著者
木田 光広 長谷川 力也 松本 高明 三島 孝仁 金子 亨 徳永 周子 山内 浩史 奥脇 興介 宮澤 志朗 岩井 知久 竹澤 三代子 菊地 秀彦 渡辺 摩也 今泉 弘 小泉 和三郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.456-463, 2015-03-05 (Released:2015-03-05)
参考文献数
26
被引用文献数
1

胆嚢腺筋症は,1960年にJutrasによりRASの増殖とそれにともなう胆嚢壁の肥厚を引きおこす病態として報告され,武藤らにより胆嚢壁1 cm以内にRASが5個以上存在し,壁が3 mm以上に肥厚したものと定義された.病変の広がりにより胆嚢全体に瀰漫性に存在するびまん型(G型)diffuse type,胆嚢頸部や体部あるいは両方にまたがり輪状に存在し,胆嚢を2つに分節する分節型(S型)segmental type,胆嚢底部に限局的に存在する底部型(F型)fundal typeの3つに分類される.画像診断では胆嚢癌との鑑別が重要で,胆嚢腺筋症は胆嚢壁の肥厚と,拡張したRASが診断の決め手であり,簡便な腹部超音波検査でスクリーニングされ,診断能の高い検査は超音波内視鏡(EUS)とMRIである.胆嚢腺筋症は,40~60歳代の男性に多く診断される.胆嚢癌との関係は疑われているがコンセンサスは得られていない現状では,定期的な経過観察が必要と思われる.
著者
中村 光男 丹藤 雄介
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.11, pp.1347-1354, 2000-11-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
44
被引用文献数
1

非代償期慢性膵炎患者は膵性脂肪便や膵性糖尿病を合併することが多い.前者の診断には糞便の肉眼的観察とともに糞便中脂肪排泄量を簡便に定量できる近赤外分光法が最もすぐれている.また蓄便なしに膵機能不全を診断するためには13C-混合中性脂肪を用いた呼気13CO2脂肪消化吸収試験を行うことがよりよい.膵性脂肪便を確診したら大量の膵消化酵素による補充療法を行うべきである.しかし,膵性脂肪便患者は炭水化物吸収不良も合併していることが多いので,インスリン治療と膵消化酵素治療法を連動して考え,更に栄養状態改善を治療のゴールとすべきである.
著者
三島 義之 石原 俊治
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.560-569, 2019-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
86

過敏性腸症候群(IBS)患者の一部には,腸管粘膜局所に顕微鏡的な微弱炎症を有し,腸管免疫の持続的な賦活化を認める.その粘膜持続炎症がIBSの病態に密接に関与していると考えられるが,そこに存在する詳細なメカニズムに不明な点が多い.そこで今回,IBSで腸管粘膜の微弱炎症の持続がなぜおこるのか,粘膜炎症がどのようにして腸管知覚過敏/機能異常を生じるのか,粘膜炎症に対する抗炎症治療がPI-IBS治療となり得るのかに着目し,文献的考察を行った.今後は,新たな粘膜炎症に焦点を当てた検査法,治療法の確立を目指して,現行治療に難渋しているIBS患者へのbreakthroughとなることを期待したい.
著者
坂本 長逸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.6, pp.455-467, 2019-06-10 (Released:2019-06-10)
参考文献数
93

非ステロイド性消炎鎮痛薬,アスピリンによる消化管障害発症機序は古くから検討され,その詳細が明らかにされている.病態生理の理解から選択的COX-2阻害薬の粘膜障害性が少ないことが示され,ガイドラインで推奨されている.アスピリンによる上部消化管傷害はプロトンポンプ阻害薬で管理できるが,長期服用者の下部消化管障害についてはさらに検討が必要である.直接経口抗凝固薬については消化管出血リスクに差があり,患者の背景を考慮した薬剤選択が必要である.最近注目されている免疫チェックポイント阻害薬の腸炎,下痢の病態は炎症性腸疾患と類似し,免疫関連有害事象としての理解と管理が必要と思われる.
著者
新井 由季 玉田 喜一 佐藤 幸浩 和田 伸一 田野 茂夫 花塚 和伸 大橋 明 菅野 健太郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.1412-1416, 2005 (Released:2005-11-04)
参考文献数
17

胆嚢収縮能超音波検査において一般に用いられている卵黄に代わりカロリーメイト缶®を用い,その有用性について検討した.健常人ボランテイア27名を対象とし,腹部超音波検査にて空腹時胆嚢容積をellipsoid法にて求めた.カロリーメイト缶®飲用後,30分後と60分後に胆嚢容積を測定し,胆嚢収縮率(EF)を求めた.空腹時胆嚢容積は平均13.5 ml, EFは平均で30分後53%,60分後62%と充分な胆嚢収縮が見られ,カロリーメイト缶®は胆嚢収縮剤として有用と考えられた.また,空腹時胆嚢容積が4 mlに満たない例では前日の脂肪食の影響を除くために,禁食を厳重にして再検する必要があると考えられた.
著者
武田 宏司 武藤 修一 大西 俊介 浅香 正博
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.1586-1591, 2010-10-05
参考文献数
24

機能性ディスペプシア(FD)治療に用いられる代表的な方剤である六君子湯は,食欲不振に対する効果を手がかりとして,そのユニークな作用機序の解明が進んでいる.六君子湯の作用機序としては,従来,胃排出促進および胃適応弛緩の改善が知られていたが,摂食促進ホルモンであるグレリンの分泌を亢進させることがごく最近明らかとなった.シスプラチンや選択的セロトニントランスポーター阻害薬(SSRI)投与は,消化管粘膜や脳内のセロトニンを増加させ,セロトニン2Bあるいは2C受容体を介してグレリン分泌を抑制することがその副作用の発現に関わっているが,六君子湯はセロトニン2Bあるいは2C受容体に拮抗してグレリン分泌を改善する.六君子湯のグレリン分泌促進作用は,FDに対する効果に関わっている可能性も示唆されている.また,六君子湯は高齢動物の視床下部でレプチンの作用と拮抗することにより食欲を改善させる機序も有しており,今後さらに多くの作用点が見出される可能性が高い.<br>
著者
恩地 森一 阿部 雅則
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.1823-1836, 2011 (Released:2011-11-07)
参考文献数
82
被引用文献数
1

自己免疫性肝炎(AIH)の疾患概念が定着してきていて,最近の全国調査では高齢化,軽症例や急性肝不全症例が報告され,非典型例が増えている.また,急性肝炎例やIgG4関連AIHなどの新しい病態や病型も報告され,診療,研究に新しい話題が提供されている.発症機構は依然不明であるが,免疫学的解析と遺伝子解析が進んでいる.診断方法や治療法については大きな進歩がなく,今後,疾患特異的な治療法の開発が待たれる.
著者
白地 孝
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.1479-1494, 1976 (Released:2007-12-26)
参考文献数
34

閉塞性黄疸時のビリルビンの腎よりの排泄機序, 閉塞性黄疸時の腎障害, 尿排泄障害時における血中ビリルビン値の変化, ビリルビンによる腎障害などについて, 臨床的, 実験的に検討し, つぎの様な結果を得た.1) 尿中へのビリルビンの排泄量は, 血清総ビリルビン値および直接型ビリルビン値と正の相関々係を示し, また血清アルブミン予備結合能と負の相関々係を示すことから, ビリルビンの尿中への排泄には, アルブミンと結合していない遊離の直接型ビリルビンが尿中に排泄される可能性が強いことが示された.2) 片側尿管の結紮その他によつて尿排泄障害をおこし, あるいは腎障害を有する例では, 尿中排泄ビリルビン量が減少し, 血清ビリルビン値がより高値を示すことから, 血清ビリルビンの値は, 腎機能と密に関係していることも明らかになつた.3) 黄疸発現よりの期間が長くなるにつれ, 腎障害が増強し, 尿中へのビリルビンの排泄量が減少した.
著者
肱岡 範 佐藤 幸浩 岩下 裕一 犬童 裕成
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.723-728, 2005 (Released:2005-06-14)
参考文献数
35
被引用文献数
1

症例は熊本県在住の59歳男性.35年前から狩猟期に熊本県内の野生のシカ・イノシシを捕獲し,肉や内臓を生食している.口渇,筋肉痛を主訴に近医受診し黄疸および肝機能障害を指摘され紹介入院.IgMクラスのE型肝炎ウイルス抗体およびHEV-RNA陽性であり,E型急性肝炎と診断した.本症は海外渡航歴がなく特異な食習慣を有することから,zoonotic food-borne transmissionが疑われる1例として報告する.
著者
岩切 勝彦 川見 典之 佐野 弘仁 田中 由理子 竹之内 菜菜 星野 慎太朗 梅澤 まり子 坂本 長逸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.971-978, 2013 (Released:2013-06-05)
参考文献数
26

胃食道逆流症と睡眠障害の関連性が注目されている.夜間胃酸逆流の主な発生機序は日中と同様に一過性下部食道括約筋(LES)弛緩時に発生するが,夜間胃酸逆流発生後の胃酸排出機序は日中とは異なり,二次蠕動波が重要である.しかし,非びらん性胃食道逆流症患者や逆流性食道炎患者では二次蠕動波の出現率は健常者に比べ低下しており,夜間胃酸逆流が発生すると胃酸が長時間食道内に停滞すると同時に,逆流症状をおこしやすい上部食道に胃酸が達するため,逆流症状が出現し睡眠障害をおこす可能性がある.また一過性LES弛緩発生時の睡眠状態は覚醒時または浅い睡眠状態であり,睡眠障害自体が夜間逆流を誘発している可能性もある.
著者
瀬川 昂生 有沢 富康 丹羽 康正 加藤 忠 塚本 純久 後藤 秀実 早川 哲夫 中澤 三郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.849-853, 1994

入院および外来の患者,延べ387名より胃管にて空腹時に有管法にて分画採取した基礎およびテトラガストリン刺激後のpH0.95からpH6.9までの標本,3206検体を用いて胃液のpHと滴定酸度(mEq/l)との関係について検討した.一定のpHに対応する滴定酸度は一定した値ではなく,かつその変動幅はpHが高いほど大であったが,pHが高くなるとともに酸度は全体として低下し,pH(X)と滴定酸度(Y)との関係の近似式(Y=369.19-424.09X+203.66X<SUP>2</SUP>-48.29X<SUP>3</SUP>+5.57X<SUP>4</SUP>-0.25X<SUP>5</SUP>)を求めることができた.また,これにより計算したヒト胃液のpHから酸度(mEq/l)を求める換算表を日常臨床のために呈示した.
著者
矢ヶ部 知美 隅 健次 樋高 克彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.70-76, 2010 (Released:2010-01-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2

症例(1),(2) 20歳代外国人女性.肺結核の治療開始後に腹膜刺激症状が出現した.腸結核に特徴的な輪状,帯状潰瘍など多彩な形態の活動性潰瘍を認め,抗結核剤により軽快した.症例(3) 20歳代男性.肺結核治療開始直後に消化管穿孔をきたし,緊急手術を施行し救命し得た.切除標本より乾酪壊死をともなった肉芽腫および結核菌が証明された.若年成人で十分な健康管理が行われていない者には,重症結核が発症し得ることに注意すべきである.
著者
茶山 一彰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.765-767, 2018-09-10 (Released:2018-09-10)
参考文献数
9

肝硬変,肝細胞癌の原因となるB型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルスの治療は近年格段に改善し,C型では100%に近い症例でウイルス排除が可能となった.しかし,ウイルス排除後の肝細胞癌の発症はある程度の頻度で認められるため,慎重な経過観察が必要である.また,ウイルス排除にともなう肝細胞癌の急速な進展,B型肝炎ウイルスの活性化にも注意が必要である.一方B型肝炎は核酸アナログの投与によりウイルス増殖の抑制,病態の進展の抑制は可能となった.しかし,肝細胞癌の発症はなくなるわけではなく,この点にも注意が必要である.最近非B非Cの肝細胞癌が急速に増加してきており,その原因となる自己免疫性肝炎,脂肪性肝炎,アルコール性肝障害などが新たな課題となっている.
著者
長沼 誠 玄 世鋒 渡辺 守
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.845-854, 2010 (Released:2010-06-07)
参考文献数
35

抗TNFa抗体製剤の登場と小腸内視鏡の登場は近年のクローン病における治療戦略を大きく変えた.抗TNFa抗体製剤によりこれまでクローン病の治療目標が「症状を改善させる」ことから「粘膜治癒させる」ことになってきた.小腸内視鏡の開発と実用化はこれまで確認することができなかった小腸病変を直視下に観察することを可能にし,大腸病変だけでなく小腸病変の治療効果を確認することが可能となっている.本稿では小腸病変の診断法および治療法について現状と近未来的な展望について概説する.
著者
瀬川 昂生 有沢 富康 丹羽 康正 加藤 忠 塚本 純久 後藤 秀実 早川 哲夫 中澤 三郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.849-853, 1994 (Released:2008-02-26)
参考文献数
9

入院および外来の患者,延べ387名より胃管にて空腹時に有管法にて分画採取した基礎およびテトラガストリン刺激後のpH0.95からpH6.9までの標本,3206検体を用いて胃液のpHと滴定酸度(mEq/l)との関係について検討した.一定のpHに対応する滴定酸度は一定した値ではなく,かつその変動幅はpHが高いほど大であったが,pHが高くなるとともに酸度は全体として低下し,pH(X)と滴定酸度(Y)との関係の近似式(Y=369.19-424.09X+203.66X2-48.29X3+5.57X4-0.25X5)を求めることができた.また,これにより計算したヒト胃液のpHから酸度(mEq/l)を求める換算表を日常臨床のために呈示した.
著者
水野 元夫 武 進 石木 邦治 山本 和秀
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.30-36, 2012 (Released:2012-01-06)
参考文献数
32

Helicobacter pylori除菌治療による胃癌1次予防効果に関してはレベルの高いエビデンスとして示されているとはいえないのが現状である.しかし,早期胃癌内視鏡治療後の2次癌の予防効果がランダム化比較試験により明らかとなり,さらに,われわれの報告を含め,1次癌の予防効果を示す観察研究もいくつか報告されてきた.この点に関し,さらなる長期にわたる臨床研究は時間の浪費であり,積極的な除菌による胃癌予防を実行すべき時代に入ったと考える.より効果的な胃癌予防,さらには新規感染の防止のため,就職,結婚などの機会に,できるだけ早期にH. pyloriスクリーニングを行い,感染者には可能な限り除菌を行うように勧めるべきである.
著者
木下 芳一 足立 経一 河村 朗
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.10, pp.1243-1251, 2000-10-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
37

逆流性食道炎の分類と治療法について概説した.逆流性食道炎は,症状によってその診断が疑われ,内視鏡検査によって確定診断と重症度の分類が行われていることが多い疾患であり,多くの内視鏡分類が用いられてきた.これらの中で最近では重症度を判定し,予後を推定し,治療法の選択に有用な情報を提供しうるLos Angeles分類やその改良型が多く用いられている.逆流性食道炎の治療法には薬物療法が主力となるが,その中でも酸分泌抑制剤が主に用いられている.H2RAは夜間の酸分泌を強力に抑制するが,食後の酸分泌抑制力は弱く,PPIは日中の酸分泌の抑制は強力であるが,夜間はH2RAに比べてその作用は弱い.特にH. pylori感染陰性者ではPPIの夜間胃内pH上昇作用は,あまり強力ではない.逆流性食道炎のうち軽症のものは主に日中の食後に胃食道逆流がおこるが,gradeが高くなると日中に加えて夜間にも逆流が高頻度におこるようになる.また,gradeの高い逆流性食道炎は,H. pylori陰性者が多いことが明らかとなっているため,PPIのみでは夜間の胃内pHの低下が持続し,夜間酸逆流のため難治性となり,H2RAの追加投与が必要となる場合もある.
著者
阿部 和道 高橋 敦史 大平 弘正
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.772-779, 2013 (Released:2013-05-07)
参考文献数
65

自然免疫応答は病原体の体内への侵入に対し初期におこる生体反応である.近年,自然免疫の過剰反応が自己免疫性疾患の発症に関与することが明らかになってきた.肝臓は独自の免疫機構を有し,自己免疫性肝疾患である自己免疫性肝炎(AIH),原発性胆汁性肝硬変(PBC),原発性硬化性胆管炎(PSC)においても,自然免疫に関する知見が数多く示されている.PBCではToll様受容体を主体とする自然免疫と病態形成に関する研究が進められ,AIHやPSCにおいても腸管微生物由来の病原体関連分子パターンとパターン認識受容体を介する病態の関与が推察されている.自然免疫の理解がこれら疾患の病態を考える上で重要である.
著者
河野 透
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.876-884, 2010 (Released:2010-06-07)
参考文献数
62

抗体,免疫治療など炎症性腸疾患であるクローン病に対する内科的治療が急速に進歩してきているにもかかわらず,罹病期間中にクローン病に起因する原因で外科的治療を受ける割合は極めて高いが,そのほとんどが根治的治療ではなく,適応は限定される(狭窄,膿瘍,瘻孔).クローン病患者の腸管手術に際して可能な限り腸管温存するべきである.病変部位が残る問題点はあるが小腸病変に限れば狭窄形成術が推奨される.病変腸管切除後の吻合部狭窄による再手術率が極めて高いことが大きな問題点であり,再発形式を鑑みた新たな吻合法の開発が期待される.肛門病変では排膿ドレナージが基本であるが,早期発見が最も重要である.
著者
河野 透 葛西 眞一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.442-452, 2005 (Released:2005-06-06)
参考文献数
91
被引用文献数
1

炎症性腸疾患の現在の標準的外科治療の原型は四半世紀前にさかのぼる.潰瘍性大腸炎の標準的外科治療は大腸全摘,回腸パウチ肛門(管)吻合である.超音波メスの登場により肛門(管)吻合部の合併症が減少し,シンクロ法の開発により手術時間が短縮された.肛門管直腸粘膜を完全摘出し,肛門吻合するか,一部残した機械吻合がよいのかについては今後の検討課題である.手術適応としては社会的適応患者が増加している.他方,クローン病患者の手術適応に関してはできるだけ慎重にすべきで,術式に関しても腸管温存が主体で,狭窄形成術が推奨されている.クローン病による瘻孔に関してはインフリキシマブの出現で手術適応が変化する可能性があるが,今後の大規模な臨床試験が必要である.