著者
井上 順子 小山内 靖美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.211, 2006

現在インターネットや携帯電話等における情報検索サービスが発展し、誰もが必要な情報を入手できるような基盤が整ってきている。探すことのデザインには、大別すると2種類のタイプがある。あらかじめ目的がはっきりしている「検索」と目的が曖昧もしくは無い「探索」である。ネットワーク上の情報を活用するためには、「探索」を目的とした情報空間のデザインの必要性が高まると考えられる。本研究では、Webサイトでの情報探索のかたちを発想する手がかりとして、人が日常空間で情報を探す活動を調査した。その活動から情報探索サービスの提案を行った。日常空間における情報探索の調査、インタフェースのデザインプロセスについて報告する。
著者
松井 実 小野 健太 渡邉 誠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.3_1-3_10, 2016

進化理論の適用範囲は生物にとどまらない.本稿は文化進化の議論を基盤に,設計の進化について論じる.設計は2つに大別される.一方は理念で,機能に関するアイディアや情報である.他方は設計理念に基づいて開発された製品などである.本稿は,前者の設計理念は進化するが,後者の人工物は進化の主体ではないことを示す.設計理念とその発露としての人工物の関係は,生物学における遺伝子型と表現型の関係に似ている.表現型とは,腕や目,行動などをさし,遺伝子型はその原因となる遺伝子の構成をさす.表現型は,生物の製作するものをさすことがある.たとえば鳥の巣やビーバーが製作するダムなどで,「延長された表現型」とよばれる.人工物は設計の表現型ではあるが,人間の延長された表現型ではない.人工物は文化的遺伝子の発露であって,人間の遺伝子の発露ではない.もしそうであれば,人工物の良し悪しによってその製作者の遺伝子が繁栄するか否かが影響されなければならないからだ.進化理論は,とらえがたい複雑な現象である設計を理解するには非常に有用である.
著者
木内 正人
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.G16, 2004

独立行政法人国立印刷局は、明治4年(1871年)「大蔵省紙幣司」として創設以来、紙幣をはじめ各種有価証券や公文書を専門に製造してきた。今日に伝わる紙幣のデザインは、明治維新以後急速に近代化した歴史を色濃く残し、西洋から輸入した様々な技術をベースに、日本の民族的慣習を織り交ぜ独自のスタイルを築いてきた。また紙幣のデザインには、信頼、安全といったセキュリティー面からの役割と、国の威厳、品格、あるいは利用者の誇りや尊厳を支える役割をも担っている。それには、デザインの中に人々に"重み"を感じさせるデザインエレメントの存在が鍵となっている。本研究は、紙幣にみるデザインエレメントの特徴から鑑み、紙幣のデザインと社会との関係を考察するものである。
著者
柴崎 幸次 小山 奈緒子 太田 晶 陸 雅然
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.28-33, 2010

「清須市あいでんてぃてぃ」は、平成20年度、愛知県立芸術大学柴崎幸次研究室が清須市より受託した研究事業の略称である。平成17年〜21年に4つの町が合併して誕生した清須市の地域特性と魅力を再評価するための調査研究と、そこから見つけ出された清須を象徴する作品により構成されている。元々、別の町民であった清須市民が、合併による新しい市を知ることや街としての一体感を共有するために、調査によって見出された清須の個性を、1)風景と人のイラストレーション、2)現況写真を含む聞き取り調査によるブログサイト、3)美濃路の旧町名を表現したフラッグのグラフィックデザイン等の作品にまとめ表現した。
著者
宮崎 紀郎
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.61-70, 1996-05-31
被引用文献数
3

本研究は,いわゆる新聞離れをいわれる世代に属する大学生を対象に行った新聞についての意識調査を手掛かりとして,新たな新聞紙面デザインを提案するものである。調査は,19〜25歳までの大学生103名を対象に行われた。その結果,(1)新聞は役立つ,(2)新聞を信頼している,(3)新聞は正確であるなどの,新聞を肯定的にとらえる意見が50%以上であった一方で,(4)読者の意見を反映していない,(5)公平性に欠ける,(6)面白くないなどの意見が50%近くあった。SD法による新聞のイメージ調査の結果から,(1)明朗感,(2)おうへい感,(3)信頼感の3つの因子が見いだされた。この結果と新聞閲読時間との相関をみると,1日当たりの閲読時間が多い人ほど(1)明朗感にはプラス,(2)おうへい感にはマイナス,(3)信頼感にはプラスの傾向を示すことが分かった。紙面デザインに対しては,(1)写真,イラストレーションを増やす,(2)カラーを増やすなど,ビジュアルな紙面づくりへの要望が多かった。
著者
土屋 伸夫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.105, 2005

<B>研究意義</B>_-_デザイン史においては、1953(昭和28)年における多くの建築家が 創立に関わった国際デザインコミッティーの結成や1961(昭和36)年におけるグッドデザインコミッティーが「グッドデザイン」展開始というような日本デザインコミッティーの前身に関わる事象を取り上げている。しかし、デザインギャラリーそのものについては、その系譜となるものが充分研究されていない。つまり、先行研究がほとんど見あたらない。<BR><B>研究目的</B>_-_デザインギャラリーを通じて、特にその企画展からデザイン史を俯瞰しようとするものである。<BR><B>研究方法</B>_-_文献や企画展案内状などの資料などを活用して行う。研究結果_-_戦前期においては、資生堂ギャラリーがデザインギャラリーの黎明として位置づけることができる。<BR><B>研究考察</B>_-_資生堂ギャラリーは美術展を中心に活動していたが、その一部に今日のデザイン領域である建築・デザイン・写真の企画展が開催されている。ギャラリーの役割としては会期が3_から_6日間と短かった。ただ、学芸員の存在はいなかったが、福原信三という目利きによって、企画展の質が保たれ、建築家・デザイナーの新作発表支援と同時にデザイン啓蒙支援やデザイン流通支援に貢献した。<BR>
著者
土屋 伸夫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.82, 2008

●研究意義-デザイン史においては、1953(昭和28)年における多くの建築家 が創立に関わった国際デザインコミッティーの結成や1961(昭和36)年にお けるグッドデザインコミッティーが「グッドデザイン」展開始というような 日本デザインコミッティーの前身に関わる事象を取り上げている。しか し、デザインギャラリーそのものについては、その系譜となるものが充分 研究されていない。つまり、先行研究がほとんど見あたらない。●研究目的-デザインギャラリーを通じて、特にその企画展からデザイン史 を俯瞰しようとするものである。●研究方法-文献や企画展案内状などの資料などを活用して行う。●研究結果-戦後において、デザインギャラリー銀座・松屋がデザインギャ ラリーの基本モデルとして位置づけることができる。その結果をふまえ て、東京デザイナーズ・スペース(TDS)と比較検証することで、TDSの特徴 がより鮮明に理解することができる。●研究考察-戦前は資生堂ギャラリー(第52回日本デザイン学会春季大会口 頭発表)、戦後はデザインギャラリー銀座・松屋(第53回日本デザイン学 会春季大会口頭発表)がデザインギャラリーの存在を公に認知させてき た。その後、デザインギャラリー銀座・松屋やTDSの企画展により、デザイ ン文化の形成およびデザイン文化の向上に対して大いに貢献してきた。特 に、TDSは、新作発表支援・デザイン啓蒙支援をもとに展開されてきたこと が明らかになった。
著者
邊 ミンジュ
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.B22, 2004

: This research is designed to analyze character type of Korean characters from philosophical, psychological, and literary viewpoint. This is to characterize general fancy, game, and animation characters, and it can contribute to storytelling, motif, creation and marketing of characters on the basis of this analysis. A very significant fact here is that all kinds of characters are flat character type, which verifies distinctiveness is the most important element in creating character. Again, this research is to understand character type, which is the nature of characters, and to discuss the weakness and the direction of Korean characters.<br><br>
著者
田中 裕子 小野 梨奈
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

本研究は、オーロラ現象やその生成に関係する太陽風・磁気圏・電離圏相互作用メカニズムの解明を目的とした研究機関、国立極地研究所 宙空圏研究グループのWebサイトリニューアルを、サイエンスアウトリーチの視点から企画・開発したプロジェクトの効果を検証するものである。科学技術のさらなる発展に向けて、研究内容や成果を国民にわかりやすく説明し、双方向コミュニケーションを通じて国民のニーズ把握を行う「アウトリーチ活動」の重要性が年々高まってきている。本研究の目的は、アウトリーチ活動の取組みのひとつとして、大学や研究機関が、最新の研究成果をわかりやすく、かつ簡単・スピーディに公開するためのWebサイトのデザイン設計・構築を行い、Webをベースにしたアウトリーチ活動の効果を検証する。情報拡散手段としていまや欠かせないソーシャルメディアとも連携し、Webサイトを情報収集源として活用している国内外の優秀な大学院生や若手研究者に向けて情報を効果的に発信することで、優秀な人材を確保し、研究グループの研究力強化につなげるWebサイトを目指した。
著者
柴崎 幸次 伊藤 美穂 日比野 洋二
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.14-17, 2009

言万葉の絵樹(ことのよろずはのえじゅ)は、平成20年4月に竣工した学校法人奈良学園登美ヶ丘キャンパス新築事業において、学園の教育方針と精神的象徴として計画されたサイエンスホールの一連の壁画計画である。特注和紙に、様々な生き物や人影が隠れた大樹の絵図をプリントし、その葉の部分に"科学者が残した言葉"をフォログラムシートとシルバー色のシルクスクリーン印刷により施し、人の発見や感動、自らの失敗等の経験の言葉が絵図の中に構成されている。素材、表現、コンテンツ等のすべてが、その壁画の精神性を象徴するデザインとなっている。
著者
YEN Hui Yun LIN Po Hsien LIN Rungtai
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.3_67-3_76, 2015

A product's emotional attributes, including attractiveness, beauty, and creativity, have gradually become the key factors that influence consumers to choose a certain brand. A pleasant feeling often makes people feel joyful and addresses people's inner desires on a sentimental level. The use of the affective value of a product to confirm its market position can enhance its brand image and facilitate the identification of its product advantages. Our study used measuring scales for product qualia factors, brand love, and brand image to perform a structural equation modeling (SEM) analysis. Results show that 1) product qualia factors positively affect brand love; 2) brand love positively affects brand image; 3) product qualia factors positively affect brand image; 4) brand love provides a mediating effect on product qualia factors and product image; and, 5) through the use of brand love, the effect of product qualia factors on brand image is enhanced. Finally, we propose recommendations based on the researchresults to relevant study groups as well as to assist future studies.
著者
石村 眞一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.4_25-4_34, 2015

鋼管製カンチレバー構造の椅子は,ヨーロッパで1927 年に開発され,日本では1931 年あたりから国産製品が販売されている。ところが,使用実態を示す資料が少ないことから,本論では初期の使用実態を戦前期の映画に求め,その特徴を考察することを目的とした。調査の結果,次のことが明らかになった。①1932年あたりから東京の都心で使用され始めた初期の鋼管製カンチレバーの椅子は,映画には一切登場しない。②映画に初めて鋼管製カンチレバーの椅子が登場するのは1935 年で,1938年まで9作品の中に見られる。③鋼管製カンチレバーの椅子は,自宅で使用する場面と,商品の売り場,ホテルのラウンジ,ダンスホール,医院の待合室といったパブリックスペースで使用する場合とがある。④使用者の階層は特に富裕層とは限らず,ヨーロッパから発信されたモダニズムを,上手に日本社会へ取り込んでいる。鋼管製カンチレバーの椅子の使用を通して,日本の戦前期におけるモダニズムの一端を垣間見ることができる。
著者
菅 靖子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.B02-B02, 2007

イギリスでは早くから広告の視覚的効果が認識され、1871年のフレドリック・ウォーカーによる劇場ポスター『白い服の女』の登場以降、芸術性の高いポスターが大いに注目された。しかし、その結果「絵画的(pictorial)」なデザインが主流となったために、写真の広告への導入は、大陸ヨーロッパの動向と比較するとやや遅れ気味であった。 こうした状況を徐々に変えていったのは、1930年代初頭にイギリスを訪れたり移住あるいは帰化したりした越境のデザイナーたちの存在、そしてデザイナーの活躍の場を与えた企業や団体である。本発表では、グラフィックデザイナーのエドワード・マクナイト・コーファーとハンス・シュレーガーが逓信省のために行ったポスターの仕事を事例として、イギリスにおけるモダン・グラフィックデザインがどのように写真を取り込んで展開したのか、その一側面を検証する。
著者
柘植 喜治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.32-35, 1998-03-30

サンストリートは、従来の画一的な店舗構成により計画されたハコ型商業施設とは一線を画す商業施設である。買い物に来る人だけでなく、あらゆる世代の人々が集い、くつろぎ、日常生活を楽しめるよう人々の活動に焦点を当てた次世代の商店街づくりを目指した。敷地は、セイコー電子工業(株)(現セイコーインスツルメンツ)の発祥の地である亀戸本社工場跡地で、JR総武線亀戸駅前、国道14号線(京葉道路)に立地する。こうした好立地に駅ビルでもロードサイドショップでもないこれまでの再開発とは異なる時間消費型の集客施設を計画した。錦糸町とともに東京都の副都心として位置づけられる亀戸地区では、これまで超高層ビルによる複合都市開発などさまざまな構想が検討されてきたが、経済状況の急激な変化の中で具体化が見合わされていた。このような状況下で再開発事業を推進するにあたり、15年の暫定利用と低密度利用という事業計画が検討された。こうした経緯を踏まえ新たな集客施設として企画構想に当たり、かつて街の人々の活動の中心であった商店街の価値を問い直した。その活動を支える様々な要因が複雑に絡みあう状態の総体を環境として捉え、プロジェクトの初期の段階で施設開発における環境とその構成要素を様々な角度から検討した。その成果を環境計画基本構想として策定し、プロデューサーやデザイナー、事業主に提言した。(図1)その後の施設計画においてこの基本構想は北山創造研究所のプロデュースのもと、建築をK計画事務所、テナントリーシングをストリーム、運営管理のCDI他多くのチームにより実施計画に移された。建築計画やサイン計画、ショップデザインなどのデザイン業務だけでなく、業態開発、運用計画にもこの提言は反映され多くの成果が得られた。(図2)
著者
片山 勢津子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.10, 2005

NYチェアXがMOMAの永久収蔵品に選定されるなど,NYチェアは名作椅子として知られる。しかし他と違い,廉価で雑貨店等でも手軽に購入できるため,作者の新居猛やその作品,制作姿勢についてあまり知られていないのが実情である。本稿では,椅子制作に至った経緯や折り畳み椅子の系譜,コピー製品を廻る裁判からNYチェアの制作思想を探る。新居の家業は剣道具屋であったが,戦後,GHQによって剣道が禁止になったため,彼は木工技術を学ぶ。作品で詳細が分かる椅子は24脚で,特徴のあるのはNYチェアシリーズ9脚と試作2脚の計11脚である。その変遷を見ると,折り畳み形式,安定性,軽量化,使用場所等を考慮して改良していることがわかる。自社工場で製作するため,自ら使用して改善,試作を重ね,大衆向けに拘りコスト削減を図る。こうした新居の椅子への思いを踏みにじったのが,コピー商品の出現である。著作権の侵害を一人訴えたが,最高裁でも棄却された。それ以降,彼は真似のできないオリジナル製品を強く指向する。他にない椅子を作ろうと考え,洋の椅子を和の伝統技術で作り上げた職人気質をNYチェアには認めることができる。
著者
齋藤 学
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

2011 年度から新しい学習指導要による学校教育がスタートしているが、小学校図画工作科において「デザイン」という用語が使用されなくなったことをはじめ、普通教育における「デザイン」の取り扱いは大きな転換点にある。そうした中で、鑑賞による学習の充実が求められており、中学校美術科の教科書においては、身近な生活用品が図版に用いられた鑑賞教材が多数掲載されている。この学習をより有効なものとするためには、実際に手で触れ使うことができる鑑賞の機会の提供が必要であり、「体感型」の鑑賞学習プログラムの開発を試みた。<br> 名作椅子を用いた「体感型」鑑賞プログラムは、一般的な「見る」鑑賞に比べ、生活におけるデザインの働き(形状・素材・色・機能など造形の諸要素の関係性)について理解が得やすく、その学習効果の優れた特性が認められた。また、本プログラムをシステム化し効果的に運用(教材の管理とアウトリーチ)していくためには、今後、地域における学校間の連携と、自治体、公共施設、非営利団体、企業等の支援体制の整備が必要である。
著者
飛田 真理子 藤戸 幹雄 木谷 庸二
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

本研究では、近年急増する訪日外客を対象とし、鉄道駅券売機の問題点と券売機の造形に対する印象を明らかにし、券売機および周辺表示のデザイン提案を行う事を目的とする。訪日外客の鉄道駅券売機利用時の問題点を明らかにするために、京都駅中央口において、券売機およびみどりの窓口を利用する訪日外客に対し、券売機の利用状況や問題点についてのヒアリングを行った。得られた問題点を分析し、抽出された問題点をもとに、訪日外客の券売機利用時に経験する問題のエクスペリエンスマップを作成した。また、券売機の機器と画面に対する印象を明らかにするために日本人と外国人を対象に海外の券売機の印象評価を行った。これにより、日本人・外国人それぞれにおける、印象の良い機器および画面に共通するデザイン要素の傾向が明らかになった。最後に、得られた問題点と造形に対する印象の傾向をもとにきっぷ売り場の新たな周辺表示と券売機の機器・画面のデザイン提案を行った。
著者
酒井 祐輔 井上 勝雄 加島 智子 酒井 正幸
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.5_61-5_68, 2013

今日,視覚的に使いやすく見える製品はデザインだけでなくマーケティング的にも求められている。そこで,本研究の目的は,電気製品の機能が多くなることが,製品の視覚的使いやすさ感に与える相違と共通要因を解明する,さらに,多機能な製品で操作が本体でなくリモコンの場合の視覚的使いやすさ感の要因も解明する。研究の方法は,前者は,アイロンやラジカセ,ミニコンポ,携帯電話を対象として,区間回帰分析を用いてインタフェースの階層関係(上位から感性的IF,認知的IF,物理的IF)から視覚的使いやすさ感の要因を解明した。一方,後者のリモコンに関しては,エアコン用リモコンと携帯電話のテンキーを対象として,区間AHP法とラフ集合を用いて視覚的使いやすさ感の要因を解明した。前者の結果では,ユーザーが製品デザインに対して操作が具体的にイメージしやすいかが関係し,後者では,ボタンや表示文字などの大きさや配置や形状の内容が寄与していることが示された。リモコンの結果はわかりやすさであり,前者の操作がイメージしやすいかとの関係が高い。
著者
佐々井 俊文 三橋 俊雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

本研究では、自立自存的な生き方とは何かを探求するに当たり、京都府北部の2地区において、民俗学的および道具学的な視点から聞き取り調査および行動の調査を行った。<br>宮津市の丹後由良地区では、調査対象者1名の生活技術や生活哲学が、自然の循環の中にあり、また物々交換に代表される人との関わりの中にあることが明らかとなった。そのことは特に消し炭の利用に明確に表れており、自立自存的な生き方の特徴的な生活技術の事例の1つを示唆していると考えられる。<br>福知山市雲原地区では、兼業で猟を行っている2名の対象者が、猟を通じた道具の加工技術や、害獣と対峙しながら生活していくための、幅広い知識と技術を持っていることが明らかとなった。<br>こうした対象者らの日常の生活や生活技術は、自然の中で自立自存的な生き方を実現するための、重要な知見であると考えられる。<br>