著者
安枝 浩
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1249-1253, 2007-10-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
中谷 良人 工藤 一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.1057-1061, 2004-10-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
25

アラキドン酸代謝物は生理活性を有する化合物を多数含んでおり, 生体の恒常性の維持だけでなくアレルギーを含む多様な疾患の発症や進展に関与することが示唆されている. Fig. 1に示したように, 細胞内でアラキドン酸は膜リン脂質の2位にエステル結合した形で貯蔵されており, ホスホリパーゼA2(PLA2)によりアラキドン酸が遊離されることにより本代謝系が開始する. この遊離アラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ(COX)あるいはリポキシゲナーゼ(LO)により酸素添加される. 前者は不安定な中間物質であるプロスタグランジン(PG)H2を産生し, 最終PG合成酵素により様々なプロスタノイドが合成される. 後者は中間物質ロイコトリエン(LT)A4を産生し最終LT合成酵素によりLTB4やLTC4が合成される. PLA2反応の際にアラキドン酸と共に生成するリゾリン脂質からも血小板活性化因子(PAF)等の生理活性脂質が産生される.
著者
清田 恭平 藤原 有佳 足立 和人 亀田 誠 阿久津 和彦 梶村 計志
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.787-793, 2014

【背景・目的】2012年5月,大阪府内において特定原材料「乳」を原材料として使用していないはずの学校給食揚げパンを喫食した児童のうち,乳アレルギーを有する2名がアレルギー症状を呈した.当該パンの製造工程において乳成分が混入した可能性が疑われ,その混入経路を検証することとした.【方法】乳を含むパンを製造し,生地分割機を除く製造ラインを改訂した手順に従い清掃後,乳を含まないパン生地を投入してパンを製造し,事例当時のパン製造を再現した.乳の主要アレルゲンであるカゼインを指標に製造ロットごとに濃度を測定した.【結果】初期の製造ロットのパンには1000ppm以上のカゼインが含まれていた.その後ロット数増加に伴い徐々にカゼイン含有量は減少した.また,揚げ調理によってカゼイン含有量がより低下する傾向が見られた.【結語】初期の製造ロットのパンに多量のカゼインが含まれ,次第に含有量が減少したことから,前に製造した乳成分を含むパン生地が製造機器中に残存し,後に製造した乳成分を含まないパン生地に混入したことが示唆された.
著者
冨高 晶子 松永 佳世子 秋田 浩孝 鈴木 加余子 上田 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.327-334, 2000-04-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ラテックスアレルギー(LA)と果物の交差反応はlatex fruit syndromeと呼ばれている.今回, 栗によるアナフィラキシー症状(AP)を発症したLAの4例を報告する.全例アトピー疾患を合併した看護婦で, LAが先行していた.症例により摂取した栗の加工法, 皮膚との接触の有無, 臨床経過が異なっていた.栗のプリックテストは全例陽性であったが, 血清中の特異IgE抗体(sIgE)は2例のみ陽性であった.sIgEが陰性の場合にもAPが出現する症例を経験したことから, sIgEが陰性であっても注意が必要であることが示唆された.経過を観察し得た2症例のうち, 頻回に抗原に暴露される症例は, sIgEは高くなり, 抗原刺激を減らし得た症例ではsIgEは低下した.また, ラテックスと栗の交差反応において主要抗原とされるheveinと患者血清とのELISAにおいて, 自験例4例は正常コントロール12例に比べ有意に高い値を示した.今後, LA患者はAPや接触蕁麻疹の報告がある果物の摂取は避ける必要があると考える.
著者
猪又 直子 大砂 博之 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.38-42, 2006
被引用文献数
3

26歳, 女性.カシューナッツを舌にのせた直後より, 舌のしびれ, 咽頭痛, 顔面の〓痒が出現した.既往歴にアトピー性皮膚炎, 気管支喘息はあるが花粉症はなし.検査結果ではカシューナッツについてCAP-FEIAがクラス2, プリックテスト(SPT)は強陽性を示した.カシューナッツと同じウルシ科に属するピスタチオは, 摂取時の症状はなく, CAP-FEIAはクラス2だがSPTは陰性, マンゴは摂取時に上口唇腫脹をみとめたがマンゴ果肉のSPTは陰性であった.以上よりカシューナッツによる口腔アレルギー症候群(OAS)と診断しカシューナッツを除去とした.除去後約1年でカシューナッツのSPTが陰性化したことから, 自験例では花粉抗原などの交差反応性よりむしろカシューナッツによる経口感作によって発症した可能性が高いと推察した.
著者
高村 節
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.479-488,531, 1972-07-30 (Released:2017-02-10)

スギ花粉症患者を対象に鼻アレルギー患者の血中セロトニン(5-HT)についての検索とその測定意義を検討してみた.スギ花粉症患者を選びだすために, まず臨床的鼻アレルギー検査を皮膚反応試験, 鼻粘膜誘発反応試験, またはPK反応試験で行なったところ, これら3試験の成績はいずれも高度の陽性率を示した.また鼻粘膜の 5-HT に対する感受性試験を行なったが, 患者は健康者に比べ 5-HT に対して過敏であることを認めた.次いで患者の血中 5-HT をスギの非開花期と開花期, あるいは鼻粘膜誘発試験前と試験後とで測定比較してみたが, いずれも後者において有意に高値を示した.さらに人為的に 5-HT を変動させ, 鼻症状の消長を観察する目的で nialamide, reserpine さらに cyproheptazine を患者に投与した.Nialamide では血中 5-HT の上昇とともに鼻症状の増悪をきたしたが, cyproheptazine のように血中 5-HT に変動がなくても鼻症状は軽減し, reserpine では血中 5-HT の減少をきたすにもかかわらず鼻症状は増悪する傾向が観察された.以上のことから, 鼻アレルギー発症と血中 5-HT との間には一致した相関性は認められず, 鼻アレルギー患者の血中 5-HT の測定は鼻アレルギーの補助的診断としての示標にはなり得ないことが立証された.
著者
杉野 安輝 三田 亮 高木 康之 加藤 誠章 大田 亜希子 奥村 隼也 長井 秀明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1572-1579, 2010-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21

症例は49歳女性.高用量吸入ステロイド(フルチカゾン1000μg/日+シクレソニド800μg/日),サルメテロール吸入(100μg/日),ベタメサゾン内服(1mg/日)を中心とする多剤併用療法にても喘息コントロールが得られない重症難治性喘息であった.血清総IgE値は9(IU/mL)と低値で,明らかな通年性アレルゲンも認められなかったが,患者同意のもと2009年8月からオマリズマブ150mgを投与し,喘息症状やピークフロー(PEF)の改善を認めた.体重増加と全身倦怠感にて2回投与後に休薬したところ喘息症状が悪化した.2010年1月からオマリズマブの再投与を行い,喘息症状とPEFの著明な改善が認められた.効果は投与後約3週間持続し,6回目の投与後にはベタメサゾン内服を0.5mg/日に減量できた.オマリズマブ投与前後6ヵ月間の比較では,オマリズマブ治療により定期外受診などの喘息関連イベントは減少し,経口ベタメサゾン内服量も投与前の64%に減量できた.血清IgE低値でアレルゲンが明瞭でない重症難治性喘息に対して,オマリズマブが奏効した示唆に富む1例と考えられた.