著者
西島 和彦
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.859-864, 1992-11-05 (Released:2020-03-04)
参考文献数
2
著者
甲元 眞人
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.578-580, 2019-08-05 (Released:2020-01-31)
参考文献数
8

談話室トポロジカル量子物性物理学への歩み
著者
細道 和夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.288-296, 2014-05-05 (Released:2019-08-22)

超対称な場の量子論の数理の研究において,近年目覚ましい進展が続いている.色々な物理量について,経路積分をあらわに実行し,その値を厳密に評価する強力な手続きが発見されたためである.これは「局所化」(localization)とよばれている.経路積分は量子力学の基本的なアイデアであり,場の理論やその物理量の形式的な定義を与える手段としては非常に優れている.しかし通常は,経路積分による物理量の表示を出発点として,そこから例えば摂動論などの道具立てをさらに整備する必要がある.相互作用する多くの場の理論において,経路積分を解析的に実行するのは一般にはとても難しいので,局所化原理に基づく近年の進展は多くの理論物理学者の関心を集めている.局所化原理は,数学の分野で古くから知られている固定点定理を場の理論の経路積分に応用したものである.固定点定理とは,連続対称性の作用する多様体の位相不変量を,その対称性のもとで不変な点(固定点)の近傍の局地的な情報だけを用いて評価するもので,高次元の困難な積分の問題を,典型的には有限個の固定点の寄与についての足し上げにまで簡単化する著しい定理である.場の理論の超対称性は,じつはこの定理と深い関わりがある.局所化原理によって新しく計算可能になった多くの物理量は,平坦空間ではなく,特殊な背景場の導入された空間や,球面などの曲がった空間の上で定義された場の量子論に関わる.とくに大きな進展は4次元のN=2超対称ゲージ理論においてみられる.このクラスの理論は,ある種の変形によって位相的場の理論になり,4次元多様体のトポロジーとインスタントンの数理の関係を調べる有用な枠組みとなることが知られていた.今世紀に入って,Nekrasovらはこれを発展させ,N=2超対称ゲージ理論の低エネルギー物理に対するインスタントン補正を完全に決める分配関数と,局所化原理に基づくその導出法を提案した.4次元のゲージ理論において局所化原理が大きな成果を収めた最初の例である.より最近では2007年に,PestunによってN=2超対称ゲージ理論が4次元球面上に構成され,分配関数やWilsonループ演算子の期待値が導出された.これをきっかけに,超対称な場の理論を様々な曲がった空間上に構成し,それをもとに場の理論の新しい物理量を定める研究が盛んに行われることになった.局所化原理は今や超対称ゲージ理論の新しい解析手段として広く認識されており,超対称ゲージ理論の数理の研究は,この新しい手法や物理量の厳密公式の発見を機に新たな局面を迎えていると言える.この記事では,4次元N=2超対称ゲージ理論を題材にとり,最近の進展を振り返りながら,局所化原理とは何か,色々な厳密公式がどのように導かれたかを解説する.
著者
佐藤 勝彦 杉山 直
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.2-9, 1993-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
20

米国の宇宙背景放射探査衛星(COBE)が,ビッグバンの証拠と考えられているマイクロ波背景放射のなかに現在の宇宙の構造の種が確かに仕込まれていたことを発見した.それはマイクロ波がわずか10万分の1の振幅の空間的揺らぎをもっていたということではあるが,ビッグバン理論の正しさを強く示唆するものである.さらに,この揺らぎのスペクトルがインフレーション理論の予言するものとほぼ一致することから,この理論の重要な証拠であると言える.ここではこの発見の意味について解説する.
著者
阿部 穣里
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.547-551, 2016-08-05 (Released:2016-11-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

ビッグバン理論によると宇宙誕生時には,高密度のエネルギー状態から粒子と反粒子が同数生成したと考えられている.しかしながら,現在の宇宙は粒子からなる物質のみでほぼ形成されており,どこかで粒子と反粒子の数が非対称になったと考えざるを得ない.粒子・反粒子数が非対称になるための必要条件として,荷電共役変換Cと空間反転Pを同時に行うCP変換に対する対称性の破れ(CPの破れ)が挙げられる.CP対称性破れは,小林–益川理論(標準理論)にも組み込まれており,K0中間子,B0中間子崩壊実験においても確認されている.しかしながら標準理論や既存の観測結果から推測されるCP対称性の破れの効果は非常に小さく,現宇宙の物質優勢のシナリオを定量的には説明できない.したがって標準理論とは異なるCPの破れを含む新しい理論や,その証拠となる物理量の観測に興味が持たれており,その一つの候補として素粒子の電気双極子モーメント(Electric Dipole Moment: EDM)の観測が挙げられる.素粒子に非ゼロのEDMが存在すると仮定すると,EDMは粒子のスピン軸に沿って定義される(左図参照).EDMがスピン軸に平行と仮定し,この状態に時間反転操作を行うと,スピンの向きは反転する.一方EDMは電荷×距離の次元を持つため,時間反転の影響を受けない.時間反転操作前後を比較すると,EDMの向きがスピン軸から測って真逆になるため,T反転操作で物理描像が変化している.つまりEDMを非ゼロの値で観測できれば,T対称性の破れが観測されることになる.また,CPT定理を仮定すると,T反転はCP反転と等価であることから,EDMの観測はCP対称性破れの観測を示す.EDMの観測としては中性子,陽子,電子などの素粒子やそれらの複合粒子に対して幅広く試みられているが,核スピンゼロの常磁性原子や分子においては,電子に起因するEDMに絞って観測することができる.ただし,直接1電子のEDMが測定できるのではなく,電子EDM(de)と周囲の電場との相互作用エネルギーが観測量となる.また,この電場に相当する量(分子においては特に有効電場Eeffと呼ばれ,分子内の核や電子が作る電場に起因する)は,相対論的量子力学に基づく電子状態理論からのみ計算可能である.したがってこの研究は,“原子・分子の電子状態理論”,“原子分子分光”,および“素粒子理論”の3つの異なるフィールドの共同研究で成り立っている.分子を対象とした実験は原子に比べて歴史が浅く,これまで報告された有効電場を求める理論研究は,多くの近似を含んでいた.そこで我々は,4成分ディラック法を基にした一体レベルで厳密な相対論法を用い,また,電子状態理論の金字塔とされる結合クラスター(Coupled Cluster: CC)法に基づいた有効電場計算プログラムを開発した.本手法をYbF分子に対して適用し,有効電場を23.1 GV/cmとして決定した.さらに,有効電場が大きいほど実験感度も向上するため,大きな有効電場を持つ分子を探して提言している.
著者
杉浦 祥 清水 明
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.368-373, 2015

マクスウェルやボルツマンにより創始された統計力学は,ギブズにより「アンサンブル形式」の統計力学として完成し,物理学の礎の一つとなった.しかし,その基本原理については,未解明な部分も残され,教科書の記述も様々である.アンサンブル形式では,等重率の原理に基づき,「(統計)アンサンブル」と呼ばれる確率集団を導入する.そして磁化や相関関数といった力学のみで定義できる物理量(力学変数)の平衡値は,この確率集団での平均値(アンサンブル平均)として求めることができる.しかし,熱力学で登場する,温度やエントロピーといった量(純熱力学変数)は,力学変数として表すことができない.そこで,純熱力学変数は,von Neumannエントロピー(古典系の場合Shannon entropy)や分配関数から求める.しかし,統計力学の基本原理である等重率の原理の本質は,アンサンブル平均ではなく,「ほとんどのミクロ状態がマクロには同じだ」ということである.即ち,温度や体積といったパラメーターを指定した時にあり得るミクロ状態の個数は組み合わせ論的に増大し,すぐに天文学的な数になる.このミクロ状態達のうち,圧倒的多数が平衡状態とみなせる状態であり,マクロ物理量を測った時に同じ測定値を返す.それとは異なる測定値を取るような非平衡状態はずっと少ない.その結果,平衡状態も非平衡状態もひっくるめたアンサンブルを作ってアンサンブル平均を求めれば,その値はほぼ100%を占める平衡状態での値になる.この「典型性」こそが,等重率の本質なのである.それならば,天文学的な数のミクロ状態についてアンサンブル平均を計算する必要は必ずしもない.我々は最近,マクロな量子系における典型性に着目し,熱力学的平衡状態を代表する,熱的な量子純粋状態(Thermal Pure Quantum state,略してTPQ state)をたった一つ用意するだけで統計力学の全ての結果が得られることを示した.つまり,磁化や相関関数といった力学変数がTPQ stateの期待値により計算されるだけでなく,熱力学関数のような純熱力学変数すらも適切なTPQ stateの規格化定数から得られる.TPQ stateは,アンサンブルの持つエネルギーの確率分布と非常に近いエネルギー分布を持つ量子純粋状態の中から,一つをランダムに選び出した状態であり,物理量のゆらぎまでも再現する状態となっている.アンサンブル形式では,熱ゆらぎの効果はアンサンブルを導入した結果生じる古典混合によって取り込まれると見なすことができた.しかし,TPQ stateを用いた定式化では,量子純粋状態の内部に量子エンタングルメントを作ることで,熱ゆらぎも量子ゆらぎの一部として取り込んでいる.その結果,たった一つのTPQ stateが統計力学で興味ある全ての物理量を正確に与えるのである.たった一つの量子純粋状態で熱力学的平衡状態が記述できるという事実は,理論的な興味のみならず,応用上もメリットをもたらしている.その例として,本記事では代表的なフラストレーション系である,カゴメ格子系上のハイゼンベルグ模型の数値計算結果を示す.
著者
片山 諒 岡田 直也 Sun Yue 為ヶ井 強 石田 武和
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.72, pp.1708, 2017

<p>FeSeは、a軸方向とb軸方向には等方的であるが、c軸方向には異方的であると考えられており、その異方性を調べることで、転移温度や臨界磁場を決定することを目的として、研究を行っている。6年前に使用されていた磁気トルクの測定装置を現在使えるようにwindowsXPのPCから、windows10のPCに対応するように、セットアップを行った。また、FeSe単結晶の磁気トルク測定が出来るように試料取り付けなど、適用させた。現在測定中であるが、現状を紹介したい。</p>