著者
飯塚 哲 高橋 好徳 畠山 力三 佐藤 徳芳
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では空気のオゾナイザー放電により生成されたオゾン処理空気を水槽に流し、実際に金魚を飼育して、その成長に及ぼす効果について明らかにした。実験では、(1)オゾン生成部、(2)処理空気の輸送部、(3)水中での成分測定、及び(4)金魚の成長を観察した。(1)ではオゾナオザー放電の発光スペクトルを測定した結果、300〜400nmの紫外線が強く発光し、原子状酸素の存在が確認された。オゾンの紫外線吸収帯(254nm)以下の紫外線の発光は微量であった。(2)オゾナイザーを通過した空気の成分を調べるために気体の吸光度を測定した結果、254nmを中心に半値幅が約20nmの吸収帯が観測された。これはオゾンによるものであり、その他の窒素酸化物などによる吸収はほとんど観測されなかった。(3)この処理空気を蒸留水に瀑気して水の吸光度を測定した。その結果、波長が230nm以下の領域での吸光度が、瀑気日数と共に上昇していくことが分かった。通常の空気瀑気ではほとんど吸光度の変化は見られなかった。これは重要な知見である。さらに、オゾンと水との反応による過酸化水素の検出をしたところ、オゾン瀑気水に0.013ppm程度のわずかな量が見られた。過酸化水素水中で金魚の飼育を試みたが顕著な成長は見られず、過酸化水素の生体活性度はなかった。また、各種の水中負イオンの分析を行った。金魚を入れたオゾン処理水の硝酸負イオン濃度は空気瀑気水の17%であり、顕著な差異が認められた。水中オゾン濃度は検出限界以下であった。(4)オゾン処理水中の金魚は活発に運動し、餌をよく食べ、成長は空気瀑気通常水の体長で約2倍、体重で約4倍の差が見られた。以上の測定結果から、空気酸素の放電による生成オゾンが水と反応し、イオン濃度等を変化させ、金魚の成長と関連していることが確認された。
著者
佐藤 徳
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-40, 2011 (Released:2011-09-07)
参考文献数
25

The sense of agency is the sense that one is causing an action. The predictive account of the sense of agency proposes that sensory prediction based on efferent information plays a critical role in generating the sense of agency. Alternatively, the inferential account of the sense of agency proposes that we experience the sense of agency when we infer that one's own thoughts are the cause of an action. According to this account, the inference occurs when a thought appears in consciousness prior to an action, is consistent with the action, and is not accompanied by conspicuous other causes of the action. Recent study showed that both of these factors did contribute to the sense of agency. In this paper, multi-layered model of sense of agency was presented. Within this framework, the basic level consists in sensori-motor processes, while the higher level comprises conceptual process. At the basic level, the non-conceptual feeling of agency is produced by sensori-motor integration process of efferent with afferent information. In case of incongruence between these indicators, the pre-conceptual feeling of agency is further processed by inference mechanism to form an attribution of agency (judgment of agency). This paper proposes that what is self-specific is not judgment of agency but rather non-conceptual feeling of agency. That is, the intertwining of action and its sensory consequence in the world makes self so special.
著者
佐藤 徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.50-59, 2008-09-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
34
被引用文献数
3 3

反社会性人格障害(ASPD)は,違法行為の反復,人をだます傾向,衝動性,無責任性,良心の呵責の欠如によって特徴づけられる。本研究は,2つの行動選択課題を用いて,ASPD傾向者が高い衝動性を示すかを検討した。遅延価値割引課題では,参加者は,即時小報酬と遅延大報酬の間で選択を行う。衝動性は即時小報酬への選好と定義される。他方,確率価値割引課題では確実な小報酬と不確実な大報酬との間で選択を行う。衝動性は不確実な大報酬への選好と定義される。16名のASPD傾向者と19名の健常者が両課題を行った結果,まず,遅延価値割引課題ではASPD傾向者は健常者より急激に遅延報酬の価値を割り引くことが示された。確率価値割引課題では両群の差はなかった。遅延価値割引は,「反社会的行為の反復」ならびに「性的関係における無責任性・搾取性」と有意に関連していた。本結果から,長期的な結果の価値を切り下げることがいくつかのASPD症状の根底にあることが示唆された。
著者
佐藤 徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.416-425, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

つい最近のことのはずなのに遠い昔のことに感じられたり,自分に起こった出来事なのに自分の体験ではないように感じられることがある。本研究は,何がこのような感覚に影響を及ぼしているのかを検討した。その結果,実際には同じ頃の出来事を想起しているにもかかわらず,自尊心が高い者はネガティブな出来事を遠く,自尊心が低い者はポジティブな出来事を遠く感じることが明らかとなった。また,現在の自己概念と一致しない出来事はより遠く感じられていた。出来事の自己所属感も同様であり,同じく自分に起こった出来事を想起しているにもかかわらず,現在の自己評価と異なる出来事は自分の体験ではないように感じられること,現在の自己概念と一致しない出来事も同様に自分の体験ではないように感じられることが明らかとなった。以上より,想起された出来事の時間的距離判断ならびに所属判断が自己概念や自己評価の影響を受けることが示唆された。
著者
佐藤 徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.50-59, 2008
被引用文献数
3 1

反社会性人格障害(ASPD)は,違法行為の反復,人をだます傾向,衝動性,無責任性,良心の呵責の欠如によって特徴づけられる。本研究は,2つの行動選択課題を用いて,ASPD傾向者が高い衝動性を示すかを検討した。遅延価値割引課題では,参加者は,即時小報酬と遅延大報酬の間で選択を行う。衝動性は即時小報酬への選好と定義される。他方,確率価値割引課題では確実な小報酬と不確実な大報酬との間で選択を行う。衝動性は不確実な大報酬への選好と定義される。16名のASPD傾向者と19名の健常者が両課題を行った結果,まず,遅延価値割引課題ではASPD傾向者は健常者より急激に遅延報酬の価値を割り引くことが示された。確率価値割引課題では両群の差はなかった。遅延価値割引は,「反社会的行為の反復」ならびに「性的関係における無責任性・搾取性」と有意に関連していた。本結果から,長期的な結果の価値を切り下げることがいくつかのASPD症状の根底にあることが示唆された。
著者
佐藤徳助 著
出版者
佐藤徳助
巻号頁・発行日
1902
著者
佐藤 徳 安田 朝子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.138-139, 2001-03-30
被引用文献数
6
著者
安田 朝子 佐藤 徳
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.234-242, 2002-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
17
被引用文献数
14 10

The purpose of present studies was to create brief self-report scales to assess individual differences in the sensitivity of two neurological self-regulatory systems; one is the behavioral inhibition system (BIS) which bears on aversive motivation, and the other is the behavioral approach system (BAS) which bears on appetitive motivation. Scale development was reported in study 1, and convergent and discriminant validation using alternative measures of similar constructs was reported in study 2. In study 3, positive and negative affect was manipulated in a controlled setting. Results were consistent with the hypothesis that participants with higher BIS sensitivity would show heightened emotional reactivity to negative mood induction, whereas higher BAS sensitivity would show heightened reactivity to positive mood induction. Furthermore, results indicated that higher BAS sensitivity not only inhibited negative affect in response to negative mood induction but also facilitated recovery from negative mood states. These results suggested that abnormal sensitivity of either system may be a vulnerability factor of psychopathology, when specific situational cues are present.
著者
佐藤 徳 安田 朝子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.138-139, 2001-03-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
30 109
著者
本田 佳子 上月 正博 村勢 敏郎 佐藤 徳太郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.355-361, 2004-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
19
被引用文献数
2

糖尿病管理の問題点を明らかにすることを目的に, 糖尿病教育入院患者について, インスリン治療者および臨床データが不充分な患者を除いた, 男性360名 (年齢49±10歳) を対象に, 退院後の外来通院状況について追跡調査した. 24カ月の追跡期間中に通院を中断しその後1年以上にわたって通院していない通院中断例は1796, 追跡期間中に通院を中断しその後再び通院している中断後継続例は1896, 他院で治療を続けている継続通院例は2296, 継続通院例は4396であった, 通院中断者のHbAlc値は, 通院中断直前まで, 継続通院者に比して差はなくコントロールされていたが, 一旦中断した後はHbA1c値は有意に上昇していた. 通院中断の理由については, 転勤, 待ち時間が長い, 仕事が忙しくなった, 自覚症状がないので, 生活環境の変化, 医療側の対応の問題, 糖尿病療養への教育の問題等が混在していた.
著者
佐藤 徳子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.153-158, 1958 (Released:2010-10-29)
参考文献数
7

Similarly the part 1, comparative studies are made on the girth of the chest ratio, the sitting height ratio, Rohrer's index, Kaup's index and the girth of the upper arm of blind and normal school-children (6-19 year) in four prefectures of Tohoku district, and the following characteristics are found.(1) In the weight and the girth of the chest, blinds are not so inferior to normals as in the height, therefore the girth of the chest ratio and Rohrer's index of blinds are somewhat greater than normals'.(2) The sitting height ratio of blinds are greater than normals' in spite of the height of blinds are inferior to normals' so it seems that blinds have shorter legs than normals.(3) Kaup's index of blinds are inferior to normals'.(4) The girth of the upper arm of blinds are greater than normals' at the young ages, but the elder ages in school-life are inferior to normals.
著者
岡部 康成 木島 恒一 佐藤 徳 山下 雅子 丹治 哲雄
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 = Bulletin of Human Science (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.145-151, 2004-12-01

Until recently, the measurement of attitudes and beliefs has been limited to self-report questionnaires. The use of such measure unrealistically assumes that all the participants have both the ability and the motivation to report their attitudes and beliefs accurately. Recently, Greenwald, McGhee, and Schwartz (1998) developed the implicit association test (IAT) to overcome such limits inherent in self-report measures by examining attitudes and beliefs that lie outside conscious awareness and control. In the present study, we assessed implicit attitudes towards the supernatural power using two versions of IAT; the commonly used personal computer (PC) version and the recently developed paper and pencil version. Thirty-six undergraduates participated. Participants equally demonstrated negative attitudes towards supernatural power in either version. Moreover, the implicit attitudes indexes in the paper and pencil version were highly correlated with those in the PC version. These results suggest that the paper and pencil version of IAT can stand up to the use as more convenient method.\n本研究は、青少年の持つ非合理現象信奉の一つである超能力信奉傾向について測定する潜在連合テスト(IAT)の開発を主な目的としている。IATとは、近年、グリンワルドらによって提唱された質問紙法とは異なる方法によって認知構造を測定する技法である。一般的にはパーソナル・コンピュータを用いて測定が行われるが、紙筆版による測定も可能である。紙筆版IATは一度に大量のデータを収集する場合などにには有効な方法と考えられる。我々は青少年の超能力信奉について測定するIATの開発過程で、一般的なPC版IATと紙筆版IATを作成し、紙筆版IATの妥当性についても併せて検討してみた。今回の報告では、PC版及び紙筆版IATの結果からみた大学生の超能力信奉傾向について、また、今回作成した紙筆版IATの妥当性について報告する。
著者
佐藤 徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.89-100, 2000-03

本研究では, 区分化を自己の各側面から対立する感情価にある表象を"排除"する傾向と定義し, 自己表象の内容と構造の個人差がポジティブおよびネガティブ・イベント体験後の感情体験の強さ, ならびに気分変動の大きさにどのような影響をもたらすかを検討した.自己表象の内容面の指標としては自己記述に使用された項目に占めるポジティブ項目の率を, 区分化の指標としては各側面におけるポジティブ項目選択率とネガティブ項目選択率の差の絶対値の平均を用いた.その結果, ネガティブ・イベント体験後においては, ポジティブ項目率が低いほど強いネガティブな感情を体験していること, 区分化傾向が高いほど強いネガティブな感情を体験していることが見出された.他方, ポジティブな感情においては自己表象の効果は得られなかった.気分変動の大きさについては区分化の主効果のみが見出され, 区分化傾向が高いほど変動が大きかった.以上の結果は, ポジティブな感情とネガティブな感情では自己表象の効果が異なること, ポジティブ, ネガティブ双方の自己表象を統合することが極端な気分の変化に対する緩衝要因となることを示している.
著者
安田 朝子 佐藤 徳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.203-214, 2000-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
35
被引用文献数
3 1

Taylor (1989) は, 自己報酬的なバイアスは精神的健康や適応と結びついていると主張している。しかし, それは本当だろうか。自己報告式の尺度のみによって健常者を抽出すると, 「抑圧型」のような過度に肯定的なバイアスを示す群がそこに混入するため, 結果が大きく歪む危険性がある。しかし, 「抑圧型」は身体疾患の罹病率が高く, 必ずしも健康であるとは言い難い。「抑圧型」は, 特性不安尺度の低得点者かつMarlowe-Crowne社会的望ましさ尺度の高得点者と操作的に定義される。他方,「真の低不安群」は両尺度の低得点者である。研究1では, 過度に肯定的な自己評価傾向および非現実的な楽観傾向は「抑圧型」において顕著であり,「真の低不安群」はそれほど楽観的ではないことが示された。また,「抑圧型」では, 当人にとって重要なゴールと現状との不一致が小さく, それゆえ陰性情動の自己報告が低いことが示唆された。研究2の結果から,「抑圧型」において観察された非現実的な楽観傾向は, 実際にゴールと現状との不一致がないことによるのではなく, 現状に関するフィードバック情報が無視されているためであることが示唆された。すなわち,「抑圧型」では, 定期試験前になされた成績予測得点は最も高く, 実際の成績は最も悪かった。また, 予測に比して成績が悪かった場合, 他群では結果のフィードバックを受けて予測が下方修正されたのに対し,「抑圧型」では予測が変わらないか上方修正される場合さえあった。本研究では,「抑圧型」ではそもそも負の結果のフィードバックが適切に評価されないためにこうした楽観傾向が維持されており, それゆえ状況に応じた対処方略の選択と修正が妨げられていることが示唆された。こうした結果から,「真の適応」とは, 状況に応じた適切な対応をなし得る認知構造の柔軟性にあるのではないかと考えられる。