の雑草の葉を利用する。近年,コガムシの個体数の減少が各地で報告され,絶滅危惧種に指定した県が複数ある。筆者らは,コガムシの個体数の減少には,卵のうを形成するために必要な水田内および畦畔雑草の減少が関与していると考えた。そこで,本種の保全を図るためにコガムシの産卵と雑草の関係を調査した。コガムシは主に畦畔の雑草の葉身を卵のう形成に用いた。平均卵のう数は,水田内区の0.5個/m^2に比べて畦畔隣接区で9.3個/m^2と有意に多かった。畦畔隣接区で確認された草種の18科40種のうち,11科16種が卵のう形成に利用された。Jacobsの選択指数から,生の選択指数を示す種(ツユクサ,クサヨシなど),畦畔辺によって正あるいは負の選択指数を示す種(ヤナギタデ,イヌタデなど),および負の選択指数を示す種(スズメノテッポウなど)に分類できた。卵のう形成に用いられた葉身の76%は,畦畔水際から30cmの範囲内に存在し,葉身の切除位置は水面下1cm〜水面であった。葉身の大きさは,長さ23mm〜34mm,幅9〜20mmの範囲に分布した。卵のう内の平均卵数は69〜81卵数を示し,草種ごとに大きな差は認められなかった。以上の結果を基に,卵のう形成に用いる草種の選択性および利用様式について考察するとともに,保全生物学的な観点から畦畔雑草の管理を考えた。
著者
植村 修二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.36-45, 2012 (Released:2012-08-25)
参考文献数
38
被引用文献数
1

筆者が「帰化植物メーリングリスト」へ投稿した情報などをもとに,帰化植物の同定,侵入·定着の近年の特徴,定着後の分散についてまとめた。輸入物資を扱う貿易港やそれらが運ばれる工場などは,第二次大戦後非意図的に帰化植物が繰り返し集中して侵入したため「帰化センター」と呼ばれた。現在,「帰化センター」として機能する場所は激減したが,輸入緑化種子や園芸用土の夾雑種子,観賞用植物の逸出やマニアによる移植など侵入経路は多岐にわたり,帰化植物の侵入が広範囲にわたっている。定着後の分散事例としては,花が美しいため意識的に除草を免れて道路沿いに伝搬したナガミヒナゲシ,都市部や市街地の舗道に適応した路面間隙雑草や大規模開発に伴う造成地に広がる先駆植物となる帰化植物などが挙げられる。問題となる帰化植物の侵入,分散および繁茂に対しては,刈り取りを行うことで抑制することが有効な手段になりうる。
著者
佐藤 節郎 舘野 宏司 小林 良次
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.243-248, 1995-02-10
被引用文献数
3

播種日の違いがイチビの開花と種子生産に及ぼす影響を調査するため,1993年に,熊本県西合志町の九州農業試験場の圃場において試験を行った。試験区は,播種直前に化成肥料でN,P_2O_5,K_2Oをそれぞれ1kg/a施肥し,試験区内に畦を長さ50cm, 畦間50cmで3本設け,4月21日,5月19日,6月21日,7月13日,8月23日,9月16日10月19日および11月23日に,イチビ種子を10cm間隔で播種深度1cmで10粒ずつ播種した。種子は,4月播種区から10月播種区までが出芽し,4月から8月播種区は播種2日または3日後には速やかに出芽した。これらのイチビ実生を播種4週後に15個体/区,さらに播種8週後に9個体/区の密度に間引きし,この15または9個体の開花と種子生産を調査し,播種月ごとに比較した。1)供試個体は,4月播種区から8月播種区までが開花し,播種から開花までに要した日数は,4月播種区で88.0日で最大となった。以後,播種期を遅らせるのに伴い減少し,7月播種区が44.6日で最小となったが,8月播種区ではやや増加した。また,開花開始時の草丈および葉齢は,4月播種区が最大であり,播種区を遅らせるのに伴い減少し,8月播種区で最小となった。このように,イチビの開花は強い短日性を示した。2)供試個体は,4月播種区から7月播種区までが種子を生産した。播種から種子生産開始までに要した日数は,4月播種区が97.0日で最大となり,播種日を遅らせるのに伴い減少し,7月播種区が63.4日で最小となった。種子生産量は,4月播種区が2,214個/個体で,他区に比較して著しく大となり,7月播種区が424個/個体で最小となった。種子100粒重は866mgから993mgの範囲となり,4月および7月播種区では,5月および6月播種区より大であった。3)これらの結果から,九州では,春から初夏にかけて出芽したイチビは,開花の短日性により種子を効率的に生産することが明らかになった。
著者
浅井 元朗 伊藤 操子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.20-28, 1995-05-31
参考文献数
19
被引用文献数
2

樹園池など粗放的な植生管理が求められる場面では, 植被を利用した害草制御は検討に値する方法であり, シロクローバ(trifolium repens L.)はその有望な材料と考えられる。本研究ではその播種法と初期の刈取が, クローバの定着ならびに植被の雑草制御効果に及ぼす影響を調査した。シロクローバ2品種(コモン型:グラスランドフィア, ラジノ型:カリフォルニアラジノ)を用い, 2段階の播種量0.5kg/10a, 2.0Kg/10a)および2時期の播種時期(1991年9月18日, 同10月14日)について比較した。実験は大阪府高槻市の休耕地で2年間実施し, 実験期間を通じて植生調査および4, 6, 8, 10月の刈取処理を行った。実験圃場の植生は, Th, D_4, R_5型が優占し, 熟畑的な型であった(Table 1)。いずれの処理区でもクローバは良好に発芽, 定着し, その被度は播種翌春には80%を越えた(Fig.1)。1993年以降はラジノの被度がコモンよりも高くなった(Fig. 1)。植被のすみやかな確立には早期播種(9月)が有効であり, 密播も効果があった (Fig. 2)。晩期, 粗播(10月, 0.5Kg/10a)ではクローバによる地表面の被覆が最も遅れた(Fig. 2)。このような播種法による差は6月にはほぼ消失した。草高はラジノの方がコモンより高く推移した(Fig. 3)。晩期, 粗播区において顕著であった被覆の遅れは一年生冬雑草, 特にナズナ(Capsella bursa-pastoris (L.) Medik.)や, 風散布型のキク科雑草, 特にオオアレチノギク(Erigeron sumatrensis Retz.)の侵入, 発生を許した(Fig.4およびTable 2)。一年生冬雑草はクローバの優占度にほとんど影響を及ぼさなかった。しかし, オオアレチノギクは無刈取の場合, 夏期に草高が約2mに達し, 群落下層のクローバを庇陰し, 見苦しい景観を形成した(Fig.5)。オオアレチノギクは4月の刈取後は再生したが, 6月の刈取によって枯死した(Fig.5)。すなわち, 播種後1年目にクローバの優占群落を形成するためには, 6月の刈取1回で十分効果的であることが明らかとなった。早期のクローバ植被によってもギシギシ属(Rumex spp.)やネズミムギ(Lolium multiflorum Lam.)の発生, 生育は抑制されなかった(Fig. 4)。本調査で得られた結果は樹園地以外の非農耕地においても利用可能なものと考える。
著者
根本 正之 長崎 祐二 池田 正治
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.159-166, 1992-07-31 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13

近年, 沖繩本島や八重山群島においてオガサワラスズメノヒエが優占する荒廃草地が増加してきた。オガサワラスズメノヒエは, 周年に亘って成長する, 生育型が叢生-ほふく型のイネ科多年生雑草で, 家畜に対しても有害である。したがってその防除法の確立が望まれるが, オガサワラスズメノヒエの生理・生態や防除に関する研究は殆どないので, オガサワラスズメノヒエが発生したいくつかの人工草地で生態学的調査を行った。オガサワラスズメノヒエは草地内で純群落を形成するまでには至らないが, 採草地周辺部あるいは刈り取り作業機の横すべりや, 牧草の取り残し等によって生じた裸地にいったん侵入すると, その形態的可塑性を有効に発揮し, 確実に空間を占有した。一度草地内に侵入したオガサワラスズメノヒエの防除は極めてむずかしいが, オガサワラスズメノヒエより草丈が高く, かつ, ほふく型で地表面を被覆する性質をそなえたジャイヤントスターグラスの牧草としての導入はオガサワラスズメノヒエ群落の抑制に有効であるらしいことがわかった。
著者
酒井 博 佐藤 徳雄 奥田 重俊 秋山 侃
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.101-107, 1976-10-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
11

沖繩における放牧用人工草地の雑草調査を行ない, 雑草の種類, 群落区分, その動態について, 次のような結果をえた。1) 雑草の種類は主に熱帯, 亜熱帯に分布するものが多く, 温帯に属する内地の種類と異なるが, 草種全体の生活型組成では大きな差異は認められない。2) 沖繩本島安田の草地は, スダジイ林を伐採して造成したもので, キク科の一年生雑草が多い。立地条件や放牧強度の差異によりワタナ-チチコグサ群落, バヒアグラス群落, ツルメヒシバ群落, イヌタデ群落, コバナビメハギ-ヒメジソ群落, リュウキュウイチゴ群落が成立し, 群落間に遷移がみられる。3) 石垣島, 与那国島では, 半自然草地を含んで群落を区分した。海岸風衝地域では半自然草地のコウライシバ-ソナレムグラ群集がみられる。隆起珊瑚礁を母材とする石灰質土壌上の草地はチガヤ草原から造成されたものが多く, チガヤ-スズメノコビエ群集が広くみられる。第3紀層砂岩に由来する酸性土壌上では, 前歴が耕作地の草地にノジアオイ-オガサワラスズメノヒエ群落が, 前歴がススキ草原の草地にカラスキバサンキライ-ススキ群落がみられる。4) 種の結びつきをもとに, 前記の群落間の類似関係を明らかにし, 人工草地における土壌条件や家畜の放牧圧などに対応した雑草群落の動態について考察を行なった。
著者
根本 正之 大塚 俊之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.26-34, 1998-05-06
参考文献数
16
被引用文献数
5

水田畦畔を含む農耕地周辺に自生する小型植物のムラサキサギゴケ, オオジシバリ及びヤブヘビイゴを植栽した試験区はおいて, これらの小型植物が8月上旬から10月上旬にかけて発生した雑草に及ぼす影響について検討した。1) 供試植物ぱいずれも多年生のほふく-偽ロゼット型の生育型を示すが, その葉群構造は異なった。オオジシバリの草高が最も高く, 他2種はほぼ同様の草高で推移した(Fig. 1, Table 1)。いずれも 4月中旬からほふく茎の伸長が旺盛となった。ほふく茎の伸長速度はヤブヘビイチゴが最大であった(Fig. 2)。ムラサキサギゴケは地表面を密に被覆し, その地上部現存量は最大であった(Table 1)。2) 供試植物のない対照区と比べて, 供試植物を植え付けた処理区ではいずれも発生した雑草の地上部乾重が有意に少なく, 供試小型植物はよる発生雑草の生育抑制効果が認められた(Fig. 3)。供試植物のほふく茎が一様に処理区内を覆った7月23日時点の, 処理区全体に占める緑葉部分の割合(%)と, 最終除草(8月9日)後に発生した雑草の地上部乾重との間にぱ負の相関が認められた(Fig. 4)。3) 試験圃場内に発生した雑草は39種でそのうち約80%は一年生雑草であった。すべての区において, 発生雑草中メヒシバの現存量が圧倒的に多かった(Table. 2, Fig. 5)。処理区ごとに求めた発生雑草の多様性指数ぱヤブヘビイチゴ区が最大で, ムラサキサギゴケ区で最小であった(Table 3)。
著者
渡辺 寛明 宮原 益次 芝山 秀次郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.153-161, 1991-09-02
被引用文献数
4

水稲稚苗移植栽培におけるイヌホタルイの生育および種子生産量をイヌホタルイの出芽時期と発生密度との関係で検討し、以下の結果を得た。(1)水田裸地区では、6月18日に出芽したイヌホタルイの実生個体は、9,700粒/個体の種子を生産した。これより遅く出芽した個体ほど、個体の生育量の低下とともに種子生産量が減少し、7月16日に出芽した実生個体では個体当たり3,000粒以上の種子がつくられた。 (2)水稲畦問区では、水稲移植直後の6月18日に出芽した実生個体は100粒/個体程度の種子を生産したが、水稲移植後18日目に当たる7月2日に出芽した実生個体では着穂・開花に至らない個体がみられ、開花した個体も大部分の種子が未熟のまま水稲収穫期を迎えた。さらに水稲移植後1ヵ月以上たって出芽したイヌホタルイの実生個体はほとんど種子生産がみられなかった。 (3)越冬株から萌芽した個体は実生個体に比べて初期生育が旺盛なために、水稲畦問区でも1,500粒の種子を生産し、水田裸地区で萌芽した場合は17,000粒もの種子を生産した。 (4)水稲を作付した場合、イヌホタルイの単位面積当たりの種子生産量は発生本数がm^2当たり1,000本で65,000粒程度であったが、発生密度が1,000本/m^2を越えると生育途中の死滅により、残存本数および種子生産量は少なくなった。 (5)種子から出芽した実生個体と越冬株から萌芽した個体、あるいは水田裸地区で生育した個体と水稲畦間区で生育した個体とでは個体の生育量は大きく異なっていたが、いずれも個体当たりの種子生産量は個体の茎葉部生育量と密接な関係にあった。
著者
木俣 美樹男 阪本 寧男
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.p103-111, 1982-08

目本産力モジグサ属植物のうちで,雑草性の高いカモジグサ(Agropyron tsukushiense var. transiens)の普通型と早生生態型およびミズタガモジグサ(A humidorum)について,繁殖様式と生育場所との相互関係について検討した。これら2種が同所的に生育する静岡県三島市の休閑困における野外調査によると,カモジグサの早生生態型は種子でのみ実生を生じさせていたが,ミズタガモジグサは種子および桿の断片から実生を生じさせていた(第1表)。早生生態型の桿の断片は越夏後に腐敗して萌芽せず,ミズタガモジグサではほぼ半数の桿の断片が萌芽していた(第2表)。ミズタガモジグサの桿はほぼ7節よりなっているが,水岡耕起の際に1〜3節をもつ断片にされることが多かった。桿の断片は3節をもつものがもっともよく萌芽していた(第3表)。ヵモジグサの普通型と早生生態型およびミズタガモジグサの種子を温度および水条件による14の処理区に貯蔵し,経時的に発芽試験を行なった(第1図)。この結果によると,カモジグサの普通型は畑条件下でよく発芽し,早生生態型は州および湛水条件下でよく発芽した。ミズタガモジグサは種子の休眠が深く,湛水条件下でも比較的よく発芽力を維持した。カモジグサの普通型と早生生態型およびミズタガモジグサの桿の1節をもつ断片を温度および水条件による8処理区に貯蔵し,経時的に萌芽試験を行なった(第2図)。この結果によると,カモジグサの普通型および早生生態型の桿の断片の腋芽は休眠性が弱く,7月にはほとんどが萌芽した。しかしながら,ミズタガモジゲサの桿の断片の腋芽は休眠性が強く,9月まで著しい萌芽カミみられなかった。これらの結果は,休閑田における野外調査の結果とよく一致した。すなわち,カモジグサの早生生態型の株は休眠性が弱く湛水下で腐敗し,多年生であるにもかかわらず,自然状態では一年生植物のように種子によってのみ繁殖する。普通型は,種子が湛水・高温条件下で腐敗するので畦より水田中には侵入できない。ミズタガモジグサは種子のほか,株および多年生化した桿によっても繁殖し,水田への適応性が認められた。
著者
牛木 純 赤坂 舞子 手塚 光明 石井 俊雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.128-133, 2008-09-29
被引用文献数
1

国内に発生する雑草イネの生態的特性を明らかにすることを目的として,2003年に長野県から採取した74集団,岡山県から採取した40集団の発芽様式と休眠性の特徴について,出穂後100日目の発芽試験によって調査した。その結果,雑草イネ集団の約25%は休眠性を持ち,最高で播種後約200日目に発芽する種子を持つ集団も存在した。発芽様式は集団によって多様であったが,播種後30日目の発芽率と発芽率が95%に達するのに要した日数との関係から,大別して3タイプの発芽様式があると考えられた。最も多かったのは,栽培品種と同様に播種後30日以内に95%以上の種子が発芽する集団(以下,GP1,全体の約75%)であった。これに対し,GP1よりも発芽は遅延するが,播種直後から日数に応じて徐々に発芽が進む集団(以下,GP2,全体の約18%),あるいは播種直後はほとんど発芽しないが,一定期間を過ぎると急速に発芽が進む集団(以下,GP3,全体の約7%)も存在した。上記の発芽様式を持つ雑草イネ集団の割合を発生地区ごとに比較すると,GP2あるいはGP3の集団の割合が高い地区は,長野県と岡山県の雑草イネが高い密度で発生している地区であることが共通していた。以上の結果から,国内に発生する雑草イネの休眠性は概して栽培品種と同程度だが,一部地域には休眠性の深い集団も存在し,その集団の休眠性は発生密度と関連する可能性が示唆された。
著者
テラワッサクール M. 村田 吉男 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.97-103, 1987-08-31
被引用文献数
1

タイ国におけるトウモロコシ畑での Eiphorbia geniculataの生態を解明するための基礎的知見として、光合成および蒸散作用における特徴をトウモロコシおよび Euphorbia hirtaと比較した。 1) C_3植物であるE. geniculataは光合成の光飽和点がC_4植物であるトウモロコシやE. hirtaよりもはるかに低く、そして強光下での党かげの光合成作用(Ap)はトウモロコシ、 E. hirtaでは気孔抵抗(r_s)によって限定されるのに対して、 E. geniculataでは葉肉抵抗(r_m)によって限定された。 2)遮光条件下で育てると E. genisulataの党かげの光合成作用およびその光飽和点はトウモロコシに比べて著しく低下した。見かけの光合成の減少は E. geniculataではr_mの増加によるが、トウモロコシではr_mおよびr_sの両方の増加に起因することが認められた。 3) E. geniculataの要水量は通常、トウモロコシの2倍以上であるが、遮光処理により約3倍に増大した。 4) E. geniculataの見かけの光合成作用は、目長時問が増加するに従って減少する傾向を示した。また強光下の蒸散量 (Tr)は12時間日長で最大となり、Ap/Tr比は最低となった。たお、暗黒化に伴う気孔閉鎖は8時間日長区が12、16時間日長区よりもはるかに迅速であった。