著者
篠原 隆 柳田 藤寿
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.7, pp.593-603, 1999-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
23

1.ワイン酵母 (S.cerevisiae) 48菌株の尿素およびアンモニアの利用性について, ブドウ果汁および窒素源添加ブドウ果汁を用いたアルコール発酵試験により検討した。供試酵母株の尿素およびアンモニアの消費量は, 初発濃度の40%から98%の範囲であった。供試菌株を尿素消費量に基づいて4グループに分けたところ, 多くの菌株が尿素高利用性 (消費量: 9.1~12.9mg/l) であり, 尿素低利用性 (消費量: 5.3~9.0mg/2) は少数であった。窒素源添加は一部の供試菌株の尿素消費を低下させた。アンモニアはいずれの供試菌株でも高利用性 (消費最: 16.1~19.6mg/l) であった。2.発酵における高温条件 (25, 30℃) は, 供試菌株の尿素消費を促進する傾向であり, 嫌気的条件は尿素消費を低下させる傾向であった。アンモニア消費は, これらの発酵条件下で良好であった。3.窒素源 (カザミノ酸, リン酸二アンモニウム, レアルギニン, 尿素) の添加による影響を, 発酵90日まで試験した。供試3株がリン酸ニアンモニウム, L-アルギニンおよび尿素の添加に影響された。とくに尿素低利用性の1株 (RIFY1062) は, 発酵中に尿素およびアンモニア濃度を増加させた。しかし, 他の供試2株においては, 窒素源添加の影響がみられなかった。4.甲州およびマスカット・ベリーAブドウを用いた小規模試験醸造において, 発酵もろみ中の尿素およびアンモニアは速やかに消費されて, 発酵以後も低レベルで推移した。本試験結果より, ワイン酵母による尿素利用性が明確となり, 尿素濃度を低レベル (5mg/l以下) とするための発酵条件が提示された。終わりに, 本研究にご協力下さいました成田真由美さん, 藤原真志さんに感謝いたします。
著者
橋爪 克己
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.966-973, 1999-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
30

ワインでは, ブドウの品種, 生産地域や気象条件さらには収穫時期などが重要視されている。メトキシピラジン化合物は, これまでカベルネ・ソービニヨン種の特徴的な香り成分と報告されているが, 検出及び定量が困難な化合物であった。本稿では, ブドウ及びワインにおけるメトキシピラジン化合物の挙動について解脱していただきたい。今後, 日本におけるブドウの栽培, さらにはワイン醸造への進展が期待される。
著者
菅間 誠之助
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.927-935, 1967-09-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
27

本特集に取り上げた「酒造場の汚染」が, 酒造場のこうじ, 酒母, モロミあるいは空気の「微生物的なヨゴレ」を意味することを, 最初にお断わりしておこう。さて, モロミで酸が増す, ボーメの切れが悪い, どうも酒質が鈍重で香りが良くない… これらの原因の一部あるいは大部分が「酒造場の汚染」にあることが最近はっきりしてきた。「汚染がなぜ, どのように起こるか?」この重大な問題を, 筆者は豊富なデータと広い知識をもとに, 明快に, かつ大胆に解き明かしてくれている。
著者
三鍋 昌春
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.7, pp.466-474, 2001-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

日本初の国産ウイスキ-はスコッチウイスキーを範として始まった。その後日本人の味覚にあったウイスキーを追求するようになり, 製造方法に独自の手法が採り入れられるようになった。ウイスキ-の製造方法はすでに周知のとおりであるが, 国産ウイスキーの品質の特徴が製造工程のどの段階のどのようなメカニズムによるものなのか興味深いところである。本稿ではウイスキーの製造方法に造詣の深い筆者に, 国産ウイスキ-が生まれた経緯と国産ウイスキーの製造方法を解説していただいた。また, 日本におけるウイスキーの将来についても言及していただいた。
著者
浜田 由紀雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.8, pp.573-577, 1992
被引用文献数
1

沖縄特産の泡盛は, 製造法がタイ国に由来するとの説がある。著者はそのタイ国に泡盛の原点を探る視察をされた。興味ある解説である。
著者
難波 康之祐
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.19-21, 1971-01-15 (Released:2011-11-04)

ここ2, 3年来, 仕込みが大型化し, 製きく能力とのかねあいから, 酵素剤の実用化が, 静かな足取リで進んでいる。実際に使う杜氏さん方のために, 清酒用の酵素剤の解説をお願いした。2回連載であるが, 今回1まその使い方, もろみ用には, あるいは四段用には, どんな性質のものをどのくらい使ったらよいかについて述べている。
著者
境 博成
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.339-351, 2007-05-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

フランス北西部, ノルマンジー地方のリンゴの生産地で造られるリンゴ酒シードルと隠れた蒸留酒カルバドスの歴史と現状を紹介。歴史, 製造方法のみならず, リンゴの産地・晶種, AOC規則, 酒税までを含めて言及した内容は醸造技術者はもちろん, カルバドス, シードルの愛好者までを満足させる解説となっている。
著者
境 博成
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.187-196, 2007-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

現在, 日本の酒類業界では第3のビールと呼ばれる発泡性飲料とチューハイ類の新製品が市場を賑わしている。これらのジャンルの開発は正にメーカーの知恵の勝負で, 多岐に渡る素材が集められ, 使われている。サイダーも日本ではフランス風にシードルと言う名称で商品化されているが, その販売数量は極小さい。<BR>一方, 英国では伝統的なサイダーが, ビールと共に国酒とも言える存在として脈々と飲まれ続けている。近年リンゴの健康に対するメリットが次々と明らかにされていることも考え合わせれば, 英国サイダーの現状について詳述されたこの総説は, 単にサイダーの紹介というだけでなく伝統的な酒類の生き残り戦略に多くの示唆を与えてくれる。
著者
佐藤 廉也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.308-314, 2004-05-15
参考文献数
7
被引用文献数
1

アフリカには穀芽を使ったローカルビール (醸造酒) とハチミツを発酵させた酒があるが, 詳細については明らかではない。ここではエチオピアのハチミツ酒の製造法と酒文化について紹介していただいた。先ずもと (スターター) を造り, さらに異なった方法で酒を造っている, その製法は発酵技術の理に適っており, その酒の消費が焼畑農業と関連を持つ酒文化であることに大変興味を引いた。
著者
岸場 利之
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.1033-1034, 1970

チェーンストアは多店舗展開によって企業全体のスケール・メリットを追究するのが経営の本質であるが, 一般小売店との関係上なかなか免許がもらえない。免許の大幅緩和が遂行された暁には, チェーンストアは酒の流通だけでなく商品形態, 販売方法までも革新することであろう。
著者
吉田 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.751-758, 1995-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
30
被引用文献数
11 12

最近では, 各地の醸造指導機関や大手酒造メーカーによる吟醸酒醸造用香気高生成酵母等の優良清酒酵母の育種, 実用化例が多数報告されている。そこで, 今回は溝酒の品質にたいへん重要な影響を及ぼす成分である有機酸に着目した少酸性及びリンゴ酸高生産性多酸性清酒酵母の育種について解説していただいた。