著者
野宮 謙吾 越川 茂樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.227-227, 2006

岡山県総社市では、スポーツという文化を人々とともに親しみ育んでいくことで地域における文化をより深め、街づくりに貢献するために、「NPO法人吉備スポーツ王国」を設立した(以下、吉備スポーツ王国)。そして、岡山県立大学との共同研究により吉備スポーツ王国のミッション及びビジョンが策定された。これらは組織アイデンティティを確立するためのマインドアイデンティティ(MI)であり、言葉を手段とした意味訴求を目的とするものであるが、ビジュアルアイデンティティ(VI)は、視覚イメージによる感性訴求を目的とするものであり、シンボルマークやロゴタイプ等を代表とする視覚アイテムがその手段となる。VIはMIの意味情報を視覚的に抽出、解釈したものとも言えるが、感性に直接働きかけることができる特性により、組織のイメージづくりにおけるその役割は大きい。そこで、吉備スポーツ王国においても積極的に導入し戦略的活用を図ることとした。
著者
伊原 久裕
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

1950年に日本で翻訳出版されたアイソタイプ絵本『科学の絵本』シリーズ全5冊のうち、“Visual history of mankind”(邦訳名『絵とき人類史』)の3冊は、生前のオットー・ノイラートが携わっていた最後の仕事の1つであり、他の2冊 “If you could see inside”(邦訳名『ものの中がみえたなら』), “I’ll show you how it happens”(邦訳名『それはいったいなぜでしょう』)は、オットーの死後アイソタイプ研究所を引き継いだマリー・ノイラートがその後継続して出版することになる一連の「科学絵本」シリーズ “Wonders of the modern world” の最初の作品であった。マリーの科学絵本シリーズのいくつかは1956年にドイツ語に翻訳されたが、“Visual history of mankind” は日本以外に翻訳紹介されておらず、アイソタイプの世界への影響を知るうえで、日本で出版されたことの意味を考えることは重要な課題であろう。しかし『科学の絵本』シリーズ出版の背景については、まだほとんど知られていない。本発表では、『科学の絵本』シリーズを企画出版した歴史学者、編集者、教育者の吉田悟郎の活動に焦点をあてて、出版に関わる状況を探る。
著者
小宮 加容子 福田 大年 高橋 由衣 黒神 信実
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

本研究チームでは2011年8月実施をかわきりに、年間3~4回の遊びイベント開催や環境カルタ制作など、子どもや遊びに関するものづくりの活動を行っている。本報告では、2011年12月と2013年12月の2回、札幌市内で開催された子育て家族を対象にしたイベント「SORAこそだてフェスティバル(札幌コンベンションセンター)にて実施した「まねっこサンタさん」について遊びの紹介をする。さらにその成果として、各遊び場・内容での子どもの様子を、子どもの年齢、集団の構成、遊びの形態の視点から考察する。
著者
李 震鎬 宮崎 紀郎 村越 愛策
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.9-16, 1994

視認性に及ぼす走行環境の影響を調べる目的で,現在使用されている道路案内標識をとりあげ,文字を中心にそれらをどのように認知しているのかを明らかにしたものである。内容は実験I.として視認性に及ぼす走行速度の影響を調べるために,走行速度を30,50,70km/hの3種類に設定し,同一地名に対する検索時間などで視認性を調べた。実験II.としては視認性に及ぼす情報量の影響を調べるために,九つの異なる情報を設定して視認性を調べた。その結果,I.走行速度は50km/h,30km/h,70km/hの順に視認性に対して優劣関係にあることが明かとなった。II.情報量から見た場合の視認性は,文字の複雑さの要因が大きくて,画数の少ない,簡単なものから読み始める傾向が顕著である。また,視認したという判断については,漢字のみの構成ならば画数にしたがっているが,カナや数字が入ってくると,それらが視認されてから他の文字をはっきり視認しなくても推測が働き,漢字単独の状態よりも早い段階でその情報を認知していることを確認した。
著者
齋藤 美絵子 高野 裕子 嘉数 彰彦
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.B19, 2009

大型街頭ビジョンは、街の華やかさや賑わい、新しさを象徴する存在として人々に親しまれている。また、災害時の情報発信などの情報伝達メディアとして期待されている。しかしその効果が発揮されているのは、東京や大阪などの大都市の一部のビジョンにすぎない。地方都市では、大型街頭ビジョンをうまく活用することができず、効果が発揮できていないものが多いのが現状である。本研究では、地方都市のモデルケースとして、岡山市内の大型街頭ビジョンの現状を改善するため、通行者に注目させる方法を研究する。岡山市内の大型街頭ビジョンの調査から、一瞬目を向ける通行者はいるが長時間の視聴にはならず放映内容が意識に残るほど視聴されていないことが明らかになった。そこで、「焦点注目反応」と呼ばれる意識的な注目反応に着目し、既存のコンテンツとコンテンツとの間に通行者の興味をひく短い映像を挟みこむと効果的であるという仮説を導き出した。その効果を検証するため、注目反応を促す映像がある場合とない場合を比較する実験を行い、その結果から、注目反応がある場合の方が意識的に視聴していたということが明らかになった。
著者
齋藤 美絵子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

近年、屋外・店頭・公共空間・交通機関など、あらゆる場所で多様なディスプレイや表示機器が設置され、情報が提供されている。これまでの電子看板といえば、ビルの外壁に設置された大型街頭ビジョンが代表的であったが、近年、それとは対極といえる小さなディスプレイが活用の場を広げている。エレベーターや電車内では見慣れた存在となってきたが、自動販売機に組み入れられたり、トイレの中にまで設置されたり、事例は増加の一途を辿っている。 現在の小型ディスプレイの普及状況をみると圧倒的に広告分野での活用が多く、営利を目的とする情報発信が目立つが、実は広告以外のコンテンツの需要は多い。特に今後は、学校や病院などでの情報発信ツールや企業内の連絡ツールとして広がっていくことが考えられる。 そこで本研究では、小型ディスプレイの活用の場を教育機関に限定し、利用者自身が操作し閲覧できるタイプの小型ディスプレイの情報伝達能力や、楽しさといったエンターテイメント性についての評価を明らかにする。教育機関における情報伝達や情報サービスを視野にいれることは、本研究の特色といえる。
著者
赤松 明
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.26-26, 2006

技能五輪国際大会は,国際技能競技大会(World Skills Competition)のことである。1950年にスペインの職業青年団が提唱しポルトガルとの間で各12人の選手によって技能を競い合ったことが始まりである。年々参加国及び参加選手が増え,若い技能労働者の世界的な競技大会として発展し,38回を数えるようになった。この大会は,参加各国の職業訓練の振興と青年技能者の国際交流ならびに親善を図ることとを目的とし,国際職業訓練機構によって運営され,加盟各国から公式代表及び技術代表によって構成されている。そして,現在2年に1度(奇数年)開催されている。大会の参加資格は大会開催年に22歳以下であることとなっている。この世界大会に参加する選手は,国際大会が開催される前年の技能五輪全国大会の優勝者とされ,我国も第11回大会から参加している。そこで,技能五輪の現状(37回スイス大会・38回フィンランド大会を例として)について報告する。
著者
原田 利宣 石田 智子 吉本 富士市
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.61-68, 2002
参考文献数
8
被引用文献数
2

自動車インテリア評価に関する既存研究例には,写真や2次元CG,実車を用いて評価したものが多い。写真や2次元CGは室内空間という臨場感に欠け,実車は精度が高くリアルだが,意図した形態要素を含んでいるとは限らない。そこで,本研究では立体感,スケール感を再現できるVRシステムを用いてより精度の高いデザイン評価を行うことにより,インスツルメントパネルを構成する形態要素と印象との関係を明確化することを目的とした。まず,既存車39車種のインパネを計測し,プロポーション,面構造,曲線(面)の3つの視点から分析を行った。それによりインパネ形状に影響を与える形態要素を抽出し,それらを用いて実験計画法によるVRモデルの作成を行った。次に,作成したVRモデルを10語の評価用語を用いて評価実験し,主効果を求め,分散分析,t検定を用いてどの形態要素がどのような印象に影響するのか調査した。その結果,各評価用語に対し影響すると考えられる形態要素が抽出された。
著者
安田 創 小宮 加容子 柿山 浩一郎
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

下肢不自由者にとって、雪道を車いすで移動することはとても困難であり、移動の困難さ以外にも様々な不便を感じることがある。これまで、この問題を解決し快適に移動するための移動支援ツールの研究及びデザイン提案を行ってきた。しかし、これまでの研究やそれによる提案はデザイン案のレベルであり、特に走破性能についての検証と開発が足りていない。本研究ではこれまでの研究をもとに、実際の雪道での実働を意識した提案をする上での課題を明らかにするため、実験と考察を行った。これにより、雪道を走行するためには、モーターやギアボックスの出力を上げることと、スリップせずにスムーズに走るためのタイヤのレイアウトや形状の再検討が必要であることが明らかになった。  
著者
生田目 美紀 石川 重遠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.228-229, 2000

Owing to better circumstances for making new Japanese fonts through the computef, the number of Japanese fonts has increased, and also the number of categories into which Japanese fonts are classified has increased. But we have no methods of choosing suitable one according to imagery of them. So we have the research on the image of the shape of Japanese fonts. It is necessary to use suitable fonts for the design works. The results of this research show that the image of Japanese font can be classified with three points. They are Sex, Refinement, Power and Weight. We will be able to add some image keywords (or something) on a catalogue that can be used for choosing Japanese fonts, in the future.
著者
山本 佐恵
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

本研究の目的は、田中一光(1930-2002)のデザイン活動の初期にあたる1950年代に焦点をあて、田中における前衛美術の影響について考察することである。彼が青年期を過ごした関西では、 グラフィックデザイナーは美術家と活発に交流し、独自の美意識やデザイン感覚を発展させた。 事実、田中に強い影響を与えたのは早川良雄と吉原治良であることはよく知られている。<br> 50年代の田中の活動においては舞台美術も重要であり、吉原が舞台美術を担当した52年の国際ファッションショーでは助手を務め、また吉原が主宰した具体美術協会が57年に開催した「舞台を使用する具体美術」の大阪公演では演出助手を務めている。さらに注目すべきは、吉原によって前衛書道への開眼に導かれた点である。森田子龍が創刊した『墨美』を吉原から何度か借りたことで、田中は前衛書道に関心を持つようになる。前衛書道の造形は田中に刺激を与え、後に制作したシルクスクリーン作品やモリサワのポスターなどに興味深い類似性がみられる。前衛書道への開眼は、田中がグラフィックデザインにおけるカリグラフィやタイポグラフィの効果について研究する上で役立ったと推測される。
著者
鈴木 晴子 佐々 牧雄 永見 豊
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

インターネットが発達し、手紙が衰退しているので、若者に手紙の良さを再認識させ、手紙を書くためのきっかけをつくる。<br>手紙をかかない若者へ訴求するために広告に絞った。大学生を集めた座談会を開いた結果、手紙には温かみがあるという、手紙を書くタイミングがわからないということがあげられた。普段はテレビCMは目にしないということで、トレインチャンネル広告に絞った。<br> 手紙のあたたかみやぬくもりをテーマにした15秒のアニメーションと、ふみの日を伝えて手紙をかくきっかけをつくる30秒の動画を制作した。この動画を視聴することで若者たちは、手紙をかくきっかけをつくり興味を持つと期待できる。
著者
青木 幹太 榊 泰輔 聞間 理 三上 真輝
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

本研究では、我々は東日本大震災によって被害を被った子供たちや高齢者に癒しを与える活動を行なったことについて報告する。 ねぶたはランタンを用いた青森の伝統行事である。九州産業大学の工学部と芸術学部は、協力して東北地方の民話「さるカニ合戦」をテーマとした5体のねぶたを作成し、陸前高田市で劇を披露した。劇は幼稚園や養護老人施設で演じられた。
著者
趙 英玉 朴 燦一 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.31-40, 2000
参考文献数
55

清代、漢民族の被服は満州族に影響され、大きく変化した。本研究は、小説『紅楼夢』にみられる被服文様を対象に、清代の文様の特徴を、文様がもつ身分象徴や吉祥などの意味性の側面と装飾形式の側面から分析・考察した。その結果、以下のように清代の被服文様がもつ意味性や形式の特性の一端を明らかにした。1)身分文様 : 身分文様を施した礼服に、縁文様を加えて飾ることにより、身分を区別する傾向がみられ、一つの文様の意味が薄れると別の文様を加え、その意味を強くするという新しい文様の使い方が明らかになった。2)吉祥文様 : 吉祥文様は、ほとんどがその文様形式に意味が内包され、図像のモチーフより形式にこだわった吉祥文化であることがうかがえる。3)装飾文様 : 装飾文様は、身分象徴と吉祥的な意味性を特に有さないが、その文様構成の点で、身分文様や吉祥文様と類似した文様構成がなされていたことがうかがえた。
著者
王 伯勛 洪 明宏 邱 宗成
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_1-1_10, 2017

<p> 本研究は、民間習俗としての地域における鎮物の造形を調査し、広東省・マカオを対象として、「土地神」「石敢當」等民俗資料を広く収集したものである。広東は「土地神」信仰が絶対多数を占めており、伝統的な吉祥文様が描かれた紙「春聯」と立体の簪花(かんざし)により飾られた「天官賜福」「門口土地財神」の牌位を頻繁に目にする。マカオの「石敢當」の数は「土地神」には及ばないもの、民間風俗と文化的背景から「土地神」と「石敢當」とが融合し、幸福祈願、富貴、魔除け、厄除け等心理的必要性に対応する様々な霊石信仰が生まれた。「石敢當」は路地、住宅、オフィス、商店、廟、集落神龕等の場所に分布し、石板、石碑、石塊、山型の四形態に大別される。広東とマカオの民間信仰に関しては、「土地神」と「石敢當」の設置と装飾から、民族独自の視覚的記号が垣間見える。例えば、漢字の字体、伝統的象徴的文様等は、伝統文化の保存・継承を体現するものでもある。</p>
著者
本 明子 下川 智之
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.186, 2011

福岡県の八女地域には、提灯や仏壇といった国指定の伝統的工芸品や県の伝統工芸品に指定されている石灯籠や和紙、独楽など、多くの工芸品の産地である。しかしながら、近年、生活環境の変化や安価な海外製品の流入により、その伝統工芸品の生産高は減少している。そのような中、伝統工芸品の技術や素材を継承しつつ、新しい工芸品を作り、「伝統工芸のまち 八女」を再認識してもらうものづくりに取り組んだ。その一例である提灯バッグなどの開発について紹介する。
著者
長田 純一 ぜんじろう . 藤田 善弘
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.F09, 2007

近年研究開発が著しいパートナー型ロボットにおいては、何らかの機能を持ち人にサービスを提供するだけでなく、一緒にいることやインタラクション自体に価値を持たせることが求められている。つまり、ひとつひとつのインタラクションが、人にとって心地よく楽しいものである必要がある。この問題に対し、我々は「お笑い」に着目し、ユーモアを人とロボットとのインタラクションに応用することを試みた。我々はこれを「ユーモラスインタラクション」と名付けた。本稿では、ユーモラスインタラクションのための共同研究でおこなったロボットを使った漫才ショーについて報告する。
著者
東 恒人 島田 恭宏 高橋 武志 佐々木 武
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.11-20, 2007-03-31
被引用文献数
1

本手法で取り扱うメッシュは、2種類の曲線で構成されている.一つは横断面の形を表す曲線であり,もう一つは上記の曲線の配置関係を表した曲線である.これらの曲線は等しい長さの線分から構成されており,各曲線の形状は隣接した線分の間の角度の分布に依存する.本論文では、このような構造のメッシュについて、その形状的な特徴を定量的に分析するために,かつ,角張った形状のメッシュを生成するために,以下のような方法が提案されている.この方法では、二種類の曲線のうちの一方の種類の曲線の角度配布に対して、ウォルシュ変換対が適用され、他方の種類の曲線の角度配布に対して、フーリエ変換対が適用され、変換成分の一部を削除することにより、二種類の曲線のうち、一方の種類の曲線の形状の滑らかさの程度と他方の種類の曲線の形状の角張りの程度が強調されたメッシュが生成されている.
著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.41-46, 2003

浄法寺漆器の復興にあたっては、実質的な技術課題は下地加工と塗漆技術である。漆器生産技術の中でも、下地加工は漆器の強度を左右する重要な工程で、技術修得にも長い時間がかかると言われている。また、下地加工の意味は、素地の凹凸を埋めて、軟らかい木部の上に硬い塗膜層を形成し、強度を確保すること、断熱性を向上させることであると言われている。製造技術を新たに再修得しなければならなかった浄法寺漆器にとって、高度な技術は、時間とコストの増加を招く。そこで、日常品に適した下地法を採用するため、現在我国の主要な漆器に用いられている8種類の下地について手間と、強度の比較検討を行った。その結果、蒔地法、塗重ね法が高い強度を発揮する事が判明し、更にこれらの下地は技術修得が容易に行えることが判明した。
著者
村上 存 リュウ メイ チェン 柳澤 秀吉
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.126, 2006

アフォーダンスとは,事物をどのように使うことができるかを決定する最も基礎的な特徴であり,人間に対してその事物をどう使えばよいかの手がかりを与える.一方,機械設計やCADの分野では,フィーチャという概念が用いられている.フィーチャは,ある条件を満たすように人工物を設計したり,ある観点(機能,加工法など)に基づき人工物を分析することに使用される.本研究の目的は,人工物の設計,デザインに関係するアフォーダンスを発現する属性のまとまりをアフォーダンス・フィーチャとして定式化することである.人がある形状や構造を見てどう操作しようと思うかの要因の一つとして,様々な形状,構造について過去に経験,見聞した物理現象を仮定する(曲げようとして曲がった,曲がらなかった,細い枝は風でたわむが太い枝はたわまない,等).そこで本研究ではまず,形状のさまざまな属性と,人間がその形状を見てどのように操作しようと思うかの関係を,実験,アンケートにより抽出する.さらに,その関係の理由を物理現象で説明することを試みる.