著者
石田 久之
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.321-327, 1993-10-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
7

視覚障害者におけるタイピングの正確度および誤りを検討することを目的として実験を実施した. 被験者は短期大学に在籍する全盲学生および弱視学生5名であった. 1回の試行で40~50の単語を提示し, 6試行行った. タイピングすべき単語に組み込まれたキーは, q, v, xを除く23のアルファベットと, \を加えた24のキーとした. 実験後, 実際にタイピングされたキーについてのデータをプリント出力し, タイピングすべきキーと比較することによって, 正確度を算出し, 誤りを抽出した. タイピングの正確度は, 最も高い被験者が99.0%, 最も低い被験者で97.9%であった. 誤りは, 置き換え, 割り込み, 脱落の3種類に大きく分類した. 最も多い誤りは置き換えであった. 割り込みと脱落については差はなかった. これらより正確なキー位置の把握の重要性を指摘した.
著者
齋藤 誠二 田中 翔子 松本 和也
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.266-273, 2012-10-15 (Released:2012-12-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

転倒しにくいスリッパを提案することを目的に,スリッパの性質と歩容およびスリッパのズレとの関連について検討した.若年者男性10名と女性10名に異なる4足のスリッパを履かせ8 mの自由歩行をさせた.そして,歩行中における任意の3歩分の歩容と下肢筋電図を分析した.さらに,スリッパの主観評価と屈曲性評価を実施した.その結果,屈曲性の低いスリッパを履いて歩行すると片足支持期における足関節の背屈が抑制されることが示唆された.また,遊脚期終期において足部が床と接触することを避けるために,股関節をより屈曲させるとともに,膝関節の伸展を遅らせる必要があることが示唆された.さらに,ソールの屈曲性が影響していると推察されるフィット性が低いスリッパでは,遊脚期においてスリッパが足部からズレやすいことが示唆された.したがって,高齢者のスリッパによる転倒を予防するためには,適度な屈曲性を明らかにする必要がある.
著者
矢野 円郁 藤岡 茉央 仁科 健
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.201-206, 2023-10-15 (Released:2023-11-03)
参考文献数
17

日本では,接客業の女性従業員は化粧を義務づけられることが多い.本研究では,飲食店の女性店員が化粧をしていない場合,客が不快に思うのかどうかを実験的に検証した.実験参加者に女性店員が接客をしている動画を見せ,その印象を評価させた.真の研究目的を悟られにくくするため,表情条件(笑顔/無表情)も追加し,複数の店員に対する評価を求めた.実験の結果,参加者の性別によらず,笑顔が印象を良くする効果は明確に示されたが,化粧の効果はほとんどみられなかった.また,化粧の実験操作に気づいた人(13名)においても,気づかなかった人(29名)と同様に,印象評価に化粧の効果はみられなかった.本研究結果が今後,女性に対する化粧義務の是非を議論するための材料の一つになると考える.
著者
河村 隼太 赤木 暢浩 角 紀行 和田 健希 武本 悠希 小東 千里 齋藤 誠二
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.223-229, 2023-10-15 (Released:2023-11-03)
参考文献数
25

本研究は,重心位置の異なるウォーキングシューズの着用が成人男性の歩容に与える影響を明らかにすることを目的とした.成人男性19名に対して重心位置の異なる靴(つま先重心,中央重心,踵重心)を着用させ9 mの歩行路を歩行させた.そして,フットクリアランス,床反力,下肢関節角度,下肢関節モーメントを算出した.その結果,荷重応答期の膝関節モーメントは踵重心がつま先重心と中央重心より有意に小さかった.荷重応答期の鉛直床反力(床反力鉛直ピーク1)は中央重心と踵重心がつま先重心より有意に小さかった.また,遊脚初期の膝関節角度と遊脚中期の股関節角度は中央重心がつま先重心より有意に小さかった.以上のことから,つま先重心では遊脚期前半において,クリアランスを確保するために膝関節と股関節の屈曲を増大させる必要があることが示唆された.また,踵重心では荷重応答期において,ヒールロッカー機能が安定的に発揮されることが示唆された.
著者
武部 真人 大下 和茂
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.216-222, 2023-10-15 (Released:2023-11-03)
参考文献数
24

本研究は,インソール先端部に取付けた突起物(突起インソール)による速歩時の蹴出しが,下肢関節可動域や歩幅に及ぼす影響を検討した.健常男性16名に3条件でトレッドミル歩行を実施した:普通条件はいつも通り歩行し,指示条件は立脚終期の蹴出しにより幅を伸ばすよう指示し,突起条件は突起インソールの突起を蹴出しながら歩幅を伸ばすよう指示した.指示条件では,蹴出しによる歩幅延長の指示時のみ,股関節および足関節可動域と歩幅が増加した.突起条件でも股関節可動域は突起インソール使用時のみ増加したが,足関節可動域と歩幅は,突起インソール使用前に比べて,使用時および使用直後で増加した.この関節可動域増加は立脚終期の足関節底屈増加によるものと考えられる.これらの結果は,準備運動などで突起インソールにより歩幅延長を促すことで,その後の運動では,突起インソールを使用せずとも歩幅延長効果が残存する可能性を示している.