著者
宮崎 由樹 井上 葉子 益尾 建志
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.68-73, 2020-04-15 (Released:2021-06-23)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究の目的は,作業環境・作業後の休憩場所が作業者の精神的疲労感に及ぼす影響を検討することであった.実験の被験者は,まず屋内あるいは屋上いずれかの実験環境で負荷課題(文章の書き写し)を行った.精神的疲労感は課題の前後で心理尺度(Profile of Mood States-2nd Edition)を用いて測った.被験者は,屋内ないし屋上で5分間の休憩を取得した後で,先ほどとは異なる,もう一方の実験環境で同一の負荷課題を行った.実験の結果,負荷課題前にくらべた負荷課題後の精神的疲労感の上昇の程度は屋内でも屋上でも変わらなかった.一方,5分間の休憩を取得することによる疲労感低減効果は,屋内にくらべて屋上の方が大きかった.これらの結果は,屋内にくらべて,作業後の休憩を屋上で取得することは疲労感解消に効果的であることを示唆する.
著者
吉岡 学 中川 浩文 諸菱 正典 保髙 拓哉
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.114-122, 2022-06-15 (Released:2022-08-16)
参考文献数
16

視覚障害者の鉄道利用者は単独で移動する際に様々な困難や危険に遭遇する.本研究では,重大な危険性がある駅ホームへの転落を軽減するためのシステムについて述べる.本方式では,通常の白杖の先端にRFIDリーダを装着し,RFIDリーダとスマートフォンのアラーム音を連動させ,白杖先端部がRFIDタグの取り付けてあるホーム端に近づくとRFIDデバイスが作動するシステムを提案する.本システムを試行した結果,RFIDタグから横方向に150 mmの距離,RFIDタグから100 mmの高さ,駅ホームに対する白杖先端部の振り速度が1.5 m/sまでであれば,いずれの使用状況においても白杖先端部に取り付けられたRFIDリーダの動作が確認された.しかし,環境音がない場合,検出率は低下した.アンケートでは,91.7%の人がスマート白杖の重量が増加したことを指摘し,72.8%の人が本システム搭載のスマート白杖の購入を希望していた.この結果から,本システムが視覚障害者の駅ホーム転落防止システムとして社会実装の可能性があることを示した.
著者
浦谷 裕樹 大須賀 美恵子
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.428-434, 2015-12-20 (Released:2016-09-28)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

自然災害や事故・事件等の影響により,その後心の病である心的外傷後ストレス障害(PTSD:posttraumatic stress disorder)を発症する子どもたちがいる.心身を落ち着ける呼吸法の習得によりPTSDの症状を改善できるといわれている.そこで,子どもたちがリラックスできるように,2つのエアバッグを用いて呼吸計測をしながら,腹部を上下させて呼吸誘導ができる呼吸誘導ぬいぐるみを開発した.7 ~10歳の健康な女児12名を対象に評価実験を実施した結果,エアバッグのセンサで呼吸計測ができ,ぬいぐるみの腹部の動きによる呼吸誘導が可能であることが示された.開発した呼吸誘導ぬいぐるみによるリラクセーション効果の検証は今後の課題である.
著者
山田 晋平 三宅 晋司 大須賀 美恵子
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.295-303, 2012-12-15 (Released:2013-03-02)
参考文献数
33
被引用文献数
7 6

精神疲労を評価し得る指標の探索を目的として,文書によるインフォームドコンセントを得た15名の男子大学生に,暗算(20分間5試行計100分間)を課した.暗算の前後には安静(5分間)を取らせ,さらに疲労を回復させるための休息(約20分間)後にも安静(5分間)を取らせた.また,暗算の各試行と安静の後に,主観指標と視覚探索課題の作業成績を計測した.暗算中と安静中は、後述の生理指標を測定した.解析においては,精神疲労を対象とするため,安静時と暗算時の比較ではなく,暗算の前後と休息の後の3時点の安静時の比較を行った.その結果,疲労に関する訴え,視覚探索課題の探索時間,心拍数,鼻部血流量,心電図R-R間隔変動係数,心拍変動指標の低周波成分と総パワー値に有意な変化が確認された.これらの変化は,精神疲労によって生じたと考えられ,これらの指標で精神疲労を評価できる可能性が示唆された.