著者
兒玉 憲人 﨑山 佑介 小迫 拓矢 武井 藍 中村 友紀 橋口 昭大 道園 久美子 松浦 英治 中根 俊成 髙嶋 博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.95-102, 2018-01-10 (Released:2019-01-10)
参考文献数
10

42歳,男性.全身の発汗低下を主訴に受診した.起立性低血圧や頻尿を伴い,広汎な自律神経障害が示唆された.皮膚生検で汗腺及び血管周囲にリンパ球浸潤を認め,抗ganglionicアセチルコリン受容体抗体陽性が判明した.通常,同抗体は自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy:AAG)の原因となるが,汗腺への直接作用は明らかでない.本症例には汗腺と自律神経節障害の両者の特徴が混在し,ステロイド治療が有効であった.
著者
磯崎 泰介 菱田 明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.846-852, 2006-05-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

マグネシウム (Mg) と微量元素は生命活動に重要である. 低栄養, 中心静脈栄養 (TPN) 施行時に欠乏しやすく, 腎不全など電解質調節能低下時には過剰になりやすい. いずれも一般に広く行われる検査項目ではなく, 異常が見過ごされやすく, 時に致命的となることに注意する必要がある.
著者
松本 純
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.1595-1608, 1980-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20

30例の悪性高血圧患者に透析療法を施行した.悪性高血圧の診断は,厚生省医療研究班,悪性高血圧小委員会の提唱した診断基準によつた.この30症例を,治療として用いたβ-blockerの使用の有無により3群に分類した. I. 3群の特徴, (1)大量のβ-blockerを要した群(A群)は15名(50%)で,内12例は基礎疾患が本態性高血圧症(EH)で,透析開始前に本症の発症をみた.残り3例の基礎疾患は慢性腎炎(CN)で,透析開始後に本症の発症を認めた.治療前後のレニン活性(PRA)は全例,異常高値を示し,又低Na血症が治療前後に見られた. 15例中10例(70%)が死亡した.さらに軽度のやせが認められた. (2) β-blockerを要さず,透析により血圧の管理を行ない得た群(C群)は9名(30%)で,内1名が死亡した.基礎疾患は全例CNで,発症時のPRA,血清Na値および体重は正常であつた. (3) β-blockerを間欠的に投与した群(B群)は6名(20%)で全員生存しており,基礎疾患はEHとCNが3名ずつで,特微はA群とC群の中間の成績を示した.すなわち発症時の高レニン,低Na血症は治療により改善した. II.不良な予後に関係する因子として, (1)基礎疾患がEHの症例, (2)高レニン血症, (3)低Na血症, (4)やせ, (5)高度の眼底変化(K-W 4度),の五つが判明した.
著者
朝倉 英策
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.7, pp.1378-1385, 2020-07-10 (Released:2021-07-10)
参考文献数
13
被引用文献数
3 2

播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)は,「日本血栓止血学会DIC診断基準2017年版」を用いて診断するのがよい.DICの病型分類(線溶抑制型・線溶亢進型・線溶均衡型)は,早期診断,治療法の適切な選択の両観点から重要な概念である.PT(prothrombin time),APTT(activated partial thromboplastin time)のみではDIC診断は不可能であり,少なくともフィブリノゲン,FDP(fibrin/fibrinogen degradation products)及びDダイマーも加えたスクリーニングが不可欠である.近年,血栓性微小血管障害症とDICの鑑別も話題になっている.
著者
楽木 宏実
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.253-259, 2015-02-10 (Released:2016-02-10)
参考文献数
5

高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)での高齢者高血圧に関する大きな改訂点は,降圧薬治療対象について個別判断の必要な例を具体的に挙げたこと,後期高齢者に対する降圧目標について前回のガイドラインで中間目標としていた150/90 mmHg未満を最終目標にしたことである.これに加えて,超高齢者の合併症や老年症候群も考慮した診断と治療における注意点を記載した.高血圧を窓にした高齢者診療の充実につなげたい.
著者
木村 哲
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.12, pp.2392-2397, 2001-12-10 (Released:2008-06-12)
被引用文献数
1

日本では病院内感染症のサーベイランスや,その対策が遅れている.これを是正するため感染制御ドクター(ICD)および感染制御ナース(ICN)の認定制度が,それぞれ1999年および2000年に発足した.いずれもできたばかりであり,その質,量において更なる改善が望まれるが,両制度の発足により,日本の病院内感染症対策が飛躍的に進歩することが期待される. ICDやICNの力が十分に発揮される為には感染制御チームを組織し,リンクナースを置くなど施設としての取り組みも重要である.
著者
細尾 咲子 森 伸晃 松浦 友一 森 直己 山田 恵里奈 平山 美和 藤本 和志 小山田 吉孝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.2556-2562, 2015-12-10 (Released:2016-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

40歳,女性.実子に続く感冒様症状を主訴に来院し,急性呼吸不全と血圧低下を伴う重症肺炎の診断で入院となった.血液培養および喀痰培養からA群溶血性レンサ球菌(group A streptococci:GAS)が分離され,劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)と診断した.Benzyl penicillin G(PCG)とclindamycin(CLDM)による治療を開始後,薬剤性肺障害などの有害事象が生じたため,ceftriaxone(CTRX)とlevofloxacin(LVFX)に変更し,計24日間の抗菌療法により軽快した.経過中,急性腎不全を合併し,計6回の血液透析を必要とした.GASによる市中肺炎は頻度が低く,時にSTSSを合併し致死率が高い.健常人におけるSTSSの発症機序は明らかでなく,解明が待たれる.

1 0 0 0 OA 1.ステロイド

著者
大島 久二 牛窪 真理 遠藤 隆太 秋谷 久美子 田中 郁子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.10, pp.2881-2887, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4 2

ステロイドは代替薬の無い必須の薬剤として広く用いられている.近年その作用機序,副作用の理解と対処法には新たな知見が加わってきており,これらをもとにしたステロイド療法が求められている.
著者
池住 洋平
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.1385-1390, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

近年,胎児期及び出生後の生活環境が成人期における生活習慣病発症に関与するというdevelopmental origins of health and disease(DOHaD)仮説が提唱され,多くの疫学研究,動物実験等から,その妥当性が認識されるようになった.我々は,腎生検にて巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)と診断された患児の多くが低出生体重であることを見出し,さらに,これらの患児では,腎における糸球体肥大や密度の減少等がみられることを報告した.このような低出生体重児に生じる臓器障害機序は,腎疾患にとどまらず,さまざまな成人疾患の病態に関わると考えられ,低出生体重を成人期疾患の発症を予測する1つのパラメータとしてとらえ,低出生体重児を生じる要因の改善とともに,生活環境の改善を通じた予防策を講じる必要があると考えられる.
著者
渡辺 治雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.2141-2146, 1999-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

ペストは感染症新法では, 1類感染症に分類されている.我が国においては,昭和元年以来ペストの発生がみられていないが,世界には依然として多くのペスト病巣窟が存在している.万が一ペストが我が国に侵入してきた場合の,迅速なる診断,治療体制を日頃から整備しておくことが,危機管理的側面からも重要である. PCR法を含めたDNA診断法およびマウスモデル系における新規抗菌薬による治療実験等のデータを含め,ペストに対する診断・治療について概説する.
著者
水澤 英洋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.3, pp.669-674, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1
著者
大野 雅治 藤井 直樹 小林 卓郎 後藤 幾生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1077-1078, 1990-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は51才男性で,亜急性に高度の深部覚障害を伴う感覚運動型のポリニューロパチーを発症した.既往として26才時に胃部分切除をうけ,その後,輸血後肝炎に罹患した.血中の脂溶性ビタミンは低値で,特にビタミンEが著明に低下していた.消化吸収試験で,ビタミンEの著明な吸収障害が認められた。腹部手術後に長期間経過して発症する神経障害の原因として,ビタミンE欠乏は注意を要するものと考えられる.
著者
浅井 信博 三鴨 廣繁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.2282-2289, 2018-11-10 (Released:2019-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

嫌気性菌は,全ての臓器における感染症に関与しており,破傷風やボツリヌス症等を除けば,その原因の多くは,宿主自身が保有する常在菌による内因性感染である.それらの菌の分離頻度は,検査の特性上,施設間で差があるのが現状である.その重要度とは裏腹に認知度が低い嫌気性菌であるが,昨今ではBacteroides fragilisのカルバペネム系薬への耐性等,臨床上問題となり得る耐性菌の出現も確認されるようになってきた.本稿では,嫌気性菌感染症の一般的内容から最新のトピックスまで述べたい.
著者
藤森 新
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.458-463, 2018-03-10 (Released:2019-03-10)
参考文献数
10
著者
鶴屋 和彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.926-935, 2017-05-10 (Released:2018-05-10)
参考文献数
32

慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者における認知機能障害は,貧血,酸化ストレス,レニン・アンジオテンシン系に加え,脳血管障害も大きな要因であり,その予防は極めて重要である.脳血管障害には,高血圧,脂質異常症,貧血とその治療に加え,最近,透析例において血清リン濃度の関与も指摘されている.心房細動合併CKD患者に対する抗凝固療法は,保存期CKD患者では有用性が示されているものの,血液透析患者ではいまだに結論が出ていない.
著者
間野 達雄 遠藤 由理佳 中山 貴博 村山 繁雄 今福 一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.440-443, 2013 (Released:2014-02-10)
参考文献数
5

帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)脳炎は,神経節に潜伏感染したVZVの再活性化による脳炎である.症例は81歳,男性.嘔気,不明言動で発症し,急激に進行する意識レベル低下・脳幹機能障害を呈した.頭部MRIでは大脳底部,脳幹,小脳に広汎な炎症所見を認めた.アシクロビル1,500mg/dayを2週間投与したものの神経障害の改善なく死亡,広範な脳炎と壊死に加え,Alzheimer病の合併が確認された.
著者
湯田 淳一朗 本間 りこ 深瀬 幸子 大河原 晋 大本 英次郎 後藤 敏和 鈴木 昌幸
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.8, pp.2247-2249, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

コレステロール塞栓症は動脈内の粥腫状プラークが剥がれ末梢動脈を閉塞して組織および臓器虚血をきたす疾患である.症例は66歳,男性.入院当初,血尿,蛋白尿を伴う進行性の腎機能障害と発熱があり血管炎症候群を考えたが,腎生検によりコレステロール塞栓症と診断した.ステロイド投与後,炎症反応は改善した.本例は,血管炎症候群様の臨床所見を呈した非典型的なコレステロール塞栓症であった.
著者
河野 通仁 渥美 達也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.625-632, 2022-03-10 (Released:2023-03-10)
参考文献数
10

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は自己抗体の産生,免疫複合体の沈着により腎臓,脳等多彩な臓器を傷害する代表的な自己免疫性疾患のひとつである.グルココルチコイドや免疫抑制薬の使用により生命予後は改善されたが,グルココルチコイドの副作用によりSLE患者の生活の質が低下することが問題視されている.2019年,我が国でSLE診療ガイドラインが作成され,SLEの治療目標は,健常者と何もかわらない社会的活動を行える状態を維持すること,つまり「社会的寛解の維持」と定義された.近年,シクロホスファミドに加え,ヒドロキシクロロキン,ミコフェノール酸モフェチル,ベリムマブ等の新たな薬剤が使用できるようになった.これに伴いSLEの疾患活動性を低下させるだけでなく,グルココルチコイドのさらなる減量,中止が可能となってきている.新たな薬剤の開発も進んでおり,SLE患者の予後ならびに生活の質のさらなる改善が期待される.