著者
吉井 豊藤丸 村上 義一
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.65, no.737, pp.123-129, 1957-05-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14

本報告で, ポルトランドセメントの偽凝結の一原因をセメント中の半水石膏硬化力によるとする観察からその機構を解明してみた. 半水石膏硬化力のみでは偽凝結を完全に解明することは出来なかったけれども, セメント中の半水石膏の硬化時刻を考えに入れること -セメントの偽凝結はある量以上の半水石膏を含み, しかもこの半水石膏がある時間の範囲 (フェデラル規格試験法では混練後1-5分) に硬化する場合にのみ偽凝結としてあらわれる-によって, 今まで説明出来なかった諸現象の一部を解明することが出来た. 結論を以下箇条書に述べると,1) 珪砂に少量の半水石膏を添加し粉砕した粉末試料は, その含有量がSO3として0.5%で偽凝結を起し, 1.2%以上では始発も急結を示した. この試料において混練時間を長くするか, 半水石膏の硬化時間を早める二水石膏を添加するか, または湿度の高い状態で風化させ半水石膏の一部を二水物に変えることによりペーストの硬化を進め, 混練により練殺すことにより, この偽凝結を消すことが出来る. 一方これと反対に, 混練時間を短縮するか, 炭酸アルカリのように半水石膏の硬化時間を遅らすものを添加することにより偽凝結性を強くしうる.2) セメントの場合は珪砂, 半水石膏混合粉末ほど単純ではないが, 同様な傾向が認められる. セメント中の半水石膏の硬化時間は半水石膏自身の硬化時間および二水石膏, カルシウムサルホアルミネート, アルカリ塩, 石灰化合物その他により複雑な影響を受けると考えられる.セメント中の半水石膏の硬化時間を実測することは困難である故, その尺度を知るために, 半水石膏とセメントを半々に混合した試料を石膏試験法により, その始発時間を測定することにより目安とすることが出来る.3) 仕上ミルから出たばかりの新鮮セメントの半水石膏硬化時間は非常に早いものが多く (特にオープンサーキュット式のようにミル内に水蒸気が多い場合), ほとんど混練時間中に練殺されるため偽凝結とはならない. したがって, セメント中の石膏含有量と偽凝結の強さは, 新鮮時でぽ直接関係がない. セメントが風化すると, セメント中の石膏硬化時間が遅れてくるため, 練殺されない結果, 偽凝結を起し, 石膏量の多いセメントほど偽凝結が強くなる. フェデラル規格の場合, 混練終了後1-5分間に硬化する石膏量と偽凝結とは密接な関係が認められる.4) 偽凝結セメントに二水石膏を添加した場合, または湿度の高い状態で風化した場合偽凝結が消える理由は, セメント中の半水石膏の硬化時間が早くなるためである. 後者の場合は, 高湿度下の風化のためセメント中の半水石膏が二水物, サルホアルミネート等に変化し, 半水石膏の量が減少すると共に, 生成物が半水右膏の硬化時間を早めるためである.5) セメントを湿度の低い状態で風化させた場合永らく偽凝結状態を保つが, これはこの状態ではセメント中の半水石膏が安定して存在するためであろう.6) クリンカー粉末を湿度の高い状態で風化し, これに半水石膏を加えたセメントは強い偽凝結を示す. またクリンカー粉末を湿度の低い状態で長期間風化したものは半水物, 二水物のいずれを添加しても偽凝結を起す.これらの場合, 偽凝結と半水石膏硬化時間との間には関係が認められない. これらの現象は上述のものとは異なった理由によるものと考えられ, この別種の偽凝結はセメント中の半水石膏の硬化力に起因せず, クリンカー自身の硬化力によるもので, 試験温度が低い場合にはあらわれず, 混練後静止されると直ちに硬化し, 石膏によって, その硬化を防ぐことが出来ない特徴を持っている. これに関しては後日報告する予定である.7) セメント中の半水石膏に起因する偽凝結を防止する方法としては, 防湿袋を使用することにより風化を防ぐこと, 現場コンクリートミキサーで少量の二水石膏粉末を添加混練し, 混練を出来るだけ長くすること, また実際に行うことはなかなか困難であるが, 仕上ミルの温度を下げてセメント中の石膏の一部を二水物として残しておくか, またはセメントを冷却した後二水石膏の粉末をセメント粉砕後添加混合することが考えられる.
著者
水田 博之 芝崎 靖雄 延谷 宏治 金丸 文一
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1043, pp.355-362, 1982-07-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
5

0.12K2O・0.48PbO・0.40ZnO・0.15Al2O3・1.70SiO2(mol) の基本組成を持つ基礎釉及び基本組成にTiO2(5wt%) とNH4VO3(3wt%) を単独または同時に加えた組成の釉について結晶化及び虹彩現象の研究を行った.1150°-1250℃の温度範囲で溶融後徐冷すると基礎釉及びV添加釉ではZn2SiO4の結晶が析出するが, Ti添加釉ではZn2SiO4とZn2TiO4の結晶が析出した. TiとVを同時添加した釉ではルチル型 (TiO2) が主として析出し鮮やかな虹彩を示した. この虹彩現象は葉片状に集合した薄板状ルチル型 (TiO2) の析出によって引き起こされるが, Zn2TiO4やZn2SiO4の析出は逆に虹彩現象を弱めた. 析出結晶相の同定には, 実体顕微鏡, 走査型電子顕微鏡, 分析電子顕微鏡やX線回折装置を用い, 析出結晶と虹彩現象との関連性を詳しく議論した.
著者
下野 泰雄 西田 充 関 八千穂
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1101, pp.494-502, 1987-05-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
26
被引用文献数
2

This report describes the formation of foam glass made from abundant glassy volcanic ashes existing in south Kyusyu (Kagosima-ken), Hokuriku (Ishikawa-ken), and Hokkaido. A specified batch composition in the system volcanic ash, sodalime-silica glass, and sodium silicate (anhyd.), has been calcinated at 900°C for 10 minutes in an electric furnace to obtain foam glass. This experiment has provided various usefull foam glasses with desired quality, for insulating materials (bulk density: 0.23Mg/m3, thermal conductivity: 0.07W/m·K) and inner or/and outer sawing materials (bulk density: 0.65Mg/m3, thermal conductivity: 0.14W/m·K). All volcanic ashes used in this experiment has satisfied requirements for raw materials. When the six definite straight lines are extrapolated to find by plotting the physical properties (bulk density, thermal conductivity, average pore diameter) of foam glass on various amounts of the soda-lime-silica glass at the right-angled coordinates definates x-axis as the amount of sodium silicate (anhyd.) including the glass batch, and y-axis as the physical properties, every lines intersected and converged on one point. When the intersectional coordinates are the bulk density and thermal conductivity of foam glass, all the values of x-axis are the same. And, when the intersectional coordinates are the average pore diameter of foam glass except Sample No. 2, all the values of y-axis are the same. It was found that all the glassy volcanic ashes used in this experiment have essentially the same property ranging from south Kyusyu to Hokkaido.
著者
友沢 稔 高田 雅介 John ACOCELLA E. Bruce WATSON 高森 剛
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1056, pp.377-383, 1983-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
31
被引用文献数
7 9

約8wt%までの水を含むNa2O・3SiO2ガラスを高温高圧下で合成し, そのガラス転移点 (Tg) をDTA法により測定した. ガラス中の水はTgより高温で発泡を伴って溶離した. ガラス転移点と発泡温度はともに含水量の増加につれて減少した. 含水量の変化に対するガラス転移点の変化を高分子の可塑剤に対する種々の方程式と比較し, OHと分子状H2Oの両方の寄与を考慮に入れた方程式により, 最もよく記述されることを見出した. OHはTgを急激に下げ, 一方分子状H2Oは単にガラスを薄める効果によりわずかにTgを下げることが結論付けられた.
著者
功刀 雅長 高橋 克明 沢井 郁太郎
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.69, no.788, pp.261-270, 1961-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
5

A model of a bridge-wall tank was made from plastics to the scale 1/50. Molten glass was replaced by 82% glycerin and its flow in the model under conditions satisfying as fare as possible the law of similitude was studied by the following method. Grains of plastics covered with aluminium powder, whose specific gravity was made as nearly as possible the same as that of glycerin, were introduced as tracer. Illumination with a thin sheet of light across the tank made the motion of the tracer particles visible, and the velocity distribution in the flowing glycerin was estimated from photographic records of the tracks. The temperature distribution in the fluid was measured by Cu-constantan thermocouples. The effect of changes of heat input from the top surface and the arrangement of heaters on the flow patterns and the temperature distribution was investigated.
著者
樋口 昌史 淺香 隆 片山 恵一
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会 年会・秋季シンポジウム 講演予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.226, 2003

東海大学工学部は、2000年春の改組によって旧工業化学科が"応用化学科"と"生命化学科"とに分かれて誕生し、定員は80名である。学生の半数は一般受験によって入学するが、その他、一般推薦・自己推薦・AO推薦で入学した者に付属高校からの入学者も加わり、様々な学生が入学してくる。このため、学力差が大きいことは勿論、自分の無知さに気づかない学生や学習意欲のない学生が増えているのも事実である。本発表では、このような本学応用化学科の現状を無機化学関連科目を中心に話し、大学教育の問題点を探ってみたい。
著者
竹内 敦子 古滝 敏郎 小山 浩司 砂川 和彦 矢口 洋一 松井 良憲 村杉 政一 関 修平 田川 精一 原 和香奈 吉本 護
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (日本セラミックス協会学術論文誌) (ISSN:09145400)
巻号頁・発行日
vol.113, no.1319, pp.478-483, 2005 (Released:2005-07-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

Nano-dots array whose diameter and interval were approximately 200 nm and 750 nm, respectively, were made parallel to the atomic step edges on sapphire wafers by focused ion beam (FIB) system. Upon annealing a bunched multi-steps structure formed at regularintervals and straight because the steps were pinned at the nano-dots. The step heights andterrace widths were approximately 2.0 nm, 700 nm in off-angle 0.15° and 10.0 nm, 350 nm in off-angle 1.0°, respectively.
著者
不動寺 浩 澤田 勉
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会 年会・秋季シンポジウム 講演予稿集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.338, 2005

著者らが開発した非極性溶媒により構造色が変化する人工オパール薄膜について報告する。単分散シリカ粒子を最密充填したコロイド結晶薄膜をガラス基板上にコーティングした。粒子間の隙間には紫外線硬化型のエラストマーを充填し硬化することでコンポジット化した。このエラストマーは溶解度パラメータが近い溶媒に漬けることで膨潤現象を生じる。その結果、薄膜内の配列粒子の周期が10nmレベルで変化することで構造色が長波長側へ変色する。この構造色変化は繰り返し行うことができる。本講演では非極性溶媒であるトルエン・キシレンなどをリトマス試験紙のように簡単に視認できることを報告する。
著者
佐藤 次雄 菅野 佳実 遠藤 忠 島田 昌彦
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1085, pp.133-138, 1986-01-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

SiC, Si3N4及びAlN試料を900°-1200℃の温度域において, K2SO4あるいはK2CO3溶融塩中に浸し, 0.1-20h反応を行わせ腐食挙動を調べた. AlNセラミックスは本実験条件下では, AlON及びα-Al2O3酸化被膜が形成されカリウム塩溶融塩腐食に対し極めて安定であり, ほとんど重量減少を示さなかった. SiCセラミックスはK2CO3溶融塩にはわずかに溶解しただけであるが, K2SO4溶融塩とは定量的に反応し, K2SO4/SiC反応モル比は0.8であった. Si3N4セラミックスは窒素雰囲気下ではK2SO4及びK2CO3溶融塩いずれとも定量的に反応し, 各々の反応モル比はK2SO4/Si3N4=1.6, K2CO3/Si3N4=3.5であった. 一方Si3N4-K2SO4系の反応は空気中では酸化物被膜の生成により抑制された. 窒素雰囲気下におけるSi3N4とK2SO4あるいはK2CO3との反応は, 固液不均一反応における表面化学反応律速の速度式に良く適合し, 見掛けの活性化エネルギーはそれぞれ724kJ/mol及び126kJ/molであった.