著者
小山田 智寛 二神 葉子 逢坂 裕紀子 安岡 みのり
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.154-157, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
4

近年、デジタルコンテンツの公開がますます盛んになり、オープンデータによるデジタルデータの活用も進んでいる。一方、フロッピーディスクやMOなどの記録メディアの問題は言うまでもなく、2019年12月のYahoo! ブログのサービス終了など、プラットフォームの変容に追随できず公開が持続できないデジタルコンテンツも増えている。東京文化財研究所では、2018年、幕末から明治大正期にかけての書画家の番付のデータベースを公開したが、これは2004年に作成され、技術的な問題で公開が停止していたデータベースのリニューアルである。このリニューアル作業を例として、デジタルコンテンツを持続させるための課題を検討したい。
著者
小山 真紀 柴山 明寛 平岡 守 荒川 宏 伊藤 三枝子 井上 透 村岡 治道
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.136-139, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
1

本研究では,防災ワークショップを通じたデータの収集とデータベース化,保管したデータの再利用法までを合わせて提案することで,恒常的にデータの収集と活用が可能な災害アーカイブの構築とその効果を検討する.対象とするデータは,主として位置情報付きの被災当時の写真と,対になる現時点での同じ場所の写真,被災時の手記などである.ワークショップは,現在のハザードマップとこれらのデータを用いて,地域の災害危険度を確認し,同様の災害が発生した場合の被災イメージを想起させる.被災経験者がいる場合には,より具体的な状況の記憶の継承を行う.最後に,今後の対策に向けた検討を行い,参加者間で共有する.これまでに,データベースの構築,ワークショップの構成と収集すべきデータの検討を行い,ワークショップを行うことで,災害記憶の継承と,より具体的な被災イメージの醸成と対策の検討が可能になることが示された.
著者
林 知代
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.101-104, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
3

ビックデータやAIで活用されるデータがファクトデータを中心とされているのに対し、デジタルアーカイブで収集されるデータは、ファクトデータとそれに付随するメタデータを一対の記録としてとらえられている。デジタルアーカイブの記録では、メインのデータとなるマルチメディアファイルとそれを説明する文字情報を一対として記録・管理する事が重要な要素となると考える。そこで、本研究では、岐阜県美濃市で開催される美濃祭りの花みこしの祭りと準備の記録をとりあげ、デジタルアーカイブとしてどのようなデータが収集できるかを実践し、その情報の構成について検討したので報告する。
著者
後濱 龍太 岸本 慎也 加藤 健太郎 横山 圭 島田 茂伸
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.284-291, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
13

本稿では、身体表現における演者の「身体形状」および「動き方」の両方が唯一性や希少性を備えており、原資料としての性質を帯びているとのアイデアに基づき、動作する人体をデジタルアーカイブする方法を提案する。3次元デジタイザを用いて取得した高解像度かつ高寸法精度な形状データに、モーションキャプチャを用いて取得した動作データを統合することで、動作する人体のデジタル復元である「動作可能モデル」を生成する方法を明らかにする。動作可能モデルとデジタイズ直後の形状データの寸法変位RMSは1mm未満であり、提案手法がデジタイズ形状の寸法をほとんど変化させないことを示した。本手法が舞踊などの無形文化財やスポーツのアーカイブへ適用しうる基盤技術となることを期待する。
著者
高田 祐一 昌子 喜信 矢田 貴史
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.99-102, 2019-03-15 (Released:2019-06-01)
参考文献数
5

文化財調査の現場においては、デジタル技術が浸透しつつある。デジタル機器によるデータ取得時の必要精度やファイル形式など、デジタルならではの留意すべき点がある。一方、デジタル技術の活用によって文化財に関する情報発信という点においては、広く周知するということが可能となった。特に発行部数に限りがあることから、閲覧環境の確保に課題のあった発掘調査報告書について、電子公開する事業が全国展開され、活発な利用がなされている。これらの動向に対応するため、文化庁はデジタル技術活用について、『埋蔵文化財保護行政におけるデジタル技術の導入について』にて対応指針を報告している。本稿では、行政における文化財情報の電子化と発信という点において、近年の動向を整理したうえで、課題と見通しを考察する。
著者
真喜屋 力
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.31-34, 2019-01-07 (Released:2019-02-18)
参考文献数
2

沖縄アーカイブ研究所では、沖縄県内の市井の人々の所有する8mmフィルムを収集、保存、公開する事業を行っている。2年間で83時間分の映像を収集し、CC-BYによって公開している。さらに、インターネットでの配信を始め、上映会、テレビ番組、アートなどとのコラボを積極的に展開し、認知度を高めると同時に新たな収集活動などに取り組んでいる。これまでの2年間の活動を振り返り、8mmフィルムの持つ資料としての重要性を改めて確認できたこと、フィルムのアーカイブ化を上映会や放送につなげることでその映像のメタデータをより豊かなものにし、新たな映像の発掘・収集に繋がってきたことを報告する。
著者
水島 久光
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.318-323, 2018

<p>それは「誰の」「何の」ための取組みなのか――デジタルアーカイブに関する議論において、忘れてはならない問いである。放送史との関わりで見れば、デジタル化はその公共的機能を支えてきた時空間秩序を揺るがすものと言える。デジタルアーカイブには、その新しい社会の集合性の再構築を助ける役割が期待されていると言うことができよう。本稿では、それを裏付けるために「地域」と「映像」という、テレビの要素概念を検討する。テレビにおける『紀行番組』の成立、北海道夕張市・東北の津波被災地の現状などをケーススタディとしながら、人々が生きられる環境を「地域の肖像権」の行使を通じて取り戻す、運動としてのアーカイブ論を提示する。</p>
著者
水島 久光
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.318-323, 2018-10-01 (Released:2018-11-20)
参考文献数
21

それは「誰の」「何の」ための取組みなのか――デジタルアーカイブに関する議論において、忘れてはならない問いである。放送史との関わりで見れば、デジタル化はその公共的機能を支えてきた時空間秩序を揺るがすものと言える。デジタルアーカイブには、その新しい社会の集合性の再構築を助ける役割が期待されていると言うことができよう。本稿では、それを裏付けるために「地域」と「映像」という、テレビの要素概念を検討する。テレビにおける『紀行番組』の成立、北海道夕張市・東北の津波被災地の現状などをケーススタディとしながら、人々が生きられる環境を「地域の肖像権」の行使を通じて取り戻す、運動としてのアーカイブ論を提示する。
著者
原 翔子 永崎 研宣 高木 聡一郎 大向 一輝
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.e45-e51, 2023 (Released:2023-11-01)
参考文献数
12

本稿では、同一テーマの下で企画された複数の展覧会の構成を共起ネットワークによって可視化し、その比較によって、キュレーションが鑑賞者に異なる視点を与えることを明らかにした。具体的には、河鍋暁斎をテーマとする3つの展覧会を対象とした。分析対象となった日本画や浮世絵は、描かれているモチーフが作品名に反映されているため、計量テキスト分析が可能である。実地での鑑賞を検討する際の情報収集や、鑑賞後に展覧会を振り返る際に、本稿の手法は有用である。また、全体像として共起図を提示しておくことで、さらに多角的な鑑賞視点が期待できる。本稿の成果はキュレーション機能を持つデジタルコレクションに対して大いに有用であると期待される。
著者
岡室 美奈子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-5, 2023-02-01 (Released:2023-03-28)
参考文献数
5

舞台芸術アーカイブの最大の特徴かつ最大の困難は、完成された作品それ自体を保存することができないという事実である。したがって舞台芸術アーカイブは、個々の上演というドーナツホールを囲む周辺の資料からなるドーナツであると言える。本稿では、デジタル・ドーナツとも言える舞台芸術デジタルアーカイブの現状と課題について概観し、本特集に収録された各論について簡単に紹介する。
著者
中西 智範
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.10-13, 2023-02-01 (Released:2023-03-28)
参考文献数
9

近年、国内では舞台芸術分野のデジタルアーカイブへの注目が高まっている。本稿では、早稲田大学演劇博物館が1990年代から行ってきたデジタルアーカイブの活動から、Japan Digital Theatre Archives公開までの過程を紹介するとともに、他のデジタルアーカイブとの比較を通じて、舞台芸術分野のデジタルアーカイブの課題や期待について展望する。