著者
渋谷 紀子 斉藤 恵美子 柄澤 千登世
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1598-1610, 2013-12-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

【背景・目的】近年,経皮感作の重要性が注目されているが,乳児期の感作について詳細に検討した報告は少ない.【方法】317名の乳児に対し,1歳まで3カ月ごとにプリックテスト(SPT)とアンケート調査を実施し,感作およびアレルギー疾患発症のリスク因子について検討した.【結果】42%の乳児が一度はSPT陽性を示し,早期の感作は1歳までのアレルギー疾患発症と強く相関していた.生後早期の湿疹は感作(aOR, 3.0;95%CI,1.8-5.0),アトピー性皮膚炎(AD) (aOR, 13.0;95%CI, 4.5-37.3),食物アレルギー(FA) (aOR, 28.4;95%CI, 3.3-240.6)発症と有意な相関を認めた.乳児期の感作頻度の推移は湿疹経過と平行しており,FA児のほぼ全例が生後早期に湿疹を認めていた.母乳は湿疹のある児にとって感作とFAのリスクであり,早期に湿疹のない児はほとんどAD, FAを発症しなかった.【結語】生後早期の湿疹は乳児期の感作およびアレルギー疾患発症のリスク因子である.
著者
冨高 晶子 松永 佳世子 秋田 浩孝 鈴木 加余子 上田 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.327-334, 2000
参考文献数
21
被引用文献数
3

ラテックスアレルギー(LA)と果物の交差反応はlatex fruit syndromeと呼ばれている.今回, 栗によるアナフィラキシー症状(AP)を発症したLAの4例を報告する.全例アトピー疾患を合併した看護婦で, LAが先行していた.症例により摂取した栗の加工法, 皮膚との接触の有無, 臨床経過が異なっていた.栗のプリックテストは全例陽性であったが, 血清中の特異IgE抗体(sIgE)は2例のみ陽性であった.sIgEが陰性の場合にもAPが出現する症例を経験したことから, sIgEが陰性であっても注意が必要であることが示唆された.経過を観察し得た2症例のうち, 頻回に抗原に暴露される症例は, sIgEは高くなり, 抗原刺激を減らし得た症例ではsIgEは低下した.また, ラテックスと栗の交差反応において主要抗原とされるheveinと患者血清とのELISAにおいて, 自験例4例は正常コントロール12例に比べ有意に高い値を示した.今後, LA患者はAPや接触蕁麻疹の報告がある果物の摂取は避ける必要があると考える.
著者
平嶋 純子 放生 雅章 飯倉 元保 平石 尚久 中道 真二 杉山 温人 小林 信之 工藤 宏一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1683-1687, 2012-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9

症例は38歳女性.20歳時に気管支喘息を発症し,22歳から経口ステロイド依存性となるもコントロール不良であった.妊娠を契機に喘息が増悪し流産するエピソードが複数回あり,これまで出産に至ったのは妊娠7回中1児のみであった.今後妊娠する意向のないことを確認し2009年8月からオマリズマブ投与を開始したがその6週後に妊娠が判明した.PEF・自覚症状ともに改善し経口ステロイドも減量出来ていたためオマリズマブ投与を継続した,その後感冒を契機に喘息コントロールが増悪しオマリズマブ投与は計7回で中止とした.2010年2月に切迫流産となり26週544gの女児を出産した.超低体重出生児でしばらくNICUに入る必要があったが,体重は順調に増加し出産後2年を経過したが現在のところ問題なく生育している.オマリズマブ投与により妊娠早期の喘息増悪を抑制しえたことが出産につながった可能性があると考えた.妊娠中にオマリズマブを使用し出産に至った症例は本邦で1例目であり,貴重な症例と考え報告する.
著者
大石 拓 森澤 豊 安枝 浩 秋山 一男 脇口 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1163-1167, 2004-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は11歳女児と10歳男児の姉弟である. それぞれ1999年5月と10月に気管支喘息を発症した. 劣悪な家族環境と発症年齢が高いことから心因性の喘息発作が疑われていた. 母親も2001年から喘息発作が出現した. 詳細な病歴聴取の結果, 室内清掃がなされておらず, ゴキブリが多数生息していることが判明した. CAP-RASTでは3例ともゴキブリが陽性反応を示したことから, ゴキブリが主要アレルゲンの気管支喘息と考えられた. 本邦では喘息も含めたゴキブリアレルギーはあまり認知されていない. 本邦においても喘息のアレルゲンとしてゴキブリの存在を念頭におくべきであると考えられた. 1964年にBerntonらが最初にゴキブリアレルギーを報告して以来, 海外では多数の基礎, 臨床研究が報告され, アメリカの都市部で救急外来を受診する喘息児の多くはゴキブリが主要アレルゲンであることが報告されている. しかしながら, 本邦ではゴキブリアレルギーの認知度は低い. 今回, 心因性喘息と考えられていたがゴキブリが主要アレルゲンと考えられた気管支喘息姉弟例を経験したので報告する.
著者
湯田 厚司 鵜飼 幸太郎 坂倉 康夫 谷 秀司 松田 ふき子 楊 天群 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.577-582, 2002
参考文献数
7
被引用文献数
6

基準木のスギ雄花着生状況から津市のスギ花粉飛散予想を行った.方法は三重県津市郊外の三重県科学技術振興センター敷地内に1964年に植樹された23種のクローンからなる69本を基準木に選定した.この69本の東西南北4面(合計276面)の雄花着生状況を目視法で0から3点に点数化した.その平均点数とスギ花粉飛散数を1988年より2000年まで検討した.その結果,1995年と2000年の大量飛散年以外は基準木雄花着生平均点数とスギ花粉飛散数の実数は一次関数で高い正の相関(r=0.914)を認めた.大量飛散年は前年の飛散状況に影響をうけていたため,前年より飛散の多い年を検討すると,基準木雄花着生平均点数から前年の平均点数を減算した値と,スギ花粉飛散数は極めて高く正に相関した(r=0.994).以上の結果より,基準木雄花着生状況から花粉予想が可能と考えた.
著者
森 朗子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.7-15, 1995
参考文献数
21
被引用文献数
26

スギ花粉症患者は近年小児においても増加傾向にある. そこでその感作および発症に関する因子を明らかにするために, 栃木県壬生町の小・中・高校生を対象にアンケート調査, 鼻鏡検査・鼻汁好酸球検査・CAP-RAST法による特異的IgE検査を施行し以下の結果を得た. アンケート調査での有症率は6歳では約10%であったが8歳で急激に増加し, 17歳では約25%に達していた. またスギ花粉に対する抗体保有率は, 6歳の約20%から7歳で約40%と急激に増加し, 以後17歳まで40〜50%を推移しながらやや増加傾向を示した. したがって, 感作においては7歳, 発症においては8歳が年齢的危険因子と考えられた. 同時に測定したダニに対する抗体価とスギに対するそれを比較すると, ダニ抗体陽性者ではスギ花粉に対する抗体保有率も有意に高く, スギに対する感作成立にダニの関与が示唆された. 居住環境による差異を検討すると, 抗体陽性者は田園地域居住者に比べ住宅地で有意に高く, 発症率は一戸建住宅に住む者より集合住宅の方が高値を示していた.
著者
松木 秀明 中村 勤 河村 研一 鈴木 太郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1409-1420, 2006
参考文献数
24
被引用文献数
4

【目的】布団につくダニアレルゲン対策として作製された防ダニふとんのアレルゲン低減効果を調査するため,ヤケヒョウヒダニアレルゲン(Der p.1)およびコナヒョウヒダニのアレルゲン(Der f.1)測定および血中の特異的IgE抗体の測定を行った.【方法】防ダニふとんは超高密度織物(まどろみ)を側生地に用いた布団およびフェノール系高分子薬剤処理を施こした超高密度織物を側生地に用いた布団(まどろみ+アレルバスター)を用いた.被験者を一般的な羊毛布団,まどろみ布団,まどろみ+アレルバスター布団試用群の3群に分類し,11カ月使用させた.【結果】ダニ抗原量(Der p.1+f.1)では11カ月の防ダニふとん使用でまどろみふとん試用群は,羊毛布団試用群の1/3.8,まどろみ+アレルバスター布団試用群では1/42.0のアレルゲン量であった.またヤケヒョウヒダニ,コナヒョウヒダニおよびハウスダスト1対する特異的IgE抗体の陽性率は46.7%から6.7%に低減した.【結論】以上の結果から,防ダニふとんは羊毛布団に比べ,ダニアレルゲンの低減効果があることが示唆された.
著者
舟越 光彦 田村 昭彦 垰田 和史 角銅 しおり 鍛冶 修 鮫島 健二
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1123-1130, 2004
参考文献数
21
被引用文献数
1

米国胸部疾患学会は, 成人喘息の約15%は職業性であるとの声明を2002年に発表し, 職業喘息の対策の重要性を強調した. しかし, 我が国では一般集団を対象に気管支喘息における作業要因の人口寄与危険度を求めた疫学研究は殆どなく, 気管支喘息に占める作業関連喘息の割合は未解明である. 気管支喘息における作業要因の人口寄与危険度を求めることは効果的な予防対策をすすめるために重要な課題なので, 気管支喘息で外来通院中の患者を対象とし, 成人喘息における作業要因の人口寄与危険度をNIOSHのクライテリアを用いて求めた. また, 作業関連喘息症例の特徴について検討した. その結果, 気管支喘息における作業要因の人口寄与危険度は22.7%で欧米の報告と大差なく, 我が国でも欧米と同程度の作業関連喘息の罹患があることが示唆されると考えられた. probable OAは5名で, 害虫駆除業, 生花販売業, 美容師, ペットサロン業だった. 2名(40%)は喘息のため転職しており, 作業関連喘息が就労の継続に与える影響の大きさが示唆された. 4名(80%)が離職した後も気管支喘息が持続しており, 作業関連喘息の予防の重要性が示された.