著者
水野 君平 柳岡 開地
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.97-108, 2020-09-25 (Released:2020-09-25)
参考文献数
36
被引用文献数
5 3

本研究の目的は中高生を対象にして「スクールカースト」における友だちグループ間の地位と複数の心理的適応および仮想的有能感の関連性と学校段階間の差を検討することであった。本研究では心理的適応として学校享受感,顕在的自尊心,潜在的自尊心を扱った。中高生408名に対して自己報告式のweb調査を行った。その結果,中高生ともに所属グループの地位が高い生徒ほど学校享受感も高く,グループ内での地位が高い生徒ほど顕在的自尊心も高いことが明らかとなった。また,高校生のみ高地位グループの生徒ほど顕在的自尊心も高いことが明らかとなった。潜在的自尊心と仮想的有能感についての関連はみられず,中高生の間で関連性の差も見られなかった。最後に,以上の結果をもとに,中高生における「スクールカースト」と本研究が用いた複数の指標との関連性について議論した。
著者
加藤 伸弥 藤森 和美
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.70-79, 2021-09-06 (Released:2021-09-06)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は,特性としてのシャーデンフロイデの感じやすさを測定するためのTrait Schadenfreude Scaleの日本語版(J-TSS)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。研究1では,原版を作成する際に用いられた54個の予備項目を邦訳したものを日本人の大学生に実施し,301名の回答を分析した。その結果,J-TSSは良性シャーデンフロイデと悪性シャーデンフロイデの2種の因子を持つことが明らかとなり,おおむね充分な信頼性が示された。研究2では,2つのサンプル(183名,184名)の大学生を対象に,J-TSSと他の尺度を用いた調査を実施した。その結果,先行研究とおおむね一致する結果が得られたが,本邦において的確な項目表現を吟味した手続き上の影響により,厳密な妥当性までをも立証することはできなかった。以上により,J-TSSの将来的な可能性が論じられた。
著者
鈴木 千晴 中山 満子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.33-35, 2021-04-26 (Released:2021-04-26)
参考文献数
10
被引用文献数
1

There is an increase in cases of children becoming victims of crime by strangers they meet online. We investigated the factors associated with children’s contact with strangers online. In this study, 639 children participated, and out of those who had devices with Internet access, 28.9% communicated with and 2.0% had actually met online strangers. Children who had communicated or met with the strangers perceived that they had less social support from parents and used many social networking sites. This suggests that their contact with strangers online is related to the feeling of being unable to rely on familiar others and lower resistance to contacting online strangers.
著者
登張 真稲
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.46-58, 2010-08-31 (Released:2010-08-18)
参考文献数
64
被引用文献数
2

本稿では「協調性」をAgreeablenessとCooperativenessの両方を含む概念(非利己的で,他者に対して受容的,共感的,友好的に接し,他者と競い合うのではなく,譲り合って調和を図ったり協力したりする傾向)としてとらえ,この特性の起源に関する文献を展望した。これらの文献からは,AgreeablenessもCooperativenessも遺伝と環境の両方の影響を受けること,協調性は社会的絆の形成・維持に関連する親和性等の気質と自己調整に関連する気質と関係があることが示唆された。また,親和性と,同じく社会的絆の形成・維持に関係があり協調性との関連が深いと考えられる共感性には神経生物学的基盤があることが示唆された。これらの基盤が協調性の遺伝的起源の一部となっている可能性がある。協調性の要素間の関係やパーソナリティ特性としての成立過程,環境的起源については,さらに詳細に検討する必要がある。協調性の尺度についても再検討が必要である。
著者
丹羽 空 丸野 俊一
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.196-209, 2010-03-31 (Released:2010-04-28)
参考文献数
25
被引用文献数
8 11

日本人の若者が,他者との親密な関係を構築していくうえでどのくらい深い自己を開示しながら相互作用を行っているのかを検討できる自己開示尺度は,これまで作成されていない。本研究では,自己開示の深さを測定する自己開示尺度を作成し,尺度の精度を検討するために,299人の大学生を対象に質問紙調査を行った。分析の結果,本尺度は (1) 趣味(レベルI),困難な経験(レベルII),決定的ではない欠点や弱点(レベルIII),否定的性格や能力(レベルIV)などという,深さが異なる4つのレベルの自己開示を測定でき,(2) 開示する相手との関係性に応じて自己開示の深さが異なることを敏感に識別でき,(3) 親和動機および心理的適応度を測定する既存尺度から理論的に予想される結果においても高い相関が見出され,妥当性の高い尺度であることが確認された。
著者
下司 忠大 陶山 智 小塩 真司 大束 忠司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.263-265, 2019-03-01 (Released:2019-03-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

This study aimed to investigate whether sadism is related to high competitive performance and whether this relationship is mediated by gamesmanship. Responses to sadism and gamesmanship scales of 339 university students majoring in physical education were analyzed. Results showed that sadism is significantly related to high competitive performance in relative competitions, and that this relationship is mediated by gamesmanship. Our findings suggest that sadism has positive aspects, despite its negative ones. This study contributes to the development of an accurate understanding of sadism.
著者
徳永 侑子 堀内 孝
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.193-203, 2012-03-30 (Released:2012-05-22)
参考文献数
25
被引用文献数
8 17

自己概念の明確性は,個人の自己概念の内容や自己についての信念が,明瞭に確信を持って定義され,内的な一貫性を持ち,通時的に安定している程度を表す概念である。Campbell et al.(1996)の自己概念明確性尺度を用いた研究が広く行われているが,本邦においては十分な妥当性および信頼性が確認された自己概念の明確性尺度は未だない。そこで本研究は,自己概念の明確性尺度を邦訳し,信頼性・妥当性を検討することを目的とした。研究1では,邦訳版尺度が原版同様に1因子構造であることが確認された。また,先行研究をもとに選出した他の概念尺度との関連が確認された。研究2では,再検査信頼性が確認され,研究3においては,対自的同一性,自己像の不安定性,自己斉一性・連続性尺度との関連から併存的妥当性が検討された。また,自尊感情と抑うつにおいて,前述の3尺度に対する増分妥当性を有することが明らかとなった。
著者
佐藤 徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.416-425, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

つい最近のことのはずなのに遠い昔のことに感じられたり,自分に起こった出来事なのに自分の体験ではないように感じられることがある。本研究は,何がこのような感覚に影響を及ぼしているのかを検討した。その結果,実際には同じ頃の出来事を想起しているにもかかわらず,自尊心が高い者はネガティブな出来事を遠く,自尊心が低い者はポジティブな出来事を遠く感じることが明らかとなった。また,現在の自己概念と一致しない出来事はより遠く感じられていた。出来事の自己所属感も同様であり,同じく自分に起こった出来事を想起しているにもかかわらず,現在の自己評価と異なる出来事は自分の体験ではないように感じられること,現在の自己概念と一致しない出来事も同様に自分の体験ではないように感じられることが明らかとなった。以上より,想起された出来事の時間的距離判断ならびに所属判断が自己概念や自己評価の影響を受けることが示唆された。
著者
大塚 巌
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.250-252, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
8

In this study, an Internet-based survey was conducted to study the relationship between perception of dry-wet personality dimension and motion patterns of gas and liquid that gave wet or dry impressions. Participants, 206 in total, observed online computer simulation movies of gas and liquid molecule motion patterns, and answered how dry or wet they perceived each particle's motion on each movie as in human behavior. Results showed that participants saw the motion of gas molecules as dry, and that of liquid wet as in human behavior.
著者
山崎 勝之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.305-321, 2006 (Released:2006-08-30)
参考文献数
96
被引用文献数
8 5

「ポジティブ心理学運動」に刺激され,これまで多くの研究がポジティブ感情の役割を調べてきた.本論文では,まず,ポジティブ感情の定義と測定方法にかかわる問題のいくつかを明らかにした.特に,ポジティブ感情の多くの種類が未だ考慮されていない現状を指摘し,あわせて測定方法の精度の低さの問題を強調した.続いて,ネガティブ感情と比較しながら,ポジティブ感情がもたらす多くの恩恵が,知覚,情報処理,健康,対人関係などの広範囲にわたりレビューされた.そのレビューでは,過去においてポジティブとネガティブ感情にかかわる知見の不一致が生じた理由を考察し,不一致の原因を探りながら,両感情にかかわる一致した見解の確立の可能性をさぐった.最後に本論文は,これらの恩恵をもたらす仮説的メカニズムについて明らかにした.本論文の全体を通して,広範囲にわたるこの種の研究がもつ重要な問題を指摘し,それと同時に,今後実施すべき研究を示唆した.今後の研究としては,文化差ならびに介入研究が強調された.
著者
荘島 幸子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.265-278, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
46
被引用文献数
4 3

本研究では,約3年に及ぶ縦断的インタビューで得られた性同一性障害者1名の語りから,当事者であったAが医療における「成功物語」から離脱し,自らを「性同一性障害者」と語らなくなっていく変容プロセスを質的に検討した。分析の視点は,①治療へのモチベーション及び身体の捉え方の変化,②Aを取り巻く社会的関係の変化,③病いの意味づけの変化であった。結果では,それぞれ①身体違和感及び治療へのモチベーションの相対的低下,②Aを取り巻く社会的関係の拡大及び私的関係における摩擦と他者との折り合い,③他者との関係性の中で生きることの重視が明らかになった。考察では,Aが「GID当事者である」と語らなくなっていた過程を,「成功物語」と「私物語」の間に齟齬が生じる過程として捉え返し,それを悪魔物語の解体と物語の再組織化過程という観点から述べた。
著者
下司 忠大 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.12-22, 2017-07-01 (Released:2017-04-10)
参考文献数
29
被引用文献数
13

マキャベリアニズム,自己愛傾向,サイコパシー傾向の3特性は社会的に嫌われやすい特性であることから“Dark Triad”と総称される。海外では少数項目のDark Triad尺度としてDark Triad Dirty Dozen(DTDD)とShort Dark Triad(SD3)が作成されているが,DTDDは日本語版(DTDD-J)が作成されているものの,SD3は日本語版が作成されていない。本研究の目的は日本語版SD3(SD3-J)を作成し,その信頼性・妥当性を検討することであった。確認的因子分析の結果,SD3-Jは階層因子構造を有していることが示された。また,SD3-Jのα係数はおおむね十分な値を示した。SD3-Jと既存の尺度との単相関分析,偏相関分析の結果からSD3-Jの併存的・弁別的妥当性,増分妥当性が確認された。これによりSD3-Jが国内において使用に耐えうるDark Triad尺度であることが示された。
著者
岐部智 恵子 平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.29.1.3, (Released:2020-04-03)
参考文献数
8
被引用文献数
4

This study developed the Japanese version of the Highly Sensitive Child Scale for Childhood (HSCS-C) and tested its validity and reliability. Data were collected from 400 dyads of primary school children (third to sixth grades: Mage = 9.75 years, SD = 1.22; male = 48.5%) and their mothers (Mage = 41.00 years, SD = 5.05). Two factors were found: the first was the conjunction of Ease of Excitation and Low Sensory Threshold, and the second was Aesthetic Sensitivity. A bivariate correlation analysis indicated that children’s sensory processing sensitivity, measured with HSCS-C, was associated with self-reported empathy and mother-reported temperaments, with both forms being distinct. The internal consistency was found to be satisfactory.
著者
上地 雄一郎 宮下 一博
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.280-291, 2009-05-01 (Released:2009-07-04)
参考文献数
30
被引用文献数
1

過敏型自己愛人格と対人恐怖症者に共通の人格構造としての過大な理想自己が臨床家によって確認されている。Broucek (1991) や岡野 (1998) は過敏型自己愛人格を過大な理想自己と卑下された現実自己との乖離を反映する恥意識に悩む人とみなすが,それに対してKohut (1971) が言うには,彼らは高い理想自己をもつ人ではない。本研究の目的は,対人恐怖発現の要因の間の関係を明らかにし,Broucekおよび岡野の見解とKohutの見解を総合的に説明することであった。まず,自己愛的脆弱性尺度の短縮版を作成した。この尺度による調査を216名の学生に実施し,他の尺度との相関を通して妥当性を確認した。次に,この尺度と,自己不一致(理想自己–現実自己の不一致),自尊感情,対人恐怖傾向に関する質問紙による調査を,249名の学生に実施した。その結果,自己不一致とともに自己愛的脆弱性が直接的・間接的に対人恐怖傾向を強めることが示唆された。さらに,自己不一致と自己愛的脆弱性にも関連が見出された。
著者
前川 浩子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.129-142, 2005 (Released:2005-06-15)
参考文献数
38
被引用文献数
7 5 2

本研究は,青年期女子の体重・体型へのこだわりに影響を及ぼすと考えられる要因を検討することを目的として行われた.1005名の女子学生を対象に質問紙調査を実施し,食行動と態度,身体状況,親の養育行動,および,体型に関する指摘,やせに対する価値観,メディアの影響,家族のやせ志向,友人のやせ志向を測定した.従来の先行研究に基づき,養育行動や社会的要因から体重・体型へのこだわりを示す「やせ願望」や「体型不満」を説明するモデルを構成し,共分散構造分析による検討を行った.分析の結果,「体型に関する指摘」を経験することは「やせに対する価値観」と関連していることが明らかになった.また,「体型に関する指摘」は直接「体型不満」に影響を与えていた.「やせ願望」に対しては「やせに対する価値観」,「メディアの影響」,「友人のやせ志向」が説明力を持っていた.養育行動については,「父親の過干渉傾向」のみが「体型不満」と関連を持ち,「父親の過干渉傾向」の強さは「体型不満」を弱めるということが示された.
著者
西川 一二 奥上 紫緒里 雨宮 俊彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.167-169, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
10
被引用文献数
39

Grit is defined as perseverance and passion for long-term goals. In Western studies, grit was shown to be a character trait which contributes to future attainments and success. A Japanese translation of the Short Grit Scale (Grit-S: Duckworth & Quinn, 2009) was administered to 1,043 university students. The results of exploratory and confirmatory factor analyses demonstrated sufficient fitness and a two-factor structure which was basically the same as the original Grit-S. The two factors were named Perseverance and Consistency. Each sub-scale had sufficient internal consistency. Correlations with the Profile of Mood States (POMS), and measures of self-control and the Big Five personality factors attested to the basic validity of the Japanese Grit-S.
著者
後藤 崇志 石橋 優也
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.3.2, (Released:2020-02-03)
参考文献数
26
被引用文献数
1

これまでの研究において,親の持つ学習観が子の学業達成に果たす役割についてはあまり関心を向けられていなかった。本研究では,親の年収,学歴,学習観,子の学歴への期待,および子への関わり行動の関連を検討した。インターネット調査により,小・中学生の子どもを持つ親400名からデータを収集した。因子分析の結果,親の持つ学習観は,情報処理の深い・浅いの軸で多様なものであることが示された。さらに,パス解析の結果から,深い学習観は,子の学歴への期待と並んで,学歴の高さと効果的な関わり行動のとりやすさの関連を媒介していた。こうした学習観の違いが,学業達成の文化的再生産とどのように関わっているかを論じる。
著者
清水 健司 川邊 浩史 海塚 敏郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.350-362, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
39
被引用文献数
3 2 10

本研究は,青年期における対人恐怖心性–自己愛傾向2次元モデルにおける性格特性と精神的健康(心理的ストレス反応)の関連を検討することを目的としている。大学生595名を対象として対人恐怖心性–自己愛傾向2次元モデル尺度短縮版(以下,TSNS-S),心理的ストレス反応尺度,性格特性を測定する尺度であるFFPQ尺度の質問紙調査を施行した。分析1では,TSNS-Sにおける信頼性と妥当性を検討し,分析2では,対人恐怖心性と自己愛傾向の相互関係の観点から分類された5類型における性格特性と精神的健康の関連を検討した。その結果,分析1ではTSNS-Sにおけるα係数,再検査法の各信頼性係数が高い値を示し,FFPQとの相関分析の結果においても一定の構成概念妥当性を持つことが確認された。また,分析2では5類型の性格特性と精神的健康の関連性の検討から,各々の類型が持つ特徴の基礎的部分が明らかにされた。
著者
浅井 智久 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.56-65, 2007-09-20
被引用文献数
4

本研究の目的は,自己主体感の生起メカニズムを考察し,それに対する学習の効果を検討することであった。自己主体感とは,ある行為を自分自身でしている,という感覚のことである。フォワードモデルでは,自己主体感は「実際の結果」が「結果の予想」に合致するときに生起されるとしている。本研究では,キー押しをすると音が鳴る,という仕組みを用いた。その結果,「時間差知覚」と「自己主体感」は同じものではないことが示された。これはフォワードモデルを支持するものであった。また学習の結果,より高い自己主体感を報告するようになったが,時間差知覚には学習の効果はなかった。これは学習によって「実際の結果」ではなく,「結果の予想」が変わったために,その結果として自己主体感が変わったと示唆するものであった。本研究はフォワードモデルによる自己主体感の生起モデルの妥当性と,学習が自己主体感に影響をあたえることを示した。