著者
佐藤 広英
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.127-129, 2021-12-17 (Released:2021-12-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

In recent years, with the widespread use of smartphones, many people have begun to take selfies and embellish them to be more attractive using smartphone applications. The present study examined the effects of embellishment of facial selfies on self-esteem and positive mood. Sixty-two university students participated in the experiment and were assigned to one of two conditions (embellishing condition or control condition). The participants took facial selfies, embellished them, and then measured their self-esteem and positive mood. The results showed that self-esteem increased more in the embellishing condition than in the control condition. The positive mood was slightly higher in the embellishing condition than in the control condition only for the group with high facial self-evaluation.
著者
平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.94-106, 2010-11-20 (Released:2011-02-15)
参考文献数
37
被引用文献数
46 59

レジリエンスは誰もが身につけられる精神的回復力であると言われているが,レジリエンスを導く多様な要因の中には後天的に身につけやすいものと,そうでないものがあると考えられる。本研究では,それらの資質的・獲得的な要因を分けて捉えるために,Cloningerの気質–性格理論(TCI)を用いて二次元レジリエンス要因尺度(BRS)を作成することを目的とした。大学生ら246名を対象に調査を行い,TCIとの関連性から選出された項目の探索的因子分析により,資質的レジリエンス要因として「楽観性」「統御力」「社交性」「行動力」,獲得的レジリエンス要因として「問題解決志向」「自己理解」「他者心理の理解」の7因子が見出された。さらに759名へ調査を行い,確認的高次因子分析および既存尺度との関連から,BRSの二次元構造と妥当性が確認された。また,TCIの気質・性格との関連性から,下位尺度の基準関連妥当性が確認された。
著者
若林 明雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.122-137, 1998-03-31 (Released:2017-07-24)

本論は, 1980年以降アメリカを中心に社会現象にまでなった`多重人格(現在は解離性同一性障害)'という現象について, その基底症状である解離という現象と併せて精神病理学的ならびに認知心理学的に再検討し, その症状の発現メカニズムについて考察することを目的とする.まず, 多重人格の基底症状である解離性障害(従来のヒステリー)について精神分析学的視点から病因論的に考察し, Freud以降心因論的に説明されていた解離症状が外傷性障害として再認識される傾向があることを指摘した.次に, パーソナリティ傾向と多重人格との関係について, 被催眠性-ヒステリー傾向の観点から両者の親和性を明らかにした.さらに, 多重人格を含む解離性障害の基本症状である健忘(記憶障害)について認知心理学的に検討し, 解離は心因性の記憶機能障害であり, 脳神経レベルの機能障害を伴うこと, そして多重人格は特殊な場合における記憶障害である可能性があることを示唆した.さらに, 解離および多重人格と記憶に関する神経生理学的研究から, 障害の基底に大脳辺縁系が関与していることを示した.以上の諸点を整理した結果, 多重人格症状は, 生得的な被催眠性の高さを準備状態とし, そこに自我形成期の前後にわたる重大な外傷的体験を被ることによって形成される個人内同一性間健忘という特殊な解離症状として説明できることを明らかにした.
著者
佐藤 徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.50-59, 2008-09-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
34
被引用文献数
3 3

反社会性人格障害(ASPD)は,違法行為の反復,人をだます傾向,衝動性,無責任性,良心の呵責の欠如によって特徴づけられる。本研究は,2つの行動選択課題を用いて,ASPD傾向者が高い衝動性を示すかを検討した。遅延価値割引課題では,参加者は,即時小報酬と遅延大報酬の間で選択を行う。衝動性は即時小報酬への選好と定義される。他方,確率価値割引課題では確実な小報酬と不確実な大報酬との間で選択を行う。衝動性は不確実な大報酬への選好と定義される。16名のASPD傾向者と19名の健常者が両課題を行った結果,まず,遅延価値割引課題ではASPD傾向者は健常者より急激に遅延報酬の価値を割り引くことが示された。確率価値割引課題では両群の差はなかった。遅延価値割引は,「反社会的行為の反復」ならびに「性的関係における無責任性・搾取性」と有意に関連していた。本結果から,長期的な結果の価値を切り下げることがいくつかのASPD症状の根底にあることが示唆された。
著者
上出 寛子 高嶋 和毅 新井 健生
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.218-225, 2016-03-01 (Released:2017-01-07)
参考文献数
26
被引用文献数
13

本研究の目的は,ロボットに対する擬人化に注目し,擬人化の程度を定量化する日本語版の尺度を作成することである。従来,欧米の研究で用いられている擬人化の程度を測定する二種類の尺度を翻訳して用いた。一つ目は心の帰属を行為の主体性/感覚の経験性の二次元で評価するものであり,もう一つは人間の本質を人間の独自性/人間の本質性の二次元で評価する尺度である。1200人の日本人が,6種類のロボットと2人の人間の写真刺激に対しこれらの尺度で擬人化の程度を評価した。その結果,日本においては,欧米での先行研究と同様の因子が明らかとなると同時に,それらの因子がポジティブな内容の因子とネガティブな内容の因子に分かれることが明らかとなった。日本においては,ロボットの人間らしさについて,ポジティブな側面とネガティブな側面を分けて考える傾向があることが示唆された。尺度の内定信頼性は十分に高いことから,今後の尺度の利用可能性について議論した。
著者
齋藤 路子 沢崎 達夫 今野 裕之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.60-71, 2008-09-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
29
被引用文献数
5 2

本研究では,自己志向的完全主義(完全欲求,高目標設定,失敗過敏,行動疑念)と攻撃性(身体的攻撃,短気,敵意,言語的攻撃)および自己への攻撃性(自己への身体的攻撃傾向,自己への敵意)の関連を検討するために,大学生444名に対して,質問紙調査を行った。その結果,高目標設定は言語的攻撃と,失敗過敏は短気,敵意,自己への身体的攻撃傾向,自己への敵意と,行動疑念は敵意,自己への敵意と,それぞれ有意な相関があった。さらに,自己志向的完全主義が攻撃性,自己への攻撃性に至るプロセスに関するモデルを構成し,共分散構造分析による検討をしたところ,(a)不適応的完全主義が強いほど,認知・情動的攻撃性が強まり,認知・情動的攻撃性が強いほど,自己への敵意が強まること,(b)不適応的完全主義が強いほど,ネガティブな反すうが強まり,ネガティブな反すうが強まるほど抑うつが強まり,抑うつが強まるほど,認知・情動的攻撃性,自己への攻撃性に影響を与えることが示唆された。最後に,自己志向的完全主義が攻撃性および自己への攻撃性に至る認知プロセスについて議論した。
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-24, 2010-08-31 (Released:2010-08-18)
参考文献数
46
被引用文献数
3 4 3

自己注目には適応的な「省察」と不適応的な「反芻」があることが知られている。Papageorgiou & Wells (2001a) は,反芻の原因として,「反芻に対する肯定的信念」という概念を提案し,自己注目は問題解決のために有効な手段であるという信念が反芻を促進するとした。本研究では,この信念を測定する尺度Positive Beliefs about Rumination Scaleの日本語版を作成し,信頼性と妥当性を確認した(研究1)。さらに,この肯定的信念と抑うつ,反芻,そして省察との関連を検討した(研究2)。大学生を対象とした質問紙調査の結果,肯定的信念は反芻,省察の双方と正の関連がみられたが,反芻は抑うつと正の関連が,省察は抑うつと負の関連がみられた。自己注目を行う背景として肯定的信念が存在しているが,抑うつに陥るのは反芻を行った場合だけであり,省察を行った場合には適応的に働くことが示唆された。
著者
星 かおり
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.123-134, 2016-11-01 (Released:2016-09-13)
参考文献数
43
被引用文献数
1

本研究の目的は,若年フルタイム就労者の仕事満足に対するプロアクティブ行動の7つの方略の効果を検討することであった。質問紙調査を行い,学卒後5年以内のフルタイム就労者168名を分析対象とした。重回帰分析の結果,仕事満足に対して,プロアクティブ行動の7つの下位尺度のうちポジティブフレームのみが有意な効果を示した。若年フルタイム就労者は,他者や環境への働きかけを行うより,自己焦点型の方略であるポジティブフレームを選択しており,与えられた状況をポジティブに捉えることが仕事の満足感に影響を与えることが示唆された。しかし,プロアクティブ行動は先を見越した行動であることから,一時点のプロアクティブ行動についての効果については,ある程度の期間が経過してから効果を測定し検討することが今後は必要であろう。
著者
三田村 仰 横田 正夫
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.55-57, 2006

This study examined the relationship of assertive behavior and taijin-kyofu, which is a social phobic tendency. Three hundred sixty six (366) undergraduates answered a questionnaire that included Rathus assertiveness schedule and scales of taijin-kyofu and praise seeking and rejection avoidance needs. Results of path analysis were consistent with the model that taijin-kyofu was strongly associated with less frequent assertive behavior, and that rejection avoidance was weakly associated with it. On the other hand, praise seeking was associated with more assertive behavior. Clinical implications of the results were discussed.
著者
藤野 正寛 梶村 昇吾 野村 理朗
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.61-76, 2015-07-31 (Released:2015-08-07)
参考文献数
55
被引用文献数
6 32

Mindful Attention Awareness Scaleは,気づきと注意の程度に注目して開発された,マインドフルネスを測定する尺度である。本研究では,この日本語版MAASを開発し,18歳から84歳の377名の日本人を対象として信頼性と妥当性を検討した。探索的因子分析で,原版と同様に1因子構造で内的整合性が高いことが確認された。また,気づきと注意について検討するために用いた開放性尺度・反芻尺度・アクションスリップ尺度や,Well-Beingに関連する複数の尺度との相関分析で,原版と同様の傾向が確認された。さらに,従来から指摘されていたマインドフルネスの非常に低い群で測定精度が低下するという問題点に関して,項目反応理論を用いた分析を実施した結果,測定精度が低下していないことが確認された。以上より,本研究で作成された日本語版MAASは,原版と同様の特質を測定しているとともに,マインドフルネスに関するWell-Beingの関連性検討や介入効果検討に資する尺度となると考えられる。
著者
麻生 奈央子 坂元 章 沼崎 誠
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.156-170, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
25

本研究は,ロマンティック幻想(romantic fantasy:RF)の潜在測度と顕在測度の乖離について検討した。大学の女子学部学生65名(研究1)と73名(研究2)が参加し,IATで潜在RF(恋人と王子様の連合),質問紙で顕在RF(自分の恋人と王子様の連合)と理想RF(理想の恋人と王子様の連合)を測定した。その結果,(a)潜在RFは,顕在RFと有意に相関せず,理想RFと有意に正相関した。(b)潜在RFと理想RFは間接的勢力志向と有意に正相関する一方,顕在RFはそれに負相関した。(c)顕在RFは社会的望ましさと相関しなかった。これらのことから,(a)潜在RFにおいて評価されている対象は,実在する自分の恋人よりも,理想の恋人に近いこと,(b)RFの潜在・顕在測度の乖離は,顕在測度の妥当性の問題よりも,測定概念の相違に起因することなどが示唆された。
著者
赤松 大輔 中谷 素之 小泉 隆平
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.171-174, 2018-11-01 (Released:2018-11-08)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

The purpose of this study was to examine the reciprocal causal relationships between beliefs about learning and learning strategies, which, although suggested by previous research, have been lacking sufficient empirical evidence. Undergraduates (N=105) completed self-reported questionnaires to indicate beliefs about learning including strategy orientation, and learning strategy use consisted of meta-cognitive strategy, deep-processing strategy, and autonomous help-seeking. Cross-lagged structural equation analyses revealed cross-lagged effects between strategy orientation and learning strategies. Results suggest that beliefs about learning and learning strategy use have reciprocal causal relationships.
著者
向井 秀文 高岸 幸弘 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.263-272, 2018-03-01 (Released:2018-03-06)
参考文献数
36
被引用文献数
2

近年,様々な心理的症状を説明する診断横断的なプロセスとして,反復思考の存在が明らかにされている。これまでの研究において,反復思考はメタ認知的信念によって形成されることが報告されている。しかし,考え続ける義務感といった,不安に対する予測力が強いメタ認知的信念との関連は検討されていない。したがって,本研究では,考え続ける義務感と様々な心理的症状の関連に対する反復思考の媒介効果について検討することを目的とした。分析の結果,考え続ける義務感と様々な心理的症状の関連は,反復思考に部分媒介されることが示された。さらに,様々な心理的症状に対する考え続ける義務感と反復思考の予測力は強いことも示された。これらの結果から,考え続ける義務感は,反復思考や様々な心理的症状を予測するメタ認知的信念であることが示唆された。したがって,考え続ける義務感の低減をターゲットとした介入が有効であることも示唆された。
著者
梅本 貴豊 田中 健史朗
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.138-151, 2012-11-30 (Released:2013-02-11)
参考文献数
30
被引用文献数
11 7

本研究では大学生における動機づけ調整方略尺度を作成し,その尺度の構成概念妥当性と,動機づけ調整方略が学習の持続性と学習の取り組みに与える影響について検討した。まず大学生156名に自由記述の質問紙調査を実施し,動機づけ調整方略尺度を作成した。次に大学生272名に動機づけ調整方略尺度,CAMI (Control, Agency, and Means-Ends Interview),持続性の欠如,学習の取り組みからなる質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果,7つの動機づけ調整方略が明らかにされ,またCAMIとの関連を通してその尺度の一定の構成概念妥当性が確認された。そして重回帰分析を用いて,自律的調整方略,協同方略,成績重視方略が学習の持続性と学習の取り組みに与える影響について検討したところ,自律的調整方略が促進的な影響を,協同方略と成績重視方略が抑制的な影響を示した。これらの結果から,大学生における動機づけ調整方略について議論を行った。
著者
山本 晃輔 猪股 健太郎 須佐見 憲史 綾部 早穂
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.10, (Released:2018-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

We developed the Japanese version of the Vividness of Odor Imagery Questionnaire (VOIQ). Responding to a survey, 556 participants completed the VOIQ and the Japanese version of the Vividness of Visual Imagery Questionnaire (VVIQ). Factor analysis verified the one-factor structure and demonstrated it to be sufficiently reliable (Cronbach's α=.80). The validity of the questionnaire was also confirmed by middle correlations of the total score between VVIQ and VOIQ. The results indicated the validity and reliability of the questionnaire.
著者
神野 雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.26.2.11, (Released:2017-08-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究の目的は恋愛関係での葛藤時に予測される行動を測定する架空の浮気場面への予測行動尺度Anticipated Behavior Scale for Imaginary Infidelity (ABSII)の作成とその信頼性・妥当性の検討であった。ABSIIの浮気場面として恋人と第三者のデート場面を設定し,現在恋愛関係にある大学生112名に質問紙調査を行った。探索的・確認的因子分析の結果,想定通りABSIIは「攻撃志向」「沈黙志向」「別れ志向」「対話志向」「ライバル志向」の5因子構造を示した。ストレッサーへの認知的評価,ストレス反応,嫉妬深さ,投資モデルとの関連から妥当性を検討すると葛藤状況を重要視する傾向と「攻撃志向」「対話志向」の正の関連,「沈黙志向」の負の関連,ストレス反応と「攻撃志向」「別れ志向」の正の関連,全般的な嫉妬深さと「攻撃志向」「ライバル志向」の正の関連,関係満足感と「対話志向」の正の関連,「別れ志向」との負の関連などが示され,尺度の構成概念的妥当性がおおむね確認された。
著者
加藤 司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.183-190, 2016-03-01 (Released:2017-01-07)
参考文献数
18
被引用文献数
1