著者
平尾 邦雄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.904-910, 1961-01

予備観測の際の船上観測で非常に明瞭な短波海上散乱が発見された,その後2回の船上観測の際にも同様の観測がなされ且つラジオゾンデによる気象観測も特に強化された.特に1959年の船上観測の際は固定周波によるh'tの観測及びA-scopeによる反射波のスナップ撮影も加えて原因の究明につとめた.これらの結果を綜合して短波海上散乱波は結局海の波による後方散乱であることが推論された.海上では大地常数が大きいために特に地上波の伝播に都合がよいので散乱波が受信されるものと思われる.但し海の波により電波がcoherentに反射されると考えなけれはならない.更に大洋上や暴風圏内においても顕著な日変化を示すことから大気の屈折率に新らしい要素を導入する仮説をたてた.これによって日変化は電波の屈折,廻折及び低層中の反射面の日変化に帰着させることができる.
著者
青柳 昌宏
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.85-101, 1988-03

1978-79年夏期, ロス島ケープバード, 北ルッカリーのB4コロニーにおいて, アデリーペンギン集団の経時的変化を観察した。1978年12月下旬から予備調査を行い, 1979年1月1日から1月24日までの間, 少なくとも1日1回, コロニー内の繁殖巣数, 繁殖個体数, 未繁殖個体数, 雛数, およびその位置を観察し地図上に記録した。この時期は雛のクレイシ形成期であり, 繁殖個体が巣を離れるのに従って, 雛も巣を離れクレイシを形成した。1月9日から10日の間に, 繁殖個体と雛の巣離れが完了した。同時に, これまでコロニーの外にいた未繁殖個体が繁殖個体に代わってコロニーに入った。巣を離れた雛はクレイシのところどころに密集し小集団を造ったが, その大きさ, 形, 場所は常に変化した。クレイシ形成の初期に雛は元の巣に戻って給餌を受けたが, 次第に巣の外で給餌されるようになり, 1月10日以後はコロニーの外で給餌を受けるようになった。
著者
青柳 昌宏 田宮 康臣
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.39-46, 1983-12

クレイシ中期にアデリーペンギンの給餌行動を, 24時間連続観察し, 以下の4点についてまとめた。1) 雛が給餌される頻度, 2) 給餌のため, 親鳥がコロニーに帰る頻度, 3) 雛が出てしまった空巣を含むなわばりの識別と利用, 4) 雛の生存率と育雛行動の雛数によるちがい。
著者
高田 真秀 戸田 茂 神谷 大輔 松島 健 宮町 宏樹
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.380-394, 2003-11

第43次日本南極地域観測隊(43次夏隊)は,みずほ高原において地殻構造の解明を目的に,ダイナマイト震源による地震探査を行った.この探査と同時に,探査測線下の基盤地形の詳細な分布を求めるため,アイスレーダーによる測定を実施した.本報告では,アイスレーダー測定の概要と得られた結果について報告する.
著者
金尾 政紀 神沼 克伊 渋谷 和雄 野木 義史 根岸 弘明 東野 陽子 東 敏博
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.16-44, 1999-03

1997年度(第38次日本南極地域観測隊;以下JARE-38と略す)を中心に, これまで定常観測で行われてきた地震観測システムが, ハード及びソフト両面共に大幅に更新された。特に, 建造以来25年以上が経過し, 施設の老朽化が指摘されていた旧地震感震器室を閉じ, 器材をすべて撤収した。そして1996年度(JARE-37)に建設した新地震計室へ, 短周期(HES)及び広帯域(STS-1)地震計を移設あるいは新しく設置すると共に, 地学棟にワークステーションによる波形データ収録装置を新たに導入して, パソコンにより収録する旧システムから切り替えた。この地震計室及び収録装置すべてを含めての新システム導入により, 昭和基地では越冬中の地震計室見回りの労力が半減し, 基地LANを利用してのデータ収集が合理化されたため, これまでの保守作業がかなりの部分で軽減された。今後はインマルサット回線をさらに利用して, 基地外へのデータ公開の迅速化をめざす。さらに常時IP接続が可能になれば, 国内での験震処理が可能となり, 現地での完全自動化が期待される。JARE-38越冬中の経過を中心にシステム更新の詳細を記載すると共に, インターネット利用を含めたデータ公開についても簡単に述べる。
著者
和田 誠 古賀 聖治 野村 大樹 小達 恒夫 福地 光男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.271-278, 2011-11-30

2009年に就航した新「しらせ」には,改造した20 ftコンテナを船上実験室として搭載するスペースが確保された.第51次日本南極地域観測隊では,このコンテナ実験室の内部に大気中の硫化ジメチル濃度を測定するためのプロトン移動反応質量分析計を収納し,観測を実施した.本稿では,コンテナ実験室の概要と今後改良すべき点等について報告する.
著者
石沢 賢二
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.147-160, 1981-09

南極大陸氷床上部のP波とS波の速度が, みずほ基地(70°42'S, , 44°20'E, , 海抜2230m)において測定された。測定方法は, 12・13次日本南極地域観測隊で掘削されたボーリング孔を使用した検層と, 屈折法である。検層には孔中固着式受震器が使用され, 深さ80mまでのP波S波の速度構造が求められた。また屈折法ではP波の構造が36mまで測定された。得られた結果は, コアーを使用した超音波パルス法による測定結果とほぼ同じであった。南極やグリーンランドのさまざまな場所で得られたP波の速度構造を対比してみた結果, その場所での年平均気温と強い相関があることがわかった。深さ50mのP波速度に注目してみると, 年平均気温, T_m (℃), が高いほどP波の速度, V_P (km/s), は大きく, それらの間には次のような関係がある。V_P=0.034T_m+4.529
著者
土井 浩一郎 今栄 直也 岩田 尚能 瀬尾 徳常
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.7-18, 2004-03
被引用文献数
1

第41次南極地域観測隊における越冬期間中に,南極大陸氷床上の3点,すなわち,とっつき岬付近の裸氷帯N7,みずほ基地,やまと航空拠点YM175においてGPS観測を行い,各点の流動速度を求めた.N7の移動速度はN60°Wの方向に約1.5cm/dayであった.みずほ基地の移動速度はN60°Wの方向に約6cm/dayという値であり,H. Motoyama et al.(Nankyoku Shiryo, 39, 94, 1995)が得た結果とよく一致している.YM175ではN71°Wの方向へ0.8mm/dayという水平方向の速度とともに,1.1mm/dayの上昇速度という結果を得た.この上昇運動はやまと山脈地域において提案されている隕石集積機構を支持するものである.
著者
吉田 順五
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.732-736, 1961-01

南極大陸につもった雪は,長年月とけることなく,氷となって氷河にかわる.北海道の雪も冬はほとんどとけない.そして,冬のあいだに大きな変化をうけ,春とけさるころには,しまった固い雪になっている.それで,北海道の雪が冬のあいだにうける変化は,南極の雪が氷に変ってゆく過程のはじめの部分と多くの点で似ているにちがいない.この意味で,低温科学研究所で行なわれた北海道の雪についての研究結果は,南極の雪氷を研究するにあたって参考になると思う.これらの研究結果のうちから,次のものをえらび,簡単な説明を加える.(1)積雪の微細組織の変化.(2)焼結現象.(3)積雪全層の一般的変化.(4)日射による積雪の内部融解.
著者
白石 和行 成瀬 廉二 楠 宏
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.49-60, 1976-03

1969年12月,9箇の石質隕石がやまと山脈の南東端付近で発見された(Yamato (a)からYamato (I)と命名).引き続き12箇の石質隕石が1973年12月,第14次南極観測隊の旅行隊によってほぼ同地域で発見された.12箇中,大型のもの4箇(重量500〜900 g)はYamato (j), (k), (l), (m)と命名され,Yamato (l)はachondrite,他はchondriteである;残りの8箇(4〜40 g)はYamato (n)からYamato (u)と命名された.採集現場での産状写真を示すとともに,地形や氷状についても述べた.将来,さらに発見される可能性があり,やまと山脈南端の限られた裸氷域に隕石が集中している原因や機構の解明のため,将来室内研究と現場での研究の必要なことを述べた.
著者
岩田 修二 白石 和行 海老名 頼利 松岡 憲知 豊島 剛志 大和田 正明 長谷川 裕彦 Decleir Hugo Pattyn Frank
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.355-401, 1991-11

第32次南極地域観測隊(JARE-32)夏隊のセールロンダーネ山地地学調査隊は, 1990年12月24日あすか観測拠点を出発し, 1991年2月7日に再び「あすか」に帰り着くまでセールロンダーネ山地中央部で, 地形・地質・雪氷調査を行い測地作業も実施した。雪上車とスノーモービルを利用してキャンプを移動しながら調査するという従来と同じ行動様式をとったため, 設営面でもおおかたはこれまでの方式と同じである。地学調査は, 地形では, 野外実験地の撤収, 岩石の風化の調査, モレーン・ティルのマッピング, 地質では, 構成岩石の形成順序の解明, 構造地質学的・構造岩石学的そして地球化学的研究のためのサンプリング, 測地では, 重力測量, 地磁気測量, GPSによる基準点測量が行われた。ベルギーからの交換科学者は氷河流動・氷厚などを測定した。
著者
森脇 喜一 船木 實 平川 一臣 時枝 克安 阿部 博 東 正剛 宮脇 博巳
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.293-319, 1989-07

第30次南極地域観測隊(JARE-30)夏隊のセールロンダーネ山地地学・生物学調査は, 1988年12月29日から1989年2月1日にかけて山地西部で, 2月2日から9日にかけてあすか観測拠点をベースに付近の小山塊で実施された。2月になってからの調査活動は, ブリザード等の強風と地吹雪で効率的でなかった。JARE-26-29の地学調査に生物班が初めて加わったが, 調査計画の立案や行動形態に特に従来と変わったところはない。ここでは, 設営面を含む行動の概要と調査の概略, 調査期間の山地近辺の気象と雪氷状況を報告する。調査の成果については別途, 各分野で詳しく報告される。
著者
廣井 孝弘 小島 秀康 海田 博司 佐々木 晶 中村 智樹
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

国立極地研究所が南極から回収してきた隕石試料片を、そのまま非破壊の状態で可視から赤外領域の反射光の分光をすることで、それらの鉱物組成を推定する試みをした。貴重な火星や月からの隕石、そして大部分が小惑星ベスタから来ていると考えられるHED隕石、そして水や有機物を含む炭素質コンドライト隕石の合計130個余りの試料について、反射スペクトルの測定を各試料片に1点以上行った。それらのスペクトルに線形外挿・修正ガウス関数分解・主成分解析などを施すことにより、各隕石の岩石種や鉱物・化学組成などを理解することができ、はやぶさ2などの探査ミッションへの応用方法も提案できた。
著者
猪上 淳 飯島 慈裕 高谷 康太郎 堀 正岳 榎本 剛 中野渡 拓也 大島 和裕 小守 信正
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

北極の温暖化増幅に関して、低気圧活動の役割に着目した観測的・数値的研究を実施した。(1)シベリア域の低気圧活動の変動は、水蒸気輸送過程を通じて水循環・河川流量の変動に影響を与えるとともに、夏季北極海上の海氷を減少させる特有の気圧配置を左右する要素であること、(2)冬季バレンツ海やベーリング海の低気圧活動の変化は、近年の北極温暖化および海氷減少に影響する一方で、中緯度での厳冬を引き起こし、その予測には中緯度海洋の変動が鍵であること、(3)北極海航路上の強風や海氷の移流を精度よく予測するには、高層気象観測網の強化が必要であること、などを明らかにした。
著者
KOTORI Moriyuki NISHIYAMA Tsuneo TANIMURA Atsushi WATANABE Kentaro
出版者
国立極地研究所
雑誌
Proceedings of the NIPR Symposium on Polar Biology (ISSN:0914563X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.138-144, 1987-12
被引用文献数
2 4

Abundance, vertical distribution and maturity of the chaetognath Parasagitta elegans under the sea ice in a shallow lagoon (the depth of bottom, <20m) on Hokkaido in the daytime in February 1986, were examined. The abundance was estimated to be about 10-30 individ. m^<-3>. This is approximately half of the maximum densities previously reported in inshore open waters. Vertically, the maximum abundance was observed at a depth of 2 m beneath the undersurface of the ice. The size ranged 15.40-27.05 mm in body length, and most P. elegans were adult forms of Stage II in ovary maturity. These findings suggest that in the boreal waters P. elegans occurs commonly under the sea ice, and that the maturing adult forms appear in proximity of the ice even in the daytime.
著者
白石 和行 Klokov Valery
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.778-790, 1997-11

日本南極地域観測隊に大型航空機を導入して大陸間航空路を設けることの可能性を研究した。昭和基地, やまと山脈近傍の雪面や青氷上に, 車輪で離発着できる固い滑走路を建設できる場所を検討した結果を, その建設方法の概略や発着できる航空機の性能などとともに示した。さらに, 東南極航空網計画を国際的に推進することの必要性を説いた。
著者
山本 誉士
出版者
国立極地研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

近年、気候変動による海洋生態系への影響が懸念されている。だが、その動態を広範囲かつ連続的に観測することは難しい。そこで、本研究では海洋生態系の高次捕食者である海鳥・オオミズナギドリにデータロガーを装着・回収することで、様々な海域(亜熱帯~亜寒帯)において彼らの採餌行動から生物資源ホットスポットを特定し、その形成の特徴を明らかにした。また、採餌域と海洋環境の相関からハビタットモデルを構築し、今後予測される水温上昇シナリオに対する彼らの応答を明らかにした。本研究の結果から、オオミズナギドリの採餌行動を指標とすることで、日本周辺海域における海洋生態系動態のモニタリングが可能であることが示唆された。
著者
渡辺 興亜 本山 秀明 神山 孝吉 藤井 理行 古川 晶雄 東 久美子 島田 亙
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

氷河や氷床など氷久雪氷層中には大気中からさまざまな物質がさまざまな過程を経て混入している。それらの物質は雪氷層中に初期堆積状態を保ち、あるいは続成過程の結果として保存される。このように保存された各種物質の濃度、組成、存在形態は雪氷コア中に特色ある情報系を構成し、堆積環境、気候状態の情報指標(シグナル)となる。とりわけ物質起源に関して地球環境、輸送機構に関して大気環境と大きく結びついているエアロゾル起源物質は地球環境情報の指標として重要である。本研究ではエアロゾル起源物質の雪氷層への(1)初源的堆積過程、(2)積雪の変態過程に伴う二次堆積-移動過程、(3)定着化過程を積雪の氷化過程を中心課題として研究を進め、(4)指標シグナル全体としての特性の形成機構を中心に解析をおこなった。極域にはさまざまな起源からエアロゾルが大気循環を通じて転送され、極域大気循環を通じて雪氷層に堆積する。降水の同位体組成とともに、エアロゾル物質の濃度、組成化、その他の指標特性はさまざまな時間規模の大気環境、雪氷堆積環境の状態とその変動特性を指標する。しかしその指標特性は単純ではない。エアロゾルの輸送、堆積に関る大気環境と堆積後の諸過程に関る雪氷堆積環境にはさまざまな地域特性を反映しているからである。極域における雪氷コアから抽出できる各種の指標シグナルは極めて豊富であるが、指標特性の形成の過程と形成の機構の解明に不可欠な再現実験が困難という問題が存在する。そのため、本研究ではフィールド観測対象域として極域の積雪変態過程とほぼ同様な変態、氷化の諸過程が生じる、北海道東北地方の内陸部を選び、二冬期間に観測を実施した。わが国の積雪域は現在の気候下では季節雪氷圏であり、氷久雪氷圏の極域雪氷の諸現象との相違も大きいが基礎観測としてほぼ十分な成果をあげることができた。
著者
小沢 敬次郎
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.2287-2322, 1967-08

(1)海上において鳥種を判定する場合それぞれの分布区域をあらかじめ知っていることは重要な要素となる.このため,南大西洋および南インド洋を含む南極洋で,11月から3月の時期に出現する主要鳥種について,分布の北限および南限を求め図示し,簡単な説明をこころみた.(2)本文において取り扱った鳥種はアホウドリ科6種,ミズナギドリ科13種,ウミツバメ科2種,モクリウミツバメ類,トウソクカモメ科2種,およびペンギン科4種,計27種である.(3)分布の北限および南限は,東京水産大学「海鷹丸」による3次にわたる航海,日本水産株式会社「第27興南丸」,「第20興南丸」(観察者,船長山田巽)による航海,その他の航海中の観察資料によって求めた.(4)各種についてカラー写真を掲げ,また,分布図に繁殖地,産卵時期を付記し,今後の海上における観察および分布の考察に便ならしめた.(5)量的分布,産卵時期に対する分布密度の移動などについては今後考察する
著者
渡辺 佑基
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

北極海の生態系の頂点に立つニシオンデンザメとホッキョクグマという二種の捕食動物から詳細な行動データを得ることができた。ニシオンデンザメは遊泳速度や尾びれの動きがとても遅く、体の大きさの違いを考慮して比較すると、今まで調べられた魚類の中で最低レベルであることがわかった。北極海の冷たい水温により、本種の遊泳能力は大きく制限されていることが示唆された。ホッキョクグマは少なくとも4月の問は明確な日周性をもたず、一日の約半分の時間を活動的に動き回って過ごし、残りの半分の時間を休んで過ごすことがわかった。