著者
渡辺 満久
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.577-581, 2013 (Released:2019-10-31)
参考文献数
8

安全な原子力施設は再稼働してもよいが,原子力規制委員会による厳しい安全審査が必要である。現状では地盤のズレへの対応は困難であり,これに厳しく対処した敦賀原子力発電所における規制委員会の対応は全く適切であった。ただし,問題を敷地内活断層に矮小化するのではなく,周辺活断層の性状や敷地で起こりうる現象を正しく評価することが重要である。下北半島の原子力施設の安全審査などにおいて,規制委員会の真価が問われる。
著者
篠原 慶邦
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.695-700, 1986-08-30 (Released:2009-07-09)
参考文献数
11

ソ連独特のチャンネル型ウラン黒鉛炉RBMK-1000は,減速材の黒鉛ブロック,圧力管型の約1,700本の燃料チャンネル,約180本の制御棒チャンネル等で炉心が構成され,冷却材は沸騰軽水である。炉心が大型で,反応度の気泡係数や減速材温度係数が正となるため,出力分布制御等の問題が重要である。燃料は原子炉運転中に交換できる。本稿では,この型の原子炉の開発の流れ,主要構造,制御安全保護系および工学的安全系の概要について述べる。
著者
小松 賢志
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.940-945, 1998-12-30 (Released:2009-03-31)
参考文献数
4

核融合実験炉建設計画に際して,トリチウム人体影響の推定が社会的な大きな関心を集めている。トリチウムによる人体影響を推定するには,原爆被爆者などγ線による人体障害とトリチウム生物実験により求められたRBEから推定しなければならない。現在までにトリチウムRBEに関しては膨大なデータが集積されているが,このうち発癌についてはRBE=2が妥当と思われる。これによれば, 1.4×108Bq (3.7mCi)のトリチウム摂取により1万人に1人の発癌リスクの増加が予想される。一方,体外被曝のγ線と異なり,トリチウムは水素同位体として生体構成成分と結合し,長期間にわたって被曝を続ける可能性がある。特にトリチウムのDNA結合能は遺伝子損傷に直結する可能性を含んでいる。しかし,細胞内に存在するDNA修復機構によりDNA損傷の大部分が修復されるために, DNA結合型トリチウムによるリスクの増加は体外被曝γ線のわずか2倍程度と見なされること,また実験室内モデルエコシステム実験によれば,トリチウムは生物濃縮されないことが推論された。一方,トリチウムの低線量率効果としては賀田効果とホルミーシス効果が知られている。賀田効果が生じる実験条件は試験管内の作用に限られているが,ホルミーシス効果は多くの生物系で報告されており,そのリスク推定における重要性から,実験値の信頼性やその作用機序など低線量率効果について,今後さらに検討する必要がある。
著者
吉田 英爾 柳澤 宏昌 田辺 雅幸 森本 泰臣 伊地知 雅典 小池 大介 Paul Boyadjian Tamas Liszkai
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.580-584, 2021 (Released:2021-08-10)

NuScale社が開発している小型モジュール炉(SMR)は,2020年8月にNRCがFSERを発行し,米国における標準設計認証を取得している。NuScale SMRは受動安全系を備えており,設計基準事故のみならず設計基準を超過する事故においても運転員操作に頼らずに事故収束が可能で,また公衆への社会的リスクも大幅に低減できる,革新的な軽水炉である。米国においては,従来の軽水炉との違いを考慮し,適用規定の除外等,合理的に許認可プロセスを進めている。本報では,NuScale SMRの特徴と,日本国内導入に向けた安全規制の在り方についての課題を提起している。
著者
鈴木 芳成 佐藤 守 矢内 清恭
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.41-45, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本稿(第9回)では,東京電力福島第一原子力発電所事故の農地及び農畜産物への影響の解明や,放射性物質の除去,低減及び吸収抑制技術の開発に関する福島県農業総合センターの取組みを,米等,果樹,畜産の各分野毎に紹介する。
著者
中村 隆夫 中田 節也 岩田 吉左 小野 勤 濵﨑 史生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.75-86, 2014 (Released:2014-08-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4

Japan is one of the countries with abundant active volcanoes and has a long history of developing countermeasures to mitigate volcanic disasters. In the field of nuclear energy, it is also necessary to assess safety against volcanic hazards, and in 2009, a voluntary guideline was published as JEAG 4625 in order to set up requirements of site assessments and basic designs of nuclear power plants (NPPs). This guideline has been revised to satisfy the requirements for examining the necessity of considering volcanic phenomena and concrete countermeasures in detailed designs of NPPs. This paper focuses on the background and technical basis of this voluntary guideline and shows the basic policy to ensure the safety of NPPs and the requirements to prevent nuclear hazards due to volcanic phenomena based on the Defense in Depth Concept.
著者
藤高 和信
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.880-884, 1993-10-30 (Released:2010-04-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1
著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.468-472, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
4

地球温暖化というと,暑い夏がさらに暑くなることだと思われがちであるけれども,どちらかというと寒い冬が暖かくなって年間平均で気温が高くなるなど,年々の長期的変化に伴い,様々な現象の変動パターンがこれまでになく激変するということである。地球環境の変動をこれまでに蓄積してきたデータから単純に予測することはますます困難になっている。予測もつかないようないことを予測することが求められており,その予測技術を確立していくために,全球における高精度,広域,そして継続した観測がますます必要とされている。
著者
寿楽浩太 土田 昭司 下 道國 神里 達博
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.542-548, 2018 (Released:2020-04-02)

東京電力福島第一原子力発電所事故から7年。福島県の農畜産物の価格が,事故前の水準に戻らない。風評被害はなぜ,起こるのか。この問題にはどう対処すればいいのか。原子力学会の理事会と社会環境部会は春の年会でこれをテーマにしたセッションを企画し,この問題に対する解決策を探った。ここでは登壇した4人の講演と,その後の質疑の概要を紹介する。
著者
小野 章昌
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.780-785, 2014 (Released:2020-02-19)

エネルギー・ミックスの本格的な検討が求められている我が国にとって,将来を託せるエネルギー源の見通しを得ることは何にもまして重要と言えよう。再生可能エネルギーについては導入先進国であるEU諸国,とりわけドイツの実情を知ることが一番の近道である。
著者
北田 淳子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.177-196, 2013 (Released:2013-08-15)
参考文献数
29
被引用文献数
3 9

In this study, the results of surveys conducted over the past 30 years were analyzed. The surveys include continuous opinion polls conducted by seven organizations, those conducted by eight news media one year after the Fukushima Daiichi accident, and those conducted by INSS fourteen times from 1993 to December 2011. The results were as follows: (1) Negative opinions toward nuclear power generation (NPG) suggesting “abolition or reduction”, which used to be 20-30% over the past 30 years, increased to 70% from four to six months after the accident, when there was also much news about renewable energy. (2) Even after the accident, 60% regarded NPG as “inevitable”, but many opposed future replacement or new construction of NPG facilities. (3) After the accident, recognition of the usefulness of NPG and concerns about electric power shortages in the near future remained unchanged, while anxiety and distrust toward NPG increased significantly. When considering power generation options, people now tend to focus on accident risks. (4) Nevertheless, people are neither aware of various possible problems caused by reducing NPG nor willing to accept a significant increase in electricity rate caused by the shift to renewable energy.