著者
土岐 めぐみ
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.363-366, 2017-05-18 (Released:2017-07-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

平均寿命が長く,平均寿命と健康寿命の差が長い女性は,介護を受ける機会が男性よりも多い.家族形態の変化に伴い,家族の中で介護を担うことは困難になってきている.従来女性の仕事とされてきた介護に,男性の参加が増えている.介護負担が高じて起こる,虐待や殺人などを防ぐために,介護される者だけではなく,「介護者を支援する」という考え方が出てきている.経済的・社会的な支援システムの構築が望まれる.
著者
里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.465-470, 2016-06-18 (Released:2016-07-21)
参考文献数
29

革新的ニューロリハビリテーション技術を開発・実用化するには,神経科学研究の積み重ね,臨床的エビデンスの蓄積,知財マネジメント,医療機器としての製品化・薬機法承認・事業化が不可欠である.慶應義塾大学医工連携チームは,従来治療困難であった脳卒中後重度手指麻痺に対し,手指伸展企図時の運動野近傍の事象関連脱同期を頭皮電極で記録し,運動企図したと判断された際には,麻痺側手指を電動装具で伸展して体性感覚フィードバックを脳に返し,可塑性を誘導する治療システムを開発した.Proof of concept,first in man,症例シリーズ研究,効果機序解明を経て,企業と共同で製品化を進め,薬機法承認に向けた医師主導治験を計画中である.
著者
佐藤 知香 梅本 安則 田島 文博
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.842-847, 2019-11-18 (Released:2019-12-27)
参考文献数
37
被引用文献数
2

安静臥床の弊害は70年以上前から認識されており,その影響は筋骨格系,循環器系,呼吸器系など全身に及ぶことがわかっている.また,超急性期治療領域においてもその弊害が注目されている.本稿では安静臥床の弊害について,筋量や筋力低下,関節拘縮,循環血液量減少や心機能低下による起立性低血圧,最大酸素摂取量の低下,肺活量低下などをそれぞれの報告を挙げ説明する.後半は,離床や運動負荷による治療効果を紹介する.なぜリハビリテーション治療を提供すべきなのか,考える一助となれば幸いである.
著者
補永 薫 藤原 俊之
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.957-960, 2017-12-18 (Released:2018-01-10)
参考文献数
12

廃用症候群では,呼吸器系のみならず筋骨格系,精神系,循環器系など幅広い器官における変調をきたし,しばしば息切れ症状が発生する.息切れはさまざまな動作や活動に対する心理的,物理的なハードルとなり,患者のADL,QOLの低下因子となる.息切れのへの対処においては,その発生状況を詳細に把握したうえで,悪化の予防,教育,運動療法を行う.必要であれば補助具や環境整備も考慮する.整容動作など,一見負荷が少なそうにみえる動作でも,上肢の挙上位の保持が必要な動作では息切れをきたしやすいため注意が必要である.単一の介入のみで息切れ症状を克服することは困難であることが多く,総合的に介入を行っていく必要がある.
著者
東 良和 土井 一輝 藤井 裕之 坂本 相哲
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4-5, pp.277-282, 2014 (Released:2014-05-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

目的:高齢者大腿骨近位部骨折の術後リハビリテーション(以下,リハ)施行時間(単位数)とADL機能,医療費について比較検討し,適正リハ時間について検証する.方法:2010 年6 月1 日から2013 年6 月27 日の間に当院で手術,術後リハを施行した222 名に対してCONSORT 2010ガイドラインに基づいた無作為化比較試験(RCT)を6 単位(120 分)と1日2 単位(40 分)施行群間で行い,術後12 週までのADL機能,歩行と医療費について比較検討した.結果:最終的にRCTが完遂できた受傷前独歩患者は,6 単位群29 症例,2 単位群29 症例であった.FIM, Barthel Index,EQ-5D,歩行に関しては両群間で統計学的有意差はなかったが,医療費に関しては,6 単位群で約20 万円高額となった.結論:早期リハを行うことにより,術後2 単位リハで十分な機能回復が獲得でき,医療費の有効利用ができた.
著者
岡本 五十雄
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.904-912, 2020-10-16 (Released:2020-12-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

「現在の障害のある状態,これが自分なのだ」と認められる(受容する)ようになるまでに,一定の経過をたどるが,すべての患者が同じ経過をたどるわけではない.また,聞くまでわからないことが多い.中にはまったく,苦悩を経験しない患者もいる.経済的に安定した豊かな人生は,障害受容の大きな要因であるが,苦悩を抱えている患者も多い.患者の人生との対話という視点はきわめて重要である.回復期リハビリテーション病棟の多くの患者は入院中に受容し,心理症状も抑うつ傾向も改善する.患者の話をよく聞き,ともに歩むチームの真摯な努力こそが患者が自らを受け入れ(受容し),障害とともに歩み,社会に適応していくうえでの大きな力となる.

23 0 0 0 OA 第2回 論理構成

著者
小山 哲男
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.449-455, 2020-05-18 (Released:2020-06-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
河島 則天
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.110-115, 2019-02-18 (Released:2019-04-03)
参考文献数
17

巧みでしなやかな身体運動は,身体を構成する数多くの関節や骨格筋が協調的に働くことで実現される.感覚性運動失調は,感覚入力の欠落に起因する協調運動障害であり,病態の理解には運動制御における感覚情報の役割についての理解が必要不可欠である.本稿では,運動制御における感覚フィードバックの役割とその欠落によって生じる運動制御の破綻のメカニズムを中心に概説し,感覚性運動失調に対するリハビリテーションアプローチを組み立てるうえでの視点・手がかりを得ることに主眼を置く.
著者
稲本 陽子
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.903-911, 2022-09-18 (Released:2022-11-18)
参考文献数
31

摂食嚥下練習において嚥下手技,姿勢調整は,効率よく目標課題をめざすために不可欠な課題の難易度調整における重要な変数である.双方とも古くから臨床的に用いられているが,運動学的意味や効果のエビデンスは十分とはいえない.昨今,高解像度マノメトリーや嚥下CTの登場により運動解析が進み,主たる効果の理解が進んでいる.メンデルソン手技,努力嚥下では咽頭収縮に対する効果が明確となり咽頭クリアランスに有効な手技であることが示されてきている.姿勢調整では,頭部回旋は梨状窩の形態変化およびUES圧低下による咽頭クリアランスの効果,リクライニング位は重力に対する諸器官の運動調整による気道防御の効果が明らかとなっている.
著者
若林 秀隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.40-46, 2022-01-18 (Released:2022-04-13)
参考文献数
36
被引用文献数
1

運動耐容能は,低栄養,貧血,肥満,サルコペニア,サルコペニア肥満でも低下する.サルコペニアで運動耐容能が低下する一因として,呼吸筋サルコペニアとサルコペニア性呼吸障害が考えられる.運動耐容能の改善には,リハビリテーション治療が重要である.しかし,食事摂取量が不十分な場合には,積極的な持久性トレーニングなどのリハビリテーション治療を行うと,運動耐容能はむしろ低下する.そのため,栄養状態に問題のある患者の運動耐容能を最大限改善させるためには,リハビリテーション治療単独では不十分で,栄養療法の併用が必要である.運動耐容能低下の原因に見合ったリハビリテーション栄養を実践してほしい.
著者
仁賀 定雄
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.778-783, 2019-10-18 (Released:2019-12-02)
参考文献数
14

2008年に奥脇が提唱したハムストリング肉離れのMRIタイプ分類(奥脇分類)は,再発せずに復帰できる期間とよく相関し,予後の予測や復帰の判断にきわめて有用である.奥脇分類を適切に使いこなせば,初期診断で予後の予測が可能になり,再発せずに復帰することがほぼ可能になるので,従来の不確定な肉離れの診断,治療が2008年以降ブレイクスルーした.しかし,奥脇分類使用のノウハウが十分知られていないため,現在もなおMRIで初期診断と受傷後評価をしている例でも再発の発生が後を絶たない.奥脇分類を使いこなすノウハウを提示し,復帰と予防のためのリハビリテーション治療について解説する.

14 0 0 0 OA 摂食嚥下障害

著者
小口 和代
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.358-362, 2017-05-18 (Released:2017-07-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

摂食嚥下障害は生命維持に直結する障害である.65歳以上人口あたりの肺炎死は,男性は女性の約1.7倍,食物による気道閉塞死は約1.3倍であり,摂食嚥下障害関連死のリスクは性差がある.男性では喉頭位置低下,最大舌圧低下が女性より若い時期から起きており,嚥下機能の予備能が女性より低い.壮年期から摂食嚥下障害の予防・啓発が必要である.当科で関わった誤嚥性肺炎の性別・年代別の退院時経口摂取獲得率に差はなかった.超高齢者においても個々にリハビリテーション適応を判断すべきである.また,高齢者の食生活の問題点として,買い物の問題を挙げるのはより女性に多かった.IADL低下に対する社会的な食生活支援は,超高齢社会の重要な課題である.