出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.594-600, 1981-09-25 (Released:2009-05-25)
被引用文献数
4 3
著者
佐藤 泰 田中 善晴
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.115-123, 1973 (Released:2008-11-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

皮蛋製造の基礎研究として,比較的に性質が知られているゼラチンゲル(GG)を比較対照しつつ,アルカリ変性オボアルブミンゲル(OG)の性質を把握するため,3% GGと10% OGについてクリープ実験を行なった. OGは4要素模型, GGは3要素模型であらわすことができ, OGのクリープコンプライアンスには,瞬間弾性コンプライアンスと1個の遅延弾性コンプライアンスのほかに,定常流粘性コンプライアンスが関与していた. GGとOGの瞬間弾性率は3.2~3.3×104 dyne/cm2で,ほとんど同じであったが, OGの遅延時間は162秒,遅延弾性率は3.2×104 dyne/cm2で, GGのそれらの値より低かった.永久流動の粘性率から計算すると,小さな降伏値1.2×102 dyne/cm2をもつビンガム塑性体と考えられた. OGの剛性率と粘性率は,温度上昇により次第に減少した. 0.1M NaCl添加により剛性率は増加し,遅延スペクトルの分布の広がりがみられた. 2M尿素添加では,遅延時間の短い機構ができ,粘性率が増加した. O.1MのNa2SO3添加では粘性率も剛性率も増加するが, 0.2~0.5添加すると,剛性率は0.5M NaCl添加のときと同じ値まで減少し,粘性率はもとのOGの粘性率と同じになった.しかし遅延スペクトルには,ほとんど変化が見られなかった.以上の結果から, OGの特色ある流動性をもつゲルの構造について考察した.
著者
吉沢 淑
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.115-119, 1976 (Released:2008-11-21)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

主として清酒酵母を用いてアルコール,芳香エステルの生成とそれに及ぼす高級脂肪酸の影響を検討し,次の知見が得られた. (1)N源としてNH4Clを用いるとカザミノ酸を用いる場合に比して, EtOAc生成量はほぼ同様だが, i-AmOH, i-AmOAcの生成量は低い値となった.発酵が進むにつれてアルコールの生成量は増加したが,エステル生成は3~4日後に最大となり,以後減少した. NPP添加により酵母の増殖,アルコール,エステルの生成は阻害を受けた. (2)種々の高級脂肪酸とその誘導体のいずれも通常,醸造に用いられる酵母のエステル生成を飽和酸は促進し,不飽和酸は抑制した.効果の程度は酵母菌株や脂肪酸の存在形態により異なり,たとえばFFAとEtORでは不飽和酸の影響が強い.培地濃度0.1mMで飽和,不飽和脂肪酸(FFA)のエステル生成への影響は顕著に現われ, 0.5mMまで増加するにつれ,その程度は高まった.
著者
佐生 愛 増村 威宏
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.362-367, 2015-05-25 (Released:2016-05-20)
参考文献数
20

交通手段の発達により,世界中の人々がさまざまな国を行き交う時代となった.それに伴い,新興・再興感染症の世界的な流行が危惧されている.現在では,感染症予防策として注射型のワクチン接種が施行されているが,予防効果と取り扱いの簡便さから,経鼻・経口といった粘膜からワクチンを接種する粘膜ワクチンが注目されている.植物科学分野では,1990年代初頭から,医療用として用いられるペプチドやタンパク質を生産する場として遺伝子組換え植物を利用する研究が報告されるようになった.筆者らは,長年イネ種子貯蔵タンパク質の合成・蓄積機構に関する研究を進めてきた.その仕組みを利用すると,イネ種子胚乳組織を医薬品などの有用物質生産の場に変換できる可能性が見いだされた.
著者
児玉 龍彦
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.156-160, 2018-02-20 (Released:2019-02-20)
参考文献数
7

遠藤 章博士によるスタチンの発明は,人類史上はじめてコレステロール合成の本格的な制御を可能にし,肝臓やマクロファージをはじめとするヒトの細胞におけるコレステロール代謝の解析が大きく進み,メガスタディによる動脈硬化の予防の実証を可能にした.そのインパクトは20世紀の世界の医薬品開発と臨床医学を大きく変えた.年1兆円以上のブロックバスターを生み出し,グローバルなメガファーマの成立をうながした.だが,スタチンの影響はそれにとどまらない.コレステロールのメガスタディの評価は新たな論争を生み出し,単純化した標準治療や,コレステロールをはじめとする脂肪制限の栄養学には大きな批判も生まれている.スタチンの多面的作用の検討から,人体内の神経,血管,骨免疫系などにおける膜脂質とベシクル輸送におけるコレステロールのシグナル分子としての役割を明らかになりつつある.遠藤章博士のスタチンの発見は,医学薬学のパンドラの箱をあけ,21世紀の生命情報科学の創成をうながしている.