著者
岸野 重信 米島 靖記 小川 順
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.133-138, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
12

食事より摂取した脂質は宿主体内で代謝され,エネルギー源や生体膜分子として利用されるほか,シグナル伝達物質としての役割も担う。また,脂質は宿主と共生関係にある腸内細菌によっても代謝され,その代謝で特徴的に生じる脂肪酸が宿主の脂肪酸組成に影響を与えていることが明らかとなり,一般的に摂取量の多い脂肪酸であるリノール酸などの食事脂質に由来する脂肪酸の腸内細菌代謝物に様々な生理活性が報告されている。このように,これまで栄養素として考えられてきた脂肪酸が宿主及び腸内細菌によって代謝されることで様々な生理活性を発揮する可能性が示唆されており,これら脂肪酸を利用した医薬品及び機能性食品の開発や腸管内で機能性脂肪酸を産生するプロバイオティクスの開発が期待される。我々は,腸内細菌が産生する脂肪酸の内,リノール酸から代謝される初期代謝産物10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid(以下HYA)について,食品向けの実用化開発を現在実施しており,本稿ではHYAの機能と実用化に向けた取り組みについて紹介する。
著者
山下 陽子 芦田 均
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.467-474, 2017

<p>カカオはカテキンやそれが重合したプロシアニジン類などのポリフェノールを多く含み,生活習慣病などのさまざまな疾病の予防効果が期待されている。本稿では,カカオポリフェノールによるAMP活性化キナーゼ(AMPK)のリン酸化とインクレチンホルモンの分泌によるグルコース輸送担体4型の細胞膜移行を介した高血糖予防効果とAMPKのリン酸化によるエネルギー産生を向上させ脂肪蓄積予防効果について,わたしたちの知見を中心に紹介する。</p>
著者
酒井 裕二 鈴木 将史
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス = / Japan oil chemists' society (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.91-96, 2004-03-01
参考文献数
46

基礎化粧品とエマルションは密接に関連し合っている。そのため, エマルション技術の向上が化粧品の品質向上につながり, 化粧品技術の進歩がエマルション研究を底上げする図式となっている。このような視点から, 筆者らはジグリセロールテトラオレート (DGTO) を開発し, その特異的乳化挙動と化粧品のクレンジングへの応用について検討した。乳化挙動においては, O/W乳化傾向が高いこと, 界面張力が低いこと, 液晶への溶解性が低いこと, 吸油量が低いことが他の油と比較して際立っていた。このため, この油を配合したクレンジングクリームは, 高いクレンジング機能を有することが分かった。これらの特性の要因として, 有機概念図上の有機性値と無機性値が高いことが考えられた。
著者
岩田 忠久 柘植 丈治 石井 大輔
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.123-129, 2014

<p>現在,様々なバイオベースプラスチックが開発されているが,熱的あるいは機械的性質,加工性,生産性,原料問題など多くの課題を抱えている。本稿では,微生物産生ポリエステル合成において炭素源を糖から非可食系植物油へ転換する取り組み,木質バイオマスの1つでこれまで廃棄されてきたヘミセルロースであるキシランの有効利用に関する研究,食品廃棄物の1つであるコーヒーの搾り滓から抽出されるカフェ酸を原料としたポリエステル合成に関する筆者らの最近の研究成果について紹介する。</p>
著者
El-Mallah M.Hassan EL-SHAMI S. BASSYOUN F. 無類井 建夫
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
油化学 (ISSN:0513398X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1101-1106, 1992-11-20
参考文献数
25
被引用文献数
1

オレイン酸メチルをモデルとしてジヒドロキシル化反応を新しい視点から研究した。試料を経時的に反応系から抜き取り, メタノール/硫酸で処理して残留するエポキシ中間体とアセチル化されたヒドロキシエステル類をそれぞれヒドロキシ-メトキシ及びジヒドロキシステアラートに変換した。キャピラリー GC-MS により各成分を同定し, さらに<SUP>13</SUP>C-NMR 及び<SUP>13</SUP>C-<SUP>1</SUP>H NMR により確認した。アンバーライトIR-120を触媒としたとき, ジヒドロキシステアラートの収率は 71.2% (オレイン酸メチルの変換率は87.7%) で, それには 50 minの反応時間で充分であった。
著者
Kuzmenko Alexander I. Niki Etsuo Noguchi Noriko
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
Journal of oleo science (ISSN:13473352)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.497-506, 2001-06-01
参考文献数
21
被引用文献数
13

The antioxidizig action of 20-hydroxyecdysone was investigated in several systems <I>in vitro</I>. Changes in the parameters of chemiluminescence in the presence of 20-hydroxyecdysone were found in rat liver mitochondrial fractions. The effect of 20-hydroxyecdysone on methyl linoleate micelles free radical oxidation was studied. The rate of oxygen uptake in methyl linoleate micelles was found to be smaller when 20-hydroxyecdysone was present than at its absence. The action of 20-hydroxyecdysone in the liposomal membranes oxidation was investigated be means of &alpha;-tocopherol consumption. A lower rate of &alpha;-tocopherol consumption in the oxidation of liposomal membranes was found when 20-hydroxyecdysone was present.<BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;The effect of cholesterol on free radical formation in liposomal membranes was investigated. The rate of free-radical formation was smaller when cholesterol was present in the membrane than in membranes free of cholesterol. The &alpha;-tocopherol antioxidant effect in the membrane was also lower when cholesterol was present. We show here for the first time that 20-hydroxyecdysone has an antioxidant action in combination with &alpha;-tocopherol in membranes with cholesterol overload. Kinetic measurements were revealed the 20-hydroxyecdysone antioxidant effect on free radical reactions in membranes.
著者
岩田 忠久 柘植 丈治 石井 大輔
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.123-129, 2014 (Released:2017-02-01)
参考文献数
10

現在,様々なバイオベースプラスチックが開発されているが,熱的あるいは機械的性質,加工性,生産性,原料問題など多くの課題を抱えている。本稿では,微生物産生ポリエステル合成において炭素源を糖から非可食系植物油へ転換する取り組み,木質バイオマスの1つでこれまで廃棄されてきたヘミセルロースであるキシランの有効利用に関する研究,食品廃棄物の1つであるコーヒーの搾り滓から抽出されるカフェ酸を原料としたポリエステル合成に関する筆者らの最近の研究成果について紹介する。
著者
杉山 妙 村野 賢博
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.11, pp.515-520, 2020
被引用文献数
1

<p>食品の「おいしさ」には,人の五感で知覚される味・香り・食感・外観といった様々な要素が複雑に関わっている。揚げ物やスナック菓子等の固形食品の「おいしさ」評価では,サクサク・パリパリという"音"で表現される食感(テクスチャー)が重要であり,これを客観的に評価する手法が開発されている。本稿では,筆者らの研究グループが開発した「食感音響評価システム」による,咀嚼を模した食品破砕とその破砕音の解析結果を中心に,"音"による食感評価方法について解説する。</p>
著者
黒川 博史 深野 友佳 大木 亨 長沼 孝文
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.127-133, 2019
被引用文献数
1

<p>脂肪酸メチルエステル(FAME)はバイオディーゼル燃料や,界面活性剤などの工業用の基幹原料として広く利用されている。FAMEは,パーム油,菜種油などの食用油脂を原料としているが,将来的な世界人口増加による食糧問題を背景に,工業用途には代替となる油脂資源の確保が求められている。 一方,このFAME生産で副生するグリセロールは,年々増加しており,その活用が求められている。そこで,筆者らは油脂生産酵母である<i>Lipomyces</i>属酵母を活用し,グリセロールを油脂へ変換するスキームを考え研究を行ってきた。本稿では高純度グリセロールだけでなく,粗グリセロールを炭素源とした培養と生産の可能性に関して紹介する。</p>
著者
日比野 英彦
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.539-547, 2013

リン脂質(PL)は細胞やオルガネラの膜形成やシグナル伝達分子の機能を果たす重要な成分である。細胞間と細胞内のPL由来シグナル伝達分子は,PL分子種自身,ホスホリパーゼA(PLA<sub>1,2</sub>),ホスホリパーゼC(PLC),ホスホリパーゼD(PLD)による分解産物とそれらの代謝産物である。PL,特に特定のホスファチジルコリン(PC)分子種は核受容体に認識される。このPC分子種は転写因子を活性化し標的遺伝子を発現させ,脂質代謝を促進する。PLのPLA<sub>1,2</sub>による加水分解はリゾPL(LPL)と当モルの脂肪酸またはアラキドン酸(AA),エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)などを含む高度不飽和脂肪酸(PUFA)を産生する。LPLにはリゾPC(LPC)や免疫関連作用を示すリゾホスファチジルセリンなどが含まれ,PUFAからは,AAのカスケード領域が華々しく創生され,EPAはエイコサノイドとDHAはドコサノイドへの進展が観られる。PLのPLCによる加水分解はホスファチジルイノシトールが主な対象であり,プロテインキナーゼCを活性化するジアシルグリセロールと滑面小胞体からカルシウムイオンを放出させるイノシトール1,4,5-三リン酸を産生する。PLDによりPLの作用に関し,ホスホジエステラーゼ(PDE)機能による加水分解はたん白質を活性化するホスファチジン酸(PA)とコリン(Cho),セリン,エタノールアミンなどの塩基を産生する一方,塩基交換機能では中枢領域においてPCやホスファチジルエタノールアミンがホスファチジルセリン(PS)に転換され,そのPSが神経細胞膜のシグナル伝達に関与している。LPCをリゾPAとChoに加水分解する分泌型リゾPLDが細胞運動性刺激因子オータキシンであると同定された。新たに発見されたCho含有PL特異的PDEはLPCとグリセロホスホコリン(GPC)をホスホChoに分解してCho代謝を制御することが見出された。GPCはCho補給源として母乳に豊富に存在し,精液,睾丸,腎臓に存在が認められ,成長ホルモン分泌促進,肝機能障害改善などが知られ,腎臓や精巣での浸透圧調整作用との関係が深い。
著者
川原 栄一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
油脂化学協会誌 (ISSN:18842011)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.134-142, 1955-05-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
1
著者
滝沢 靖臣
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.4, no.7, pp.279-285,270, 2004

近年, ポリフェノールの生理活性が注目されその合成と酸化反応が注目されている。カテキン, トコフェロール, ケルセチンは食品成分としても知られており抗酸化活性をはじめ抗癌作用でも知られている。これらのポリフェノールについて最近の合成と酸化について概説した。ルイス酸 (TiCl<SUB>4</SUB>, BF<SUB>3</SUB>, Et<SUB>2</SUB>0) またはTMSOTfを用いてカテキンの4位と8位での選択的C-Cカップリングにより二量体, 三量体, オリゴマーの合成がなされた。脂質酸化の条件下でカテキン, ケルセチンは酸化的に二量化等の化合物に変換された。トコフェロールは紫外線照射下での酸化により三量体が得られた。水酸基を有するトコフェロールの骨格にアセトキシ基を選択的に導入させることによりカテコール型トコフェロール化合物に変換した。いままでに得られているフェノール類の特性を用いた合成法と酸化反応を基礎にしてより効率的な機能性フェノール類の化学の構築が期待される。
著者
岡田 正秀
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.434-438, 1958-11-25 (Released:2009-10-09)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1
著者
中西 広樹
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.329-335, 2021 (Released:2021-08-07)
参考文献数
3

脂質は,私たちヒトの主要成分であり,生命を維持するうえで欠かすことのできない多彩な役割を担っている。地球上に存在する全生物がもつ脂質の数は十万種とも百万種とも言われ,明確な数,機能は明らかにされていない。これは,脂質が水に溶けにくい性質をもち,かつ,化学構造も多様であるがためである。リピドミクスは,細胞/組織/器官/生物のリピドームを体系的に研究する分野である。脂質の分析は,古くから種々のクロマトグラフィー技術や質量分析法、酵素法,蛍光標識,蛋白質プローブなどにより,定量的・定性的に行われてきた。そのなかにおいて,質量分析法は,優れた検出感度と多くの脂質分子を一斉分析する能力が高いため,近年の脂質研究においては欠かせないものとなった。しかしながら,脂質は代謝的・科学的に不安定であるため,正しい知識や技術をもって実験しないとデータに誤りやアーチファクトが生ずる。本稿では質量分析技術を基盤としたリピドミクスの作業プロセスの重要点とその実例について紹介したい。
著者
下村 政嗣
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.267-274, 2020 (Released:2020-06-10)
参考文献数
26

「持続可能な開発目標(SDGs)」策定の背景となる「人新世」や「プラネタリー・バウンダリー」に象徴される人間活動が地球環境に大きな影響を及ぼしつつある時代において,持続可能性を回復する循環型経済システムへ移行しようとする動向がある。今世紀になり,ナノテクノロジーの世界的な展開と相俟って新しい展開を迎えたバイオミメティクスは,分子レベルの材料設計からロボティクスの分野を超えた,建築,都市設計,に至る“生態系バイオミメティクス”と称すべき幅広い分野に広がっている。バイオミメティクスの手本である生態系は,再生可能な太陽光エネルギーを駆動力とした生産,食物連鎖による消費,代謝による分解によって,「ゆりかごからゆりかごへ」の完全なる物質循環系を植物・動物・微生物からなる生物多様性が可能としている。生物多様性からの技術移転をもたらすバイオミメティクス・インフォマティクスと,人と生物の界面がもたらす循環型経済の観点から,バイオミメティクスを巡る世界動向を紹介する。
著者
湯浅 真
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス = / Japan oil chemists' society (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.131-137, 2001-02-01
参考文献数
160
被引用文献数
2 3

バイオミメティックテクノロジーとしてヘムタンパク質系の展開について総説する。特に, i) ヘモグロビンやミオグロビンを模倣した酸素運搬体よりなる人工血液, ii) チトクローム酸化酵素を模倣した酸素還元電極触媒よりなる燃料電池, iii) チトクロームP-450を模倣した合成触媒, iv) ペルオキシダーゼやカタラーゼを模倣したバイオセンシングシステム.v) クロロフィルを模倣した人工光合成系などについて概説する。

1 0 0 0 乳化重合

著者
本山 卓彦
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
油化学 (ISSN:0513398X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.574-581, 1969