著者
野村 由司彦 加藤 典彦 松井 博和 杉浦 徳宏
出版者
三重大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

ビデオオンデマンド講義配信システムでは,学生は遠隔から,あるいは自由な時間に講義シーンを視聴できる.これにより,復習や欠席のリカバーなどの形で,実際の講義を補完することができ,大きな教育効果が期待できる.昨年度は,デジタルスチルカメラ画像を利用して,高解像度を確保しながら,デジタルビデオカメラ画像から指示棒動作のみを抽出して,これをデジタルスチルカメラ画像に重畳する方式を開発し,有効性を確認した.しかしながら,デジタルスチルカメラ画像における文字情報のコントラストの低下,さらには講師映像がデジタルスチルカメラ画像とは別の小動画として表示されていることによる臨場感の欠如などの課題が残っていた.今年度は,この方式についてさらに検討を進め,実際の講師映像を電子ファイルによって生成されたパソコン画面に重ね合わせるシステムを開発した.これにより,低容量でありながら,電子ファイル固有の画像の高精細さを保存し,しかも講義の臨場感(一種の仮想現実感)を伝えることのできる,新しい講義映像形態を実現することができる.さらに,本システムを用いて,実際の講義との比較実験を行った.その結果,理解度を確認するための小テストでは本システムは実際の講義と同等以上とあった.さらに,文字は十分に読め,講師の動きもある程度は伝わってきた,との回答を得た.さらに,利用方法についても,期待したとおり,講義を補完する形での使用について高い支持を得た.
著者
朝倉 文夫
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

【目的】頚部頚動脈狭窄症が増加しており、その血行再建術として低侵襲な血管内治療である経皮的血管拡張・ステント留置術が増えている。しかし、経皮的血管拡張・ステント留置術において最大の問題点は、押し潰された粥腫片の遠位脳血管への迷入による虚血性合併症(遠位塞栓)である。現在、本邦においては、病変部の遠位に留置したballoonによる血行遮断を行い、手技により生じた粥腫片をカテーテルで吸引回収・洗浄することにより遠位塞栓症を予防する方法が主である。しかし、吸引する血液量、吸引するカテーテルの位置、洗浄量などは術者によりまちまちで、最も効果的な吸引回収・洗浄方法は確立されていない。そこで、シリコンチューブと拍動ポンプを用いて、微粒子を流し、各種条件下(血圧、微粒子径、吸引量など)で、より効果的な粥腫片の回収方法を検討し、新たな遠位塞栓予防器具の開発を目的とした。【方法】シリコン製頚動脈モデルとシリコンチューブで回路を作成し、拍動ポンプで拍動流を生じ、ポリスチレン粒子を流し、実際の治療で用いられているdistal blocking balloonと吸引用カテーテルを用い、各種条件下で吸引回収効率を計測する。【結果】回路を作成し、ポンプの水量(拍出回数と量)および、回路全体にかかる水圧を調節することにより、拍動回数、流量、圧波形はヒトの頚動脈におけるものに極めて近似的な数字が得られた。しかし、ポリスチレン粒子は、シリコンチューブ中で生理食塩水に流すと、表面張力や摩擦抵抗により、均一に拡散して流れることは無かった。界面活性剤などを用い、生理食塩水中で均一に拡散する方法を見出す必要があった。それらに関する実験を行っていたが、当初予定していなかった海外留学へ赴くこととなり、これらの研究は中止せざるを得なくなった。
著者
森尾 吉成
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では, 農作業者の行動に合わせて必要な支援を提供するシステムとして, 1)屋内外に関係なく作業者の追跡を容易にする専用作業服の開発, 2)作業者の抽出, 姿勢角の検出, 絶対位置の検出を行う画像処理システムの開発, 3)確率モデルに学習させた作業行動の認識システムの開発, 4)作業に有用な情報や作業動作のリズムを, 映像や音声の形式でタイミング良く提供するシステム, の4つのシステムを開発した.
著者
光永 徹 徳田 迪夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では樹皮の浄化作用の一つである消臭作用に着目し、樹皮抽出物中の縮合型タンニンおよびそのアセトアルデヒド付加縮合変性物のアンモニアとメチルメルカプタンに対する消臭活性メカニズムを分子軌道計算結果から明らかにすることを目的としている。平成13年度はヘッドスペースガスをGC/MSで分析する消臭試験を行ったところ、従来のデシケータ法に比べ圧倒的に再現性があると同時に、少量の試料で試験ができる点が改善され、信頼性のより高い消臭試験を確立した。その結果、樹皮由来の縮合型タンニンおよび茶抽出物のポリフェノールはアンモニアに対しては良好な消臭活性(消臭率70〜100%)を示したが、メチルメルカプタンに対しては柿抽出物以外はほとんどその効果を示さないことが明らかとなた。用いた柿抽出物は、渋柿を熱水で抽出し熟成させたものであるため、柿の生体内で蓄積されるアセトアルデヒドと縮合型タンニンが付加縮合してできる高分子不溶性物質であると考えられた。そこでアカシア樹皮由来のワットルタンニンを用いてアセトアルデヒドとの付加縮合物を合成し、その消臭活性を検討したところ、メチルメルカプタンに対し85%以上の良好な消臭活性を示すことを明らかにした。平成14年度はメチルメルカプタン分子の捕捉サイトを明らかにする目的で、付加縮合物のカテキンdimerの半経験法による分子軌道計算を行ったところ、ジフェニルメタン炭素原子上(付加縮合サイト)には分子上で一番大きなプラスのチャージが存在し、メチルメルカプタン分子の硫黄原子の大きいマイナスチャージがこのサイトに引き寄せられることが予測された。また静電ポテンシャルのマッピングの結果その分布状態が大いに消臭活性と関連することを明らかにした。
著者
池村 真弓
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

脂肪肝におけるハロペリドールの血中濃度と臓器への毒性相関を解明するために、モデルラット(FL)を用いてハロペリドールの臓器内薬物蓄積性について検討を行った。その結果、治療量投与では血中および臓器内薬物濃度はFLで有意に増加するが、中毒量投与では有意差は認められなかった。その原因としてFLでの薬物タンパク結合率の低下と、薬物投与前より門脈血流量が増加し薬物投与により変動しないことから、薬物代謝能低下が示唆された。本研究成果は臨床だけでなく法医学実務における薬物関連死の死因判断においても有用な基礎的知見である。
著者
里中 東彦
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

損傷腱修復促進の戦略の1つとして腱細胞の増殖が考えられ,ラットアキレス腱細胞に対するキセノンストロボ光照射により有意な細胞増殖効果が得られ,増殖した細胞のI型コラーゲン産生能および腱特異的タンパク産生能が確認された。
著者
吉岡 基 幸島 司郎 天野 雅男 天野 雅男 荒井 一利 内田 詮三 大谷 誠司 小木 万布 酒井 麻衣 白木原 美紀 関口 雄祐 早野 あづさ 森 恭一 森阪 匡通
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ミナミハンドウイルカの保全のために必要な基礎情報を得るため,分布や移動経路の把握,地域個体群間の関係に関する検討,行動解析,繁殖生理値の収集を行った.その結果,(1)伊豆鳥島周辺に本種が分布し,その個体群は小笠原や御蔵島の個体群との間に関係を有すること,(2)奄美大島での調査により,本種が同島周辺を生活圏とすること,(3)御蔵島個体群の社会行動の分析から,その頻度が性や成長段階によって異なること,(4)飼育個体の性ホルモン分析から,オスの精子形成は春~秋により活発になることなどが明らかになった.
著者
北川 敏一 平井 克幸 岡崎 隆男
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

三重項カルベンは、中性2配位の炭素原子に2個の不対電子をもつ有機分子種であり、安定化が困難な活性種の一つである。本研究では、三重項カルベンの長寿命化を目的として、その前駆体を我々が開発した剛直な「分子三脚」を用いてAu基板表面に自己組織化単分子膜として固定した。膜上への光照射により発生したカルベンは基板上への束縛をうけて2分子的分解反応を起こさないため、溶液中で発生させた場合と比べて安定化することが確認できた。
著者
岡崎 隆男
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

新材料の有機合成や体内での代謝反応や機能発現機構には、カルボカチオンが関与する反応が重要である。そこで、超強酸を使って多環式芳香族スーパー求電子化合物の効率的な発生方法を開発し、直接NMR観測とDFT計算による電子構造の解明と有機合成反応への応用を検討した。Benzo[ b, d] furan, benzo[ b] naphtho[ 1, 2-d] furan, benzo[ b] naphtho[ 2, 3-d] furan, benzo[ b] naphtho-[ 2, 1-d] furan, dinaphtho[ 2, 1-b : 1', 2'-d] furan, benzo[ b] naphtho[ 1, 8-de] pyran, dibenzo[ d, d'] benzo-[ 1, 2-b : 4, 3-b'] difuran, dibenzo[ d, d'] benzo[ 1, 2-b : 4, 5-b'] difuran, naphtho[ 2, 1-b : 3, 4-b'] bisbenzofuran, benzo[ 2, 3][ 1] benzofuro[ 4, 5, 6-kl] xanthene, 9, 9-dimethyl-9H-9-silafluoreneを脱ジアゾ環化反応等によって合成した。超強酸を用いてカルボカチオンを発生させ、NMR観測した。プロトン化カルボカチオンの陽電荷は酸素原子が隣接したベンゼン環への非局在化に限られていた。また、NICS値からフラン環の芳香族性が高いほどカルボカチオンになりやすいことが示唆された。
著者
大原 興太郎 富岡 昌雄 波多野 豪
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

リサイクル社会は、(1)使用済みの物質をすべて回収するのは事実上不可能である、(2)リサイクルによって物質が劣化するのは避けられない、(3)物質のリサイクルを駆動するにはエネルギーが必要である、という三つの制約をもっているが、微生物やミネラル、そして生物自身のエネルギーによって循環が促進される生物系の資源循環は持続可能な社会を創っていく上で極めて重要である。特に、環境中から採取した資源は十分に利用しつくし、最終的な廃物は自然の循環機能を損なわない形で廃棄することが重要である。生物系廃棄物の循環にとって大きな可能性をもっている堆肥化も物質を循環させる人のネットワークと新しい技術の開発が課題である。この点で、大規模複合経営を行っているY農事組合法人の牛糞堆肥・乾燥鶏糞を周辺の稲作農家の藁との交換により、有機栽培米を生産している事例では、試行錯誤の末、化学肥料に頼らずに慣行農法以上の品質・収量を上げる技術が創られつつあり、農薬も用いるとしても最低除草剤一回とする技術を確立した。Y法人の若者達が牛糞堆肥はマニュアルスプレッダーで、鶏糞堆肥はライムソワーを改良したもので機械散布する技術を確立したとにより、高齢農業者の業者のクループが行う稲作を支える役割も果たしている。このような堆肥化システムに有機農家を取り込むことは、良質の堆肥を産出するノウハウの蓄積を促す。実際に白山町の農家では、共同利用型のコンポスターによる堆肥化だけでなく、強制加熱や発酵菌の添加が不要で、取り扱いの容易な個別処理型の堆肥化方法も確立している。また、集合型コンポスターを利用するには、一定規模の利用者の確保、生ゴミ排出時のモラルを維持すること、それらによって投入量の大幅な変動と異物の混入を避け、微生物発酵の円滑な進行を保つこと、その際、利用グループの形成・リーダーの育成とその維持運営方法に関する問題の解決が課題となる。総じて、資源循環技術を社会システムに組み込むノウハウの確立の重要性を改めて指摘できる。
著者
友永 輝比古
出版者
三重大学
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.141-145, 2005-03-31

1919年作の『小市民の結婚式』(茶番劇)は上演して成功すると思えるような作品ではありません。同じ年に書かれた『夜打つ太鼓』が1922年にクライスト賞を受賞し、何度も上演されましたが、それと比べると目立たない作品です。しかし、21歳の大学生ブレヒトが、小市民の無思想にして無内容な生き方に疑問を感じて、その俗物性と精神的堕落を暴露したことに、驚きを感じます。そればかりか、単なる暴露劇ではなくて、小市民の俗物性を笑いの対象にしたところに、この作品の良さがあります。ブレヒトは資産家の息子ですから、自ら笑いながら小市民層と決別した、と言えるかも知れません。彼が大学時代を過ごした当時のドイツの社会情勢を概観するなかで、この作品を考えてみたいと思います。
著者
塚本 明
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

江戸時代に寺社参詣道沿いの村々が、旅人たちといかなる関係を持ち、それは地域社会の成り立ちにどのような影響を与えたのかを検討した。基礎作業として、熊野街道を対象に、諸国の旅人が著した道中日記260点、善根宿に納められた旅人の納札5000点余、地域社会に遺された算用帳中の旅人救済記録約7000点をデータ化した。その上で道中日記の世界と対比しつつ、地域社会の救済を受けながら旅を続ける貧しき旅人の世界を抽出した。
著者
平塚 伸
出版者
三重大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は,特殊に分化した果皮の(1)CO_2固定能力,および,(2)色素合成能力,を明らかにすることを目的に行ったものであり,得られた結果は以下のように要約される.なお,成果の一部は,平成21年9月に開催された園芸学会秋季大会で公表した.(1)ウンシュウミカン果皮のCO_2固定能力は,明期・暗期ともに満開後100日前後が最も高く,この時期の果実遮光は成熟時の糖・酸含量を明らかに低下させることが明らかとなった.前年度に引続き行った本年度の研究成果は,以下のように要約される.1)ラジオアイソトープを用いた実験により,9月上旬の果皮で固定された^<14>CO_2の約1/3が果汁に蓄積され,その^<14>Cはそれぞれ果汁内の糖・酸・アミノ酸分画に取り込まれることが証明できた.なお,暗黒下でのPEPCによる^<14>CO_2固定は光合成の40%弱であったが,PEPCによって固定された^<14>Cも糖分画に検出されたことから,ウンシュウミカン果皮にはC_4光合成的機構が備わっている可能性が示された.2)果実のPEPC活性はクロロフィルを含む組織で高く,内部の組織では低かったことより,ここでもカルビン回路とPEPCが相互作用するC_4光合成的機構の存在が示唆された.3)結果枝に環状剥皮を施して枝内への光合成産物流入を阻害すると,果皮の光合成速度は約2倍高まったことから,果皮の光合成は葉の働きを補完する作用をもつものと考えられる.(2)スモモ果肉のアントシアニン生成は,その前駆体のカフェ酸やフラボノールを作り出す機構が備わっているためであり,これらがアントシアニンに代謝される過程では光が不要であることを明らかにした.さらに本年度は,以下のことを明らかにした.1)光照射は,むしろ果肉のアントシアニン生成を抑制する可能性がある.2)果肉では,果皮でアントシアニン生成を促進するABAや抑制する2,4-Dなどの植物ホルモンでは制御されない.
著者
太田 清久 AMIN Nurul Md AMIN Nurul Md.
出版者
三重大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

現在、バングラディッシュなどの一部の地域で問題となっている砒素中毒症は、主に地下水の砒素汚染に原因がある。したがって、バングラディッシュで主に燃料として利用されており、廃棄物である稲、籾殻、使用済みの茶葉、ココナッツの殻などを細かく粉砕してカラムに充填し、3価と5価のヒ素の吸着除去を試みた。ヒ素汚染水の浄化は、これまで様々な手法が試みられてきたが、簡便で実際にバングラディッシュの実用にあった手法はほとんどなく、現在も汚染した地下水を飲料用として飲み続けている状況である。本手法は、バングラディッシュで手に入れることができる廃棄物を利用して吸着除去を試みた。その結果、稲がヒ素除去を行うために有効なろ過材であることを見出した。現在、3価のヒ素の除去は比較的難しいため、5価に酸化してから除去処理を行っているが、本吸着除去では、3価のヒ素も5価と同様に吸着除去できることが分かった。さらに、それらに熱的処理を施すことにより、活性炭のような炭化処理を行い、除去効率の向上を図った。最終的には、吸着力の非常に高い浄化材として熱処理した籾殻が、バングラディッシュなどで問題となっているヒ素汚染された地下水の浄化に有効であることが分かった。酸化剤などを用いた処理を行うことなく、直接浄化処理を行って、ヒ素を取り除く手法を開発することができたため、砒素中毒症の改善が期待される。
著者
小川 眞里子 片倉 望 山岡 悦郎 伊東 祐之 久間 泰賢 遠山 敦 秋元 ひろと 斎藤 明
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は平成11年度から13年度の3年間のプログラムによって、「物語としての思想-東西の思想を物語の観点から読み直す-」をテーマに総勢10名を超えるメンバーの参加をもって始められた。参加者の専門は西洋、日本、インド、中国の思想分野にわたり、比較思想的探求を行う際の共通の切り口として「物語」という切り口は面白いのではないかと考えた。たしかに、物語は文字をもつ以前から口承の形で受け継がれてきており、人間存在と切り離しがたく普遍的に存在する。それにもかかわらず従来の哲学からは「物語」への取り組みの糸口が見出しにくく分担者は苦闘を強いられた。そうした中で、東北大学の野家啓一氏を招き講演会を開き、その成果を文字に起こして研究分担者がきちんと共有できたことは、各自の研究を進める上で大きな助けとなった。とくに今回の講演で示された科学的実在と物語の関係は大変示唆的であった。また東洋思想の観点からお話をしていただいた田辺和子氏の「原始仏教聖典の中の物語」は、先に述べたごとく「物語」がいかに本質的に人間存在と結び合ってきたものであるかを納得させるものであった。こうした経緯をへて各自が報告の作成に取り掛かり、桑原は野家氏の中心的テーマであった歴史の反実在論から説き起こしそれとキリスト教徒の問題に切り込み、武村は物語と哲学との比較という非常に興味深いテーマに行き着ついた。その他各自がこのユニークな研究の端緒をいかに完結させるかが今後の課題である。
著者
木村 清志
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

琉球列島,インドネシア,タイ,フィリピンにおける現場採集と世界各国の博物館からの借用標本に基づいて,アフリカ東岸からハワイ海域に至るインド洋-太平洋全域におけるトウゴロウイワシ科魚類の分類学的再検討を行った.その結果,次のような知見が得られた.1.ヤクシマイワシ属各公称種のタイプ標本調査から,本属各種の異名関係を明らかにするとともに1新種を発表し,さらに1種の未記載種を確認した.その結果,本属には11有効種が含まれることを明らかにした.2.ギンイソイワシ属についても,各タイプ標本の調査から,本属には5有効種が含まれることを明らかにした.また,BleekerのAtherina japonicaは明らかにギンイソイワシと同種であるが,この名は一次同名であるため,本種の学名に変更はない.3.Stenatherina属については,従来の知見どおり,1種が含まれる.4.ムギイワシ属については,ムギイワシを除く他の種,亜種のタイプ標本を明らかにした.Shultzが記載したムギイワシの3亜種については,基亜種であるムギイワシと明瞭な差異が認められず,その有効性については疑問が残された.5.これらの知見に基づき,同定を容易にするため,これら4属,およびヤクシマイワシ属とギンイソイワシ属に含まれる各種の明解な図を添付した検索表を作成した.6.本研究と付随して行われたヒイラギ科魚類,およびクロサギ科魚類の研究では,前者で2新種と1日本初記録種を発表し,さらに後者では2新種を含む科内の分類学的再検討を行った.
著者
木村 清志
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

日本国内やベトナム,タイ,インドネシアなどの東南アジアにおける現場採集,および世界各地の大学・博物館からの借用標本に基づいて,アフリカ東岸,紅海からミクロネシアに至るインド洋-太平洋の全域におけるヒイラギ科魚類の分類学的再検討を行った.その結果次のような結果が得られた.1.20世紀を通じて極めて分類学的混乱の激しかったヒイラギ属魚類について重点的に研究を進め,本属内に含まれる種を5種群23種と種群を構成しない3種の計26種に分類した.なお,このうち4種は現在のところ未記載種である(1種は近日公表される).また,本属に含まれる種の内,数種については,より正確な異名関係が明らかになり,従来使用されていた学名が変更される.2.上記種群の内,Leiognathus aureus種群,タイワンヒイラギ種群,Leiognathus decorus種群については,研究が終了あるいはほぼ終了した.しかし,シマヒイラギ種群,および最も激しい混乱状態に陥っているLeiognathus oblongus種群については,今回の研究で一応の結果が得られているが,詳細な研究が引き続き必要である.3.コバンヒイラギ属とウケグチヒイラギ属については,近年分類学的整理がほぼ完了しており,今回の再検討でも,ほぼこの研究成果の有効性が認められた.すなわち,両属ともにそれぞれ5種が含まれる.4.上記の結果,現状では本科魚類は3属36種に分類することができ,これらの簡潔な検索表とそれぞれの種の特徴,分布,および異名関係の証拠などを研究成果報告書で表した.5.本研究で導入したヒイラギ属の各種群は,形態的まとまりが強く,今後これらのほとんどが属に昇格する可能性が高く,属の再検討と属間の系統関係の解析が今後の課題である.6.本研究に付随して行った,トウゴロウイワシ科,クロサギ科などの魚類についても,数種の新種記載を行った.
著者
湯田 厚司 石永 一 山中 恵一
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

スギ花粉症の次世代治療に期待される舌下免疫療法を本邦で初めて小児例で検討し、安全性と有効性を確認した。同法は小児でも安全に施行でき、成人よりも効果的であった。本研究の遂行で様々な課題もわかり、特に本法が有効であったスギ花粉症例で、合併するヒノキ花粉症に無効な例が半数近く存在した。治療と同時に作用機序解明に免疫学的変化の検討も行った。治療により、誘導性制御性T細胞の増加、治療有効群でスギ花粉特異的IgG4の増加、治療無効群で血清IL-33の増加が確認できた。血清L-31, IL17Aには変化がなかった。