著者
森 正
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.292-296, 1968-03-15 (Released:2011-11-04)

国税庁醸造試験所は創立以来60余年を経たが, それは近代清酒製造技術の発展史でもある。今また新庁舎落成をみてますます将来の発展が期待されるとき, その敷地のいわれを知ることも興味のあることである。思いがけず, そこには幕末の世情を反映した遺跡が秘められている。ここに市井の歴史研究家森氏の研究の一端を紹介したが, これを機会に文化史的遺跡を保存する方法を講じて戴きたいものである。
著者
畠山 理広 北本 勝ひこ
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.525-531, 2008-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1 4

酒造りにおいて, 麹菌と光の関係に着目した研究はほとんどなかった。ゲノム解析により麹菌が光応答に関する多数の遺伝子をもつこと, また, 1日1回光をあてることにより再現性よく縞模様のあるコロニーが形成されることが確認され, 麹菌も光に応答することが明らかになった。これらの成果は, 今後, 光環境を制御することによる新しい麹造りにもつながるかもしれない。
著者
村井 幸吉
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.242-243, 1977

ウイスキー類の著しい躍進に比べ, 衰退の影がつきまとっているのが清酒である。少なくとも酒類間における現在のシェアを守リ, 地方業者が生きてゆくためには, まず酒類業者が作り上げられて来た体質を反省し, 強い企業意識を持つことであると筆者はいう。
著者
大場 俊輝 中村 欽一 佐藤 信
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.343-348, 1984
被引用文献数
1

官能検査パネルを選択し, 訓練する方法を開発し標準化することを目的として, 嗅力正常異常判断甘味・酸味の識別, 甘さの濃度の識別, 有機酸の味の識別テストを講習生, 酒類販売業者, 酒造技術者を対象として行った。<BR>1. パネル選定用5基準臭 (オルファクトメーター) を用い, 嗅力正常異常判断を行った。その結果, 講習生26人 (平均年令24才) 中24名 (92%) が合格であったが, 酒類販売業者は8名 (平均年令46才) 中3名 (38%) のみ合格であった。年令が若い方が嗅力は優れていた。<BR>2. 甘味・酸味の識別能力をペアー・テスト (14組) で調べた結果, 酒造技術者グループは, 講習生グループおよび酒類販売業者グループと比較すると危険率5%以下で有意な差があり, 識別能力が優れていた。<BR>3. 甘味の識別能力は, 訓練することにより向上し, 判断が安定化することがわかった。また, 個々の被検者では, 訓練することにより甘味・酸味とも識別能力の向上する被検者がおり, 訓練することの必要性が知られた。<BR>4. 利酒の経験のない被検者は甘味よりも酸味の識別能力が優れていた。<BR>5. 甘さ濃度の識別では, 講習生は69%合格したのに対し, 酒類販売業者は38%であった。<BR>6. 乳酸, クニン酸リンゴ酸, コハク酸の4有機酸の味の識別では, 講習生は27%合格したのに対し酒類販売業者は全員不合格であった。個々の有機酸では, リンゴ酸, コハク酸の味が識別しやすく, 乳酸とクエン酸とを誤識別する傾向があった。
著者
日本酒造組合中央会東京支部銘酒研究委員会
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.61-63, 1979-01-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
6

もろみの最盛期に多量の追水と麹添加を行った後, さらに発酵を続けることにより, アルコール分が低いにもかかわらず旨味があり, 味のバランスの良いソフトタイプ清酒を開発した。この清酒は酸度, アミノ酸度, 緩衝能が高く, このことが, 旨味があり, 味のバランスが良い理由と考えられる。
著者
輿水 精一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.162-166, 1995

ウイスキーを水で薄めて飲む飲酒スタイルは日本独自のものであり, アルコール代謝能力の弱い日本人が高アルコール飲料を飲むために考えだした飲酒法と言える。これまでは飲む直前に水で割るため混濁などは問題にならなかったが, いざ, 水割りの状態で商品化すると, もろもろの問題が派生してくることがわかった。水割りウイスキーの開発に携わられた筆者にその経緯を解説していただいた。新商品が新たな需要を掘り起こし, ウイスキー市場の活性化に役立つことを期待したい。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.823-828, 2007-11-15
参考文献数
26
被引用文献数
4

現在清酒は, 台湾, 韓国, 中国, ベトナム, オーストラリア, カナダ, 米国, ブラジルなど多くの国で造られている。本稿によると, 20世紀初めからの台湾における清酒醸造は, これらの先駆けであり四季醸造技術や理研酒など様々な試みが行われている。<BR>先人達の努力と経験に学ぶところ, 日本と台湾の深いつながりについて考えさせられるところが多い技術史である。
著者
天羽 幹夫 堀内 剛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.805-812, 1979-12-15 (Released:2011-11-29)
参考文献数
9

長年の間不明であったビールの噴きの問題がようやく解明されようとしている。著者はまず噴き現象を夏型噴きと冬型噴きにわけ, それぞれの噴き誘発因子ならびにその抑制法について解説している。
著者
山本 奈美 戸塚 昭
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.341-344, 1990-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

ノーズ・クリップ法でワインの官能評価をおこない, 赤ワインは味と香りの両方に白やロゼと判別される特徴を持つこと, ワインのブドウ品種の判別や熟度の評価には味よりも香りの方が重量な要因であることが示され, ワインの官能評価における香りの重要性が確認された。終わりに, 審査にご協力いただいたパネリスト各位に, 深謝致します。
著者
伊藤 寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.405-409, 1968

味噌は袋詰が一般的な包装形式となった。そこで一番問題となるのは「味噌のふくれ」である。しかし味噌にはなかなかふくれないものもある反面, よくふくれるものもある。いかにしたらふくれない味噌をつくることができるか? その原因と対策についての新しいお話である。
著者
島田 彰夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.103-108, 1986

日本の味噌, 醤油の歴史を顧みるとき, 韓国における大豆発酵食品を無視することはできない。味噌・醤油のような発酵食品の起源は遠く3千年の昔, 中国にあったといわれ, そのプロトタイプが日本に伝来する道として, 朝鮮半島を経由するものと, 直接東支那海を渡来するものがあった。韓国におけるテンジャン, カンジャンのジャンは中国の「醤」に由来するとみられる。そして, 韓国のメジュは日本の味噌玉へと伝わる。今日テンジャン, カンジャンの姿は, 豆味噌地帯の溜り味噌と溜りに見られる。最近韓国における食生活を調査された著者に最近の大豆発酵食品について執筆願った。
著者
小崎 道雄 タマン ジョティ 片岡 二郎 山中 茂 吉田 集而
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.115-122, 2000
被引用文献数
11

シッキムは, 国境をネパール, ブータンおよび中国に接するインド22番目の州であるが, 食文化は中国やネパールの影響を強く受けている。著者らは, この周辺地域の発酵食品のル-ツを調査研究しており, 本稿においてはシッキムにおける酒類とそれに関わる微生物相について, 解説していただいた。