著者
平工 雄介
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

大気中汚染物質の中でも、特に屋内の化学物質による健康障害は緊急に解決されるべき重要な問題である。新築住宅の室内では、建築材料や家具に使用される接着剤や塗装剤などからホルムアルデヒド、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの揮発性有機化合物(VOC)が空気中に放出される。ごれらの物質には少量でも長期にわたり連続的に曝露されるため、発がんなどの健康障害が懸念される。エチルベンゼンはラットで腎に、マウスで肺、肝臓に悪性腫瘍を形成するという報告がある。本研究ではVOC、特にエチルベンゼンによる遺伝子損傷機構をヒトがん関連遺伝子DNA断片を用いて解析した。我々はエチルベンゼンを太陽光に曝露した場合に過酸化水素および過酸化物が生成され、銅存在下で酸化的DNA損傷を起こすことを明らかにした(BBRC 2003)。さらに我々は代謝活性化されたエチルベンゼンによるDNA損傷について検討した。エチルベンゼンはラット肝ミクロソームによりベンゼン環の水酸化を受けてエチルハイドロキノンおよび4-エチルカテコールに代謝されることが判明した。これらの代謝物は銅存在下で酸化的DNA損傷を起こした。生体内還元物質NADHの添加により、4-エチルカテコールによる酸化的DNA損傷は劇的に増強した。酸化的DNA損傷にはこれらの代謝物の酸化還元サイクルに伴い生成されるCu(I)と過酸化水素が関与することが明らかになった(Chem.Biol.Interact.2004)。これらの結果から、VOCの代謝物や光生成物などによる遺伝子損傷が、突然変異を介した発がんおよび免疫細胞の直接的な傷害による免疫能低下をもたらし、両者の相互作用が室内汚染物質による健康障害に関与すると考えられる。また我々は種々の環境発がん因子により生成される活性種がDNA損傷をもたらすことを明らかにし、研究報告を多数行っている。
著者
小田 敦子 野田 明 武田 雅子 藤田 佳子
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年6月に海外共同研究者アニタ・パターソンを交えての第1回の研究会に始まり、毎月の研究会を持ち、15年から16年度はエマスンのエッセイを17年度は詩を中心にテキストの精読と、共同研究者がそれぞれ専門とするエマスンの同時代の作家・詩人の観点からの議論を続けた。共同研究会は難解なエマスンのテキストを読む効果的な方法で、エマスンのテキストの19世紀における受容の実態、同時代人たちはエマスンを「マスター」と感じ、エマスンに批判的であると考えられているホーソーンやあまり関係づけられることのないディキンスンでさえ、彼の言説に注目し影響を受けていたことがわかった。研究代表者の小田は、平成16年度にアメリカのホーソーン学会に採択された研究発表"The Old Manse and the Concord as Emersonian Symbol"や、アメリカ文学会関西支部大会シンポジアムでの発表「エマスンの‘The Master Word'」で、エマスンがホーソーンに与えた影響を指摘した。野田は、エマスンがメルヴィルに与えた影響について、特に、文学の独創性や文学テキストの引用行為に対する両作家の姿勢・考え方に焦点を合わせることで検証しようとした。武田は、紀要に「ディキンスンの捉えたエマスン-伝記的事実に見る」を発表したが、これを踏まえて、エマスンとディキンスンの関係についての先行の研究をまとめることで、エマスンの影響を考察した。藤田は、当時の興味深い問題、科学と文学のかかわりの点からエマスンとソローを考察しエマスンの特性を論じると共に、この面に於いてエマスンがソローに及ぼした影響を明らかにした。パターソンは、ホイットマンとエマスンとの間の両義的な感情に関するこれまでの研究を精査した上で、彼らの相違点にもエマスンがホイットマンに教えたものの影を認めた。
著者
城山 隆
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

当初の研究課題に関する詳細な報告が発表されたため、計画の見直しを行った。弓状核のドパミン作動性ニューロン(DAニューロン)においてインターロイキン2レセプターのαサブユニット(IL-2Rα)の存在を確認していること(本研究実施者の平成11〜12年度科学研究費)、および産褥期に免疫系の大きな変化が起こることに着目して、産褥期精神病の生物学的背景として、エストロゲンとIL-2がDAニューロンにともに直接的に作用する形態学的根拠を探った。免疫組織化学的3重染色(抗IL-2Rα抗体、抗エストロゲンレセプターβ抗体:抗ER-β抗体、抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体を使用)により、共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて、DAニューロンにおけるIL-2RαとER-βの共存を調べた。弓状核の一部、および腹側被蓋野と黒質緻密質の多数のDAニューロンに、IL-2RαとER-βの共存がみられ、これらの領域のDAニューロンがレセプターを介してエストロゲンとIL-2による直接的な二重調節を受けていることが示された。これまでの報告で、出産後のエストロゲン血中濃度と精神症状発現の関連が示唆されており、動物実験でもエストロゲンの線状体、側坐核、前頭前野でのドパミン放出の調節が示されている。一方、産後に慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患が悪化することや、分娩前には免疫系活性化のマーカーである可溶性IL-2Rαの血中濃度が増加することが報告されており、産褥期には免疫系の大きな変化が生じる。また、エストロゲンが末梢血においてIL-2およびIL-2R産生を抑制することが報告されている。今回の研究結果とそれらの知見を総合的に考察すると、産褥期精神病の病因としてDAニューロン、IL-2、エストロゲンといった神経-免疫-内分泌相関の障害の重要性が示唆された。
著者
篠永 小百合
出版者
三重大学
巻号頁・発行日
2013-01-01

三重大学大学院教育学研究科博士前期課程教科教育専攻数学教育専修
著者
劉 妍
出版者
三重大学
巻号頁・発行日
2014-01-01

三重大学大学院教育学研究科 教育科学専攻 学校教育領域
著者
伊藤 幸洋 佐藤 年明
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466542)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.111-119, 2004-03

2002年度、「PEACE」と名づけた実践(4年・総合的な学習)を行なった。5つの国に関するGTに来てもらい、GTとの出会いをきっかけに、子どもたちが関心を持って調べたことを、子どもたちから発信する授業を構想した。総合的な学習において、人との出会いを通しての「学習手段」「表現手段(コミュニケーションスキル)」「関わり合う力」の獲得が、どの内容においても必要であると考える。子どもの願いと教師の願い(ねらい)がうまく重なるように、子どもと教師がコミュニケーションしながら学習を進めていくことに、総合的な学習がうまくいくカギがあると考える。また、国際理解の内容を進める上では、「その人と仲良くなりたい」思いを引き出す必要性、GTの体験を聞くことに有効性があると考える。これらの必要性・有効性とも、子どもたちと教師の学び合いによって達成されていくことを、本稿を通して述べた。
著者
松尾 早苗
出版者
三重大学
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.33-47, 2005-03-31

In Deutschland hat der Japonismus seinen Hohepunkt um 1900 erreicht. In diesem Aufsatz wird die Rezeption der japanischen Kunst bei dem Dichter und Kunsthistoriker Ernst Schur untersucht, um zur Fprschung iiber den Japonismus in Deutschland zur Jahrhundertwende einen kleinen Beitrag leisten zu konnen. Zu diesem Ziel werden die folgenden zwei Punkte in Betracht gezogen:1) Ernst Schurs Auffassung vorn Geist und Charakter der japanischen Kunst wird aufgrund seines Buches ,,Vom Sinn und von der SchQnheit der japanischen Kunst" untersucht. Hauptsachlich werden hier die Universalitat der japanischen Kunst, die Mystik der Form der japanischen Kunst und die Weltanschauung der japanischen Kunst behandelt. 2) Es werden die Einfliisse der japanischen Kunst, vor allem der Holzschnitte von Hiroshige auf Schurs Gedichte und Skizzen durch die Hinweise auf die Ahnlichkeit der Motive, Ausdrucksweise und Stile klargemacht. Dabei wird sein ,,Buch der dreizehn Erzahlungen" als unentbehrliches Material untersucht.論説 / Article
著者
鈴木 成宗
出版者
三重大学
巻号頁・発行日
2017-03-24

In the thousand year history of beer brewing, many innovative events have taken place. It can be said that most of the events happened through the development of new technology regarding yeasts or the discovery of a novel strain of yeasts itself. At the present time, nearly all craft beer companies have to continuously develop new beers in order to gain more of the market share. In this thesis, to produce a characteristic craft beer, at first five different tree saps were collected from the Ise-shima area and each sap was mixed into each pasteurized wort containing hops in a sterilized Erlenmeyer flask. After mixing, the flasks were placed in a dark at 30˚C for 2 days. Some worts produced an aromatic alcohol flavor and small frothy barms. One wort with superior flavors was propagated in a stock pot filled with pasteurized wort. And after 2 days, propagated wort was utilized to brew 1000 liters of beer. After one year, the second brewing was attempted by using sediment of a fermentation tank that had been used for the first brewing. Next, a flavor-producing wild yeast was isolated using an enriched culture method from sediment of a fermentation tank for the second brewing. A comparative analysis of the sequences of ITS1-5.8S rDNA-ITS2 region indicated that the isolated strain was related to Sacchromyces cerevisiae and was named KADOYA1. To evaluate the characteristic and utility of KADOYA1, a commercial scale (1,000 L) of beer production test was performed using ale beer yeast strain 1056 and 3068 as a control. The fermentation rate of KADOYA1 was slightly lower than those of strains 1056 and 3068, but ethanol production was sufficient. The odor properties of beer brewed with each yeast strain were estimated with quantification of gas chromatography-mass spectrometry, and a fragrance evaluation was performed using an electronic noses (FF-2A). The results showed that the beer brewed with KADOYA1 has a characteristic odor that is different from those of the beers brewed with the other two strains. KADOYA1 was deemed to be a commercially useful yeast for craft beer production because it has sufficient fermentation and good flavor-producing abilities. KADOYA1 is expected to be used to produce craft beer with a unique flavor.
著者
友永 輝比古
出版者
三重大学
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.127-131, 2003-03-25

今の日本で劇場に足を運ぶ人々は、「笑いと元気と斬新さ」を求めています。新劇界がもっと喜劇を採り上げ、喜劇役者がいないならば、思いきって吉本新喜劇の役者を客演に招いて芝居づくりをすれば、日本の演劇はもっと面白くなるのではないでしょうか。そんな訳で、喜劇役者が演じたと言われるモリエールの『ドン・ジュアン』と、ブレヒトの弟子たちが改作した『ドン・ジュアン』を選び、両作品を比較してみました。モリエールのドン・ジュアンもベルリーナー・アンサンブルのドン・ジュアンも、偽善者になることを宣言してから地獄に落とされるのですが、そこまでの過程において、アンサンブルの方はモリエールと違って、ドン・ジュアンの偽善者たるにふさわしい本性を鋭くしかも笑劇風に描いています。また、アンサンブルはこの喜劇の中に、1950年代のドイツの情況を忍び込ませてもいます。
著者
王 茜茜
出版者
三重大学
巻号頁・発行日
2016-01-01

フィラーはコミュニケーションにおいて大きな役割を果たしているが、その機能について未だに明らかにされたとは言えないため、日本語教育においても日本語学習者へのフィラーの指導は、個別の場面での機能を指摘する断片的なものに留まっているということは先行研究において指摘されている。また、「アノー」と「エート」は日常生活でよく使われるが、二語の意味が似ているため、二語を使い分けることが難しいという声をよく耳にする。そこで、本研究では日本語教育に貢献するために、「アノー」と「エート」に焦点を当てて、従来のフィラー研究では分析対象とされてこなかったゼミナールというややフォーマルなスタイルの自然談話におけるフィラーの使用実態を解明し、その機能について考察した。まず、ゼミナールの発言を「原稿説明時」と「質疑応答時」に分けて、「男女の使用差」と「日本語母語話者と中国人日本語学習者の使用差」の視点から、量的な面からフィラーの使用実態を考察した。その結果、フィラーの使用にはある程度の男女差が確認できた上、「原稿説明時」の場合は「エート型」が、「質疑応答時」の場合は「アノ系」が多用されているということが確認できた。さらに、中国人日本語学習者に多用されるフィラーは中国語にもそれらに対応するフィラーが存在するということも分かった。次に、質的な面からフィラーについての考察において、ゼミナールの参加者の「役割」とフィラーの「出現位置」という二つの視点からフィラーの機能について分析を行った。結果として、フィラーは「役割」と「出現位置」によって機能が変わってくるということが確認できた。なお、中国人日本語学習者に多用されるフィラーの機能には、言葉や文を「ぼかす」機能があるということも確認された。最後に、「アノー」と「エート」のそれぞれの使用環境について考察し比較した結果、「アノー」は「エート」より対人的機能が強く、独り言では使いにくいということを、量的な結果をもって示すことができた。また、「①『アノー』は『形式検索』の時に、『エート』は『内容検索』の時に多用される」、「②『エート』は難しさを感じた場合、その主張を受け手に示す機能を持っているが、『アノー』にはその機能を持っていない」という二点は従来の研究で指摘されていたが、本研究では実際の用例を用いて考察した結果、それらを裏付ける結果が確認された。
著者
稲垣 朋子
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、離婚後の親権行使及び面会交流のあり方を、共同親権制度を視野に入れつつ再検討を行った。その際には、共同親権が認容されない(されるべきでない)単独親権の場合においては、子の福祉をいかなる方法で保障していくべきかという側面にも目を向けた。ドイツ法を比較対象としながら、共同親権制度下での親権行使及び面会交流の態様と、単独親権制度下でのそれらとの溝が何であるかを裁判例及び実態より明らかにし、日本における離婚後の共同親権のあり方を考察した。
著者
林 和哉 脇田 裕久
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.75-84, 2004-03-31

本研究は、動作前の自発的掛け声が局所および全身反応時間に及ぼす影響を観察し、自発的掛け声が神経・筋機能に与える影響について検討することを目的とした。局所反応動作におけるS反応動作およびF反応動作のEMG-RTは、absence試行に比較してpresence試行が有意に短縮した。IEMGについては、absence試行に比較してpresence試行が有意に増大した。全身反応時間については、EMG-RTは、absence試行に比較してpresence試行が有意に短縮した。EMD・動作時間・力積については、両条件間に有意な差が認められなかったが、平均発揮筋力はabsence試行に比較してpresence試行が有意に増大した値を示した。以上のことから、自発的掛け声は局所および全身の反応動作におけるEMG-RTを有意に短縮させるとともに、その後に続く筋力発揮にも作用をもつことが示唆され、このことについては自発的掛け声が網様体賦活系や大脳の運動準備電位の活動水準を上昇させる可能性のあることが考えられる。
著者
玉木 領司 村田 真理子 駒田 聡子
出版者
三重大学
雑誌
三重医学 (ISSN:03850978)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.141-145, 1997-03
被引用文献数
1
著者
丹保 健一
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学 (ISSN:03899241)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.11-22, 1988

佐治氏の命名になる「状況陰題文」は、題述文の一つというより、状況に深く係わりを持つ特殊な存現文、強いて名付ければ、「状況存現文」とでもいうべき性格を持つ文である。というのは、状況陰題文における「状況」は、判断の対象としての主題というより、表現、理解のための無意識の前提として働いているにすぎないからであり、又、状況陰題文の述語が持つ判断作用は、文末の感動表出によりコト的なものとして収まると考えられるからである。
著者
三根 慎二
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は,1)プラットフォーム概念の整理および2)学術情報流通におけるプラットフォームの事例調査に向けた調査計画の立案を行った。プラットフォーム概念の整理に関しては,まず国内外のプラットフォーム研究関連の先行研究と学術情報流通におけるプラットフォームを扱った研究の網羅的文献探索を行った。前者に関しては,主に中心的研究者の著作やレビュー論文を対象に,エンジニアリング・デザイン(新製品開発,オペレーションズマネジメント,技術戦略)と経済学(産業経済学・産業組織論)におけるプラットフォーム概念(①製品プラットフォーム,②サプライチェーン・プラットフォーム,③産業プラットフォーム,④多面市場プラットフォーム)について整理した。一方,学術情報流通においては,特定のサービスをプラットフォームと呼ぶことはあるものの定義なしでの利用に留まっていること,プラットフォーム概念を扱った研究は学術雑誌の価格構造に関する経済学分野のものを除いて,ほぼ皆無であることが分かった。収集した関連文献リスト(図書・雑誌論文・ウェブサイトなど)は,ホームページ上で公開・随時更新している(http://lis.human.mie-u.ac.jp/post/161536774281/how-platforms-reshape-scholarly-communication)。学術情報流通におけるプラットフォームの事例調査に関しては,特定商業出版社の電子ジャーナルプラットフォームを対象に,なぜ現在のような先導的役割を果たし,他社への強い影響力を保つことができたかを明らかにすることを目的として事例調査の研究計画を立案した。
著者
晝河 政希
出版者
三重大学
巻号頁・発行日
2016-01-01

三重大学大学院 工学研究科 博士前期課程 分子素材工学専攻
著者
栗田 新太郎
出版者
三重大学
巻号頁・発行日
2010-01-01

三重大学大学院地域イノベーション学研究科博士前期課程地域イノベーション学専攻
著者
村岡 一幸 渡辺 守
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.37-44, 1996

シロチョウ類の資源植物となるイヌガラシの分布構造とその開花数を調査した。イヌガラシは全長707.1mの「塩の道」の両側に列状に分布していた。これらのイヌガラシについて、区画長を変化させMORISITAの<special>Iδ</special>指数によって分布構造を解析したところ、イヌガラシの分布はいくつかの集団をもつ集団分布であることが明らかになった。実際、イヌガラシは4つの大きな集団を形成して分布していた。イヌガラシは集団内で1か所2か所を中心に分布しており、集団内の開花・結実はほぼ同調していた。4つの集団のうち北側の2つは開花期間の中期の集団であり、南側の2つは開花期間の後期の集団であった。生育していたイヌガラシの中からランダムに17株を選び、花序あたりの開花数を連続6日間調査した。この結果花序あたりの平均開花数は1.2花であった。そこで、大きな4つの集団の内の1つの集団について、花序あたりの蕾数と花数、長角果数からこの集団の開花期間と日あたりの開花数を推定した。その結果この集団の開花期間は約2か月であり、そのうち開花数が300個以上の日は17日間続いたと推定できた。さらに、イヌガラシ1花が分泌する花蜜中の糖量を考慮すると、この間は約10mg以上の糖が訪花昆虫に供給されていたといえる。これは、モンシロチョウ約100頭分の一回の吸蜜量に相当した。これらの結果から、イヌガラシはシロチョウ類にとって持続的で豊富な蜜源になっていると思われる。