著者
佐々木 恵
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,精神健康に関して専門的援助を受ける際の促進要因・阻害要因を特定し,その関連要因を明らかとすることを目的とした。一般大学生ならびに精神健康の専門家を対象とした調査から,促進要因・阻害要因それぞれについて17項目を抽出した。また,これらと基本属性,精神症状,ストレス・コーピング特性との関連を検討したところ,精神症状が強い学生は弱い学生と比較して,専門的援助への抵抗が強くなること,個人のストレス・コーピング特性がその抵抗感に影響を及ぼすことなどが示された。今後はこれらの知見をもとに,精神障害の予防・早期介入のための情報発信・啓発を行っていくことが必要と考えられる。
著者
西本 一志
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

近年,ピアノレッスンに連弾が採り入れられ,生徒の練習意欲向や,パートナーと呼吸を合わせることによる音楽性の育成に効果が認められている.しかし子どもが,家庭内で演奏経験の乏しい家族と連弾を行うことは難しい.本研究では,演奏初心者の親が初学者の子どもと容易にピアノ連弾できるようにするシステム"Family Ensemble"を構築した.このシステムは,子どもの親が担当する連弾のパートを,正確な音高列を出力する機能と,子供の演奏位置を追跡する機能により支援することで,全くの初心者の親が,演奏誤りの多い初学者の子どもとでも連弾できるようにしたものである.技術的な核は,従来から自動伴奏システム研究で扱われている,余分な音の挿入,音高の誤り,音の脱落,という3種の誤りのほかに,突然前の部分に大きく戻って弾き直すという子供特有の誤りに対応できるロバストな演奏位置追跡機能を実現した点である.被験者実験により,全くの初心者と初学者によるピアノ連弾が可能になることのみならず,子どもの練習意欲が増すことが示された.さらに,初心者と初学者のペアでありながら,お互いに音楽的なアイデアや演奏技術について意見をかわしている様子が見られた,さらに,演奏停止時に停止箇所を楽譜上で見いだすと共に,その停止箇所以前に誤りがあったか無かったかを判定できるようにした.そのうえで,誤りがあった場合は停止箇所までのフレーズの模範演奏映像を提示し,誤りが無かった場合は停止箇所以降のフレーズの模範演奏映像を提示するシステムを考案・実装した.また,「離鍵」動作に注目した音楽表現の構築プロセスの分析研究,歌唱と並行して行うリズムタッピングにより音の区切り情報を入力する「歌唱による音楽データ入力手法」を考案し,評価を行った.以上を通じて,初心者の音楽演奏学習を総合的に支援するための基盤技術を確立した.
著者
小谷 一孔
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は顔表情(可視情報)と顔温度画像(非可視情報)を用いて人の感情を推定する。このため、人の基本感情において顔画像とこれに対応する顔温度画像のデータベースを作成した。そして、顔画像、顔温度画像、顔画像と顔温度画像とを組み合わせた感情推定手法を試作し、各々の特性を評価した。その結果、いずれかのみを用いた場合、70%程度の推定精度が得られる感情クラスが見られた。更に顔画像と顔温度画像とを組み合わせることにより10ポイント程度の精度向上が得られる感情クラスが見られた。可視情報と非可視情報とを組み合わせにより感情強度の推定やより複雑な感情クラスの推定が可能であるとの知見が得られた。
著者
日高 昇平 藤波 努
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は社会的な学習メカニズムの解明を目指し、その一つの基礎となる身体動作の模倣の計算論的モデルの構築を目的として行った。身体模倣の実現には、複数の感覚器・効果器の間で、さらに自己と他者の間で表現を変換する必要があり、高度な計算過程を要する。制御理論に基づく既存手法では、十分な情報が与えられた下での、精密な運動制御を可能とする。しかし、既存手法では、完全な情報が得られない他者の運動から、身体的な制約の異なる自己の運動への対応付けは困難である。本研究は、異なる身体間の複数の感覚器・効果器上の運動パタンが、力学的な位相空間に変換できる事に着目し、この位相構造の類似性に基づく模倣学習理論を提案した。
著者
中森 義輝 KROLZ bigniew KROL Zbigniew
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、新しい知識基盤社会の始まりに際して、知識科学という新しい認識法をどのように確立するかということを深く探究することである。さらには、数学と科学における直観的基盤をどのように説明するかということについて同時に考察し、知識創造における直観の役割を合理的に説明することである。本研究では、数学や科学の知識創造における直観の役割について歴史的な考察を行っている。科学理論は相対主義に固執しているように見えるが、技術や科学実践ではいまだに古典的真理に基礎を置いている。この矛盾を回避する方法を発見することにより、知識創造の新しいメカニズムの発見に結びつける。具体的には、数学の直観的基盤を探求するとともに、日常の数学訓練を説明するシステムの形成を行い、現代数学に対する説明方法の再構築を目指している。さらに、それを集合論へと展開するとともに、現代科学における絶対空間概念の創発についてのケーススタディを行う。平成20年度は特に、ウリツビッキーと中森が提唱している新しい学際的な知識正当化理論である「進化的構成的客観主義」の中のマルチメディア原理において重要であり、さらには知識科学の応用において重要となる言語の抽象的構造に関して考察を行った。また、古典数学に対する直観的解釈(クロールが提唱している知識正当化の方法)の再構築を試みた。これらの成果は、いくつかの論文(印刷中のもの2件を含む)、国際会議等において発表した。
著者
藤波 努 杉原 太郎
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

認知症対応型介護施設において入居者の行動をデータ化し、解析する手法を見出した。研究により転倒事故の前兆や老衰の兆しなどが検知できる可能性を示した。これらの成果は高齢者の生活の質を高めることに役立てられる。一方、調査を通じて介護施設の多様性が明らかとなった。得られた結果がどの程度汎用性を有するのかは今後その他の施設でデータを集めて検証する必要がある。介護者の行動推定については、得られたデータから次の行動を推定するより、よりよい介護の仕方を探索することの方が重要であり、また介護者からの期待も高いことがわかった。仮説検証より発見を促す仕組みが求められている。これらの知見は次の研究に生かしていく。
著者
堀井 洋 中野 節子 林 正治 宮下 和幸 沢田 史子
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、近世加賀藩家臣団の網羅的な記録である「先祖由緒并一類附帳」(金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵、以下「由緒帳」)を対象として、藩制組織の統計的かつ客観的な全容解明を目的とする。これまでに、以下の2点についてデータベース化と公開にむけた実装を行った。第一に、「由緒帳」作成者に着目した構成家臣の分析であり,その主たる目的は、加賀藩士については、身分・階層を明らかにすることである。第二には、「由緒帳」中の上級家臣(人持組)部分について、画像テータの撮影と記述内容の解読を実施した。
著者
高村 禅 民谷 栄一 馬場 嘉信 菊地 純 石原 一彦
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究はμ-TASやLab-on-a-chipと呼ばれる分野において高集積化の鍵である、小型・高性能で組み合わせても互いに干渉しない流体駆動装置の開発と、それを利用したシステム構築の方法論やアーキテクチャの実例を研究することを最終目的とし、研究を行った。その結果、電気浸透流ポンプの低電圧化と高性能化では、15Vで240nL/minと従来の80倍の流量を得た。また電圧を積算せず圧力を積算できるカスケード構造を発案し、10V、10段で、25000Paの圧力を得た。従来のものより10^3-10^4倍高性能である。歩留まり良く、耐圧の高いゲル電極も開発した。ステップ部のコーティングは、サイトップが有効である。電界無リーク型電気浸透流ポンプは、閉ループの中に挿入可能なほか、複雑な電位計算をせずに集積化化学デバイスの任意の場所に挿入可能なため、集積化に大いに貢献する。これを応用した、ダメージフリーセルソータは、ソータ同士を互いに接続するマルチソーティングや、前段、後段のほかの流体デバイスに接続できるというほかのソータにない、集積化に重要な特徴を備えている。研究の途中で偶然見つかった、DNAトラップは前処理に画期的な進展をもたらすと期待されている。積年の問題であった、電気浸透流ポンプの不安定要因は、電極周りでおきる電気分解に起因すると突き止められ、電極材料の変更で、100倍以上の長寿命化に成功した。上記の問題と解決とともに、気泡の発生が抑えられたため、完全密閉化が可能になった。通過検出を用いたアーキテクチャーを新たに提案した。また、これに適した通過検出法を開発した。以上により、本研究は、前述の最終目的のために十分前進した成果が得られた。
著者
落水 浩一郎
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

社会規則(法律や条例など)の適用を支援することを目的とした法令実動化情報システム(LEIS)を対象として、ソフトウェアアカウンタビリティ機能をLEISに保持させ、また、社会規則の改定に応じてアカウンタビリティ機能を進化させ得るための基礎理論、機構、開発プロセスを、ソフトウェア工学の最新の研究成果と法理論を適用することにより開発した。ここで、ソフトウェアアカウンタビリティ機能とは、システムによってなされた計算や判断に対して利用者が疑問を持ったとき、システム自体がどの規則をどのように適用して得られた結果であるのかを説明できる機能である。
著者
水谷 五郎 宮内 良広 佐野 陽之 KHUAT Hien
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

MgO(210)ファセット面上にPtを斜め蒸着し、線幅2nm間隔7nmのPtナノワイヤ列の製作に成功した。このワイヤ列のSHGは、7nmの線幅のPtナノワイヤよりも強度が数10倍強く、その原因としてワイヤ内電子の量子閉じ込め効果を推測した。MgO(210)ファセット面上にPdを斜め蒸着した膜の透過電顕像はナノワイヤの長さの方向に長いモアレ構造を示した。またステップ構造を持つTiO2上にAuを蒸着した膜の製作に成功した。現在これらの試料のSHG応答を計測している。またクロム薄膜に加工したナノホール列のSHG応答、Siステップ表面上のHのSFG応答から表面上のミクロ構造を担った重要な情報を得た。
著者
谷池 俊明
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

不均一系Ziegler-Natta触媒を用いたオレフィン重合の化学を完全解明すべく、TiCl_3/MgCl_2モデル触媒を主体とする実験科学と密度汎関数計算に基づく計算科学を相乗的に組み合わせた網羅的検討を行った。本研究の結果、鍵成分であるドナー化合物の活性点への作用機構を描写する「共吸着モデル」という、高性能触媒の設計指針を分子レベルで与える新規モデルの提案に成功した。
著者
趙 英姫
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

次世代ホログラム記録材料を実現するためには、高次構造制御が非常に重要であり、特に、階層構造の制御は、高度な性能の付与のために必須である。階層構造をもっと完璧に作るため、従来、受動的な相分離によるホログラフィグレイティングの創製に対して、新材料を用いることにより能動的に相分離を起こすことを目的として、有機-無機ナノハイブリッド系を用いるホログラフィによる構造制御法の確立に寄与しようとした。いろんな含ケイ素アクリルレイト系ポリマーやダブルデッカーポリシルセスキオキサン構造を用いる新規ポリシロキシサン誘導体を設計と合成し、それによって液晶の相分離効率向上、ポリマーマトリックスの体積収縮率改善、親水性基による誘導時間の短縮など高性能のホログラムを製作した。含ケイ素ポリマーの柔軟な結合特性、架橋度、相分離特性などの特長を生かした上で、さらに、架橋反応と同時に、ポリマーがその特性を変え、相分離を促進する系にも成功した。シルセスキキサンの籠構造の各コーナーにあるケイ素原子に有機系置換基を導入することができる籠状オリゴシルセスキキサンをナノサイズでの三次元的の分子設計し、ユニークな有機-無機ハイブリッド型の新しいタイプの機能性材料を開発し、ホログラム記録材料として利用可能性を実現した。高回折効率や高熱安定性を持つこれらのホログラム記録材料は3D画像ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、セキュリティー、ホログラフィックメモリーなどの多く分野での応用に期待される。
著者
芳坂 貴弘
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、これまで開発してきた4塩基コドンなどを用いたタンパク質の部位特異的二重蛍光標識法をさらに発展させることで、タンパク質の立体構造やその変化をFRETにより解析する手法の確立を行なった。実際に、マルトース結合タンパク質などについて基質結合に伴う立体構造変化のFRETを用いた検出や、二重標識に有用なN末端特異的な非天然アミノ酸誘導体の導入法、高効率アンバーサプレッサーtRNAの開発などを達成した。
著者
小野 寛晰 青戸 等人 鹿島 亮 石原 哉 外山 芳人 WOLTER Frank 酒井 正彦
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目標は、計算機科学に現われる数理論理学の問題を理論と応用の両面から解明しようとするものである。本年度に得られた成果のうちの主要なものを以下にあげる。1.代数的手法による縮約のない部分構造論理の一般論の展開(小野)2.部分構造論理におけるMaksimovaの変数分離の原理の研究(小野)3.直感主義的様相論理の研究(青戸、小野)4.項書き換え系における停止性および合流性に関する研究と関数型プログラム言語への応用(外山、青戸)5.弱い含意命題論理に対する証明論(鹿島)6.構成的数学の展開(石原)1)の縮約規則をもたない論理の一般論については、小野はその成果をポーランド、スウェーデン、スペイン、ドイツで発表した。また北陸先端科学技術大学院大学において、オーストラリアのM.Bunder博士、R.Gore博士およびアメリカのA.Scedrov教授とそれぞれ部分構造論理に関する共同研究をおこなった。2)については、いくつかの部分構造論理に対しMaksimovaの原理を証明論的手法により証明した。このようなアプローチはこの研究が始めてである。3)の直観主義様相論理については、青戸がその有限モデル性についての興味深い結果を示した。4)の項書き換え系とその応用については、外山と青戸が精力的に研究をおこない、優れた成果をおさめている。弱い含意論理におけるcut elimination theoremについては鹿島が、また構成的数学については石原がいくつかの成果をあげた。
著者
吉高 淳夫
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

小型ビデオカメラや映像共有環境の普及により一般ユーザも映像を制作し共有することが一般的になっている.撮影法による非言語情報,特に感性情報の表現を意識しない,あるいは知らないユーザにより制作された映像は制作者の意図を適切に伝えることが出来ない場合が多い.この問題を解決するために,目標とする非言語情報表現に従い映像撮影を支援するインタラクションモデルの検討ならびにそれに基づく撮影システムを実装し,その効果を評価した.
著者
高木 昌宏 VESTERGAARD C.M. VESTERGAARD C. M.
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

細胞は外部環境に応じて、膜の構造を動的に変化させる。膜の動的構造変化は外部環境応答において重要な役割を担っている。外部環境刺激の中でも、酸化ストレスは極めて重要な刺激の一つでありる。しかし、膜の動的構造変化に着目した酸化ストレス研究は、あまり行われてはいない。本研究では細胞サイズのリボソームを用いて、膜中コレステロールの酸化、および酸化コレステロールを含む膜の動的膜構造について調べた。不飽和脂質dioleoyl-phosphocholine(DOPC)とコレステロールを用いて細胞サイズリポソームを静置水和法で作成した。その後、酸化ストレスとして過酸化水素を用いてリポソームへの刺激を行い、位相差顕微鏡により動的構造変化を観察した。DOPCのみからなるリポソームでは揺動を伴う形態変化は観察されなかった。DOPC/コレステロール両方を含むリポソームでは膜揺動を伴うダイナミックな形態変化が観察された。このリポソームをHPLC分析したところ、酸化コレステロールである7β-hydroxycholesterol、7-ketocholesterolが検出された。膜中の分子断面積を計算したところ、分子断面積の増加がリポソーム膜の余剰表面積を生み、揺動を伴う膜ダイナミクスを引き起こしたと考えられた。そこで、これらの検出された酸化コレステロールをあらかじめ含むリポソームを作成し、膜ダイナミクスを顕微鏡観察により比較検討を行った。その結果7β-hydroxycholesterol、7-ketocholesterolをそれぞれ、または両方を含むリポソームでも、揺動や形態変化などのダイナミクスが観察できた。以上の結果より、酸化ストレスによる膜ダイナミクスには、酸化コレステロールが重要な役割を担っていることが明らかになった。
著者
徳田 功 福田 弘和 池口 徹 郡 宏 池口 徹 郡 宏
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

視交叉上核(SCN)におけるニューロン群のネットワークモデルを生理実験に基づいて忠実に構築し,数値解析を行うことにより,哺乳類のサーカディアンリズムの動的メカニズムの理解を目指した。ラットSCNスライス計測データからニューロン間の結合構造を推定し,ネットワークモデルを構築して解析を行ったところ,スライスデータで観測される位相波を再現することが出来た。ニューロン間に位相差を生じる位相波は時差ボケ機構などにおいて重要な役割を果たしていると考えられる。また,概日リズム制御を目標に,電気化学振動子の結合系に対して遅延フィードバックを適用し,クラスター状態の制御が可能であることを確認した。さらには,植物遺伝子発現データの位相応答特性の計測結果に基づいて,特異点摂動から同期状態の制御を試みた。
著者
示村 悦二郎 青木 宗也 矢野 眞和 中西 又三 舘 昭 清水 一彦 今野 雅裕
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

平成3年6月に改正された大学設置基準は、各大学がそれぞれの教育理念・目的に基づいて個性豊かな教育を自由に展開していくことを可能にするとともに、その教育研究活動を自らの手で点検・評価することを求めている。本研究は、大学設置基準の改正以降の各大学のカリキュラム改革や自己点検・評価の状況など大学改革の実施状況を把握し、これについて調査研究するものである。平成5年度は、既存の関連調査等の資料やデータの収集・分析をもとに、改正された大学設置基準及び大学審議会答申等の趣旨がどの程度実現されているか、各大学・学部の理念・目的が十分反映された改革が行われているか、という視点に立って、改革の具体的な内容や方法も引き出せるような設問と選択肢の作成を行った。平成6年度は、前年度から準備を進めてきた、わが国の全大学・学部を対称としたアンケート調査を実施した。回収率は約95%という高率であった。解答には自由記述が多く、定量的な調査ではくみ取れぬような改革状況をかなり正確に把握できるものであったので、可能な限り原票に忠実に調査結果の集計作業を進めた。平成7年度は、前年度実施したアンケート調査の集計結果をもとに分析・検討作業を進めた。その際、(1)学生の受け入れに関する改革、(2)教育課程の改革、(3)教育方法の改善、(4)教員組織の改革、(5)研究条件の改革、(6)生涯学習、(7)学生生活への配慮、(8)自己点検・評価といった項目ごとに分析・検討を行った。その結果、改革は各方面にわたっているが、とりわけ一般教養的教育をはじめとする教育課程の改革が進んでいること、また、自己点検・評価については、その組織体性が整い、実施に積極的な姿勢を見せてはいるものの、その結果の公表についてはどちらかといえば消極的であること、などが明らかになった。
著者
宮地 充子
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

ネットワークの普及により各種サービスがネットワークを介して実現できる基盤が確立しつつある.電子医療・政府などでは,紙面に代わり電子的なデータがネットワーク上を流通するようになる.こうして情報セキュリティの技術である公開鍵暗号系によるデータの秘匿及び完全性の技術が不可欠になった.鍵進化公開鍵暗号は,公開鍵と秘密鍵という2つの鍵ペアのうち,公開鍵は不変で対応する秘密鍵のみ定期的に進化(変化)することで,秘密鍵の露呈攻撃に強化した概念であり,IDベース暗号と密接に関係する.IDベース暗号はユーザのIDが公開鍵で,対応する秘密鍵はセンタが構築する方式であり,階層的IDベース方式はセンターの階層化によりセンタ負荷を削減した方式である.IDベース暗号はブロードキャスト暗号の公開鍵暗号化にも大きな影響を与える.ブロードキャスト暗号は大きくCS法,SD法の二つが存在するが,公開鍵CS法はIDベース暗号から,公開鍵SD法は階層的IDベース暗号から実現できることが示されている.しかし公開鍵CS法の構築は冗長性を含まない完璧な実現であるのに対し,公開鍵SD法の構築は冗長で,階層的IDベース暗号の概念とはギャップが存在し,中間概念の構築が必須である.IDベース暗号は,鍵進化公開鍵暗号,ブロードキャスト暗号の2つの概念の構築に必須の概念であり,IDベース暗号の効率化及び新たな概念の構築は,鍵進化公開鍵暗号,ブロードキャスト暗号に多大な影響を与えるといえる.この背景の下,本研究では以下の研究を行った.1.IDベース暗号と階層的IDベース暗号の中間概念(階層構造をもつIDベース暗号)の構築2.具体的な階層構造をもつIDベース暗号方式の実現3.階層構造をもつIDベース暗号方式の鍵進化公開鍵暗号及びブロードキャスト暗号への応用本研究により,鍵進化公開鍵暗号・ブロードキャスト暗号の概念に影響を与えるIDベース暗号と階層的IDベース暗号の中間概念が実現され,鍵進化公開鍵暗号・ブロードキャスト暗号の研究への多大な発展が見込まれる.さらには本概念の適用により,ブロードキャスト暗号の公開鍵SD法を冗長性を含まず完璧に実現することができ,その影響は計り知れない.
著者
廣川 直 モーザー ゲーオグ
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

探索やソートアルゴリズムを開発したとき、「入力の大きさに対しどれくらいの速度(ステップ数)で動作するか」という自然な疑問が生じる。現在に至るまで時間的計算量は、プログラムごとに手作業で解析するものと認識されていた。本研究では、関数型プログラムの計算モデルである項書き換え系に対して、解析を自動化する強力な理論を構築した。さらにそれに基づく計算量自動解析ツールを実装した。既存手法との比較実験を行った結果、解析精度の劇的な向上が確認された。