著者
依田 光正 塩田 泰仁
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.9-15, 1999-02-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2

本研究では, 人間同士のすれ違い行動における回避軌跡に基づいた回避領域を実験的に求めた. すれ違い行動軌跡の一般的な特性を知るために, 路上におけるすれ違い行動の実験を実施した. 実験はVTRで記録し, 動作軌跡を大きく3つの行動タイプに分類した. 最も出現頻度が高く回避領域抽出に適した行動タイプは, 被験者が実験者まで接近してから相手を避けて被験者の初期軌道に復帰する行動であった. この行動タイプの回避領域を求めるために実験室内におけるすれ違い行動の実験を実施して, 静止, 歩行および小走りしている実験者に対して歩行している被験者がすれ違う回避軌跡を分析した. 回避動作の特性として, 回避軌跡は懸垂線に最適に近似し, 歩行速度はほぼ一定であることを見いだした. さらに, 懸垂線の軌跡から回避領域を算出した. 実験結果から, 被験者が静止および歩行している実験者とすれ違う回避領域はほぼ等しいことを確認した.
著者
山下 利之 守山 綾華 簑下 成子
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.243-248, 2010-06-15 (Released:2011-04-28)
参考文献数
15

本研究では,能面の表情認知における動的変化の効果を調べるために,傾きや陰影が動的に変化する能面画像を用いて,その能面が表す感情認知に関する実験を行った.中間感情を表すとされる小面の9つの静止画像および24の動的画像の各々について,特定の感情をどの程度表していると思うかに関する評定を,43名の被験者に行わせた.因子分析の結果,“ポジティブ感情”,“ネガティブ感情”の2因子が抽出された.また,能面の陰影や傾きを動的に変化させた場合,静止画像よりも認知される感情強度が強くなる傾向が示された.特に,ポジティブ感情の表情からネガティブ感情の表情へ変化させた場合と,逆にネガティブ感情の表情からポジティブ感情の表情へ変化させた場合の方が,ポジティブ感情どうし,ネガティブ感情どうしの変化よりも感情強度が強くなることが示された.
著者
藤本 浩一 佐野 裕司 渡邊 英一
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.285-294, 2012-12-15 (Released:2013-03-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

本研究は,脈波伝播速度(PWV)の計測に小型の近赤外線反射型センサーによって得られる加速度脈波を応用したものである.特に疾患の無い51名の研究対象者(21〜90歳)が実験に参加し,研究対象者を若年群(n=14),壮年群(n=21)および高齢群(n=17)の3群に分けた.脈波伝播時間(PTT)は頭部,指尖部および足底部の加速度脈波と心電図より求め,計測区間距離は体表面よりテープメジャーによって同定した.PWVは計測区間距離をPTTで除することにより求めた.なお,51名のうち12名の研究対象者は,加速度脈波と心電図により求めたPWVの精度を検討するため,従来法によるPWVの計測も行った.両方法によって計測されたPWVより求めたPTTは有意な相関関係(ピアソンの相関,P<0.001)にあることを確認した.腹部大動脈系を計測区間に含むPWV(心臓−前額間PWV,心臓−手指尖間PWVおよび心臓−足底間PWV)は男女ともに加齢にともなって有意な(分散分析,P<0.001;単回帰分析,P<0.001)上昇が認められたものの,腹部大動脈系を計測区間に含んでいないPWV(前額−指尖間PWV,前額−足底間PWVおよび指尖−足底間PWV)は加齢の影響を受けなかった.また,これらの傾向は性別,身長,BMI,心拍数,血圧で補正しても同様であった(重回帰分析,P<0.001).以上の結果は先行研究および弾性動脈と筋性動脈の特性と一致するものであり,本研究で用いたPWVの計測法は従来法と比較して迅速かつ簡便なものであるが,従来法と遜色なくPWVを評価できることが示された.
著者
三宅 晋司
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.391-398, 2015-12-20 (Released:2016-09-28)
参考文献数
19
被引用文献数
13
著者
持田 徹
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.261-267, 1982-10-15 (Released:2010-07-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

人体に関する平均対流熱伝達率を生理特性の配慮のもとに, 熱および物質伝達論に基づく工学手法により理論的に導いた. まず環境との間の熱平衡から裸体と対流熱伝達的に等価な円筒直径として18cmを得, この円筒に Hilpert と Oosthuizen らの無次元式を適用して, 人体に関する平均対流熱伝達率の式: hc=3√270V2+23〔Kcal/m2h℃〕(0.1≦V≦3.0〔m/s〕) を定めた. 本式の特徴は自然対流と強制対流を同時に考慮し, 特に低風速域における自然対流の影響を評価している点にある. さらに, 着衣状態は裸体円筒に衣服を着せた取り扱いをし, 最終的に求められた熱伝達率の検討と過去の提案式との比較も行った.