1 0 0 0 OA 大腸癌の予防

著者
高山 哲治 宮本 弘志 六車 直樹
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.1168-1175, 2016-07-05 (Released:2016-07-05)
参考文献数
23

食生活を改善して大腸癌を予防する1次予防では,赤身肉,加工肉,アルコール,喫煙などの危険因子を回避(または減量)すること,野菜,線維,果物,牛乳,カルシウムなどを十分に摂取するとともに,適度な運動を行うように心がけるべきである.また,大腸癌を早期に発見する2次予防では,便潜血検査や大腸内視鏡検査を受けることが重要である.大腸内視鏡検査では,前癌病変である腺腫を摘除することも癌の予防に重要である.一方,現在種々の薬剤の発癌予防効果を調べる臨床試験が行われており,近い将来,有効な予防薬が開発されることが期待される.大腸癌の3次予防としては,異時性の大腸癌予防の観点から定期検査の受診が必要である.
著者
小関 至 山口 将功 中島 知明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.606-618, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
113

亜鉛は300種類以上の酵素の活性中心または補酵素として働くことから,生命維持にとって不可欠な微量元素であり,亜鉛欠乏により多彩な症状が出現する.従来,本邦では治療薬として承認された亜鉛製剤はなかったが,2017年3月,ウィルソン病に対して長期の安全性と効果が認められていた酢酸亜鉛水和物が低亜鉛血症に対して効能追加となった.慢性肝疾患の患者では低亜鉛血症の頻度が高く,低亜鉛血症の病態が種々の自覚症状の出現のみならず,肝線維化の進展や肝発癌リスクの増加と深い関係があることが近年明らかとされた.今後,酢酸亜鉛水和物による治療が普及するものと推測され,亜鉛欠乏と慢性肝疾患に対する知見を概説する.
著者
廣田 衛久 下瀬川 徹
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.494-503, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
63

蛋白分解酵素阻害薬膵局所持続動注療法(動注療法)は,重症急性膵炎に対する特殊治療として1990年代より全国で実施されてきた.最近になり,その有効性を疑問視する臨床研究の報告が相次ぎ,さらに動注療法が保険未収載であるため,急性膵炎診療ガイドライン2015[第4版]では推奨されなくなった.そのため,動注療法の有用性を検証し保険収載を見据えた多施設共同ランダム化比較試験が計画され,医師主導治験として実施された.その結果,動注療法の静注療法に対する優越性は証明されず,むしろ安全面の問題が指摘された.現在の重症急性膵炎診療の中で,侵襲的な動注療法を行うメリットはないと考えるべきであろう.
著者
小野寺 誠 藤野 靖久 井上 義博 今井 聡子 遠藤 重厚
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.1280-1287, 2006 (Released:2006-11-06)
参考文献数
11
被引用文献数
2

膵仮性嚢胞出血の2例を経験した.症例1は脾動脈瘤破裂による出血性ショックを呈していたが,初期輸液による反応からrespondersと判断し緊急TAEにより救命した.症例2はrespondersであり血管造影を施行したが嚢胞内に出血が限局していたため経過観察が可能であった.膵嚢胞出血例では初期輸液による循環動態の反応により速やかに治療方針を選択することが重要であると思われた.
著者
佐々木 諭実彦 青木 佐知子 青木 孝太 阿知波 宏一 山 剛基 久保田 稔 石川 大介 水谷 哲也 國井 伸 渡辺 一正 奥村 明彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.569-575, 2009 (Released:2009-04-06)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は35歳の女性.大腸憩室炎に対してセフェム系抗菌薬であるセフトリアキソンを投与した後に胆砂が出現し急性膵炎を発症した.約1週間の絶食期間があったこと,セフトリアキソンが長期に投与されたことなどの要因が重なって胆砂が形成されたと考えられた.セフトリアキソン投与が胆泥や胆石の形成を促進する因子であることを十分認識し,腹部症状が出現した際には速やかに精査を行い適切な治療を開始する必要があると考えられる.
著者
塩谷 昭子 鎌田 智有 春間 賢
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.54-59, 2012 (Released:2012-01-06)
参考文献数
24

NSAID消化性潰瘍の発生には,胃酸分泌が重要な因子であり,胃酸分泌の低下あるいは抑制は潰瘍発生に抑制的に働く.H. pylori除菌は,NSAIDs内服開始前の潰瘍発生のリスクを低下させるが,長期NSAIDs内服例に対しては,潰瘍発生の予防効果はプロトンポンプ阻害薬(PPI)と比較して十分ではない.低用量アスピリンを含めNSAIDs継続投与が必要な潰瘍出血例に対しては,除菌の有無にかかわらず酸分泌を十分に抑制することが重要である.H. pylori感染とNSAIDsは互いに独立した潰瘍の危険因子であり,除菌治療のみでは,NSAIDsによる消化性潰瘍は予防できないことに注意すべきである.
著者
山田 聡志 岩崎 友洋 佐藤 明人 坪井 康紀 柳 雅彦 高橋 達 薄田 浩幸 江村 厳
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.1947-1955, 2010 (Released:2010-12-06)
参考文献数
24

症例は54歳男性.多発性骨髄腫に対する自家末梢血幹細胞移植約2カ月後に激烈な上腹部痛にて発症(発症時免疫抑制剤は使用していない),鎮痛に麻薬を必要とした.発症7日後に全身に皮疹が出現し内臓播種性の水痘感染症と診断,抗ウイルス剤投与にて改善した.経過中の腹部CTで腹腔,上腸間膜動脈根部付近の脂肪濃度上昇を認め,この所見が腹部症状へ関与している可能性と本疾患の早期診断の一助となり得ることを示した.
著者
屋嘉比 康治 山口 菜緒美 細見 英里子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.10, pp.1672-1681, 2016-10-05 (Released:2016-10-05)
参考文献数
53

機能性消化管障害,特に機能性ディスペプシアにおいては食物摂取がその発症に影響する.食物摂取によって消化器官から多くの分泌液や消化酵素などが分泌され,さらにその粉砕や食物との混合,さらに移送において消化管運動が誘発される.消化管ホルモンはこれらの消化吸収機能を促進する活性物質である.特に,今回取り上げたグレリン,コレシストキニン,ペプチドYYは食欲調節作用を有し,さらに胃や十二指腸など腸管運動の調節作用を有している.本稿においてはこれらの摂食ホルモンの生理作用と脳-腸相関を介する食欲と腸管運動の調節機序を示し,さらに機能性ディスペプシアとこれらの摂食ペプチドとの関連について論究した.
著者
高橋 和弘 坂本 典子 岡田 正史 為近 義夫 石橋 大海
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.719-722, 2000-06-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
9

症例は57歳女性,1997年12月自己免疫性肝炎と診断され,以後プレドニゾロン維持投与で経過は良好であった.1998年7月下旬より,呼吸困難出現し来院,高度の肝機能障害を認めるとともに,胸部CTで肺野の間質性陰影の増強を認めた.間質性肺炎をともなった自己免疫性肝炎の急性増悪と診断し,メチルプレドニゾロン250mgより投与を開始したところ,速やかに呼吸困難は改善し,血液ガス,肝機能も正常化し,胸部CTの間質性陰影も消失した.自己免疫性肝炎と間質性肺炎の合併はまれであり,また自己免疫性肝炎の急性増悪にともなって間質性肺炎を発症するという興味ある経過をとったので報告する.
著者
九嶋 亮治
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.160-167, 2018-02-15 (Released:2018-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2

十二指腸の上皮性腫瘍性を正しく診断するためには,十二指腸の特徴的な組織学的構築を知り,腫瘍様病変,良性腫瘍,さらに悪性腫瘍の成り立ちを,組織発生の観点から理解しておくことが重要である.表面は空腸・回腸に連なる小腸型粘膜が被覆しているが,前腸由来である乳頭部あたりまでは粘膜下にブルンネル腺が存在する.ブルンネル腺は胃の粘液腺と同様の性質を持っており,びらんや潰瘍によって胃腺窩上皮へ分化する.また,十二指腸粘膜やブルンネル腺内には胃底腺型細胞もしばしば観察される.したがって,十二指腸の上皮性腫瘍様病変や腫瘍には小腸型形質と胃型・ブルンネル腺形質,あるいはそれらの混合型形質を持つものがあることを理解したい.
著者
鈴木 統大 梶原 敦 宇佐美 智乃 中島 陽子 山宮 知 紺田 健一 下間 祐 打越 学 栗原 利和 吉田 仁
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.576-582, 2019-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
22

65歳男性,腎前性急性腎障害で入院歴あり.頻回の下痢と食欲不振があり,腎機能の増悪,低ナトリウム血症のため入院.大腸内視鏡検査で直腸に粘液分泌をともなう亜全周性の絨毛腺腫を認めた.絨毛腺腫による電解質喪失症候群(Electrolyte Depletion syndrome;EDS)と診断,腹会陰式直腸切除術を施行.病理組織学的に癌は認められず絨毛/管状腺腫と診断され,国内報告ではまれな症例であり報告する.
著者
齊藤 真弘 及川 圭介 内山 志保 猪股 芳文 安倍 修 笹野 公伸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.1272-1280, 2013 (Released:2013-07-05)
参考文献数
23
被引用文献数
2

われわれは極めてまれな胃原発未分化多形肉腫を経験した.症例は74歳女性で,腹部不快感を主訴に受診した.CT上,13cm大の胃粘膜下腫瘍および肝・骨転移を認めたが,これらは8カ月前には認めていなかった.間葉系腫瘍を疑いEUS-FNABを行ったが,免疫染色はすべて陰性であり,c-kitやPDGFRαの遺伝子変異も認めなかった.その後も腫瘍は急速に増大し2カ月後に死亡した.剖検病理所見も同様で未分化多形肉腫と診断された.
著者
古川 徹
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.1329-1337, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
48
被引用文献数
7

膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)と膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は浸潤性膵癌の前駆病変に相当する膵管上皮内腫瘍として対比される病変であり,PanINが顕微的で肉眼的には認識不可能な病変で,異型が弱い病変から強い病変に変化して浸潤性膵管癌に至るone pathway上の病変と考えられるのに対し,IPMNは肉眼上認識可能な病変であり,組織学的に種々のバリエーションがあって浸潤像も多様なmultiple pathwaysの病変に相当する.分子異常については少なくとも高異型度病変においてSMAD4の異常の頻度が全く異なる.関連する浸潤癌の予後も異なる.このように,両者は対照的病変であって厳に鑑別される必要がある.PanIN,IPMNの診断能の向上が浸潤性膵癌の早期発見,ひいては予後改善につながることが期待される.
著者
石橋 陽子 松薗 絵美 合田 智宏 横山 文明 菅井 望 関 英幸 三浦 淳彦 藤田 淳 鈴木 潤一 鈴木 昭 深澤 雄一郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.759-768, 2011 (Released:2011-05-11)
参考文献数
24
被引用文献数
2

急性壊死性食道炎の4例を経験した.4例とも初発症状は吐血で,上部消化管内視鏡検査では特徴的な黒色食道を呈した.発症時の基礎疾患は,3例がケトアシドーシス,2例が糖尿病であった.3例は保存的に軽快し,死亡例を1例認めたが死因は急性壊死性食道炎によるものではなく,基礎疾患である敗血症が予後を規定した.急性壊死性食道炎はまれな疾患ではあるが,緊急内視鏡における鑑別診断として念頭に置くべきであると考える.
著者
伊佐地 秀司
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.617-626, 2017-04-05 (Released:2017-04-05)
参考文献数
19

日本膵臓学会(JPS)の膵癌取扱い規約第7版(2016)は,(1)ダイナミックCT所見から進展度診断ができる,(2)Stage分類と治療方針との間にひもづけができる,(3)切除可能性分類を導入することで詳細な治療方針が立てられる,(4)病理分類のWHO分類との整合性を図る,(5)術前治療が普及しつつある現状をふまえて生検診,細胞診,治療後の組織学的効果判定基準を導入すること,をコンセプトにして改訂作業が行われた結果,大幅な改訂となった.JPS第6版(2009)と第7版,UICC第7版(2009)と第8版(2017)を対比しながら,規約改訂のポイントを規約検討委員会の委員長という立場から解説した.
著者
小金井 一隆 木村 英明 杉田 昭 荒井 勝彦 福島 恒男 嶋田 紘
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.1355-1360, 2006 (Released:2006-12-06)
参考文献数
20
被引用文献数
2

潰瘍性大腸炎に直腸(肛門)膣瘻を合併した5例の治療成績を検討した.全例が発症後5年以上経過した全大腸炎型,再燃緩解型で,4例に肛門周囲膿瘍,下部直腸狭窄などの病変があった.難治またはdysplasiaのため4例に大腸全摘,回腸嚢肛門管吻合術を行い,1例は保存的治療中である.瘻孔を含めて直腸を切除した1例と瘻孔部を残し肛門膣中隔を筋皮弁で再建した1例は膣瘻が完全に閉鎖し,瘻孔部を切除した1例は少量の分泌物を認めるのみで,著明に改善した.潰瘍性大腸炎に合併する直腸膣瘻は下部直腸,肛門に長期間強い炎症がある例に発症し,根治には大腸全摘術,回腸嚢肛門管あるいは肛門吻合術が必要と思われた.
著者
小野 博美 草野 満夫 二瓶 壮史 林 秀幸 福島 拓 川上 雅人 檀上 泰 長島 君元 清水 勇一 川俣 太 本多 昌平 嶋村 剛 西原 広史
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.385-393, 2018-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
19

胃癌の内視鏡的marking法として,リポ蛋白と結合すると蛍光を発する性質を利用したindocyanine green(ICG)蛍光法が有用であるか検討した.手術3日前に内視鏡的に胃癌の周囲にICG溶液を粘膜下層に注入し,開腹時にphotodynamic eye(PDE)カメラで,腹腔鏡下手術では蛍光内視鏡で観察した.さらに術後切除標本を利用して蛍光輝度,蛍光の拡がりを観察した.早期胃癌8例,進行胃癌6例を対象とした結果,全例において術中切除範囲の決定に同法が有用であった.今後ICGの注入量,タイミングの技術的な面での検討が必要と考えられた.
著者
荒谷 純 野村 裕紀 中島 太
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.471-476, 2016-03-05 (Released:2016-03-05)
参考文献数
17
被引用文献数
3

症例は79歳女性.上腹部痛と黄疸で近医を受診し,超音波検査で胆囊腫大と肝内胆管拡張を指摘され,当院紹介入院となった.腹部CTで中部から下部胆管に,中心に針状の石灰化をともなう総胆管結石を認めた.内視鏡的逆行性胆管造影で結石を確認後,内視鏡的乳頭括約筋切開術を行い結石を除去した.結石の核は長さ15mmの針状の構造物で,病理組織学的所見などから魚骨と推測された.