著者
中嶋 猛夫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.F19, 2007

今回の東西の山岳寺院における境内構成研究では、ユーラシア大陸の東端の島国の日本と西端のスペインという気候も文化、歴史も宗教も異なる土地にある山岳寺院において類似の要素、空間構成などが認められた。 同様のパターンの幾つかは各国の山岳寺院に共通するものであり、これは仏教、キリスト教以前からの人類の原始的な山岳信仰から続くものなのか偶然の類似性なのか、今後も調査事例を重ねて研究を続ける予定である。
著者
中嶋 猛夫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.136-137, 1999

This study elucidate landscape relation between the town of Kyoto and the Kiyomizu-dera. Kiyomizu's three-storied Pagoda is the Landmark of town. The view of town is the important element of Kiyomizu's religious experience.
著者
新井 竜治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.85-94, 2009-03-31
被引用文献数
4

戦後日本の木製家具メーカー及びベッドメーカーの家具を評価する一つの有効な指標はグッドデザイン賞である。本研究では、先行研究文献資料及び日本産業デザイン振興会のグッドデザインファインダーにおける半世紀分のGマーク商品の精査により、以下のことが判明した。この間に選定された木製家具メーカー及びベッドメーカーの家具の大半は、戦後日本人の生活様式を大きく変えた脚物家具とベッドであった。秋田木工、天童木工、コスガ、ヤマカワラタン、飛騨産業、二葉工業といった主要木製家具メーカーは、社外デザイナーを積極的に活用しつつ、社内デザイン部門と連携して、主に脚物家具のデザイン開発に取り組んだ。その受賞時期は主に60年代であり、意匠はミッドセンチュリー・モダンスタイル及びジャパニーズ・モダンスタイルであった。また西川産業、フランスベッド、アイシン精機といった主要ベッドメーカー各社には強力な社内デザイン部門が存在しており、主に普通ベッドのデザイン開発に注力した。その受賞時期は主に80年代であった。
著者
橋本 隆志 濱田 郷子 羽渕 琢哉 杉山 和雄 古屋 繁
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

本研究ではサービスを増幅させるための、5つの方法を考えた。<br>サービス工学の分野において、サービスの増幅方法は「強化」と「増殖」の2パターンが存在すると定義されている。<br>「強化」では、プロダクトライフサイクルにおける、様々なサービスを複合的に組み合わせて提供する方法を"サービスのカプセル化"と定義し、製品を持続させる10個の提供方法を考えた。<br>また、既存のサービスを発展させる"ホリスティックサービス"では、周囲の環境を利用して、共有サービスの本来の価値を高めることがわかった。<br>「増殖」では、使い手を増殖させるサービスを"カスタマイゼーション"と定義し、個別サービスのレベルを3段階に分けた。<br>ニーズに合った提供方法でサービス増殖させる"機器の目的"では、委託,代役,適応の3つの拡大方法を示した。<br>情報の窓口を増殖させる"ポータルサービス"では、既存の共有サービスのwebサイトを解析し、再分類をおこなった。
著者
玉井 泰子 加藤 久晶 山内 陸平
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.188-189, 2000

The purpose of this study is to identify the individual images of the areas on five private railroad lines in Kansai; Hankyu. Hanshin, keihan, Nankai, Kintetsu. The aim of this paper is to clarify it in terms of the word-image associated with each area, focusing on three types of image-analyses. First, an attempt will be made to explain the structural significance of the individual images that five private railroad line areas have. Secondly, a comparison will be made between subjective images of those people who living along the railroad lines and objective images of those who do not. Finally, the factors forming the individual images of those areas will be shown to be affected by the ' good impressions ' made to people by each image.
著者
小関 利紀也
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.21-30, 1995
参考文献数
52
被引用文献数
1

モダン・デザインの成立において,空間の問題が重要な意味を持っている事はいうまでもない。ところで日本美の特質が,その空間的性格にあることはこれまでにくり返し指摘され,また,日本の造形芸術が,19世紀ヨーロッパのデザインに大きな影響を与えた事も知られている。けれども当時のヨーロッパの空間表現への日本の造形芸術の影響は絵画などでは僅かに指摘されてはいても,デザイン空間の成立に及ぼした影響についてはほとんど論じられたことがない。この論文では空間のジャポニスムの最初の現れをゴドウィン,ドレッサー,マッキントッシュのデザインに見,その空間的デザインがリバティー商会を通じてヨーロッパ大陸に伝えられ,スリュリエ-ボヴィ,ヴァン・ド・ヴェルドによって発展させられた事,それは1897年のドレスデン工芸博覧会へのビングによる,ヴァン・ド・ヴェルドの"アール・ヌーヴォ"の店の内装展示の出展を契機として,急速にドイツの地にひろまり,それがその後のモダン・デザイン空間の発展に結び付いていった経過を明らかにした。
著者
大鋸 智 渡邊 広範 樋口 孝之 植田 憲 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.100, 2006

本研究は山形県飯豊町中津川地域をフィールドとして、草木活用の知恵を活かして自然と共生する山里の姿を現地調査および文献調査に基づき明らかにすることを目的とした。草木活用の知恵はいずれも草木を採取し、加工、利用、さらに転用、修理していくところに表れていた。利用した後は、自然に還元され、再度採取可能な一連の資源循環型の生活を表している。これは自然と共生するための一つの重要な要素である。調査より、草木を活用する知恵には、資源を上手に活用する知恵と自然に対するこころづかいを育む知恵があり、互いにしっかりと結びついたときに初めて自然との共生した生活が形成されたといえる。「こころ」や「活用の知恵」が代々、親から子へ伝わり受け継がれ、自然に対する一定の作法をつくりあげた。そして、草木活用の知恵を全て利用し、困難を乗り越え、ときには楽しみである行事が行われていた。現在、私たちの生活では簡単に見過ごされてしまっている「豊かさ」が、中津川地域ではっきりと確認することができた。今研究では、人と自然が一体となった草木活用文化を明らかにし、中津川地域の草木活用文化が生み出す「豊かさ」を提示ですることができた。
著者
和久田 里咲 木下 哲人 鈴木 希日良
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

2014年7月~11月にかけて、『結び』というテーマのもと、現在30歳前後の独身女性たちをターゲットとした商品開発とイベント企画を木下研究室と資生堂が運営しているWebページ&ldquo;Beauty&co&rdquo;&ldquo;カメヤマキャンドルハウス&rdquo;が協力して進めた。カメヤマキャンドルハウスにて発売されている&ldquo;LUMINARA&rdquo;というLEDキャンドルにスワロフスキー200粒程度を装飾し商品化する。これを限定100個の商品とし、12月初旬の発売を目指した。以降、当プロジェクトの活動を報告する。
著者
寺田 直和
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.166, 2005

今日、PCは記録メディアの入れ替えなしに手軽に扱える音楽再生ツールとして定着するようになった。HDDに大量のライブラリを抱えるユーザが増えており、大量のライブラリを抱えることで音楽の聴き方も変化している。主なものには、BGMとして常に音楽をかけておくような聴き方や、プレイリストで自分なりのコンピレーションを作成する聴き方、再生曲を無作為に選曲するランダム再生による聴き方などがあげられる。しかし、既存のプレーヤアプリケーションでは、音楽ファイルの管理と視聴行為自体が分離されているため、実際のリスニング時にユーザが発想する柔軟な聴き方を実現しづらいというのが現状である。調査によって、ランダム再生によるBGM的な視聴の時にもユーザには嗜好性があることや、その嗜好性は視聴を続ける間に変化していくものだということが分かった。よって本研究は、全く無作為で目に見えないランダム選曲ではなく、視覚的に把握し調整できる選曲システムを構築することで、選曲自体に直接楽曲管理操作を加え、ユーザの移り行く嗜好性にも柔軟に対応することが可能なプレーヤアプリケーション"neut"を提案する。
著者
谷 誉志雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.91-100, 2001-03-31

アメリカのジェイムス・クレノフとウェンデル・カースル、イギリスのデヴィッド・パイとジョン・メイクピースには、現代木工芸の動向を概観するうえで、典型となりうる造形表現の手法と工芸思想が認められる。クレノフとパイは、工芸におけるアマチュアリズムの考え方を提唱している。彼らが目標としているのは、作品のオリジナリティー、つまり「フォルムの差異」を追究することではなく、木がもっている親密なクオリティを「真のアマチュア」の仕事で作品に結実させることである。現代の人工的環境が失った美的クオリティの探究が工芸の存在理由であるとクレノフとパイは考えている。作品はもとより、教育と著作を通じてこのような思想が支持されていることは彼らの大きな業績である。対照的にメイクピースとカースルは、フォルムに量産品との能動的な差異を求め、ダイナミックに変貌する造形スタイルを展開している。4人の著名な作家を例にとって見たイギリスとアメリカの現代木工芸は、造形スタイルと工芸思想の対蹠的構図を端的に示している。
著者
小出 真理子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

本稿では16世紀頃を中心に、風流踊装束の詳細を時系列にして変遷を追った。その際、近世初期風俗画における風流踊装束の詳細を考察した。天文年間を過ぎるころには、特に囃子方の装束に半臂が現れ始めるようになる。この装束については天文期以降の風流踊、囃子方特有のものと考えられた。その後、永禄初年頃には精細に装束表現がなされ、多彩な変化が見られた。囃子方と中踊の装束については、東博模本に現れた半臂などは本図でも見受けられた。また、笠などの頭頂についた飾り物がより明確に表現されていた。このころから、風流踊装束は、日常着の延長として着用されていたものから当該期特有の装束へと変化してきたといえる。その後、踊衆装束の様相は、より色彩も華やかに、意匠も精細に表現されるようになってきた。囃子方の装束では、やはり半臂を着用している様子が見られ、この様相から囃子方の装束の定型ではないかと思われる。半臂とは礼服の一種であるが、風流踊により近い芸能装束では舞楽の常装束で用いられる半臂を彷彿させ、文献においても、舞楽と風流とのとの関連についての記述が見られることから、本図は、舞楽と関連する風流が描かれていると指摘した。
著者
川合 康央 池田 岳史 益岡 了
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

本研究は,地域の歴史的文化を伝えるための街並み景観シミュレーションシステムを開発するものである.対象地区として,旧東海道における藤澤宿(現在の神奈川県藤沢市)を選定し,開発環境としてゲームエンジンであるUnreal Engineを採用した.建築物や都市施設などの空間構成要素のモデルデータを3DCG制作環境で作成するとともに,会話可能なキャラクターも再現することとした.宿場町を自由に行動可能なようなインタラクションとして,直感的な動作可能なようゲームパッドによる操作を実装した.本システムは,藤沢市ふじさわ宿交流館において,2016年5月より常設展示され,これまでに3回のシステム更新を行っている.本研究は,江戸時代後期の旧東海道「藤澤宿」を市民に分かりやすく伝え,地域の歴史文化に興味関心を持たせることで,地域の文化継承を支援するシステムを開発することであり,およそ当初の目的を達成したと考えられる.今後,他の宿場町でも自由に再現可能なプラットフォーム化を計画している.
著者
伊豆 裕一 佐藤 浩一郎 加藤 健郎 松岡 由幸
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

プロダクトデザインにおいて,スケッチには,新たなデザイン解の導出を促す効果のあることが多く指摘されている.しかしながら,従来の研究では,それらの効果に対する透視図法や展開技法などのスケッチスキルの影響については明らかにされていない.筆者らは,プロダクトデザインにおけるスケッチスキルの効果の解明を目的に,スケッチ教育におけるスケッチスキルの習得度の差異を分析することで,各スケッチスキルの関係性を表すスケッチスキルの構造モデルを提示した.本稿では,本モデルを用いて,デザインにおいてイメージの創出を狙いとしたラフスケッチと,形状,構造,および仕様の導出を狙いとしたアイディアスケッチの両スケッチに影響するスケッチスキルを分析した.その結果,ラフスケッチにおいて形状の特徴表現,アイディアスケッチにおいて形状の正確・的確な表現に関わるスケッチスキルが,それぞれに強く影響することを明らかにした.<br>
著者
谷 尚樹 内山 俊朗
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

子どもによる描画表現の特徴は、様々な学問領域で研究が行われており、デザインの分野にも関連する命題である。今日では、親子参加型のワークショップなど、子どもの描画表現をデザイン分野に取り入れる動きもある。更に、描画表現を積極的にデザイン領域へ組み込む事例として、子どもの絵を立体化するサービスが挙げられる。しかし、これらサービスにおける立体物は、原画のスケッチに比べ違和感や異なる印象、つまり「ずれ」が生じているものがある。そこで本研究では、このずれの原因と傾向を明らかにする。実験では、スケッチとそれを元に作った立体を比較、自由記述で相違点を明らかにした他、別の被験者に立体制作とインタビューを実施することで、制作における作者の意図を考察した。加えて、完成した立体の順位付けを行い、どういった立体が高評価を得るのかを調査した。結果、立体ではサイズ感や比率にずれが生じやすいことが分かった。また、比較実験からは、原画に忠実であるものが高い評価を得ることが明らかになった。インタビューからは、大人が自分の持つ知識や経験を当てはめる・モチーフを想像することがずれの原因であることが分かった。
著者
伊豆 裕一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

1955 年、東京芝浦電気(現株式会社東芝)より発売された自動式電気釜ER-5(以下:ER-5)は、米と水を入れてスイッチを入れればおいしいご飯が炊けるという、今ではごく当たり前となったことを実現した商品であった。日本国内で急速に普及率を伸ばした炊飯器は、その後、世界各国に輸出され、米食を身近なものとしてきた本研究では、日本における炊飯器のデザインの変遷から、この商品と技術や住環境との関係について述べる。さらに、同じく米を主食とする韓国との比較を行うことで、地域の食文化との関係を考察する。
著者
樋口 孝之 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.101-110, 2003
参考文献数
84
被引用文献数
1

今日の日本で,デザインということばは日常語として用いられている。西洋概念の受容以前に,「たくむ」「たくみ」は,デザイン行為の概念と重なる意味を含んだ日本語として存在した。本文では,その語義の形成と変遷について検討を行った。「たくむ」「たくみ」はヤマトコトバであり,もとは手わざを意味するものではなく,「考え出す」「工夫する」「計画する」という思考を意味する概念を有していた。語源は確定されないが,「手組」として理解されていたことがわかった。「たくみ」は,漢字の移入によって,「匠」「工」「巧」などの単字,「工匠」「工人」「匠者」などの熟字と対応関係を築いた。また,律令制度のなかで官職や雇役民の名称となり,職能や人の身分を示すことばとして定着した。近代以後,「たくむ」「たくみ」とも仕様される度合が減じた。日常的な話ことばにおいても,意味を代替する漢語(および漢語サ変動詞)が用いられることが顕著になったことによる。これらのことばが元来有する語義を,あらためて認識することの重要性が示唆された。
著者
戴 薪辰 植田 憲
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.4_19-4_28, 2017

今日,中国においては飛躍的な経済発展が実現したが,その一方で,伝統的生活文化が急速に消失しつつある。それは,単に物理的な側面のみならず,社会・生活の構造そのものの崩壊と言っても過言ではない。本研究は,中国上海市近郊の崇明島において形成されてきた伝統的住居「宅溝」の住まい方に着目し,それらを地域資源として再発見・再認識することを目指した調査・研究の第2報である。本稿では,非日常生活における空間特質を明確にすることを目的とした。調査・考察の結果,以下の各点が明らかとなった。(1)宅溝は人・神・霊が共住する空間と認識され,新年・羹飯の年中行事を利用してその存在を維持・更新が図られてきた。(2)公堂の空間は宅溝のなかで最も重要な空間であった。(3)結婚式では住居の複数の内と外の境が利用されるとともに強調された。(4)葬式では公堂に死者の身と霊に休息を与え,来世への準備を整える空間となった。(5)非日常生活において宅溝は儀式空間へと転換され,日常生活における空間特質とともに多義的な特質が構築された。
著者
平光 睦子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.69-76, 2013-05-31
参考文献数
27

本稿は、明治期の京都の美術工芸学校の図案教育について、岡倉天心(1863 . 1913年)が美術教育施設二付意見」において示した美術教育制度との比較において考察するものであり、その目的は美術工芸学校の特性や傾向を明らかにすることにある。<br>1894(明治27)年に発表された「美術教育施設ニ付意見」には、近代日本に相応しい美術教育制度の構想が示されている。このなかで、京都の美術工芸学校は、高等美術学校としても技芸学校としても否定されている。<br>岡倉の構想した高等美術学校は、日本美術の保護継承を目的とする専門家養成機関であった。また、技芸学校の目的は直接的に殖産興業に資することであり、ここでの産業は主に大量生産の機械工業をさしていた。<br>一方京都の美術工芸学校は、創立以来の地元の工芸諸産業との関係性を明治中期には一層強めており、1891(明治24)年の工芸図案科設置もその表れといえる。高等美術学校として否定された要因はこの産業との直接的な関係性にあり、技芸学校として否定された要因は、その産業が主に工芸であって機械工業ではないことにあった。