著者
橘 雅明 渡邊 寛明 伊藤 一幸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.235-241, 2002-12-27
被引用文献数
2

ヨーロッパ原産の帰化雑草ハルザキヤマガラシ (Barbarea vulgaris R. Br.) の東北地域における発生実態について,農業改良普及センターを対象としたアンケート調査および観察調査を実施した。1993年と1996年のアンケート調査では,東北全県からあわせて29件の発生確認の回答があった。2001年に実施した観察調査においても全ての県で発生が確認されたことから,東北地域において本種が広く分布し,定着していることが明らかとなった。特に発生数の多い地域は,青森平野,秋田県横手盆地,岩手県北上盆地,雫石盆地,遠野盆地であった。ハルザキヤマガラシの発生が多かった秋田県横手盆地の仙北地域では,1994年と比べて2001年には高密度で発生している地点数は減少したが,発生地点数は増加し,分布は拡大していた。ハルザキヤマガラシの種子は2年間の水中貯蔵後も3割程度が生存し,発芽力を有することが明らかとなった。また,河川周辺および用排水路周辺の水田畦畔・道路端に発生が多く,河川の中州や用水整備などで畦畔に上げられた用排水路の底土において発生が確認された。これらのことから,河川や用排水路がハルザキヤマガラシの拡散経路の一つであると考えられた。
著者
浅井 元朗 與語 靖洋
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.73-81, 2005-06-24
被引用文献数
5

関東・東海地域の麦作圃場におけるイネ科雑草カラスムギ, ネズミムギ(イタリアンライグラス)の発生実態を把握するため, 農業改良普及センターを対象にアンケート調査を行った。また, 発生の著しい茨城県西部を中心に現地圃場の定点調査もあわせて行い, 作付体系と発生実態との関係を解明した。アンケート調査の対象とした全県でカラスムギ, ネズミムギの存在は認識されており, 麦作圃場内への侵入は半数の管区で認識されていた。カラスムギでは埼玉県, 茨城県で, ネズミムギでは埼玉県, 静岡県で被害の著しい地域が存在した。カラスムギの被害は畑麦, 転作圃場で高い傾向があり, 水稲作の入る圃場では被害の拡大は認められなかった。カラスムギの多発圃場では蔓延後に麦類の作付を休止する事例が複数確認された。両草種の侵入には飼料作, 堆肥, 緑化資材からの逸出が考えられたが, 飼料用えん麦の拡散は認められなかった。圃場での拡散には畑条件での麦類の連作と効果的な防除手段の欠如が関与すると考えられた。以上のことから, 上述した侵入, 定着要因の存在する立地では今後カラスムギ等の被害の拡大が懸念される。
著者
李 度鎭 臼井 健二 松本 宏 石塚 皓造
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.309-316, 1992-12-24
被引用文献数
4

発芽直後のイネ幼苗の生育に対するジメピペレートと、作用機作の異なる7剤の除草剤との混合処理による相互作用について検討した。土壌による除草剤の不活性化などの要因を排除するために水耕法を用いて根部処理し、イネの地上部と根部の新鮮重を測定した。薬剤間の相互作用についてはColby法で、ベンスルフロンメチルの場合のみIsobole法を併用して評価した。これらにより、以下のような結果が得られた。1) スルホニルウレア系除草剤ベンスルフロンメチル、クロルスルフロンとジメピペレートとの混合処理では、拮抗的効果が示され、ジメピペレートとの混合による薬害軽減効果が認められた。2) オキシフルオルフェン、ピフェノックス、クロメフロップおよびピリブチガルブとジメピペレートとの混合処理でも各薬剤に基因する生育抑制に対しジメピペレートによる拮抗的効果が認められた。3) クロロアセトアミド系除草剤プレチラクロール単剤処理では、地上部より根部の方に抑制効果が強く認められたが、ジメピペレートとの混合処理では相加的効果が示され、生育抑制軽減効果は認められたかった。
著者
冨永 達 小林 央往 植木 邦和
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.273-279, 1989-12-25
被引用文献数
1

チガヤ(Imperata cylindrica var. koenigii)は防除が困難なイネ科の多年生雑草である。本研究では和歌山県紀伊大島におけるチガヤの集団間および集団内変異を明らかにしようとした。 紀伊大島内の路傍、放棄畑、果樹園、芝地および海岸前線砂丘のチガヤ11集団(Fig.1)について、1982年から1984年にかけて自生地における結実率を調査した。また、11集団から5クローンずつ、1クローンあたり5ラミートを任意に選び、1983年6月10日に直径20cm、深さ19cmの素焼鉢に1ラミートずつ移植した。11月上旬に植物体を掘り取り、草丈、分株数、根茎数、根茎の直径および長さ、器官別乾物重を測定した。また、琶穎の長さ、菊の大きさ、自殖率および100粒重も調査した。移植実験は京都大学農学部附属亜熱帯植物実験所(紀伊大島)で行った。 自生地における結実率は、集団および年次の違いにより大きく異なった(Table 3)。海岸前線砂丘のチガヤは、花粉粒がほとんど認められず、雄性不稔であり、その結実率は、0.46%以下と著しく低かった。他の10集団では、菊の形状や花粉稔性に異常は認められず、1.05%から59.07%におよぶ結実率の幅広い変異は集団の大きさや出穂個体の密度によるものと推察された。また、移植実験におけるクローンの自殖率は0.35%以下であり、100粒重は11.07〜13.15mgであった(Table 4)。草丈、全乾重、分株数、総根茎長、根茎の単位長さ当りの重さ、菊の幅および根茎への乾物分配率について分散分析を行った結果、集団間には有意な差異が認められたが、集団内クローン間には有意な差異は認められなかった(Table 1)。この結果から、集団間にはこれらの形質について差異が存在するが、集団内では変異が少ないことが推定された。 海岸前線砂丘由来のクローンでは、他の生育地由来のクローンと比較して、分株数、根茎数および総根茎長が大であり、集団内のクローン間変異は小さかった(Table 2)。また、琶頼長と各クローンの採集地から海岸までの距離との間には、有意な負の相関が認められ、海岸前線砂丘由来のクローンの菅穎は著しく長かった(Fig.2)。
著者
鶴内 孝之 古屋 忠彦 村山 祥子 島野 至 松本 重男
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.185-190, 1988-10-31

1 . lvyleaf speedwell plants were grown in four air conditioning rooms at constant temperatures under natural day length, from 1982 to 1983. In the 15℃ room, they formed a pair of opposite leaves on each of the lower 4 to 6 nodes of the stems, and then an alternate leaf and a flower on each of the upper nodes. In the 20℃ room, they formed opposite leaves on the lower 5 to 7 nodes, and then an alternate leaf and a flower, but fruiting was not prominent. In the 25℃ room, they developed only opposite leaves without a transition to alternate leaf arrangement. In addition, vegetative growth continued and no flowers was produced (Fig. 2) . In the 30℃ room, they did not grow and died within 1 or 2 weeks. 2 . Germinating seeds of ivyleaf speedwell were treated in a 4℃ incubator for 8 or 26 days, and young green plants of ivyleaf speedwell and birdseye speedwell were grown in at air conditioning box at 10℃ under diffused sunlight for 16 or 28 days, from 1984 to 1985 (Table 1) . Thereafter the materials were transferred to the 15, 20 and 25℃ rooms. The exposure of the germinating seeds to 4℃ and of the green young plants to 10℃ promoted the transition from opposite to alternate leaf arrangement, flowering and fruiting. The most remarkable results were as follows : the ivyleaf speedwell plants did not flower in the 25℃ room (Fig. 2), but the exposure to the low temperatures of 4℃ and 10℃ for 26 (VL) or 28 (GL) days, promoted the transition from an opposite to an alternate leaf arrangement, as well as flowering and in some cases fruiting (Table 2) .
著者
澁谷 知子 森田 弘彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.30-41, 2005-03-18
参考文献数
113
著者
松本 宏 石塚 皓造
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.91-97, 1982-08-26

シメトリンの作用点と考えられる光合成系における選択作用性について検討することを目的とし,シメトリンに対して低抗性であるイネ(日本晴)と感受性であるタイヌビエから葉緑体を単離調整し,それらの電子伝達反応および光リン酸化反応における作用部位の検索,植物間における阻害度の比較を行なった。まず,電子伝達反応に対するシメトリンの作用について検討した。光化学系Iの末端から電子を受容するメチルビオローゲンを用い還元されたメチノレビオローゲンが酸素と結合して反床液中の酸素を消費する反応を利用して,酸素電極で種々の濃度のシメトリン存在下における酸素の消費速度を測定することにより,電子伝達系全体に対する作用を調べた。その結果,シメトリンは処理後ただちにかつ低濃度でこの反応を阻害することが判明し,用いたクロロフィル量(100〜120μg)でI_<50>値はイネで8×10^8M,タイヌビエで9×10^8Mであった(第1図)。つぎに,この電子伝達反床を光化学系IIの反応と光化学系Iの反応に分けて,それぞれに対するシメトリンの作用について検討した。光化学系IIに対する作用は,プラストキノン部位から電子を受容する酸化型のフェニレンジアミンを用いて,水の分解に伴う酸素の発生を酸素電極で測定することにより調べた。その結果,両植物のこの反応はシメトリンにより強い阻害をうけ,I_<50>値はともに5×10^8Mであった(第2図)。光化学系Iに対する作用は,光化学系IIからの電子の流れをDCMUで阻害した上で,アスコルビン酸で還元したDCIPを電子供与体,メチノレピオローゲンを受容体として,酸素電極で酸素消費速度を測定することにより調べた。その結果,この反応は10^4Mのシメトリンでもほとんど阻害をうけなかった(第1表)。また,NADPの光還元も同様にシメトリンの阻害をうけなかった(第2表)。光リン酸化反応に対するシメトリンの作用は,ADPからATPが生成される際にエステノレ化されて減少する反応液中の無機リンを比色法で定量することにより測定した。その結果,非環状光リン酸化反応がほぼ電子伝達反応と同程度の濃度で阻害された。環状光リン酸化反応も阻害されたが,非環状光リン酸化の阻害に比べるとやや弱いものであった(第3表)。これらの結果から,シメトリンの作用は光合成系における光化学系IIの反応と,光リン酸化反応の阻害であると考えられた。しかし,調べたすべての反応系において,イネとタイヌビエ間で葉緑体のジメトンに対する感応性に差ば認められなかった。したがって,両植物におけるシメトリンの作用力は,細胞内に形成される生理活性物質の濃度によって決定されるものと考えられ,選択作用性の要因としてはこれまで指摘してきたこれらの植物間の機能の差,すなわち,茎葉処理時においては茎葉からの吸収速度および茎葉内分解代謝能の差が,根部処理時においては根部内および茎葉内分解・代謝能の差と茎葉への移行速度の差があげられる。
著者
藤井 義晴 渋谷 知子 安田 環
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.362-370, 1990-12-25
被引用文献数
12

We tested 70 plant species collected in the central part of Japan for the presence of water extractable allelochemicals using a screening method based on Richards' function, fitted to lettuce seed germination and growth test. The parameters for the germination tests included, final germination percentage(A), germination rate(R), and the onset of germination(Ts). The plants with allelolopathic activities included, Solidago altissima. Artemisia princeps, Helianthus anuus. Pueraria lobata, Secale cereale, which were reported previously, in addition to, Mucuna prurience, Phytolacca americana, Houttuynia cordata. Colocasia esculenta known as oriental medicinal plants. The analysis based on RICHARDS' function revealed some of the mechanisms of action of these plant extracts, and the method was considered to be useful for the screening of plants with allelopathic properties.
著者
市原 実 和田 明華 山下 雅幸 澤田 均 木田 揚一 浅井 元朗
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.41-47, 2008-06-30

種子の乾熱処理および火炎放射処理が帰化アサガオ類(ホシアサガオ(Ipomoea triloba),マメアサガオ(I. lacunosa),マルバアサガオ(I. purpurea),マルバアメリカアサガオ(I. hederacea var. integriuscula)およびマルバルコウ(I. coccinea)の発芽に及ぼす影響と,火炎放射後の湛水が種子の生存に及ぼす影響について調査した。80℃で30分間乾熱処理した場合,5草種の発芽率(吸水,膨潤した種子の場合)は21.1〜97.8%であった。マメアサガオ(21.1%)とマルバアサガオ(47.8%)を除く3草種は,72.2%〜97.8%と高い発芽率を示した。一方,火炎放射処理を3秒間行った場合,発芽率は94.4〜100.0%と5草種ともほぼ完全に発芽した。さらに火炎放射処理後の種子は湛水条件下に2ヶ月間埋土されることにより,5草種全てにおいて100%死滅することがわかった。本研究より帰化アサガオ類の防除において,種子散布後に圃場地表面を火炎放射処理し,その後湛水することが有効であることが示唆した。
著者
佐藤 節郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.185-191, 2002-09-30
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
冨永 達
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.36-40, 2007 (Released:2007-11-27)
参考文献数
18
被引用文献数
3 2
著者
浦口 晋平 渡邉 泉 久野 勝治 星野 義延 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.117-129, 2003-10-10
被引用文献数
3 11

外来種の侵入,河原固有の在来種の衰退が顕著な多摩川中流域の河川敷から,56種の葉部を採取し,サンドイッチ法により他感作用活性を検定した。ハリエンジュ,アレチウリ,オオブタクサのように大きな群落を形成する外来種や,クズ,ススキ,イヌコリヤナギなど安定的な植生を形成する在来植物がレタスの幼根伸長を強く阻害した。また,絶滅が危惧されるカワラノギクとその周辺に多く生育する植物10種を砂耕栽培し,サンドイッチ法,プラントボックス法により他感作用活性を検定した。オニウシノケグサなどカワラノギク周辺の外来種は葉部,根部ともにレタスの幼根伸長を著しく阻害し,強い他感作用活性が示唆された。これらの結果は,多くの外来種の侵入と優占に他感作用が関与している可能性を示唆した。また,カワラノギクの葉部,根部にも強い他感作用活性が示唆され,成立から10年ほどで衰退・消失するというカワラノギク個体群の特性の原因として,他感作用の自家中毒的作用の関与が示唆された。カワラヨモギなど,他の河原固有種は強い活性を示さなかった。また,河川敷植生構成種の他感作用は,生育段階および,環境条件により変動する可能性が推察された。
著者
牛木 純 赤坂 舞子 手塚 光明 石井 俊雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.128-133, 2007 (Released:2008-11-04)
参考文献数
10
被引用文献数
4 4

国内に発生する雑草イネの生態的特性を明らかにすることを目的として,2003年に長野県から採取した74集団,岡山県から採取した40集団の発芽様式と休眠性の特徴について,出穂後100日目の発芽試験によって調査した。その結果,雑草イネ集団の約25%は休眠性を持ち,最高で播種後約200日目に発芽する種子を持つ集団も存在した。発芽様式は集団によって多様であったが,播種後30日目の発芽率と発芽率が95%に達するのに要した日数との関係から,大別して3タイプの発芽様式があると考えられた。最も多かったのは,栽培品種と同様に播種後30日以内に95%以上の種子が発芽する集団(以下,GP1,全体の約75%)であった。これに対し,GP1よりも発芽は遅延するが,播種直後から日数に応じて徐々に発芽が進む集団(以下,GP2,全体の約18%),あるいは播種直後はほとんど発芽しないが,一定期間を過ぎると急速に発芽が進む集団(以下,GP3,全体の約7%)も存在した。上記の発芽様式を持つ雑草イネ集団の割合を発生地区ごとに比較すると,GP2あるいはGP3の集団の割合が高い地区は,長野県と岡山県の雑草イネが高い密度で発生している地区であることが共通していた。以上の結果から,国内に発生する雑草イネの休眠性は概して栽培品種と同程度だが,一部地域には休眠性の深い集団も存在し,その集団の休眠性は発生密度と関連する可能性が示唆された。
著者
菅原 清康
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.23-29, 1975-09-25

1.本研究は,さきに明らかにした酸度の強弱による雑草の分類を基礎として,土壌酸度を顧慮して雑草樽落を数であらわす方式をとるに当って,合理的な採土の時期,深さ,個所数ならびに一検体の反覆測定数を究明しようとしたものである。2.地下5cmの深さから採土し,通年酸度の測定を行なった結果,砂土からなる未熟畑および火山灰黒ボク地帯の原野では,年間の変動幅がきわめて小さい。また,関東ロームの未熟畑,洪積埴土地帯の熟畑,火山灰黒ボク地帯の熟畑,未熟畑では,耕起直後と8月が著しく酸度が弱まる。したがって,雑草植生と土壌酸度との関係を調査するに当って,前者はとくに調査時期を考慮する必要はないが,後者の畑地では,8月の調査をなるべく回避した方が無難であるようである。3.火山灰黒ボクおよび洪積埴土両地帯の原野では,深度にとも在って酸度は弱まるが,その程度はきわめてわずかである。また,両土壌地帯の熟畑,未熟畑とも大型機利用ではおおむね地下25〜30cm,小型機利用では15〜20cm程度までの酸度の相異は小さいが,それ以下の深さでは強酸性を示す。これらの事実から,採土は作業能率などを考慮し,深度5cmから行たって何ら差支えがないものとみられる。4.1プロット4m^2程度の比較的小面積の規模では,採土地点を5カ所として一検体を調整し,また,一検体の酸度測定を5反覆程度として,その平均値を求めればよいようである。5.本研究の酸度測定の結果,畑地における雑草の植生は,おおむね地下20〜30cm間までの土壌の酸度の強張によって決定されるもののようである。
著者
〓 凡 臼井 健二 沈 利星 小林 勝一郎 石塚 晧造
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.295-301, 1997-01-31
被引用文献数
3

2葉期イネおよびタイヌビエを供試して, プレチラクロール単独およびフェンクロリムと混合して処理した場合のグルタチオン濃度とグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)活性の変化を調べ, また, プレチラクロールの代謝生成物であるGS-プレチラクロール舎量も測定した。還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)含量およびプレチラクロールを基質とするGST_<(pret)> 活性はタイヌビエよりイネの方が高かった。プレチラクロールとフェンクロリム単独およびそれらを混合して処理した場合, GST_<(pret)>活性の増加が見られたが, その程度はイネの方がタイヌビエより高かった。GSH含量は, イネではプレチラクロール単独処理で減少し, 混合処理によりある程度回復したが, タイヌビエにおける回復はわずかであった。また, GS-プレチラクロール抱合体舎量はタイヌビエよりイネの方が多かった。以上の結果から, イネとタイヌビエにおけるプレチラクロールの選択作用性は, GST_<(pret)> 活性およびその誘導の差異が主因であると考えられる。また, フェンクロリムは主に GST_<(pret)> 活性の誘導を通じてイネにおけるプレチラクロールの薬害を軽減させるものと思われる。
著者
冨永 達 小林 央往 植木 邦和
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.204-209, 1989-10-30
被引用文献数
2

チガヤ(Imperata cylindrica var. koenigii)は、防除が極めて困難な、世界の熱帯から温帯に広く分布するイネ科の多年生雑草である。チガヤが密生している草地の現存量の季節変化を調査し、あわせてチガヤの主な繁殖器官である根茎の水平および垂直分布を調査した。 1980年6月14日から1981年5月18日に和歌山県西牟婁郡串本町紀伊大島にみられるほぽ全域をチガヤに被われた放棄畑(北緯33°28'、東経135°50'、標高約50m)において(Fig.1)調査を行った。50×50cm^2のコドラート3個を調査地に設け、ほぼ1か月ごとに出現種および被度を調査した後、地上部を地上から10cmごとに層別に刈り取り、器官別に乾物重を測定した。地上部を刈り取った後、チガヤの根茎の水平および垂直分布を調査した。 調査地ではチガヤが密に分布していたが、分布様式は一様でなかった(Fig.2)。チガヤの他にススキ、スイバ、ワラビなど31種の生育が確認された。チガヤの被度は1年を通じて76%以上であったが、その他の種の被度は10%以下であり(Fig.3)、個体数も少なかった。チガヤは速やかに生長し、調査開始時には既に草丈が89.7cmに達し、草冠を被っていた(Fig.4)。チガヤ、ススキ、ヘクソカズラ、スイカズラおよびハスノハカズラ以外の種は下層に位置していた。2月にはチガヤの地上部はほとんど枯死したが、枯死葉は、脱落せず、枯死した状態で残存していた。調査地の地上部最大現存量は1月に883 g/m里を示し、チガヤはそのうちの87.4%を占めた。チガヤの主な繁殖器官である根茎は複雑に分枝していた(Fig.6)。根茎は、深さ10cmまでに全量の約80%が分布し、深いものでは30cmに達していた(Fig.4)。根茎の現存量は年間を通じ全器官の40〜50%を占め、その最大値は地上部の現存量が最大となる時期から約1か月遅れた2月に653 g/m王を示した(Fig.5)。 複雑に分枝した根茎が地中深くまで分布し、多量の同化産物を蓄積していることがチガヤの防除を困難にしている要因であると推定された。
著者
浅野 紘臣 磯部 勝孝 坪木 良雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-8, 1999-04-30
参考文献数
9
被引用文献数
5

アイガモ農法では, アイガモの行動範囲の多少によって除草効果が異なる。ここでは, 雑草防除に関係の深いアイガモの食性と行動について調査するとともにアイガモ放飼による除草効果について調査した。アイガモの食道膨大部を調査した結果, アイガモは雑草の他に昆虫類を摂食していた(Table 2)。この結果アイガモの放飼によって, 除草効果はもちろんのこと害虫に対する防除効果も期待できる。アイガモの行動は, 早朝と薄暮において活発に行動する傾向がみられた(Fig. 1)。また, 放飼されたアイガモは, 水田を縦横無尽に行動することが明らかになった(Fig. 2)。20aの水田に放飼されたアイガモ50羽の内の1個体をマークして調べた行動距離は3.8Km/3:00a.m.-20:00p.m.(17時間)であった(Fig. 1)。アイガモの放飼期間は6月下旬(田植3-4週間後)から8月上旬(出穂時)の40-50日間に及ぶことから、このアイガモの行動距離は, 雑草を制御するに十分な距離と思われた。ミゾソバ, ヤナギタデおよびイヌホタルイが僅かに残ったが実用上問題はなく, アイガモ放飼1週間後からアイガモの引き上げ時(出穂時)まで雑草(藻類を含む)は抑制され, アイガモによる除草効果は極めて大きかった。(Fig. 4, 5, 6, 7)。
著者
今泉 誠子 舘野 淳 藤森 嶺
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.8-17, 1997-05-30
参考文献数
26
被引用文献数
4

スズメノカタビラ用微生物除草剤であるXanthomonas campestris pv. poae (JT-P482) の防除効果を明らかにするために, 1993年より1994年に温室試験および野外ポット試験を行った。菌濃度別の処理効果を確認するために, 10^5より10^9cfu/mlの菌液を, あらかじめ滅菌ハサミで傷口を付けたスズメノカタビラに処理したところ, 処理3ヶ月後に10^8および10^9cfu/mlの濃度で約75%以上(対生重比)の防除効果が温室試験により得られた(Table 1, Fig. 1)。また野外ポット試験を用い, JT-P482の菌濃度および処理時期(12月単独処理, 4月単独処理, 12月および4月の反復処理)の変動が, スズメノカタビラの生育量, 茎数および種子生産量におよぽす影響について試験したところ, 10^8および10^9cfu/mlの濃度を12月および4月に反復処理を行った時に, スズメノカタビラの生重減少率は約67%, 茎数減少率は86%と最も高い効果を示した(Fig. 2, 3)。種子生産量への影響は、12月単独処理および4月単独処理において、菌濃度が10^8および10^9cfu/mlの場合に、77-88%と著しい減少率が認められ(4月30, 5月18日, 6月6日の3日間の収穫種子の合計の比較), 12月および4月反復処理では, 10^7cfu/mlの菌濃度の処理により85%の減少率が, また10^8および10^9cfu/mlの菌濃度により94%の減少率が得られた(Table 2)。85%以上の種子減少率を有効と仮定した場合, 12月処理の場合に10^9cfu/ml, 4月処理の場合に10^8cfu/ml以上, 12月および4月反復処理の場合に10^7cfu/ml以上の菌濃度を使用すればよいことになる。以上の結果より, Xanthomonas campestris pv. poae (JT-P482) はスズメノカタビラに対し高い防除効果を有することが明らかとなった。また、12月および4月に反復処理を行うことにより、スズメノカタビラの種子生産を大きく減少させ得ることが明らかとなった。