著者
大西 明宏
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.175-182, 2013-08-15 (Released:2014-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

本研究ではロールボックスパレットに起因する労働災害の実態把握と求められる対策を検討するため,2006年の休業4日以上の死傷病報告データの25.5%に相当する34,195件をもとに分析した.その結果,285件のRBP起因災害が確認された.これは労災全体の0.83%(95%CI:0.73~0.93)であったが,年間発生件数を試算すると1,115件(95%CI:980~1,249)と推計され,他の災害と比べても少なくない実態がわかった.業種別では運輸業の件数や千人率が高く,重傷例も少なくなかったが,労働損失日数を用いた災害リスクの比較では比較的治癒に時間を要する骨折でさえ運輸業の平均より低いことから,重篤なRBP起因災害の発生リスクは低い傾向であることがわかった.また,経験1年以下の被災が多いことから雇入れ時教育の充実が求められること,運輸業および卸・小売業では高年齢労働者の被災も多いことから体力低下等への配慮も重要であると示唆された.被災パタンは1)「上肢(指,手,腕)の激突・はさまれ」,2)「下肢(足指,足,脚)の激突・はさまれ」,3)「キャスターによる足部負傷」,4)「頭部・顔面・歯への激突」,5)「RBPの転倒・転落による下敷き等」の5つに整理され,上肢および下肢の激突・はさまれ,あるいはキャスター踏まれへの対策には手足プロテクターや足指の第5指末端まで保護可能な安全靴等の使用が災害防止には有効と考えられた.頭部等への激突防止には荷崩れしにくい積載の徹底,ステー棒を適切に固定できる範囲での積載遵守が必要になると示唆された.全体の42.1%を占め,重大災害につながりやすいRBPの転倒等による災害の防止には使用時に少しでも不具合を感じた時点でフォークリフト等の運搬機械を積極的に使用することが求められるが,実際には使用できない場合も多いことから新たな対策の検討が急務であると示唆された.
著者
小島 崇 綱島 均 伊藤 聡美 塩沢 友規
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.193-200, 2007-08-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

鉄道の安全性確保のために, 列車運転士には判断に関するヒューマンエラーを犯さないことが強く求められる. 列車運行時のヒューマンエラーを防止するためには, 人間の特性を考えた運転支援システムの開発が必要である. このようなシステムを開発するにあたっては, 運転操作と認知, 判断にともなう脳機能に着目する必要がある. 本論文では, 列車運転中の運転士の高次脳機能を, 機能的近赤外分光 (fNIRS) 装置を用いて計測した. 運転中の脳機能活動を抽出するために, ウェーブレット変換による多重解像度解析を適用することを提案した. 運転シミュレータを用いた実験の結果, 提案の方法により運転中の高次脳機能を評価できることを示した.
著者
高林 範子 小野 光貴 渡辺 富夫 石井 裕
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.84-91, 2014-04-15 (Released:2014-05-16)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

著者らは,看護コミュニケーション教育を支援する目的で,仮想病室に患者と看護実習生役のアバタを実装した身体的バーチャルコミュニケーションシステムを開発し,有効性を示した.本システムは,対話者のノンバーバル情報に基づいて対話者の化身であるアバタのノンバーバル行動を生成し,仮想病室で対話者相互のアバタのインタラクションを観察しながらコミュニケーションできるシステムである.5組10人の看護学生を対象に,システムを用いたロールプレイングによるコミュニケーション実験を行い,官能評価,自由記述内容の結果,「役になりきれた」「対話しやすさ」「システムを使用したい」などの項目で肯定的に評価され,看護学生同士の対面でのロールプレイングよりも有効であることが示された.患者体験ができ,役になりきることが可能なシステムであることが確認され,本システムによる新たな看護コミュニケーション教育支援の活用可能性が示された.
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.10-23, 1965-01-01 (Released:2010-03-11)
被引用文献数
1 2
著者
児玉 公信
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.147-153, 2005-06-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
9

連続加算課題における計算エラーの研究では, これまで単体の計算行為だけに注目していた. しかし, 被験者は, 連続作業の条件でできるだけ多く計算を行うために下位作業を巧みに並列化する. 計算エラーの一部には, こうした並列作業の同期の失敗に起因するものがあると仮定して, それを検証するために後ろの小問をマスクする装置を用いた条件 (マスク条件) と, そのマスクを取り除いた装置を用いた条件 (透過条件) とで連続加算課題を課した. その結果, 透過条件では計算回数および同期の失敗に起因すると見られるエラーがマスク条件よりも多かった. また, 計算エラーはなんらかのアルゴリズムに起因するのではなく, 認知的難問に起因する可能性が見いだされた. このことから, 連続加算課題における計算エラーの分析には, 作業の並列性および認知的難問の観点を導入する必要性が示唆された.