著者
高木 周
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.317-322, 2010-09-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
11

水中に存在する微細な気泡は, その比表面の大きさおよび液中での停留時間が長いことから気液反応の促進を目的とした化学反応器や水処理の曝気槽などで有効に利用されている。また, 医療応用と関連した分野では, 直径5ミクロン以下の微細なマイクロバブルは, 静脈への注射を通して超音波血管造影剤としてすでに利用されており, 最近では, このマイクロバブルに改良を加え, 血1流を利用したドラッグデリバリー担体としての利用も考えられている。本稿では, マイクロバブルに関する研究について最近の研究動向を紹介した後, 気泡サイズや発生数などの制御性に優れ, 将来の医療応用も期待できるマイクロチャネルを利用したマイクロバブル生成法について紹介する。
著者
Valtcho D. Zheljazkov Charles L. Cantrell Tess Astatkie Ekaterina Jeliazkova
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.195-199, 2013 (Released:2013-03-28)
参考文献数
23
被引用文献数
7 70

Lavender (Lavandula angustifolia Mill.) is one of the most widely grown essential oil crops in the world. Commercial extraction of lavender oil is done using steam distillation. The objective of this study was to evaluate the effect of the length of the distillation time (DT) on lavender essential oil yield and composition when extracted from dried flowers. Therefore, the following distillation times (DT) were tested in this experiment: 1.5 min, 3 min, 3.75 min, 7.5 min, 15 min, 30 min, 60 min, 90 min, 120 min, 150 min, 180 min, and 240 min. The essential oil yield (range 0.5-6.8%) reached a maximum at 60 min DT. The concentrations of cineole (range 6.4-35%) and fenchol (range 1.7-2.9%) were highest at the 1.5 min DT and decreased with increasing length of the DT. The concentration of camphor (range 6.6-9.2%) reached a maximum at 7.5-15 min DT, while the concentration of linalool acetate (range 15-38%) reached a maximum at 30 min DT. Results suggest that lavender essential oil yield may not increase after 60 min DT. The change in essential oil yield, and the concentrations of cineole, fenchol and linalool acetate as DT changes were modeled very well by the asymptotic nonlinear regression model. DT may be used to modify the chemical profile of lavender oil and to obtain oils with differential chemical profiles from the same lavender flowers. DT must be taken into consideration when citing or comparing reports on lavender essential oil yield and composition.
著者
加藤 知 中沢 寛光
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.503-510, 2015 (Released:2018-02-01)
参考文献数
39

皮膚の最表層にある厚さ10 μmほどの角層は,異物や細菌の侵入を阻止したり,体内からの水分蒸散を制御するなど物質の透過を巧妙に制御している。これらの角層の機能とその微細構造の関係は精力的に研究されているが,まだ未解明の部分が多く残されている。ここでは,角層の構造と物質透過の関係を解明するために,我々の研究室で開発してきた手法について紹介する。非侵襲的に採取した角層試料の電子顕微鏡観察では,簡便に凍結薄切片を作製する方法と細胞間脂質層内の脂質分子充填配列を解析する電子線回折法について解説する。また,物質透過と構造変化を同時測定できる斜入射セルを用いた放射光X線回折実験および脂質組成を簡単に制御できる人工モデル脂質膜を用いた実験手法についても紹介する。
著者
加藤 俊治 乙木 百合香 仲川 清隆
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.287-295, 2022 (Released:2022-06-07)
参考文献数
24

質量分析においてエレクトロスプレーイオン化(ESI)法は,汎用性の高いイオン化法の一つである。ESIの特徴の一つとして,イオン源において様々な付加体を形成しやすい点があり,一般的に[M +H]+,[M+NH4]+,[M+CH3COO]-などが分析に用いられる。一方で,試料などを由来とする金属イオンも容易に目的化合物に配位し,[M+Na]+や[M+K]+などの金属イオン付加体を形成する。こうした金属イオンの配位はcation-π電子相互作用によるものと考えられ,配位箇所はH+やNH4 +などと異なる。加えて,金属イオンの配位によってもたらされる原子間距離や水素結合の変化もH+やNH4 +などによる変化とは異なり,それゆえ金属イオンに特徴的なフラグメンテーションが引き起こされる。興味深いことに金属イオンの種類によってもフラグメンテーションは異なり,本原理を用いたユニークな構造解析法がいくつか報告されている。本総説では先ず化合物と金属イオンの付加原理について述べ,次に金属イオン付加体を活用した脂質の構造解析例について紹介する。
著者
望月 和樹 木村 真由 川村 武蔵 針谷 夏代 合田 敏尚
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.8, pp.375-381, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

中鎖脂肪(MCT)は,中鎖脂肪酸とグリセロールによって構成される。MCTは,小腸において脂肪酸に素早く分解され,その後長鎖脂肪と比較してエネルギー源として素早く代謝される。これは,MCTの消化吸収には胆汁によるミセル化のステップが必要ないことや,小腸で消化された中鎖脂肪酸は,中性脂肪に再合成されることなく,ミトコンドリアのβ酸化の律速ステップである脂肪酸とカルニチンとの結合が必要ないことによる。加えて,MCTを動物モデルに投与すると,β酸化,解糖系,クエン酸回路,電子伝達系,脂肪酸合成経路といったエネルギー代謝経路の遺伝子発現や酵素活性を増大することが明らかとなっている。また,MCTの摂取は,インスリン抵抗性や低栄養を有する動物モデルにおいて,インスリン作用を増大させることがわかっている。これらの結果は,MCTは,エネルギー源としてだけではなく,律速酵素の活性や発現を増大させることによって積極的にエネルギー代謝を活性化する作用を有することを示唆している。さらに,近年の研究によって,β-ヒドロキシ酪酸やクエン酸のようなMCTの代謝産物は,エピジェネティックメモリーの一つであるヒストンアセチル化修飾を増大させる能力を有することがわかってきた。我々は,中鎖脂肪酸であるカプリル酸は,小腸において脂肪や糖質の消化吸収関連遺伝子だけではなく,転写因子であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体やヒストンアセチル基転移酵素であるCBP/p300の遺伝子発現を増大させることを明らかにした。これらの研究成果は,MCTは,代謝関連遺伝子やヒストンアセチル化修飾を誘導する遺伝子の発現を増出させることによって,代謝や栄養素の消化吸収を増大しうることを示唆している。
著者
吉村 芳弘
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.8, pp.383-391, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
39

サルコペニアは加齢や低栄養,低活動,疾患などが原因で,骨格筋量の低下とともに握力や歩行速度の低下など機能的な側面を含む概念である,サルコペニアの診断は,四肢骨格筋量に加えて,握力,歩行速度などの身体機能の評価を含めて行われるが,世界的には複数の診断基準が提唱されている。予防や治療の中心は栄養と運動である。サルコペニア高齢者への中鎖脂肪酸の治療可能性が指摘されている。中鎖脂肪酸は炭素鎖8-10の脂質であり,エネルギー効率が高く,すぐにエネルギー源として利用される特徴がある。摂食量が減少した低栄養やサルコペニアの高齢者には極めて有用な栄養素の1つであると考えられる。最近の研究で,中鎖脂肪酸の経口摂取でグレリンの活性化を促すことが判明しており,食欲亢進の点からも中鎖脂肪酸は注目されている。
著者
大久保 剛
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.279-284, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
25

日本は世界的に見ても不眠大国である。社会構造が常に複雑になり,人手不足や長時間労働などの問題により,睡眠時間を確保することが難しくなっている。このため,何らかの方法で睡眠の質を向上させることが重要になっており,我々はヒトの食事に着目した。特にオメガ3系脂肪酸,リン脂質やコリン化合物などの脂質は中枢機能に関わりがある。本総説において,筆者の研究を交えて脂質摂取と睡眠の関係について紹介する。
著者
酒井 秀樹 土屋 好司 山口 俊介 遠藤 健司
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.11-19, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
37
被引用文献数
2 1

両親媒性分子が形成する二分子膜閉鎖体であるベシクルは,細胞膜の構造との類似性から人工の細胞膜モデルや,ドラッグデリバリーシステム(DDS)における薬物担体としての応用の試みが活発に行われている。また,ベシクルはその内部に水溶性物質を保持可能であり,また二分子膜内部には油溶性物質をも保持(可溶化)可能であることから,最近では香粧品・食品・化成品など幅広い分野への応用も試みられるようになってきている。本稿では,ベシクルの形成条件やその安定性を支配する因子について概説する。さらに,両親媒性分子混合系における分散安定性に優れるベシクル・ニオソームの調製,さらにはベシクルを構造指向剤として利用したナノサイズのシリカ中空粒子の調製法について紹介する。
著者
嶋田 格 松井 宏 澤田 真希 高石 雅之 藤田 郁尚
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.15, no.9, pp.415-421, 2015 (Released:2018-02-01)
参考文献数
11

清涼化粧料には,清涼成分としてℓ-メントールが汎用されている。しかしながら,ℓ-メントールは,適度であれば快適な清涼感を付与する一方で,多すぎると灼熱感,ヒリヒリ感といった不快刺激を感じることが知られている。そこで,我々は,快適な清涼感を与える濃度範囲を確認するために,頚部を用いた清涼感評価方法を確立し,ℓ-メントールに対する感度が高いクールスティンガーを選定した。これにより,男女によるℓ-メントールの感受性の違いや,発汗時の清涼感の感じ方の違いを明らかにした。また,TRPチャネルに着目した評価方法を用いることで,ℓ-メントールによる不快刺激を1,8- シネオールが抑制することを発見した。
著者
城戸 浩胤
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.4, no.10, pp.409-415,400, 2004 (Released:2013-06-01)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

ローズマリー (Rosemarinus officinalis) はよく知られているハーブの一種であり, その抽出物は酸化防止剤として広く利用されている。ロスマリン酸, カルノソール, カルノジック酸およびロスマノールのようなローズマリー抽出物成分は, ビタミンEおよびBHT (2および6-di-tert-ブチル-4-クレゾール) より強い抗酸化機能を有している。本稿では, ローズマリー抽出物の抗酸化成分とその効果について, さらには, 食品への用途展開について紹介する。ローズマリー抽出物は, 抽出法により, 含まれる抗酸化成分濃度や比率が異なることが分かり, 得られた抽出物の抗酸化性能は大きく異なった。さらに, 得られた抽出物の抗酸化性能は, その成分中のカルノソール等のアピエタン骨格ジテルペンポリフェノールの総量に依存した。一方, 食品の劣化原因は大きく分けて, 油脂や酵素の種類等の食品中に含まれる成分による影響 (内部要因) と, 保存や加工プロセスにおける光や熱等の影響 (外部要因) に分けられる。ローズマリー抽出物の機能として, 内部要因である油脂や酵素による劣化防止性能が高いことが判明し, 実際にローズマリー抽出物を食品に用いた系において, その食品が油脂劣化や酵素による劣化が防止されることが確認された。また, 外部要因である光および熱による影響においても, ローズマリー抽出物を添加された食品の劣化が抑制された。
著者
日比野 英彦
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.539-547, 2013 (Released:2016-02-01)
参考文献数
55

リン脂質(PL)は細胞やオルガネラの膜形成やシグナル伝達分子の機能を果たす重要な成分である。細胞間と細胞内のPL由来シグナル伝達分子は,PL分子種自身,ホスホリパーゼA(PLA1,2),ホスホリパーゼC(PLC),ホスホリパーゼD(PLD)による分解産物とそれらの代謝産物である。PL,特に特定のホスファチジルコリン(PC)分子種は核受容体に認識される。このPC分子種は転写因子を活性化し標的遺伝子を発現させ,脂質代謝を促進する。PLのPLA1,2による加水分解はリゾPL(LPL)と当モルの脂肪酸またはアラキドン酸(AA),エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)などを含む高度不飽和脂肪酸(PUFA)を産生する。LPLにはリゾPC(LPC)や免疫関連作用を示すリゾホスファチジルセリンなどが含まれ,PUFAからは,AAのカスケード領域が華々しく創生され,EPAはエイコサノイドとDHAはドコサノイドへの進展が観られる。PLのPLCによる加水分解はホスファチジルイノシトールが主な対象であり,プロテインキナーゼCを活性化するジアシルグリセロールと滑面小胞体からカルシウムイオンを放出させるイノシトール1,4,5-三リン酸を産生する。PLDによりPLの作用に関し,ホスホジエステラーゼ(PDE)機能による加水分解はたん白質を活性化するホスファチジン酸(PA)とコリン(Cho),セリン,エタノールアミンなどの塩基を産生する一方,塩基交換機能では中枢領域においてPCやホスファチジルエタノールアミンがホスファチジルセリン(PS)に転換され,そのPSが神経細胞膜のシグナル伝達に関与している。LPCをリゾPAとChoに加水分解する分泌型リゾPLDが細胞運動性刺激因子オータキシンであると同定された。新たに発見されたCho含有PL特異的PDEはLPCとグリセロホスホコリン(GPC)をホスホChoに分解してCho代謝を制御することが見出された。GPCはCho補給源として母乳に豊富に存在し,精液,睾丸,腎臓に存在が認められ,成長ホルモン分泌促進,肝機能障害改善などが知られ,腎臓や精巣での浸透圧調整作用との関係が深い。

2 0 0 0 OA 油脂製造技術

著者
加藤 保春
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.1, no.7, pp.779-784, 2001-07-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
秋久 俊博
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.445-453, 2007 (Released:2013-06-01)
参考文献数
62
被引用文献数
11 12

天然のトリテルペンやトリテルペン配糖体には抗炎症, 抗腫瘍, 発がん予防, 血糖降下, 抗高脂血, 肝保護, 抗ウイルスや抗菌作用など多彩な生理機能が報告されている。ここではこれら多彩な生理機能のうち, 2002~2006年にかけて報告された天然トリテルペン類やそれらの構造修飾物についての抗炎症, 抗腫瘍および発がん予防機能について概説する。トリテルペンポリオール類および酸性トリテルペン類の幾つかはin vivoモデル動物実験で優れた活性を示しており, これらのトリテルペンおよびそれらの誘導体は今後の抗炎症剤, 抗腫瘍剤および発がん予防剤開発において有用な化合物とみなされる。
著者
佐藤 清隆
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.16, no.9, pp.425-432, 2016 (Released:2019-02-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

ゲル,クリーム,エマルションなどのコロイド分散系の脂質含有食品において,脂質結晶は融解挙動,レオロジー,テクスチャー形成に重要な役割を果たしている。近年,脂質結晶に関する研究が極めて活発になっているが,その駆動力の1つが欧米で喫緊の課題となっている「トランス酸代替」と「飽和酸低減」のための技術開発であろう。本稿では,分子レベルから結晶ネットワークのレベルまで,脂質結晶の構造と物性に関する基礎的知見を,応用と結びつけながら解説する。とくに,脂質の結晶多形構造,混合挙動および結晶化の制御についての最近の研究をレビューする。
著者
桶田 洋明
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.379-385, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
7

油彩画における表現技法は,油絵具の性質との関わりが深く,特に媒材である乾性油,揮発性油等の特徴を生かしたものが多い。それらはテンペラ絵具やアクリル絵具には見られない,透明度の高さと可塑性の高さによる技法であり,それぞれ「透層技法」と「アラプリマ」が該当する。今後も油彩画は,油絵具と他の描画材との混合などにより,独創的な表現が可能となることで,さらなる発展が期待できる。
著者
菅原 知宏 山本 周平 曽我部 敦
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.195-202, 2020 (Released:2020-05-09)
参考文献数
16
被引用文献数
1

酵母Pseudozyma tsukubaensisが生産するマンノシルエリスリトールリピッド-B(MEL-B)は,糖脂質型バイオサーファクタントとして研究が進められてきた。一方,優れたラメラ形成能と皮膚保湿作用といった機能性に加え,特徴的な使用感を付与する点が高く評価され,化粧品への採用が広がってきている。それに伴って,製剤化に関する研究も進展しており,MEL-Bの特性を活かした処方例の報告が増えてきている。本稿では,MEL-Bの皮膚に対する効果とメカニズムに関する基礎研究から,化粧品処方や使用感評価といった応用研究まで,化粧品用途を目指した研究事例を紹介する。
著者
齋藤 洋昭
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.85-87, 2011-03-01 (Released:2013-07-18)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1
著者
酒井 正士 片岡 豪人 工藤 聰
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.85-90,66, 2002-02-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
38

ホスファチジルセリン (PS) は脳に存在する主要な酸性りん脂質であり, 古くから脳機能との関連で研究が進められてきた。1986年にはDelwaideらが, 牛脳由来ホスファチジルセリン (牛脳PS) を老人性痴呆症患者に経口投与することにより症状が回復することを初めて報告した。これ以後, 欧米で10件を超える二重盲検試験が行われ, いずれの場合にも老人性痴呆症に対する有効性が確認されている。特に494人の老人患者を対象としたイタリアにおける臨床試験では, 抗痴呆剤として牛脳PSを摂取することにより, 副作用は認められず行動と知的能力のパラメータが改善されることが示されている。しかしながら, 牛脳には感染性スポンジ脳症を媒介する恐れもあることから, 安全性の観点から見て食品素材としては適していない。また, 牛脳から得られるPS量はそれほど多くなく, 安全で充分な量を確保できる天然素材は他に見当たらない。この問題を解決するため, ホスホリパーゼDを用いて大豆レシチンとL-セリンとを原料にPS (大豆転移PS) を製造する技術が開発された。大豆転移PSの脂肪酸組成は牛脳PSとはかなり異なるが, 牛脳PSと同様にスコポラミンで誘発した齧歯類の記憶障害を回復させた。さらに, 老齢ラットに大豆転移PSを連日投与した結果, 牛脳PSと同様に水迷路試験の成績が回復したことから, 大豆転移PSも牛脳PSと同様の効果を持つことが期待される。
著者
野坂 直久
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.163-170, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
29

中鎖脂肪酸摂取が運動中のエネルギー基質代謝や体組成へ与える影響について解説する。脂肪は体内に大量に保有するエネルギー基質であり,パフォーマンス向上や競技特性に望ましい体組成の獲得のため,脂肪利用促進はトレーニングや食事の面から検討されている。中鎖脂肪酸は容易にエネルギーを産生し脂肪利用を促進することを期待され注目されてきた。運動前や運動中の多量摂取によるエネルギー補給が検討されてきたが,パフォーマンスへの効果は一貫しておらず,消化管の不快感も認め,その後,研究は中鎖脂肪酸の中間代謝物であるケトン体を主成分とした補給食品へ進展した。一方,中鎖脂肪酸の少量継続摂取は最大下運動中の脂肪利用を高め,オフシーズン時の筋厚の減少を抑え,運動との併用では体脂肪蓄積を相加的に抑制するなど,持久的運動能力の向上や階級制競技に望ましい体組成の維持増進に役立つ可能性が近年示されつつあり,他の競技や運動様式への応用が期待されている。
著者
大久保 剛
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.157-162, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
22
被引用文献数
2

コリン化合物は,生体の細胞膜を構成し,神経伝達物質のアセチルコリンの前駆物質としての役割を担っている。このように生体にとっては重要な物質である。運動の視点で見ると,トップアスリートでも激しい運動をすると体内のコリン化合物は消費されていく。そして,神経伝達が上手く行かずにパーフォーマンスが落ちてくる。これらのメカニズムを検証しながらコリン化合物と運動機能との関係を概説する。