著者
野並 慶宣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.681-685, 1959 (Released:2008-11-21)
参考文献数
15

鶏卵中の硫酸基の結合形態を定量的に検討するため,卵黄,卵黄膜及び卵白の全硫酸態硫黄を定量し,次に卵黄,卵白中の弱い結合状態にある硫酸基を透析,稀釈により遊離する硫酸イオンより検討した.また卵黄,卵白の全硫酸態硫黄の1年間にわたる産卵季節による変化を検討した.これらの結果より次のことを明らかとした. (1)ムチンを主成分とする卵黄膜の硫酸基含有量は高く,また卵黄中にエーテル可溶脂質と結合する硫酸基はない. (2)卵黄は生鮮物中19mg%の硫酸態硫黄を含み,このうち蛋白質と強く結合するものは1mg%,遊離状態またはこれに近い弱い結合状態にあるものは8mg%で他は蛋白質と弱い結合をする. (3)卵白は生鮮物中7.0mg%の硫酸態硫黄を含むが,このうち3.5mg%は遊離または弱い結合状態で存在する. (4)鶏卵の硫酸態硫黄含有量の“ふれ”は卵黄より卵白において大である.
著者
中村 精二 下田 忠次郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.909-913, 1954 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

As reported in the previous paper, one of the authors (SHIMODA) isolated a new antibiotic substance, “oryzacidin”, effective against the “Hiochi” bacteria responsible for the putrefac-tion of Saké from the broth of a strain of Asp. oryzae. But further investigations showed that in the culture medium there were one or two other antibiotic substances effective against “Hiochi” bacteria as well as oryzacidin. We have isolated one of these antibiotics in the crystalline form as its S-benzylthiuronium salt, needles, m.p. 137° (decomp.), from crude Na-oryzacidin powder, and as its free acid, needles, m.p. 67-8°, from the thiuronium salt passing through Amberite I.R. -120. It is soluble in water, alcohol, ethyl acetate, acetone, ether and hot chloroform, fairly soluble in cold chloroform and insoluble in ligroin, petroleum ether and benzene. From the analytical data, the molecular formula of the free acid was found to be C3H5NO4. On the functions of the nitrogen and oxygen, the existences of one nitro and one carboxyl groups were identified from the results of the electrometric titration, Victor MEYER nitrosation test, and infrared absorption spectrum. Reducing with stannous chloride and hydrochloric acid. β-alanine was obtained from its free acid. From these experiments described above, it was concluded that this new antibiotic is identic al with β-nitropropionic acid. Moreover, the synthesized β-nitropropionic acid from β-iodo-propionic acid gave no depression of the melting point when mixed with the substance isolated from broth. The β-nitropropionic acid inhibited the growth of “Hiochi” bacteria at a dilution of 1:30, 000 in the Saké medium. There was found no toxicity in the intravenous injection of 140mg per Kg of mice but mice succumbed within 24 hours to injection of 280mg/kg.
著者
筏 義人
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.522-529, 1990-08-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4
著者
繁森 有紗
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.841-843, 2017-11-20 (Released:2018-11-20)
参考文献数
5

本研究は,日本農芸化学会2017年度大会(開催地:京都女子大学)の「ジュニア農芸化学会」で発表された.菌根菌は植物と共生する菌類で,陸上植物の80%以上と共生関係にある.本研究は,菌従属栄養植物であるラン科のネジバナ(Spiranthes sinensis)の種子が,その発芽に必要な菌根菌と共生するイネ科のオヒシバ(Eleusine indica)の側で発芽して生育したことを植生調査,発芽試験,菌根菌同定といった実験で提示し,菌根菌を介した植物間コミュニケーションを示したものである.
著者
横井 佐織
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.406-411, 2017-05-20 (Released:2018-05-20)
参考文献数
13

多くの動物は,自らの子孫を残すためにさまざまな配偶戦略をもつ.たとえばオスに着目して考えると,オス間競争に勝利し,メスから配偶者として受け入れられる(配偶者選択される)必要があり,これらを単独に研究した例はこれまでに多く存在した.しかしながら,オス間競争とメスの配偶者選択との相互作用については,3個体に着目する難しさからか,不明な点が多く残されている.本稿では,分子遺伝学的手法を利用可能なメダカを用い,オス,オス,メスの三者関係によって誘起される配偶者防衛行動に着目することで,オス間競争とメスの配偶者選択との相互作用の一部について明らかになったことを紹介したい.
著者
野副 朋子 中西 啓仁 西澤 直子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.15-22, 2014-01-01 (Released:2015-01-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

鉄はすべての生物にとって必須な金属元素である.鉄は土壌中に豊富に存在するが,水に溶けにくく植物には利用されにくいため,植物は鉄を獲得するための戦略を進化させてきた.イネやトウモロコシなど主要な穀類の属するイネ科植物は「ムギネ酸類」と呼ばれるキレーターを根から分泌して土壌中の三価鉄を可溶化し,「鉄・ムギネ酸類」として吸収する.ムギネ酸類生合成酵素遺伝子の単離をはじめとして「鉄・ムギネ酸類」吸収トランスポーターの同定,鉄欠乏によって制御される遺伝子の発現にかかわるシス配列や転写因子など,イネ科植物の鉄獲得にかかわる分子が次々と明らかにされた.一方,ムギネ酸類を根圏へと分泌するトランスポーターの同定はなされておらず,残された最大の課題として国内外の多くの研究者がこのトランスポーターの発見にしのぎを削っていた.本稿では,筆者らが世界に先駆けてイネとオオムギから同定したムギネ酸類分泌トランスポーター「TOM1」について紹介するとともに,ムギネ酸類にかかわる遺伝子を用いた鉄欠乏耐性作物の創製に向けた取り組みについても解説する.
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.555-562, 1976 (Released:2008-11-21)
参考文献数
25
被引用文献数
8 9

HMPゲルおよびLMPゲルの基礎的粘弾性を明らかにする目的で,圧縮型平行板粘弾性計を用いクリープ曲線を求め解析した結果,次のような結果を得た. 1. 1.5~2.5%のHMPゲルおよび, 2ならびに2.5%のLMP ゲルは,いずれもフックの弾性体. 2組のフォークトの粘弾性体および,ニュートン粘性体の6要素模型で示すことができた.弾性率(E0,E1, E2)は, 104~106dyn/cm2,粘性率(η1, η2, ηN)は, 107~109 poiseであった. 2.ペクチン濃度の増加に従い,いずれの弾性率,粘性率も漸増していた.また,温度上昇にともない,弾性率,粘性率の漸減が認められたが, LMPゲルでは, 30°C以上でゲルの弾性率および粘性率の低下が目立ち,ゲルの脆弱化が認められた. 3.未処理ならびに精製HMPゲル,および精製LMPゲルのマスター・カーブが合成され,シフトファクターが求められた.すなわち, HMPゲルでは,11.0~49.0°Cの温度範囲で,精製LMPゲルでは, 5.5~24.5°Cの温度範囲で,温度,時間の換算則が成立つことが認められた.シフトファクターと絶対温度の関係から,みかけの活性化エネルギーを求めたところ,両者のHMPゲルは約30Kcal/mol.,精製LMPゲルは約65 Kcal/mol.であった.また,遅延スペクトルが求められ,未処理HMPゲルは, 2つの極大値をもつ山型分布を,精製HMPゲルおよび精製LMPゲルは,遅延時間の大きい方に極大値をもつ山型分布を示した.
著者
野村 眞康
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.46-50, 1953 (Released:2008-11-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

1. One strain of Pseudonas wan isolated from the soil and used in this study. 2. As the decomposition products of d-tartaric acid by resting cells, succinic and acetic acids were isolated and identified. Furthermore, it was confirmed from the quantitative studies (Table 2, Part 1 and 2) that anaerobic decompositien of d-tartaric acid is performed according to the following equation;_??_ 3. Standard free energy of formaton of bivalent d-tartaric ion at 25°C was calculated to be -242, 990 cal./mol. (Table 3) and the free energy change in the anaerobic decomposition of d-tartarate, i, e., 3 Tartaric''+2H2O=2Acetic' +Succinic''+4HCO3'+2H was calculated to be -64, 400 cal., or -21, 500 cal./mol. of tartarate (cf. Table 4). 4. It was suggested that this decomposition may proceed according to the equation (2) (3) (4) (5). 5. Dried preparation of cells was found to contain the enzymes which catalyze the oxidation of d-tartarate. 6. The enzymes involved in the oxidation of d-tartarate by this bacteria were shown to be adaptive in nature (Fig. 1).
著者
山下 陽子 芦田 均
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.747-752, 2016-09-20 (Released:2017-09-20)
参考文献数
23
被引用文献数
4 4
著者
白河 潤一 永井 竜児
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.299-304, 2015-04-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

メイラード反応は食品の加熱調理のみならず,生体内に存在する糖質とタンパク質間でも進行し,その後期生成物であるAGEsは老化や老化関連疾患の発症に関与している.以前AGEsは単なる老廃物として考えられていたが,AGEs化によって生体タンパク質が修飾されることにより,骨格タンパクの変性や,酵素の活性低下,タンパク質発現にも影響を与えると推察されている.そのため,生体AGEsの正確な測定は,病態のマーカーや創薬のターゲットという点からも注目されている.本稿では,生体の代謝・炎症など,さまざまな経路から生成するAGEsの測定法や,これまで明らかとなっている病態との関連性およびAGEs生成抑制物質の探索などについて紹介する.