著者
高井 利恵子 宮島 真治 大村 亜紀奈 森澤 利之 岡野 明浩 木田 肇 沖永 聡 久須美 房子 大花 正也 藤田 久美
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.9, pp.1689-1695, 2015-09-05 (Released:2015-09-05)
参考文献数
12

既往にStage Iの腎細胞癌摘出術を受けた男性が,倦怠感と肝胆道系酵素上昇を認め受診した.腹部の超音波検査やCT上,さらに肝生検においても異常はなかった.しかし,FDG-PET検査で骨に集積を認めた.骨生検の病理組織像は,以前摘出した腎細胞癌と類似していた.各種検査で他臓器には原発巣を指摘できず,腎細胞癌の骨転移と診断した.肝機能異常は,腎細胞癌に随伴するStauffer症候群であると考えた.
著者
長沼 誠 藤井 俊光 長堀 正和 渡辺 守
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, pp.388-400, 2011 (Released:2011-03-07)
参考文献数
91

クローン病の治療には栄養療法と薬物療法があるが,抗体製剤の登場によりクローン病の治療法や治療目標,長期予後などが大きく変わってきている.6-MP,AZAを中心とした免疫調節薬は抗体製剤が登場する前より難治例を中心に使用されており,特にステロイド依存例のステロイド減量や寛解維持に有用な薬剤である.長期予後の観点からみて6-MP,AZAは腸管粘膜治癒効果,術後の再燃防止効果を有するが,抗体製剤と比べその効果は限定的である.免疫調節薬を早期に使用することにより長期予後が改善される可能性も考えられるが,骨髄抑制,感染症,さらには最近注目されているリンパ腫発生の可能性を考慮し,有用性と副作用のバランスを考えながら使用することが大切である.
著者
三好 広尚 服部 外志之 高 勝義 片山 信 荒川 明 瀧 智行 乾 和郎 芳野 純治 中澤 三郎 内藤 靖夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.644-651, 1999-06-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
28
被引用文献数
2

点滴静注胆道造影法を併用したhelical CT(以下,DIC-CT)による総胆管結石診断の有用性を明らかにする目的で,切石により確診を得た総胆管結石25例を含む胆道疾患82例を対象とした.胆道疾患82例において超音波内視鏡検査(以下,EUS)およびDIC-CTによる総胆管結石の診断能の比較検討を行った.総胆管結石25例の描出率はEUS 87.5%,DIC-CT 94.7%であった.総胆管結石のDIC-CT,EUSの診断能はそれぞれsensitivity 94.7%,87.5%,specificity 100%,100%,accuracy 97.8%,96%であった.DIC-CTは総胆管結石の診断においてEUSやERCと同等の診断能を有し,しかも非侵襲的な検査法であり,胆嚢結石の術前診断として有用な検査法である.
著者
吉崎 秀夫 竹内 和男 奥田 近夫 本庶 元 山本 貴嗣 櫻井 則男
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.342-346, 2000-03-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
7
被引用文献数
4

他疾患の経過観察中に肝嚢胞に感染を併発した2症例を経験した.2症例とも腹部超音波では嚢胞内部にスラッジエコーが出現し,単純CTでは内部のdensityの上昇,造影CTでは嚢胞壁の濃染などの所見が認められた,いずれも抗生剤の全身投与に加え嚢胞ドレナージを施行して,炎症は改善した.感染をおこした嚢胞は,6カ月後には縮小あるいは消失していた.
著者
宮崎 慎一 野田 裕之 森田 照美 上萬 恵 岡田 睦博 守山 泰生 鈴木 一則 竹内 勤
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.1359-1364, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
12

症例は64歳男性.前胸部痛および右下腿浮腫にて当院受診,精査目的に入院となった.両側胸水を認めたため,穿刺したところともに乳糜胸水であり,左胸水の細胞診で低分化型腺癌を認めた.精査にて4型胃癌が原発巣であると診断した.両側乳糜胸水を来す胃癌は極めてまれであり,また乳糜胸水から淡黄色の胸水への変化が認められ,乳糜胸水の成因を考える上で示唆に富む症例であると思われたため報告する.
著者
武内 重五郎 奥平 雅彦 高田 昭 太田 康幸 藤沢 洌 伊藤 進 辻井 正 蓮村 靖
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.2178-2185, 1979-11-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
20

わが国の肝疾患の病態の特徴を反映し,臨床的に広く使用できるようなアルコール性肝疾患(脂肪肝,肝炎,肝硬変,および肝障害)の診断基準案を提示した.次いで,近年のわが国におけるアルコール性肝疾患の実態を把握する目的で,1968年から1977年までの10年間を調査対象に,この基準に合致した症例を全国の病院内科94施設からアンケート方式によつて集め解析した.その結果,肝疾患による入院患者のすべての症例のうち,アルコール性肝疾患症例の占める割合が1968年の5.1%から1977年10.7%へと直線的に有意に増加したこと,さらに肝硬変の入院症例のうちアルコール性肝硬変の占める割合も有意な増加をみた結果,1977年には16.9%であつたことが判明した.この成績は,わが国でもアルコールに起因した肝疾患に充分注目する必要があることを示している.
著者
牧野 勲 篠崎 堅次郎 芳野 宏一 中川 昌一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.690-702, 1975 (Released:2007-12-26)
参考文献数
25
被引用文献数
6

Cholesterol 胆石症11名にUDCA1日450mgから2gを4カ月から1年半長期投与し, 臨床症状, 胆嚢造影, 肝機能検査の経過を観察した. その結果, 患者11名中胆石の完全消失1名, 胆石個数の減少又は胆石陰影の縮少3例, 判定保留1例, 残り6例は不変であつて有効率約37%であつた. 一方, 今回の比較的大量のUDCA投与によつてほとんど全例にそれ迄高頻度に持続した右季肋部痛, 右背部痛の消失が認められ, 自覚症状の改善を認めた. この間肝機能検査に異常なく血中 Cholestreol も正常値を保持した.患者11名中3例についてUDCA投与前後の胆汁中脂質が分析されUDCA投与前 Cholesterol 過飽和の胆汁はUDCA投与後, そのLithogenicity が改善された. 一方, 胆汁中胆汁酸分析ではUDCA投与後総胆汁酸の40%以上がUDCAで占められCDCAと合計すると Dihydroxy 胆汁酸は, 約80%に達したがLCAも軽度増加するのを認めた.
著者
坂口 賀基 山道 信毅 藤城 光弘
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.103-111, 2022-02-10 (Released:2022-02-10)
参考文献数
72

非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍は,主に家族性大腸ポリポーシス由来と特発性に大別される.Wnt pathwayが腺腫発生から発癌初期の中心的役割を担い,特発性でもAPC変異自体の頻度が低いもののWnt pathway異常活性化が80%に認められる.またWnt pathway異常活性亢進に加え,さらに別の発癌関連遺伝子の異常も発癌に必要とするmulti-hit theoryが有力視され,大腸癌adenoma carcinoma sequenceと類似する点が多い.一方で胃型粘液形質に特異的なGNAS変異も確認されている.また十二指腸癌独自の発生機序が存在する可能性もあり,さらなる研究が必要である.
著者
四柳 宏
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.777-780, 2018

<p>B型肝炎ワクチンの定期接種化は,母子垂直感染対策だけでは水平感染のコントロールができなくなったことが主因である.定期接種化により今後日本のB型肝炎の新規発生は激減すると考えられるが,定期接種の対象とならない児や青少年に対するキャッチアップを行う必要がある.今後解決すべき問題としてエスケープ変異,ワクチン無効例への対策,ブースター接種の検討などが挙げられる.</p>
著者
松原 淳一 藤田 善幸 橋本 明美 新浪 千加子 伊藤 俊之 丸山 正隆
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.303-310, 2005-03-05
参考文献数
19
被引用文献数
9

1998年1月から2002年12月までの5年間に当院で経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)を施行した65歳以上の178例を対象とし,後ろ向きコホート解析を行った.術後7日以内の周術期死亡率は1.7%,30日以内の早期死亡率は5.9%,1年生存率は61.4%であった.術前のAlb,T-chol,ChE値が良いと生存率も有意に高かった.多変量解析では悪性疾患,T-chol値が予後に有意に関わっていた.術後の栄養状態の改善は有意だが限界があった.PEGは患者の状態から予測される予後や危険性を把握したうえでその適応の有無が決定されるべきであり,患者の長期生存とQOL向上の両立を考えることが重要である.<br>
著者
丸山 正隆 大坪 千秋 田中 三千雄 大井 至 上地 六男 竹本 忠良 鈴木 博孝
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.414-427, 1975

1971年11月から1974年2月までの間に単一の検者により前方直視鏡で内視鏡検査を施行された475例中, 130例に潰瘍あるいはその瘢痕以外の何らかの変化を十二指腸球部に観察した. これらの全てが十二指腸炎の所見であるか, あるいは, 所見を認めなかつた例を正常としてよいかどうかはまだ不明であるが, これらの変化の多くは前回の病理組織学的検討と照合して考えた時, 原発性十二指腸炎の種々の所見の反応と考えられる. このうち, 発赤, びらんなどは表在性十二指腸炎の所見といえるが, 生検的には間質性十二指腸炎を獲え難いため, これがどの程度含まれてくるかは不明である. 萎縮性十二指腸炎は日本では稀とされ, 生検でこれを獲えることは困難もあるが, 血管透見, Liver area の出現, 絨毛の萎縮などはこれを示す可能性のある所見として考慮し得る. このほか種々の小陥凹や小隆起は十二指腸炎との関連性を考慮し得る所見である.
著者
香山 尚子 竹田 潔
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.741-752, 2013 (Released:2013-05-07)
参考文献数
98

消化管に慢性の炎症が生じる潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)は,食生活やライフスタイルの欧米化にともないわが国において急激な増加傾向を示す難治性疾患である.慢性炎症は多様な疾患に共通する基盤病態であり,腸管組織においても大腸癌リスク増大に関与する.近年,腸管組織において多様な自然免疫細胞が同定されるとともに,獲得免疫系の活性化を制御することで腸管組織の恒常性維持に寄与することが明らかとなった.今後,自然免疫系を標的としたIBDの病態解明および新規治療法の開発が期待される.
著者
樋渡 信夫 渡辺 晃
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.1106-1114, 1982-05-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
22
被引用文献数
1

潰瘍性大腸炎の粘膜真性毛細血管を透過電顕で観察し,各種腸疾患を対照として主にmorpho-metricに比較検討した.活動期では毛細血管内皮細胞の著明な肥厚や風船状突出が見られ毛細血管の抵抗性は増加しており,また血管腔内に赤血球を認めることが少ないことより血流も少なくなつて微小循環不全状態にある.この状態は難治性を示す一因となつていると考えられる.さらに内皮細胞では飲小胞数は減少し機能低下状態にあり,また基底膜は多層化しており内皮細胞の変性,再生が繰り返しおこつている.緩解期ではこれらの変化は活動期と過敏性大腸症候群の間に位置しており,何らかのtriggerが加われば再燃しやすい状態にあると考えられる.
著者
中村 昌太郎 松本 主之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.47-53, 2012 (Released:2012-01-06)
参考文献数
18
被引用文献数
2

胃MALTリンパ腫の診療に関する最近の知見について,Helicobacter pylori除菌後の長期予後を中心に解説した.本邦における多施設大規模追跡試験により,H. pylori除菌後の胃MALTリンパ腫の長期予後がきわめて良好であることが明らかとなった.対象420例の除菌による完全寛解率は77%であり,3~14.6年(平均6.5年)の追跡の結果,除菌10年後の治療失敗回避率は90%,全生存率95%,無イベント生存率86%であった.多変量解析の結果,H. pylori陰性,粘膜下層深部浸潤およびt(11;18)/API2-MALT1転座が除菌抵抗因子として抽出された.本症に対する除菌治療の保険収載により,H. pylori依存性胃MALTリンパ腫症例が減少し,将来は除菌抵抗例やH. pylori陰性例の診療が問題となることが予想される.
著者
山下 太郎 金子 周一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.10-17, 2015-01-05 (Released:2015-01-05)
参考文献数
31

肝細胞癌は世界で年間約70万人が罹患する第3の癌死亡原因であり,現在本邦では年間約3万人が死亡する.多くはウイルス性慢性肝炎,肝硬変を背景に発症するが,近年明らかな肝炎ウイルス感染をともなわない非B非C型肝細胞癌の増加が報告されている.発癌メカニズムとしてはウイルス遺伝子や蛋白に加え,繰り返す壊死,炎症,再生を背景にさまざまな異常が細胞に蓄積し,前癌病変から高分化型肝癌,進行肝癌へ進行すると考えられる.分子生物学的アプローチの進歩により肝細胞癌で認められる遺伝子変異,遺伝子/蛋白発現パターン,悪性形質や微小環境変化の多様性が明らかとされ,再発形式や薬剤感受性との関連について現在解析が進められている.
著者
工藤 通明 内田 聡 平沢 敏昭
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.7, pp.895-899, 2000-07-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
7

症例は65歳,女性.人間ドックの精査で上部消化管内視鏡検査施行したところ,胃内に運動性のある虫体を発見し,内視鏡下に三ツ又鉗子で把持し摘出した.回虫症は近年増加しているといわれているが,過去11年間の本邦報告例は55例であった.これに自験例を含め,治療法別に手術的治療,駆虫剤投与,内視鏡的治療に分けて,主訴と診断名,患者の居住地,治療法,摘出虫体の個体数と虫卵検査の結果について考察した.
著者
松尾 拓 中村 由紀子 鈴木 恒治
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.5, pp.888-895, 2015-05-05 (Released:2015-05-05)
参考文献数
30

症例は73歳,女性.局所進行乳癌に対してnab-パクリタキセルによる化学療法を受けていた.治療開始から約9カ月後に,肝機能障害のため化学療法は中止となった.MRCPとERCPでは肝門部胆管の狭窄と肝内胆管の口径不同を認め,nab-パクリタキセルによる二次性硬化性胆管炎が疑われた.同剤による二次性硬化性胆管炎の報告はこれまでになく,示唆に富む症例と思われ,報告する.