著者
和田 誠 権田 武彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.1-8, 1985-09

1979年3月から1980年1月まで南極みずほ基地で雪結晶の顕微鏡観測を行った。種々の形の雪結晶の中に, 骸晶構造を持つ角柱結晶が, 比較的多く降っていることがわかった。この論文では, この結晶の結晶学的諸特性と成長条件を議論する。
著者
木津 暢彦 金濱 晋 鎌田 浩嗣 上野 圭介 長井 勝栄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.35-94, 2007-03-28

この報告は,第43次南極地域観測隊気象部門が,2002年2月1日から2003年1月31日まで,昭和基地を中心に行った気象観測結果をまとめたものである.観測方法,測器,統計方法等は,第42次隊とほぼ同様である. 越冬期間中,特記される気象現象として,次のものが挙げられる.1) 地上気象観測では,5月から10月にかけて気温が平年より高く,月平均気温の高い方,日最高気温の月平均の高い方,日最低気温の月平均の高い方の極値の更新があった.また9月中旬にあったA級ブリザードは,最大瞬間風速57.9m/s, 最大10分間平均風速45.4m/sであった.これは9月として1位,通年の統計でも3位の強風であった.2) 高層気象観測では,成層圏突然昇温が例年より早く発現(7月上旬)し,9月末には,南半球では初めて観測された極渦の2分離を伴う成層圏大突然昇温が起こった.3) オゾン全量観測においては,8月上旬から10月中旬にかけてオゾンホールを観測したが,10月下旬以降はこの20年間の平均よりも多い値で推移した.
著者
守田 康太郎 村越 望 西堀 栄三郎
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.823-829, 1961-01

雪原からの蒸発量の測定は一般には甚だむつかしい.降雪や飛雪の影響,および蒸発計の影響が大きいからである.西堀は,昭和基地第一次越冬中に,これらの影響から免れて雪面蒸発量を測定する方法を考案し,村越が実際の観測を行った.その方法は,積雪から雪のブロックを正立方形にきりとって空中に吊し,その重量変化を測定するというのである.特殊の条件下においては,その重量変化から,ただちに単位表面からの蒸発量を算出することができる.その条件は,(a)雪ブロックから融雪水の滴下が起らぬこと,(b)雪ブロックに降雪や飛雪が附着しないこと,(c)ブロックの外形が相似を保ったまま変化すること,(d)ブロックの密度変化が無視し得ること等である.昭和基地においてはこれらの条件はほぼ満されており,得られた結果はソビエト隊による推測値と比較しても,大体妥当な値と考えられる.気象要素との関係について,飽差と風の函数としてあらわされることが分った.
著者
白石 和行 金谷 弘
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.30-41, 1983-09

やまと山脈の基盤岩類からのべ63個の試料を選び, Rb, Sr, Th, Uの定量分析を行った。3種の閃長岩類を観察すると, これら元素の存在量や存在比について, 比較的顕著な差異のあることが認められる。特に, 単斜輝石石英モンゾニ岩におけるSrの濃集が著しい。また, 変成岩類相互の差異は必ずしも顕著ではなく, 全体の傾向は, 世界の盾状地での下部グラニュライト相-上部角閃岩相の変成岩の示すこれらの値と大きくかけ離れるものではない。
著者
長井 嗣信 河野 毅
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.23-34, 1980-02

本論文では,磁気圏嵐時の静止衛星軌道における高エネルギー粒子のフラックス変動について報告する.3つの静止衛星の同時観測により,夕方側で粒子の減少がみえる時に,真夜中から朝側にかけては,粒子の増加がみられることを明確に示した.また,地磁気じょう乱が引き続いて起きている時には,比較的大きなしかも孤立して起きた磁気圏嵐の時とやや異なる粒子フラックスの変動がみられることを2日間の例を使い示した.
著者
森脇 喜一
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.300-320, 1998-11-30

第39次南極地域観測隊(第39次隊)は1997年11月14日東京港を出発した。フリマントル寄港中に第38次越冬隊に緊急患者が発生したため昭和基地に直行し12月15日に到着した。患者収容と物資輸送後, 患者を送還するため「しらせ」はケープタウンまで往復した。「しらせ」は1月23日にアムンゼン湾トナー島に地学調査隊を送り込んだ後, 1月27日に昭和基地に戻った。昭和基地での建設等は12月中旬∿2月中旬に行われた。昭和基地方面での野外調査は12月下旬∿1月上旬と1月末∿2月上旬にかけて, ドームふじ観測拠点への旅行は12月下旬∿2月上旬になされた。大気採集実験は1月3日に実施された。第39次夏隊と第38次越冬隊は2月15日に昭和基地を離れ, 海底地形測量の後, 2月下旬にアムンゼン湾地域での観測を実施した。3月1日アムンゼン湾発, 同21日シドニー入港, 同28日, 空路成田に帰着した。海洋観測は東京からシドニーまでの「しらせ」航路上で実施した。
著者
本山 秀明 森本 真司 渡辺 興亜
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.101-110, 2003-07

水試料中の水素同位体比を,800度に加熱したクロムによって水試料を水素に還元する方法で測定した.測定精度は1.0‰以内であった.南極氷床上で採取された沿岸から内陸部にかけての表面積雪を測定した.測定範囲は-200‰から-400‰であった.沿岸から内陸へ気温が下がるとともにδDは小さな値となり,この変動はδ^<18>Oと一致した.また過剰重水素が沿岸では10‰以下の小さな値を示すことから,海が近いほど湿潤なところで生成した水蒸気が凝結して降り積もっている雪であると考えられる.地球環境を探るのに有効な水素同位体比の測定法を確立した.
著者
高松 信樹 松本 源喜 中谷 周 鳥居 鉄也
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.103-112, 1988-07

南極南ビクトリアランド・ドライバレー地域・ラビリンス(77°33′S, 160°50′E)の池水中の塩起因を明らかにするため, LiとB含量を測定した。また, これらと比較するため, ドライバレー地域のバンダ湖, ドンファン池, フリクセル湖およびボニー湖ならびにベストフォールドヒルズのディープ湖とエース湖についても同様の測定を行った。ラビリンスの淡水および塩水中のLiおよびBの濃度および濃縮係数などより, 池水の化学成分は海水や熱水起源ではなく, おもに風送塩に起因するものであることが明らかになった。これらのことはラビリンスの塩水池が風送塩を含む氷河氷や雪の融水が凍結濃縮を繰り返すことによって形成されたとする考えを支持している。塩化物イオン含量の増加とともにB/Cl比が減少することから, Bは凍結過程で氷に移行し, 蒸発によって徐々に揮発していくと考えられる。
著者
田之畑 一男 石川 三郎
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1481-1485, 1963-01

この報告は,短波帯の夜間における電界強度を測定した結果について述べたもので,若井氏が先に得た結果を再検討したもので,肯定的な結果が得られた.測定は東京からCape Townに至る船上においてなされたもので,結果は10Mc/s帯においては減衰量が少なく,又各周波数帯に規則的な関係は得られなかったが,2.5Mc/sのJJYの受信結果から求めた減衰量は,垂直投射に換算して1.0dbなる値を得た.これは,若井氏によって求められた値1.7dbに対して60%位の値であるが,測定値がばらつき,又往路と復路で若干測定値に差があるので数量的な点ではいずれを採ったらいいかは断定できない.一方2.5Mc/sにおいては,遠距離における観測点が少ないので,測定した周波数帯全部についてこれを2.5Mc/sの垂直投射に換算して,加重平均を求めてみると,2.5dbなる値を得た.得られた値を再び2.5Mc/sの測定値に当てはめてみると,1回反射の限界距離内では極めてよく合うことがわかった.
著者
長井 嗣信 河野 毅
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.68, pp.p23-34, 1980-02

本論文では,磁気圏嵐時の静止衛星軌道における高エネルギー粒子のフラックス変動について報告する.3つの静止衛星の同時観測により,夕方側で粒子の減少がみえる時に,真夜中から朝側にかけては,粒子の増加がみられることを明確に示した.また,地磁気じょう乱が引き続いて起きている時には,比較的大きなしかも孤立して起きた磁気圏嵐の時とやや異なる粒子フラックスの変動がみられることを2日間の例を使い示した.
著者
山内 恭
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.58-95, 1999-03

第38次南極地域観測隊昭和基地越冬隊31名は, 1997年2月1日から翌年1月31日まで1年間昭和基地での越冬観測を実施した。今次隊より, 研究観測は, 新しくプロジェクトとモニタリングの2本立てで計画され, 多彩な観測が実施された。プロジェクト研究観測では「東南極のリソスフィアの構造と進化の研究(シール計画)」「南極大気・物質循環観測」が重点的課題であり, 前者は夏期のアムンゼン湾域での調査が, 後者はドームふじ観測拠点での観測が中心となったが, 昭和基地での越冬中も関連観測が多く行われた。また, モニタリング研究観測としては, これまで定常観測として行われていた地震観測の他, オーロラ光学観測, 大気微量成分観測, 生態系モニタリング, 衛星データ受信等, 地球環境の長期的監視が必要な観測を着実に推進した。野外へは, 数多くの沿岸露岩域への生物, 地学調査や, みずほルートでの地球物理観測旅行が行われた他, 航空機観測も精力的に実施した。3年目のドームふじ観測拠点での越冬観測が続いていたため, これを支えるための夏期の人員・物資輸送の旅行に加え, 越冬中も補給旅行を実施した。10月から11月にかけ, 44日間の長期旅行となり, 8名が参加, 燃料補給等を行った。これらの基地, 野外観測を支えるための設営作業も多忙をきわめた。昭和基地整備計画に基づく, 新居住棟の建設が夏期間から続き, 6月に完成, 入居となった。基地施設は着々と整備が進んでいるが, それだけに維持管理の仕事量は増加し, 設備面で追いつかない面も見られた。野外活動のための雪上車類の整備, 旅行準備も大仕事であった。環境保護を目指し, 不用建物の解体, 廃棄物持ち帰りに努めた。大きな障害もなく進んだ越冬と思われたが, 11月末になって急病人が発生した。「しらせ」の昭和基地への急行を要請し, 病気の隊員は「しらせ」により予定を変更して南アフリカ, ケープタウンへ搬送, 帰国させた。
著者
藤井 理行 川田 邦夫
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.255-290, 1999-07

第37次南極地域観測隊越冬隊は40名で構成され, 昭和基地とドームふじ観測拠点で越冬した。昭和基地では, 31名が1996年2月1日から1997年1月31日まで, 基地の運営・維持管理にあたるとともに, 定常観測と研究観測を実施し, ほぼ所期の目的通りの成果を得た。越冬中の6月, 倉庫棟の設備工事が終了し運用を始めた。10月には, 積雪による電源ケーブルたわみに起因する小火やピラタス機の雪面接触事故が起きたが, 幸い人身事故には至らなかった。ドームふじ観測拠点では, 9名が1996年1月23日から1997年1月25日まで越冬をし, 越冬隊の主要な観測課題であった氷床深層掘削を行い, 12月に所期の目標を超える2503mの深度に達した。基地の運営や維持管理, 気象や雪氷, 医学の研究観測も行われ成果を得た。
著者
林 幹治 小口 高 国分 征 鶴田 浩一郎 渡辺 富也 HORITA R. E.
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.127-133, 1979-02

カナタ,マニトハ州において,IMS観測の一環として実施した,極光帯からプラスマポーズにかけての地磁気脈動の観測結果から,次の事柄が知られた.昼間帯の地磁気脈動は,がいして広範囲にわたってよい相関を示し,磁気圏におけるHM波の効果と見なしてよいが,明け方の地磁気脈動は相関距離が短く,脈動型オーロラに伴う電離層電流のゆらぎによるものと考えられる.また,夕方側によく見られるPc1型脈動は,その波源は小さな領域に限られており,広範囲の拡がりは主として上部電離層のダクト伝搬によるものと思われる.
著者
清野 善兵衛
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.801-808, 1961-01

第3次越冬期間中(1959年2月-1960年1月)に約100回のラジオゾンデ観測を行い,一応各高度気温の年変化を観測することが出来た.夏の状態曲線は300mb附近に極めてシャープなトロポポーズが現れ,成層圏では高度と共に気温は上昇する.トロポポーズの気温は比較的高温で-50℃に達しない時もある.一方冬の状態曲線は一般に地上附近に顕著な気温逆転が現われ,トロポポーズはあまり明瞭でなくなり,成層圏でも高度と共に気温は下降を続ける.気温の年変化は300mb以下では地上のKernlose型の変化と似た変化を示すが(振幅は少ない)300mb以上では単純な年変化となり,振幅も高度が高い程大きくなる.トロポポーズの平均高度は冬に高くなり,夏よりも2000m以上も高い.850〜700mb附近に第2の逆転層が見られ,この層は強固なものでブリザードがあっても却々解消せず,時間と共に次第に高い方に移動して行くことが認められた.