著者
原田 健一
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.383-387, 2019-12-16 (Released:2019-12-16)
参考文献数
8

新潟大学の研究プロジェクト「にいがた 地域映像アーカイブ」は、地域の町や村と連携しながら、新潟を中心とした地域の生活のなかにある映像を発掘して、整理・保存を行い、デジタル化をし、さらには、その内容を整理、分析し、映像メディアの社会的あり方を考え直し、新たな社会の文化遺産として映像を甦らせるものとして構想された。地域のデジタル映像アーカイブは、デジタル化という現在の大きな社会変容のなかで、機能しなくなった研究状況を打破する装置であり、地域の時間層へのボーリング調査によって、社会変容の基層にあるものが何なのか、デジタル化することによって再帰的に実証し、地域そのものをブーツストラップ(編み上げ直す)するものだ。
著者
三宅 茜巳 井上 透 松家 鮎美
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.376-384, 2018-10-01 (Released:2018-11-20)
参考文献数
60
被引用文献数
1

デジタルアーカイブは知識基盤社会を支える重要な役割を果たすものと期待されているが、課題も多く存在する。そうした課題の中で、本論では、デジタルアーカイブの開発・管理・活用を担う人材育成にテーマを絞り考察した。大学やNPO法人日本デジタル・アーキビスト資格認定機構が進めてきたデジタル・アーキビスト育成教育の事例と英語圏(米・加・英・豪)における教育の事例を概観する中で、大学や協会による専門職としての質保証を伴う教育や再教育が必要であることが明らかになった。また、デジタルアーカイブを運用する現場での情報を教育にフィードバックすることにより、採用や待遇改善等キャリアパスの形成につなげていくことが重要であると結論付けた。
著者
中江 雅典 細矢 剛
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.345-349, 2019-06-24 (Released:2019-08-30)
参考文献数
5

日本国内における自然史標本コレクションの電子化の進捗状況を把握するためのアンケート調査を行った。その結果、節足動物、維管束植物および魚類のコレクション規模が大きいこと、藻類、無脊椎動物化石および鳥類コレクションで電子化の進捗率が相対的に高いこと、標本の画像化はどの分類群のコレクションでも進捗率が低いことが明らかとなった。また、多くの機関がコレクション全体を徐々に電子化させる方針であるが、電子化の作業は主に非常勤職員が担い、職員の時間がなく、資金もなく、必要作業量が膨大であるため、電子化の遂行に苦労しているとの傾向・状況が明らかとなった。
著者
石田 惣 中田 兼介 西 浩孝 藪田 慎司
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.334-344, 2019-06-24 (Released:2019-08-30)
参考文献数
30

生物研究者が撮影した動画を収集し、利用公開するアーカイブを運用する上で起こり得る課題を抽出するため、アーカイブに対する研究者のニーズ、対象データの潜在量や記録媒体、データ提供者が認容できる利用条件等について研究者にアンケート調査を行った。教育目的での利用可能性には提供者・利用者双方の立場のニーズがある。課題として、・デジタル化により増大する動画量への対応、・レガシー媒体への対応、・ウェブ公開や営利利用、目的を問わない利用に提供者側の抵抗感があり、アーカイブやオープンサイエンスの意義について理解を求める必要性、・データの利用時の編集の是非、・データのウェブ公開可否の判断基準、等が見出された。
著者
青木 和人
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.1, no.Pre, pp.37-42, 2017-09-08 (Released:2017-09-08)
参考文献数
11

現在までに蓄積された紙媒体によるアナログ地域資料は膨大な数に上る。これらを早急にデジタルアーカイブ化することは容易ではない。アナログ地域資料の完全なデジタルアーカイブ作業が実現されるまで、地域資料のデジタルアーカイブを簡便に実現し、インターネット上で地域資料内容の検索やアクセスを可能とすることが求められている。そこで本研究では、市民参加型で地域資料を出典としながら、ウィキペディア上にその内容を編集するウィキペディアタウン活動成果のテキストマイニング分析から、その意義について考察した。その結果、地域資料の簡便なデジタルアーカイブ化を実現した。それにより、埋もれている膨大な地域資料へのデジタルな入り口を作ることで、インターネットを通じた再発見機会を提供することができた。
著者
田村 賢哉 井上 洋希 秦那 実 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.128-131, 2018-09-03 (Released:2018-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1

「デジタルアーカイブ」の多様化により,これまで利用側であった非専門家である市民が積極的にアーカイブズに取り組む可能性を有している.そうした背景から本発表では,デジタルアーカイブにおける市民参加の新しいアプローチとして,ヒロシマ・アーカイブなどの「多元的デジタルアーカイブ」の複数の活動の特徴を述べ,それらの有機的な制作環境の実態について言及した.そうした実践からデジタルアーカイブの社会に及ぼす影響について考察を行い,デジタルアーカイブの新しい研究領域として「参加型デジタルアーカイブズ」を述べる.
著者
田山 健二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.324-329, 2018-10-01 (Released:2018-11-20)
参考文献数
13

ADEAC(A System of Digitalization and Exhibition for Archive Collections)は、2008年10月から、TRC-ADEAC(株)において運用を開始したプラットフォームシステムです。現在、図書館・大学等の88機関が所蔵する多様な史資料が、ADEACを介し利用に供されています。インターネット・ユーザーは、無償で、例えば高精細画像データを閲覧、またADEAC内の全てのテキストデータを横断検索できます。当技報において、現在進めているインターフェイス、検索精度の向上等の改善とIIIF、ウェブアクセシビリティ等への対応の検討状況について概説し、特徴的な5機関の利用事例を紹介します。
著者
杉本 重雄
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.1, no.Pre, pp.67-70, 2017-09-08 (Released:2017-09-08)
参考文献数
3

現在の情報環境において利用者、特に一般利用者のためのアーカイブとそのコンテンツの利活用性を高めるには、アーカイブ横断的な検索機能に加え、Web上のいろいろな資源を視野に入れたコンテンツの複合的な組織化によるアクセス性向上が必要である。本稿では、マンガ等のポップカルチャを含む文化的コンテンツのアーカイブと東日本大震災アーカイブに関し、筆者の研究室で進めてきた研究から得た知見を基礎にして、アーカイブとそのコンテンツへのアクセス性向上を目的としてメタデータのモデルについて述べる。以下、はじめにメタデータの視点からアーカイブとそのコンテンツのモデル化に関する基礎的な概念について述べ、その後、筆者の研究とそこから得た知見を示す。
著者
Nurjanah WATANAVE Hidenori
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.8-20, 2018-01-31 (Released:2018-04-27)
参考文献数
71

コミュニティが災害情報にもっとアクセスしやすくするために、過去の災害情報を作成するためのアチェ災害デジタルアーカイブを開発した。オープンソースのデータプラットフォームを採用しており、アクセスは無料で、若い世代をターゲットに、インタラクティブで使いやすく開発した。世界各地で同様の災害が発生する可能性があり、アチェの津波前後のさまざまな媒体でのマルチメディアデータを収集することで、可視化を達成し、これをソーシャルネットワークサービス (SNS) にリンクすることにより、アチェでの地震と津波の経験に関する情報と知識その情報と知識を広範に伝達し、持続可能な災害低減対策 ( 災害リスク低減(DRR)) を期する。
著者
宮城 卓司 長尾 順子 井口 憲治 眞喜志 悦子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.1, no.Pre, pp.33-36, 2017-09-08 (Released:2017-09-08)
参考文献数
2

教育分野では、常に新しい研究や方法に目がむけられ、過去の研究は忘れ去れていくことが多く、何度も同じような研究を繰り返している傾向にある。しかし、児童の本質は数十年前も現在もほとんど変わることはないと思わる。そのため、過去の研究でも児童の実態に沿った本質的な研究であれば、現在においても十分に活用可能であると考える。更に過去の有効な研究データを活用することは、本当に新しい教育的課題に取り組む時間を生むことに繋がると思われる。本研究の元データは、1967年~1980年頃に岐阜で行われ、デジタルアーカイブに保管されていた研究成果である。その研究自体はかなり専門的な知識を活用し、コンピュータの発達した現在でさえ、量的にも質的にもできないであろうと思われる内容である。児童の本質を捉えたこの研究を、全国学力・学習状況調査で毎年最下位になるなど、学力不審に悩んでいた沖縄県において、活用した実践事例である。