著者
田渕 稔浩
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
no.18, pp.91-103, 2004

映画製作の初期には、合成撮影によるトリック映像が人々をおどろかせた。その後SFXにいたる段階で、精密スケールモデル(ミニチュア)が活用され、よりリアリティで臨場感あふれるシーンが構築された。そしてミニチュアは映像効果を高める不可欠の存在となった。CG映像の時代にあって、手造り模型の存在は実写のもつドキュメンタリーなイメージを明確に表現する情況を検証した。
著者
齋藤 宏
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.228-237, 1993-03-31

機能主義は,インダストリアルデザインの造形活動の中で,もののもてる機能を直截に表意するという基本の思想を維持してきたが,近年ものの電子化が進むに従って,その機械的構造が電子回路的構造へと変化し,機能表意がしにくくなってきたと云われている。しかし,マン・マシンインターフェイスについての適性な関係を考える時,ものの表意性は重要な位置づけをされるテーマであると考え,ここに,事例をあげて考察を行ってみたい。
著者
渡邉 哲意
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.139-148, 2005-03-31

人間の環境を認識するシステムを"アフォーダンス・クオリア"と呼ばれる視点を基本に捉え、人間が感じる視覚空間内を構成する質素に着目したスクリーンを用いない映像演出を行い、鑑賞者に対してより豊かな空間イメージを伝える映像制作の方法を提案する。例として2004年春に京都・高台寺で行われた夜間特別拝観ライトアップ映像で、庭空間を演出する映像の制作を行った。
著者
大河 繁
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.125-137, 2005-03-31

イラストレーションはビジュアルデザインの中でも主要な仕事であり、時代を映しだす鏡のような役割を演じてきた。イラストレーションと表現メディアの関係は、今日、企業広告はもとより、新聞、雑誌、絵本、図鑑、挿し絵などの出版物にとどまらず、空間や環境、ショウスペースやステージまで及んでいる。自身の作品を通して制作現場からイラストレーションを考察してみる。
著者
吉田 雅子
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.159-172, 1993-03-31

視覚と聴覚は,ヨーロッパにおいてはルネサンス盛期に舞台芸術によって統合された。それを基礎として近代に到るまで,舞台芸術のさまざまな様式,形式が創造されてきた。本稿は,ルネサンス末期からバロック末期に至る,オペラ,バレエの代表的作品を中心に,視覚と聴覚の芸術的統合を考察したものである。
著者
吉田 雅子
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.187-202, 1994-03-31

視覚と聴覚は,ヨーロッパにおいてはルネサンス盛期に舞台芸術によって統合された。それを基礎として近代に至るまで,舞台芸術のさまざまな様式,形式が創造されてきた。本稿は,古典派から近代に至る各時代の,オペラ・バレエの代表的作品を中心に,視覚と聴覚の芸術的統合を考察したものである。それらが様々に発展したバロック期までについて述べたが,本稿では古典派から近代における作品から,視覚と聴覚の芸術における結びつきを考察した。
著者
高橋 一郎
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.87-101, 2007-03-31

映画「フランドン農学校の尾崎さん」を自主製作した。大阪府豊野郡能勢町で有機農業をする尾崎零さんの一年を取材したドキュメンタリーである。尾崎さんは1978年にサラリーマンをやめ、家族と共に能勢町へ移り有機農業を始めた。現在は年間70種類を超える作物を作り消費者と直接取引きをする。尾崎さんは有機農業の世界では先駆者的な存在であり、エコロジーを基調としながら、生命を大切にする社会を作りたいと考えている。映画は尾崎さんの畑を中心としながら、社会的にも活発に活動する姿を捉えた。
著者
逆井 宏
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.31-45, 2000-03-31

筆者はかねてから「モノから都市への視点」を据えて電話ボックス・郵便ポスト・街灯・公共トイレなど街の道具について考察を重ねてきた。本稿は,同じ視点にたって,飲用水の供給が不充分であったイギリスの18世紀,19世紀において街かどに設けられた水泉と牛馬用水桶はまさに当時の低所得層の人々にとっては「生命の泉」であった。本稿の研究目的はPhilip Dayies著『Trogh&Drinking Fountains』に依拠しつつ生命の泉」が果した役割と意義を考察することにある。
著者
逆井 宏
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.127-144, 1997-03-31

パリ市の街路は19世紀から大きな変容をみせた。そこには4人のキーマンがいた。E.R.プペル,ヴィクトル・ユゴー,ルイ・ナポレオンであり,G.E.オースマンである。彼らは一様に街路(悪路)を嘆き,清潔化-美化を訴え改革を提言し実施した。1章では4人の「清潔革命」の各々を考察し,2章において当時の人々の衛生観念確立までの経緯を考察,3章では街灯をもって清潔化-美化のツールとしながらも技術に翻弄された史実を考察し,終章においては「人間のための街路」を展望した。
著者
沼田 浩一
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.177-187, 2005-03-31

総合芸術である映画の主要な表現力は映像である。映像表現は絵画や演劇、音楽、舞踏、建築などといった芸術から大きく遅れて誕生したものであるが、人類はその進化の歴史において、「映像表現」を科学技術の伸展に伴って、大きく変化させてきた。「静止画」の中で描かれていた「動画的表現」から、実際にそれらが「動く映像表現」になるまでの過程を探り、映像のもつ表現の特異性を考察する。
著者
上岡 秀拓
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
no.19, pp.111-131, 2005

絵画表現は、言葉による会話と同じく、いわば視覚イメージを使ったコミュニケーション・メディアであると考えられる。しかしながら、絵画と受け手の相互関係を、マクルーハンが提示した「ホット」及び「クール」というメディアの性質を照らし合わせて見ると、会話と異なり、一方向性なものである。そこで、絵画表現において、会話のようなコミュニケーションへの展開の可能性はないか考えた。その過程で、「キャラクター表現」がもつ、コミュニケーションに関わる特異な性質に着目した。本論は、まず以上の考察を、次いでその実践としての作品制作を試みたものである。
著者
安永 一典
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.29-46, 1995-03-31

イギリスのヴィクトリア時代,そのデザインは過去のデザイン,即ち古典主義,ゴシック,ルネサンスやロココ等のリバイバルが主たるものであったが,一方ではモダン・デザインの模索がなされるといった混迷の時代である。20世紀に残されたそれらのデザインを,その体験者は如何に考え共存させていたのか。背景としてヴィクトリア期のデザインを屡々描くアガサ・クリスティの小説の中からそれらを探り,検索を試みたものである。
著者
横山 徳爾
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.75-90, 2005-03-31

ソールズベリー女伯マーガレット・ポール(1473-1541)は、クラレンス公ジョージとイザベル・ネヴィルの娘として1473年8月14日にウィルトシャーのファーリー城で生まれた。1487年にバッキンガムシャーのジェントルマンであるリチャード・ポールと結婚した。弟のウォリック伯エドワードは1499年にヘンリー七世によって処刑されていたので、マーガレットが1512年にヘンリー八世によってソールズベリー伯位を回復された。彼女はメアリー王女(のちのメアリー一世)の養育係に任命されたが、ヘンリー八世がアン・ブリンとの結婚を意図したとき、この結婚に反対して、キャサリン・オヴ・アラゴンとメアリーに味方し、ヘンリーの敵意をまねいた。宮廷から追われ、ハンプシャーのウォーブリントンへ引退したが、1536年にアンが没落したのちに、復帰した。息子のレジナルド・ポールがヘンリーを批判する論文を発表したとき、ヘンリーはポール一族を絶滅させることを決意した。マーガレットは1541年5月27日にロンドン塔内で斬首された。
著者
田村 知視
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.149-158, 2007-03-31

一般家庭へのインターネットの普及に伴い、重要度の上がってきたWeb漫画であるが、果たしてWeb上でマンガを見る必要はあるのだろうか。また必要であるのならば、どうして必要なのか。どういった表現方法が相応しいのか、考察してみた。
著者
片山 昇
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-22, 1996-03-31

ウジェーヌ・ドラクロワはフランス絵画史におけるロマン主義運動の指導者と目されているが,彼の近代芸術のための孤独な闘争の内面史は彼の日記と書簡の中に見出される。また絵画に関する思想は断片的に日記の中に記されている。ボードレールは詩人批評家としてドラクロワの芸術の擁護と顕揚に盡力したが,同時にボードレールはドラクロワの精神的庇護のもとに「悪の華」の美学を形成したのである。
著者
安永 一典
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.59-77, 1999-03-31

イギリスの18世紀,特にジョージアン期は,王室の権威は失墜し,その結果立憲政治が確立された。その時期貴族,紳士階級が力を持ち,住宅やインテリア,家具に贅をつくすようになる。家具の様式も,王の名を付したものから,デザイナーの名の様式へと変化してゆく。チッペンデール,アダム,ヘップルホワイト,シェラトン達が当時活躍したが,今回取り上げるヘップルホワイトは,出生も不明な地味な存在ではあったが,彼の作品は近代デザインにも通じる,簡易ながらも品格の高いものであり,現在も尚,イギリスでは愛好者が多い。彼が世に訴えたかったものは何なのか,その作品を通して考えてみることとしたい。
著者
西上 晴雄
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.59-76, 2006-03-31

氾濫するマンガ・アニメを過去の文化史の中で見つめ、現代文化の中で分析、理解を深めます。連続絵画と印刷文化、現代のメディアの変遷の中で、神から与えられた表現方法なのか、人間の為せる技の一つなのかを問い、根源的視野でマンガを観察、次代に期待します。
著者
山崎 昌久
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.151-161, 1994-03-31

現代のポスターが果す役割は,科学技術の向上に伴い,様々な情報に関するメディアが発達するなかで,大きく変ろうとしている。もともとポスターは絵画芸術と相互作用しながら発展して来た。初期には画家が多く参画し,芸術の新しい試みはむしろポスターによって行われた。このようにポスターは自身で完結するものであったが,今日のポスター制作は分業をベースとしたアートディレクター・システムをとっており,ポスター・デザイナーは勢いアートディレクターとしての動きが要求される。ポスターの役割である広告・宣伝の分野は,都市機能や生活様式が変化するなかで,今新しいコミュニケーション・ツールにとって替わられようとしている。この時にあって,ポスターデザインの意味を過去の例を見て分析し,もう一度組立ててみる。
著者
横山 徳爾
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
no.19, pp.43-58, 2005

エドワード四世の王妃エリザベス・ウッドヴィル(1437?-92)は、ジェントルマンのサー・リチャード・ウッドヴィル(のちのリヴァーズ伯)の長女として生まれた。1452年にランカスター派のジェントルマンであるサー・ジョン・グレイと結婚したが、夫は第2次セント・オールバンズの戦い(1461)で戦死し、エリザベスはトマスとリチャードのふたりの息子をかかえて寡婦となった。エリザベスが亡夫の没収された所領の回復をエドワード四世に嘆願したとき、エドワードはたちまち彼女に恋し、1464年にグラーフトン・リージスでひそかにエリザベスと結婚した。エリザベスは翌1465年に王妃として戴冠した。ウォリック伯リチャード・ネヴィルは、この結婚を不快とし、1467年に宮廷を去った。王妃エリザベスはウッドヴィル家とグレイ家のために数おおくの有利な縁組をととのえた。エドワード四世がブルゴーニュヘの亡命を余儀なくされたときには、エリザベスはウェストミンスター修道院の聖域に逃れた。エドワードが復位すると、エリザベスはエドワードとクラレンス公ジョージの不和に巻き込まれた。1483年にエドワード四世が急死すると、エリザベスはふたたびウェストミンスターの聖域に入ったが、カンタベリー大司教トマス・バウチャーによって次男のヨーク公リチャードを差し出すよう、またリチャード三世によって彼女じしんも聖域を出るように説得された。リチャード三世はエリザベスとその娘たちの面倒を見ることを約束した。リチャード三世の治世には、エリザベスはレイデイ・マーガレット・ボーフォートと密約して、長女のエリザベス・オヴ・ヨークと亡命しているリッチモンド伯ヘンリー・チューダー(のちのヘンリーセ世)との結婚を約束した。1486年にエリザベスは未亡人王太后の称号をあたえられたが、かつて1484年にリチャード三世と密約したことを理由に、翌1487年に彼女の所領は没収された。エリザベスはバーモンジー修道院に隠退し、そこで1492年に他界し、ウィンザーのセント・ジョージ礼拝堂に埋葬された。