著者
安保 恵理子 須賀 千奈 根建 金男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.155-166, 2012-03-30 (Released:2012-05-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

本論文における研究では,the Revision of Appearance Schemas Inventory(ASI-R; Cash, Melnyk, & Hrabosky, 2004)の日本語版(the Japanese Version of the ASI-R: JASI-R)を開発し,外見スキーマとボディチェッキング認知の各因子間における関連性を検討した。その結果,JASI-Rは,「自己評価の特徴」と「動機づけの特徴」の2因子から構成され,その信頼性と併存的妥当性は,許容範囲内であった。性差を検討した結果,女性は男性よりも,両因子において得点が有意に高いことが示された。外見スキーマの両因子とボディチェッキング認知の各因子の相関を検討した結果,有意な中程度から弱い相関が認められたことから,これらは比較的異なる概念であることが示された。
著者
中井 大介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.78-90, 2020-09-09 (Released:2020-09-09)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

本研究では,青年期の恋愛関係の形成・維持プロセスを,恋愛関係への動機づけと現在の恋人に対する信頼感および親密性との関連から検討した。大学生509名のうち,現在恋人がいると回答した185名を対象に質問紙調査を実施した。第一に,探索的因子分析の結果,恋愛関係への動機づけ尺度は「内的調整」「同一化」「取り入れ」「外的調整」の4因子,恋人に対する信頼感尺度は「役割遂行評価」「安心感」「不信」「付き合いづらさ」の4因子が抽出された。第二に,各変数の関連では男女とも「内的調整」が「安心感」を媒介し,「親密性」を高めていた。この結果から,親密性という自我発達にとっては,ただ恋愛関係を形成・維持すれば良いのではなく,恋愛関係への自律的動機づけや現在の恋人に対する安心感が重要であることが示唆された。また,各変数の関連の様相には性差が認められることも明らかになった。
著者
鈴木 公啓
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.99-101, 2023-10-04 (Released:2023-10-04)
参考文献数
9

This study aimed to examine the psychological processes that occur in the background of the tendency to prefer stylish masks under mask mandates by establishing a model that focuses on the expectation of psychological efficacy. A web-based survey of 447 adult women was conducted in February 2023. The analysis results showed that the cognition of psychological efficacy is associated with a preference for stylish masks. In addition, the desire for social approval related to the expectation of psychological efficacy. This process is similar to that of other types of personal adornment.
著者
下坂 剛 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.102-112, 2023-10-16 (Released:2023-10-16)
参考文献数
37

本研究の目的は,就学前の子どもの年齢で分けた3群(第1子が1歳,3歳,5歳)において,父親における妻へのサポートが育児関与を介して主観的幸福感を説明している程度を検討することである。600人の父親を対象にインターネット調査を実施した。3群における各尺度の測定不変性の検討が行われた。その上で,3群の多母集団同時分析により,「妻へのサポート」から「しつけ」と「家事」には有意なパスが示されたが,「しつけ」と「家事」から「主観的幸福感」には有意なパスは示されなかった。また,3歳児の子をもつ父親において他の2群に比べて,「妻へのサポート」から「心理的ケア」により強いパス,「心理的ケア」から「主観的幸福感」により強いパスがそれぞれ示された。子どもの発達に伴って,父親の育児関与の様相は変化し,3歳頃の子どもとの心理的ケアによる関わりが,父親自身の主観的幸福感を高めるという有益な知見が得られた。
著者
下司 忠大 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.119-127, 2019-11-01 (Released:2019-11-03)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

本研究の目的はDark Triad (マキャベリアニズム,自己愛傾向,サイコパシー傾向)と他者操作方略(寺島・小玉,2004)との関連を検討することであった。大学生210名がDark Triad尺度と他者操作方略尺度を含む質問紙に回答を行った。共分散構造分析の結果,マキャベリアニズムとサイコパシー傾向は自己優越的行動操作に加えて,自己卑下的行動操作や各感情操作に対して正の影響を示した。また,自己愛傾向は自己優越的感情操作のみに正の影響が示された。本研究の結果はDark Triad尺度の妥当性を示すとともに,Dark Triadが高い者は自己優越的行動操作だけでなく,自己卑下的行動操作や感情操作を用いる傾向にあることを示すものであった。
著者
大森 智恵
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.242-251, 2005 (Released:2005-06-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

本研究では,女子大学生の中の摂食障害傾向を持つ者にはどのような性格特性があるのかについてMMPIを用いて検討することを目的とした.その結果,摂食障害傾向を持つ者は11の臨床尺度で摂食障害傾向を持たない者よりも有意差に高い値を示した.各尺度に注目すると,摂食障害傾向を持つ者は自己統制がきかず衝動的に行動する傾向を示す第4尺度(精神病質的偏倚尺度)が高くならず,活動的で自己主張性を示す第5尺度(男子性・女子性尺度)が低くならなかった.これらのことから摂食障害傾向を持つ者は摂食障害者が示すとされる受動攻撃性はみられなかった.第4尺度が高くなかったことについては過食・嘔吐を抑制する可能性が,また受動攻撃性がみられなかったことについては気持ちや感情などを歪めずに表出できる可能性が考えられ,それらが摂食障害の発症を抑制している可能性が示唆された.
著者
小西 瑞穂 山田 尚登 佐藤 豪
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.29-38, 2008-09-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
29
被引用文献数
9 2

自己愛人格傾向がストレスに脆弱な素因であるかを検討するために,大学生174名(男性72名,女性102名)を対象として縦断的調査を行った。自己愛人格傾向の高い者は最近1ヶ月以内のストレッサー経験量が多いと精神的健康が低下するという仮説を立て,精神的健康のネガティブな側面をストレス反応,ポジティブな側面をハッピネスとして測定した。階層的重回帰分析の結果,自己愛人格傾向の高い者がストレスイベントを多く経験した場合,男性では抑うつ反応および自律神経系活動性亢進反応,女性では身体的疲労感が増加し,一方ストレスの少ない状況ではこれらのストレス反応が自己愛人格傾向の低い者や平均的な者に比べて最も少なかった。つまり,自己愛人格傾向には個人の精神的健康を部分的に支える働きがあるが,それはストレスの少ない状況に限定されたものであり,ストレスの多い状況ではストレス反応を生起しやすい,ストレスに脆弱な素因と考えられる。
著者
西尾 泰 飯島 雄大
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.52-64, 2022-07-06 (Released:2022-07-06)
参考文献数
35

制御適合理論に基づけば,完全主義の2側面はそれぞれ適した課題遂行方略を求められた場合に課題成績を向上させると考えられる。本研究では,速さが求められる状況(つまり,熱望方略が求められる状況)でのみ完全主義的努力は速さを向上させ,正確さが求められる状況(つまり,警戒方略が求められる状況)でのみ完全主義的懸念は正確さを向上させるという2つの仮説を検証した。62名の大学生が一定の時間,点つなぎ課題に取り組んだ。実験参加者は,熱望方略群か警戒方略群のいずれかに割り当てられた。重回帰分析により,完全主義的努力は熱望方略群でのみ課題遂行の速さを高めることが示された。しかし,完全主義の2側面はいずれも,どちらの群でも課題遂行の正確さに影響しなかった。仮説は部分的に支持され,完全主義的努力は,速さを求められる状況では,効率的に課題を遂行し課題成績を向上させるように作用することが示された。
著者
工藤 晋平
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.161-170, 2006 (Released:2006-03-31)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

成人愛着スタイルの1つであるおそれ型の攻撃性の高さについては,これまで一貫性のない報告がなされてきた.本研究は攻撃性の抑圧,特にその防衛的な側面の抑圧という観点から,この攻撃性のあり方を検討することを目的としている.P-Fスタディを用いて攻撃性を,日本語版RQを用いて愛着スタイルを測定し,大学生・大学院生の女性206名を対象に分析を行った.その結果,他の愛着スタイルと比べておそれ型には潜在的な水準での攻撃性の抑圧が存在し,特に攻撃性の自己防衛的な側面が抑圧されていることが示された.この結果から,これまで一貫性のなかった知見は,攻撃性の抑圧という同じ現象の異なる側面として捉えられることが示唆された.
著者
海沼 亮 長峯 聖人 湯 立 三和 秀平 浅山 慧 外山 美樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.15-17, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The present study aimed to examine the effects of basic psychological need support behavior from teachers on learning behavior with an emphasis on regulatory focus. Junior High School Students (N=341) completed the questionnaire. Hierarchical multiple regression analysis indicated that autonomy support behavior from teachers predicted behavior engagement and persistence in learning of the promotion focus. The results suggest that autonomy support behavior from teachers plays an important role in supporting learning behaviors for junior high school students with high promotion focus.
著者
長谷川 真里 堀内 由樹子 鈴木 佳苗 佐渡 真紀子 坂元 章
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.307-310, 2009-05-01 (Released:2009-07-04)
参考文献数
11
被引用文献数
3 6

A multidimensional scale for measuring empathy in elementary school children was developed and its reliability and validity investigated. Results indicated adequate internal consistency and temporal stability of the scale, suggesting it had good reliability. Correlations with Prosocial Behavior and Social Desirability Scales indicated sufficient validity of the scale. In addition, results of confirmatory factor analysis supported the Davis finding (1983) that empathy had four components. Development of empathy in elementary school children, as well as problems such as children's acquiescence set were also discussed.
著者
福森 崇貴 小川 俊樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.13-19, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
22
被引用文献数
4 2 6

本研究は,不快な情動をあらかじめ回避しようとする傾向(不快情動回避心性)が,現代の青年に特徴的とされる友人関係に対してどのように影響を及ぼすのかについて検討することを目的として行われた。具体的には,不快情動回避心性は,自己開示に伴う自己の傷つきの予測を媒介して表面的な友人関係へとつながるという因果モデルを想定し,その検証を行った。本研究では,大学生190名(男性61名,女性129名)を対象として,質問紙調査が実施された。構造方程式モデリングによるパス解析の結果,不快情動回避心性から「群れ」「気遣い」へは直接的な影響のみが認められ,また,不快情動回避心性から「ふれあい回避」については,傷つきの予測を媒介要因とする影響のみが認められた。このことから,直接的あるいは間接的に,不快情動の回避が青年期の表面的な友人関係のもち方へとつながっていくことが示唆された。
著者
安藤 玲子 坂元 章 鈴木 佳苗 小林 久美子 橿淵 めぐみ 木村 文香
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-33, 2004 (Released:2004-11-25)
参考文献数
19
被引用文献数
10 5 3

従来の研究は,ネット使用により新たな対人関係が構築されることを示してきたが,このネット上の対人関係が人生満足度や社会的効力感に影響が与える程度の質を有するかについて検討した研究は乏しい.そこで,本研究は男子学生173名を対象にパネル調査を行い,ネット使用がネット上の対人関係数を介して,人生満足度および社会的効力感に影響を及ぼすかを検討した.その結果,(1) 同期・非同期ツールの使用は,共にネット上での対人関係を拡大させる,(2) 同期ツールの使用は,ネット上の異性友人数を介して人生満足度を高める,(3) 同期ツールの使用はネット上の知人や同性友人数を介して,非同期ツールの使用はネット上の知人数を介して,社会的効力感を高めることが示された.また,(4) 同期ツールの使用は人生満足度と社会的効力感に対して負の直接効果を持っていた.
著者
中山 真 橋本 剛 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-75, 2017-07-01 (Released:2017-04-15)
参考文献数
57

本研究の目的は,恋愛関係崩壊後のストレス関連成長に影響を及ぼす個人差・状況要因として,愛着スタイルと崩壊形態の影響を検討することであった。参加者である大学生・短大生184名(男性86名,女性98名)は,過去5年以内の恋愛関係崩壊経験について想起し,成長感尺度,愛着スタイルの各尺度へ回答した。まず,崩壊形態については,片思いよりも交際していた関係の破局(離愛)で,拒絶者の立場については,拒絶者があいまいな場合よりも,相手に拒絶された場合に,それぞれ高い成長が見られた。愛着スタイルについては,関係性不安が低いほど高い成長が見られた。
著者
定廣 英典 望月 聡
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.84-97, 2011-11-30 (Released:2012-05-22)
参考文献数
23
被引用文献数
3

定廣・望月(2010)は日常生活で行われる演技は「目立つ演技」,「目立たない演技」,「自己や利益のための演技」の3パターンに分類されることを示している。本研究では,どのような特性が演技パターンに影響を与えているのかを検討することを目的とした。行動,動機,場面の観点から演技の頻度を測定する日常生活演技尺度を作成したところ,得点には性差が見られ,女性は「目立たない演技」得点が高かった。また賞賛獲得欲求は「目立つ演技」と,拒否回避欲求は「目立たない演技」と強い正の相関があることが示された。各欲求が低い場合,男性では「目立つ演技」の得点が大きく低下するのに対し,女性では低下の程度が緩やかな傾向があった。本研究の結果から,対人的な欲求の違いによって演技パターンが異なること,演技パターンの違いの背景に性役割観等の影響も考えられることが示唆された。
著者
松沢 正子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.47-60, 1996-03-31 (Released:2017-07-24)

The present study tested Hoffman's hypothesis (1975) that development of self-other consciousness was a prerequisite for development of empathic behavior. Thirty-nine children, 19 1-year and 20 2-year old, were observed at home. Their response to pain simulated by their mother was examined as empathic behavior. Children's developmental level of self-other consciousness was measured with three tasks: joint visual attention, picture showing, and mirror self-image recognition tasks. And their mothers answered a questionnaire to assess their general developmental level. Results showed that the empathic behavior was related to the developmental level of self-other consciousness in 1-year olds. In particular, prosocial behavior was accompanied by successful performance in picture showing task, which is an indication of the emergence of self-other differentiation. No relation was found between empathic behavior and general developmental level. The results therefore supported Hoffman's hypothesis.
著者
桂川 泰典 国里 愛彦 菅野 純 佐々木 和義
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.73-76, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
8

The present study developed a Japanese version of the Session Evaluation Questionnaire (J-SEQ), which was translated from the original version of the SEQ (Form 5), and examined its reliability and validity. The respondents were 103 counselors. Exploratory factor analysis (maximum likelihood estimation with varimax-rotation) and confirmatory factor analysis were used to examine the factorial structure of the J-SEQ. The results showed that the J-SEQ had substantial reliability (Cronbach's alpha) and factorial validity. The factorial structure, response tendencies, and the correlations of factors of the J-SEQ were consistent with the original SEQ (Form 5).