著者
塚本 明
出版者
三重大学
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-19, 2000
被引用文献数
1

近世の朝廷が発令した「触穢令」が、伊勢神宮に与えた影響の時期的変化を見ながら、近世の伊勢神宮と朝廷との関係を考察した。「触穢令」は天皇・上皇・女院の死に際して朝廷から出されるものだが、前期には江戸将軍の死もその対象となった。基本的には宮中及び京都周辺の社寺に限定して出され、朝廷行事や神事等がその間中断された。さて伊勢神宮に京都の「触穢令」が伝えられるのは宝永六年を初発とするが、これは触穢伝染を予防するためのもので、天保年間に至るまでは伊勢神宮・朝廷側ともに、京都の触穢が伊勢にも及ぶという認識はなかった。だが伊勢神宮を朝廷勢力に取り込む志向が強まるなかで、弘化三年時には朝廷は伊勢神宮の抵抗を押し切り、触穢中の遷宮作時を中断させるに至る。両者の対立の背景には、触穢間の相違に加え、神宮神官らが全国からの参宮客を重視したことがあった。
著者
廣岡 義隆
出版者
三重大学
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.A39-A51, 2003-03-25

額田王の最初期の作として知られる『萬葉集』に収められた「宇治の都の借廬」詠(巻1・七番歌)の背景について考察し、ついで、この作の表現意図に迫ろうとするものである。従来、『古事記』『日本書紀』に記された歴史観に基づいて、ウヂノワキ郎子とオホサザキノ尊との皇位を譲り合う美談が展開され(空位三載)、ウヂノワキ郎子の逝去で以ってオホサザキノ尊の即位が実現し、ここに聖帝仁徳が成立するとされてきた。しかしながら、『山背国風土記』(逸文)等に見られる記述を分析すると、史実は別として、少なくとも説話としての宇治天皇の存在が明らかとなってくる。即ち、宇治の地にウヂノワキ郎子は宮室「桐原日桁宮」を持ち、そこが都と称されていた。こうした宇治大王説話を背景として、額田王の「宇治の都の借廬」詠は作られていると考えられる。このように見て初めて、額田王の歌詠における「宇治の都」という表現の意図するところが明らかとなってくる。これまで、「宇治の都」とは、単なる行旅における宇治での行宮の称であると理解されてきたが、ここに「宇治の都」とは文字通り宇治大王の皇居の存した故地の称となってくる。と共に、「宇治の都の借廬」と表現されたその表現意図も明確となる。即ち、雅としての「都」の表現と、その対極に位置する「草葺きの借廬」という表現の落差が奏でる響きをも含ませた歌であることが浮き彫りとなってくるのである。
著者
清水 隆弘
出版者
三重大学
巻号頁・発行日
2011-01-01 (Released:2017-02-18)

三重大学大学院人文社会科学研究科地域行政政策専修 34
著者
正田 良
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-8, 2003-03-01

VBAとは、Microsoft社の統合製品であるOfficeに含まれる諸ソフトウエアを利用者が統御するためのプログラミング言語で、初心者用プログラム言語Basicの流れをくむものである。この20年余りの間にパーソナル・コンピュータに関する状況は大きな変化かが見られた。それを歴史的に略述し、Cellsというプロパティーが言語の基礎部分の一部として位着付けられることを指摘し、その利用例を紹介する。
著者
平松 和政 WU J WU J.
出版者
三重大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

HVPE法により作製した無極性AlN単結晶基板上に高性能な深紫外LED(波長250~300nm)を実現することを目的として、HVPE法による高品質無極性AlNバルク単結晶成長の作製を行った。今年度は特に、(1)傾斜r面サファイア基板上へのa面AlNの成長、(2)a面サファイア上への高品質c面AlN成長を行った。a面AlN成長におけるr面サファイア基板の傾斜角依存性を調べることを目的として、基板の傾斜角を+5°(c軸方向)から-5°(m軸方向)に変化させた基板を用いてa面AlN結晶の成長を行った。基板の傾斜角によって結晶性が大きく変化することがわかった。特にc軸方向に傾けた基板を用いた場合、X線ロッキングカーブの半値幅が大きく減少することから、c軸方向に傾けたr面サファイア基板を用いることが、高品質a面AlNを得るために有効であることが明らかになった。選択横方向成長や中間層などの複雑な技術を用いないで簡便に高品質なAlNエピタキシャル層を得るための方法を検討した。a面及びc面サファイア基板上にc面AlNの結晶成長を行ったところ、a面サファイア基板に成長したc面AlNの方が、X線ロッキングカーブの半値幅が小さく、低転位密度で、クラックが少ない高品質な結晶を得ることができることを明らかにした。以上の結果から、高性能な深紫外LED(波長250~300nm)を実現するために必要となるAlNバルク単結晶基板を作製するための見通しを得ることができた。
著者
芝 真人 鈴木 秀謙 藤本 昌志 川北 文博
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ラット及びマウスの血管内穿通モデルを作成し、くも膜下出血後早期脳損傷の病態におけるマトリセルラー蛋白テネイシンCの役割について調べた。まずくも膜下出血後の脳においてテネイシンCの発現に伴い神経細胞のアポトーシスが誘導されていることを示した。続いてイマチニブがテネイシンCの発現を抑制することによりアポトーシスを軽減していることを確認するため精製テネイシンCの髄腔内投与を行い、アポトーシスが誘導されることを示した。最後に各種阻害薬を用いて、テネイシンCの発現抑制がMAPキナーゼを介したMMP-9の誘導を抑制することによって、早期脳損傷を軽減させることを示した。
著者
竹林 慎一郎
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

最近の研究で、がん遺伝子の活性化により誘導される細胞老化は、細胞内エネルギー代謝にも大きな変化をおこしていることが分かってきた。我々は、培養細胞をモデルとして用い、網膜芽細胞腫の原因遺伝子として知られるRbが細胞老化にともなうエネルギー代謝変化を調節していることを明らかにした。具体的には、老化細胞におけるミトコンドリア呼吸の活性化がRb依存的におこっていることを見出した。さらに、網羅的な遺伝子発現および代謝産物解析により、Rbタンパク質が解糖系を中心とする複数の代謝関連遺伝子の発現レベルを上昇させることでエネルギー源供給を亢進させ、下流のミトコンドリア呼吸を活性化していることを明らかにした。
著者
大隈 貞嗣
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

われわれが作製した血管血球系特異的p38αコンディショナルノックアウトマウスおよびマクファージ特異的コンディショナルノックアウトマウスにおいて高脂肪食による肥満の抑制が観察され、マクロファージにおけるp38αが肥満を促進していることが示された。またマクロファージ特異的p38αcKOマウスにおいて食餌誘導性NASHモデルを作製したところ、肝における炎症および線維化が減少していた。また老化促進マウスとの交配に関しては作製途中であるため予備的にp38阻害剤投与実験を行ったところ、寿命延長効果が認められた。
著者
松尾 早苗
出版者
三重大学
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.153-167, 2004-03-25

In diesem Beitrag werden die folgenden Punkte behandelt, um die Freundschaft zwischen Ludwig Meidner und den expressionistischen Dichtern und deren Einflusse auf seine Zeichnung, vor allem seine Portratzeichnung klarzumachen: I. Der Neuanfang des Maler Meidner in der Groβstadt Berlin, II. Meidners Kontakt mit dem "Neuen Club" und "Neopathetischen Cabaret" in Berlin, III. Die Versuche zurn Verwirklichen seines "Neuen Pathos" bei Meidner-a) die Bildung der Malergruppe "Die Pathetiker", b) die Herausgabe der Zeitschrift "Das Neue Pathos", IV. Die Kreise im "Cafe des Westens" und die Gesprache mit den Dichtern in Jour fixe "Mittwoch=Abende", V. Die Freundschaft mit dem Dichter Ernst Wilhelm Lotz und die Portratzeichnung der Dichter.論説 / Article
著者
脇田 裕久 八木 規夫 水谷 四郎 小林 寛道
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.141-148, 1985

The stretching effect on the repeated exertion of maximum hand grip strength were investigated when the wrist joint stretching was added in different muscle groups and/or different frequencies. The subjects were six healthy males aged 18-22 years. They were asked to exert their maximum hand grip strength for 6 seconds, 20 times with 1 minute intervals between each bout. Subjects performed 6 series of experiments in different interval conditions such as, Condition-A : hold resting during each enterval, B : add stretching of dorsi-flexion (7 sec×4 times), C : add stretching of palmar flexion (7 sec×4 times), D : add stretching both palmar and dorsi-flexions, alternately (7 sec×2 times each), E : hold resting until 10th trial, and then add stretching to 20th trial in the same way as in Condition-D during each interval, F : add stretching once every 5 intervals in the same way as in Condition-D. Following results were obtained. 1) No significant differences in average impulses (kg・sec) of 20 times in maximum hand grip strength were found among different conditions. 2) The greater impulses in 11-20th trials were observed in Condition-C and -D in comparison with Condition-A (p<0.05). 3) The impulses in Condition-D were greater than Condition-B in 16-20th trials (p>0.05). 4) The greater impulses were observed in 11-20th trials for Condition-D and -F in comparison with Condition-A (p<0.05). 5) The impulses in 11-15th trials were greater in Condition-F than Condition-E (p<0.05). Therefore, stretching of palmar flexion or, both palmar and dorsi-flexions are effective to prevent the decrease of hand grip strength. Stretching of every 5 trials of 20 maximum bouts is equally effective with that of every one trial.健康な男子大学生6名(18-22歳)を被検者とし、1分間の休息期をはさみながら最大努力で6秒間の握力発揮を20試行繰り返させ、手関節へのストレッチングが握力発揮にどう影響するかを、方法、時期、頻度を違えて実施した。各試行間の休息期には、毎回安静休息を保つ条件(A)、と静的ストレッチングを加える条件(B~F)があり、後者には毎回手関節の背屈方向のみ(B)、掌屈方向のみ(C)、背屈・掌屈双方(D)、第10試行まで安静休息、その後毎回背屈・掌屈双方(E)、第5、10、15試行後にのみ背屈・掌屈双方(F)の5条件とし、合計6条件を指示した。本実験結果は、次のようである。 1)各条件下における全試行の平均力積は、いずれの条件間にも有意な差が認められなかった。 2)第11-20試行では、条件C、Dが条件Aより有意に大きな力積を示した(P<0.05)。第16-20試行では、条件Dが条件Bに比較して有意に大きな力積を示した(P<0.05)。 3)第11-20試行では、条件D、Fが条件Aより有意に大きな力積を示した(P<0.05)。第11-15試行では、条件Fが条件Eに比較して有意に大きな力積を示した(P<0.05)。 以上の結果から、休息期に毎回掌屈または背屈・掌屈双方の静的ストレッチを加えることは、安静休息を保つ場合に比較して、握力低下の抑制に効果的であり、また、その効果については、5試行ごとに加えられた静的ストレッチングと毎回のそれとの間に差のないことが明らかとされた。
著者
松井 龍之介 佃 和弥
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

熱硬化型のポリジメチルシロキサンをマトリクスとし、ネマチック液晶E7を分散することで5ミクロン径の液晶マイクロドロップレットを作製し、レーザー光照射によるフォトニックナノジェットの生成と外部電界による液晶分子の再配向に基づく動的制御を試みた。自作のレーザー走査型共焦点顕微光学系によりフォトニックナノジェットの観測に成功した。電界印加によるフォトニックナノジェットの動的制御も確認した。金属ナノ粒子を分散させた液晶によるメタマテリアルにおいて見られる特異な表面波についての理論的な解析についても併せて進めた。
著者
森脇 健夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本では、学校の教師が参加し、研修を積む場として校内の研究会がある。筆者は、ある中学校において校内研究がどう組織され、そこにそれぞれの役割を担った管理職、研究主任、教員がどのようにかかわっているか、また教員がそこでどんな学びをしているか明らかにした。まず、校長がどのようなビジョンのもとに専門家共同体を作っていくかが重要である。教師たちは自らの来歴の中で授業スタイルを形成しているが、校内研究によって、自らの授業スタイルを自覚し、必要ならば自己変革をする。自己変革の一つの契機が子どもたちの声である。校内研究は教師たちに研鑽と自己変革の場を与えるが、それを実質化するのが、同僚性の構築である。
著者
森脇 健夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の課題は教師の「熟練性」を「二重の応答性」に着目し、その発達の過程をライフヒストリーインタビューをもとに明らかにすることである。初任期の教師の場合、指導事項を効率的に教えないといけないこと、学習者の理解や学習のプロセスの理解が困難なことから、教えたことに対する学習者の反応への教師の反応に稚拙さが見られる。的確な反応ができないばかりか、反応そのものができない、という事態も見られた。これに対し、中堅、熟練期の教師は、1時間に教える事項への認知だけではなく、単元、カリキュラムへと認知が広がり、一方で学習者、学習過程への理解が深まる。「二重の応答性」もタイミング、その内容も的確さを増していく。
著者
井口 克郎
出版者
三重大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

東日本大震災をはじめ、近年、過疎・高齢化地域における甚大な災害が頻発する中、継続的に被災者の医療・福祉(ケア)などの生活保障を行い、住み続けられる地域を創ることが課題である。本研究は、災害被災地の人々の生活問題の現状を把握し、とくに東日本大震災被災地では津波による高台移転や、原発事故により、地域コミュニティが脆弱化し、「自助」「共助」の限界が至る所に表れていることを明らかにした。その上で、被災者の生活の復興のため、国家による社会保障制度の役割の重要性や、拡充の必要性について考察した。
著者
林 智子
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,患者心理の理解における看護師の患者心理推測方法の特徴と看護援助との関連を検討し、プログラムを開発することであった.総合病院に勤務する看護師を研究参加者とし,患者と看護師が登場する場面を刺激とした半構造化面接法によりデータを収集した.その結果,看護師は患者の行動を心理推測の根拠とするが,一つの目立つ患者の行動だけにとらわれてしまうと,妥当でない心理を推測する可能性が示された.さらに,患者心理と看護援助の関連では,楽観的心理の推測は妥当でない看護援助を導く危険性を示唆していた.
著者
北野 雅子
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、予後の良くない外傷性嗅覚障害がどのタイミングまでに治療を開始すれば嗅覚の改善が期待できるのかを明らかにする目的で施行した。外傷性嗅覚モデルマウスを作製して、嗅神経切断後1、2、4、6週間後にステロイド治療を施行した。その結果、炎症抑制による外傷性嗅覚障害治療は受傷後1週間までは有効だが2週間以上経過すると無効であると考えられた。
著者
石川 輝
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

三重県英虞湾浜島に調査点を設け,海藻類に付着する渦鞭毛藻Gambierdiscus sp.の出現調査を行った。その結果,夏季から秋季にかけて本種の現存量は多くなる一方で冬季にもわずかながら出現するという,周年にわたる季節消長を明らかにした。さらに同調査点から得た細胞株を用いて,その増殖と生残に及ぼす水温の影響を室内培養実験により調べた。その結果により現場における本種の出現機構を説明することができた。
著者
澤田 治
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、自然言語におけるスケール性の意味・機能上の役割について、意味論と語用論のインターフェースの観点から考察した。具体的には、程度副詞、比較表現、モーダル指示詞、指小シフト等のスケール現象に焦点を当て、真理条件的なスケール的意味と非真理条件的なスケール的意味(慣習的推意)の関係について考察した。本研究により、(i)スケール性は、狭義の意味論レベルのみならず、ポライトネス、発話モード、会話の優先性、感情表出等が関わった意味伝達(語用論)の次元においても重要な役割を果たしており、(ii) 意味論レベルのスケール構造と語用論レベルのスケール構造の間には平行性があるということが明らかになった。