著者
国里 愛彦 山口 陽弘 鈴木 伸一
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.324-334, 2008-03-31
被引用文献数
3

現在盛んに研究がなされているパーソナリティモデルにCloningerの気質・性格モデルとBig Fiveモデルの2つのモデルがある。しかし,2つのモデル間の関連性についての研究は少ない。そこで,本研究は,気質・性格モデルとBig Fiveモデルとの関連を検討することを目的とした。大学生457名を対象にTemperament and Character lnventory(TCI)とBig Five尺度を実施した。その結果,TCIとBig Five尺度は強い関連を示し,気質・性格モデルはBig Fiveモデルの説明を行うことが可能であることが示唆された。また,外向性を除くBig Fiveモデルの各因子の説明には,気質だけでなく性格が必要であることが示唆された。最後に,気質・性格モデルの観点からBig Fiveモデルの各因子の特徴について論議された。
著者
松木 祐馬 下司 忠大
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.47-49, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
8

The purpose of this study is to develop the General Group Identification Tendency (GGIT) scale that measures individual tendency to identify with ingroups regardless of the type of group and examine its reliability and validity. Results of questionnaire surveys that were conducted with university students showed sufficient internal consistency and validity, which was estimated in terms of the relationship with contextualism, degree of identification with the university, collective self-esteem, and allocentric tendency. These results indicated that the GGIT scale is valid.
著者
上地 雄一郎 宮下 一博
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.80-91, 2005 (Released:2005-11-11)
参考文献数
47
被引用文献数
9 6

本研究の目的は,Kohutの自己心理学の視点から自己愛的脆弱性を測定する尺度を作成することであった.自己愛的脆弱性は,承認・賞賛への過敏さ,潜在的特権意識,自己顕示抑制,自己緩和不全,目的感の希薄さという5つの指標を通して測定できると想定した.用意された52項目を因子分析した結果,上記の指標に相当する因子が確認された.因子分析により選択された40項目が5つの下位尺度に分類され,これらの全体が自己愛的脆弱性尺度(Narcissistic Vulnerability Scale: NVS)と命名された.NVSで測定される自己愛的脆弱性は,過敏型の自己愛と正の相関を示した.NVSの全下位尺度において,高得点者は低得点者よりも高い不安やうつ傾向を示した.精神症状をもつ患者は,NVSの全下位尺度において健常者より高い得点を示した.
著者
若林 明雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.122-137, 1998

本論は, 1980年以降アメリカを中心に社会現象にまでなった`多重人格(現在は解離性同一性障害)'という現象について, その基底症状である解離という現象と併せて精神病理学的ならびに認知心理学的に再検討し, その症状の発現メカニズムについて考察することを目的とする.まず, 多重人格の基底症状である解離性障害(従来のヒステリー)について精神分析学的視点から病因論的に考察し, Freud以降心因論的に説明されていた解離症状が外傷性障害として再認識される傾向があることを指摘した.次に, パーソナリティ傾向と多重人格との関係について, 被催眠性-ヒステリー傾向の観点から両者の親和性を明らかにした.さらに, 多重人格を含む解離性障害の基本症状である健忘(記憶障害)について認知心理学的に検討し, 解離は心因性の記憶機能障害であり, 脳神経レベルの機能障害を伴うこと, そして多重人格は特殊な場合における記憶障害である可能性があることを示唆した.さらに, 解離および多重人格と記憶に関する神経生理学的研究から, 障害の基底に大脳辺縁系が関与していることを示した.以上の諸点を整理した結果, 多重人格症状は, 生得的な被催眠性の高さを準備状態とし, そこに自我形成期の前後にわたる重大な外傷的体験を被ることによって形成される個人内同一性間健忘という特殊な解離症状として説明できることを明らかにした.
著者
友野 隆成 橋本 宰
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.220-230, 2005-03-31
被引用文献数
4

本研究では, 改訂版対人場面におけるあいまいさへの非寛容尺度(Revised Interpersonal Intolerance of Ambiguity Scale; IIAS-R)を作成し, その信頼性および妥当性の検討を行った.研究1では, 自由記述調査の結果をもとに項目を作成し, 確認的因子分析により初対面の関係におけるあいまいさへの非寛容, 半見知りの関係におけるあいまいさへの非寛容, 友人関係におけるあいまいさへの非寛容の3つの下位尺度を構成した.また, 得点分布や記述統計量の確認を行った.そして, 内的整合性を検討し, ほぼ十分な信頼性(α=.65∿.77)を得ることができた.研究2では, IIAS-Rの各下位尺度と対人不安尺度, 独断主義尺度との相関を検討し, ある程度の構成概念妥当性(r=.22∿.52)を確認することができた.研究3では, IIAS-Rの3ヶ月間の再検査信頼性を検討し, ほぼ十分な安定性(r=.66∿.73)を確認することができた.以上より, IIAS-Rは信頼性および妥当性を兼ね備えた尺度であることが示唆された.
著者
速水 敏彦 小平 英志
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.171-180, 2006-01-31
被引用文献数
1 7

これまで,他者軽視に基づく仮想的有能感に関して,感情経験との関連を中心とした検討が行われてきた(速水ほか,2003).本研究では,低い自尊感情を補償しようと,他者軽視を行う典型的なタイプを抽出するために有能感の類型論的アプローチを用い,学習観と学習に対する動機づけとの関連を検討した.高校生395名に対して他者軽視,自尊感情,学習観(学習量,環境,方略志向),および自己決定理論に基づく動機づけ(外的,取り入れ的,同一化的,内発的動機づけ)の尺度が実施された.相関関係からは,他者軽視に基づく仮想的有能感は学習量志向と負の関連にあることが示された.また各類型の特徴を整理した結果,仮想型では,自尊型と比べて,外的動機づけおよび取り入れ的動機づけが高く,同一化的動機づけと内発的動機づけが低い傾向にあった.萎縮型では,いずれの動機づけも低い傾向にあった.
著者
河野 和明 羽成 隆司 伊藤 君男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.95-101, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

恋愛対象者に対する接触回避がどのように生じているかを分析した。大学生334名(男性126名,女性208名)が質問紙調査に参加した。調査では,恋愛対象者,同性友人,異性友人各1名を想起させ,8つの身体接触場面において,各人物との接触をどの程度回避したいかについて尋ねた。男女とも恋愛対象者に対しては,異性友人に比べて接触回避の程度を下げたが,この傾向は女性で顕著であった。女性は,異性友人に対して接触回避を高く保っているが,恋愛対象者に対しては大幅に回避を下げると考えられた。しかし,たとえ恋愛対象者であっても,恋愛対象者への接触回避は,同性友人への接触回避よりも低くならなかった。一方,男性は,同性友人,異性友人よりも,恋愛対象者への接触回避は低かった。接触回避が性的防衛の機能をもつ可能性が考察された。
著者
木戸 彩恵 やまだ ようこ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.244-253, 2013-03-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究では,ナラティヴ・アプローチを用いて化粧をする行為者にとっての場所性と化粧行為の対話性について検討する試みを行った。4名の美容職従事者(23~61歳)を対象に,複数回のライフ・ストーリー・インタビューを行い,各々の場所性と化粧行為の連関をモデル化した。第一段階では,調査協力者の語りから,宛先となる場所と化粧プロセスの相違をモデル化し,次に,宛先となる場所を人生の年輪モデル(やまだ・山田,2009)を用いてモデル化した。結果として,1)化粧行為のプロセスと宛先となる場所のあり方は他者との複合的な関係において多重に構成されること,2)化粧行為の意味は個別の経験に基づき組織化され、行為者のあり方とともに変容していくことを明らかにした。これらの結果から,化粧行為の重要な役割は行為者のあり方に変容をもたらすことであるという新たな化粧研究への示唆が得られた。
著者
太幡 直也 佐藤 広英
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.235-245, 2019-03-01 (Released:2019-03-12)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究では,Twitter上での他者情報公開を規定する心理的要因を検討した。Twitterを利用する高校生,大学生を対象に,web調査にて,Twitter上での最近1か月の友人,知人に関する他者情報公開や,プライバシー意識などの心理的要因に関する尺度に回答するように求めた。その結果,自己のプライバシーを意識せず,プライバシーを維持する行動をとりにくい者ほど,他者情報公開数が多かった。加えて,人気希求,犯罪被害リスク認知が高い者ほど,他者情報公開数が多かった。一方,他者のプライバシーの意識しやすさ,他者のプライバシーを維持する行動のとりやすさは,他者情報公開数とはほとんど関連はみられなかった。上記の結果は,高校生,大学生ともにみられた。
著者
嘉瀬 貴祥 上野 雄己 下司 忠大
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.3.10, (Released:2019-01-25)
参考文献数
14

This study aimed to investigate the relationships of the antisocial personality traits called the Dark Triad, which includes Machiavellianism, narcissism, and psychopathy, with life skills including the ability to adapt to society (i.e., decision-making, interpersonal relationships, effective communication, and coping with emotions). A total of 272 university students completed the Japanese version of the Short Dark Triad and Life Skills Scale for Adolescents and Adults. Multivariate multiple regression analysis showed that Machiavellianism, narcissism, and psychopathy related to life skills in different ways. These results support the findings of previous studies suggesting the link between the Dark Triad and social adjustment.
著者
田中 圭介 神村 栄一 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.108-116, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
36
被引用文献数
4

近年,マインドフルネス・トレーニング(MT)は,全般性不安障害や心配への介入法として注目されている。MTは,マインドフルネス傾向や脱中心化,注意の制御を媒介して,不安や抑うつに作用することが示唆されている。しかし,これらの媒介変数が,心配に作用する過程については,いまだ検討されていない。本研究では大学生を対象に質問紙調査(N=376)を行い,心配に対する注意の制御,マインドフルネス傾向,脱中心化の影響について検討を行った。共分散構造分析の結果,注意の制御を外生変数とした場合に最もモデル適合度が高いことが示された。さらに,注意の制御は,マインドフルネス傾向と脱中心化を媒介して,心配の緩和に繫がることが明らかとなった。これらの結果から,MTが心配に作用する際には,注意の制御の増加が体験との関わり方(マインドフルネス傾向,脱中心化)を改善し,心配を低減させる作用プロセスが想定される。
著者
亀倉 大地 安保 英勇
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.3.4, (Released:2018-11-22)
参考文献数
35

自己愛傾向と恥・屈辱感の関連が理論的に指摘されているが,我が国における検討は少ないのが現状である。本研究では大学生および大学院生199名が病理的自己愛傾向,屈辱感・恥,ストレス反応の項目から構成される質問紙に回答した。共分散構造分析を用いて,二種類の自己愛傾向が恥・屈辱感を媒介してストレス反応に及ぼす影響を検討した。その結果,一対一の場面でネガティブな評価を受けた場合,過敏型自己愛傾向は恥および屈辱感を媒介してストレス反応に正の影響を及ぼすことが示された。
著者
古賀 佳樹 川島 大輔
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.2.10, (Released:2018-09-27)
参考文献数
8
被引用文献数
6

The aim of this study was to develop a Japanese version of the Game Addiction Scale (GAS7-J) and investigate its validity and reliability. The GAS7-J was translated using back translation. In the study, 352 Japanese adolescents responded to a questionnaire which included the GAS7-J. Factor analysis revealed a factor structure similar to the original scale, with higher internal consistency. Additionally, the GAS7-J correlated with both time spent on games and loneliness to a similar degree as in a previous study. In conclusion, the GAS7-J has an acceptable level of validity and reliability.
著者
酒井 恵子 西岡 美和 向山 泰代 小松 孝至
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.163-166, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
3
被引用文献数
1

The Gitaigo Personality Scale (GPS; Komatsu et al., 2012) consists of 60 mimetic words comprising six subscales, and is used for measuring self and others' personality. In this study we developed a short form of the GPS, the GPSsf which consists of 30 words, by selecting the five words that exhibited the highest loadings for each of the GPS six factors. A factor analysis showed that the GPSsf consisted of six factors consistent with the six subscales of the GPS. The GPSsf had relatively high test-retest reliability, internal consistency, and sufficient validity. Because of the reduced number of items, the GPSsf is now more accessible for use in assessment situations.
著者
長谷川 晃 服部 陽介 西村 春輝 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.162-165, 2016-11-01 (Released:2016-09-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The characteristics of social problem solving and rumination in formerly depressed people were investigated. Based on the results of a self-report measure, the participants were divided into a formerly depressed group that had experienced an episode that met the criteria for major depression (n=14), and a never-depressed group (n=92). The formerly depressed group had higher scores on the Rational Problem-Solving subscale of the Social Problem-Solving Inventory-Revised Short Version and the Brooding and Reflective Pondering subscales of the Ruminative Responses Scale, after controlling for gender and the current depression level. It is possible that these factors increase the vulnerability to depression.
著者
上村 晃弘 サトウ タツヤ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-47, 2006-08-30
被引用文献数
2

血液型性格関連説は日本で人気のある疑似性格理論の1つで,1920年代の古川竹二の仮説に由来する。現在では多くの提唱者がこの仮説を様々に解釈している。したがってこの説には多様性がある。本研究では,最近の「血液型ブーム」においてTV放送された説を伝統的説明,生物学的媒介,枠組利用,剰余特性付加の4つの型に分類した。伝統的説明型は古川の仮説の後継である。生物学的媒介型は,血液型と性格の関係を進化論や脳科学などの新しい学術的知識を用いて説明する。枠組利用型は単に占いに用いている。剰余特性付加型は提唱者の専門分野で見出された特性を追加した程度である。すべての提唱者の説は論理的妥当性をもたない。
著者
吉江 路子 繁桝 算男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.335-346, 2007-03-31
被引用文献数
5

本研究は,ピアノサークルに所属する大学生,大学院生77名を対象に,対人不安傾向と完全主義認知が演奏状態不安に与える影響を検討した。演奏状態不安の指標としてState-Trait Anxiety Inventory (Spielberger, Gorsuch, & Lushene, 1970)を用い,本番の演奏前後の状態不安を測定した。さらに,演奏状態不安の要因の指標として,演奏前に完全主義認知,演奏後に聴衆不安と相互作用不安,自己志向的完全主義を測定した。その結果,対人不安傾向のうち"聴衆不安",完全主義認知のうち"ミスへのとらわれ"のみが演奏前状態不安と正の相関をもった。また,これら2変数には交互作用が見られ,"ミスへのとらわれ"高群においてのみ,聴衆不安傾向が演奏前状態不安を有意に予測していた。これらの結果より,演奏者のパフォーマンスを高めるための実践的示唆が得られた。